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2024/03/31 更新

IBD(投資銀行部門)とは?業務内容や必要なスキル、転職のコツも解説

IBD(投資銀行部門)という名前をよく聞くものの、どのような仕事なのかよくわからない人は多そうです。仕事内容や必要なスキルについて理解すると、自分に最適な転職方法がわかるでしょう。

この記事では、IBDの業務や必要なスキル、転職のコツについて解説します。

IBD(投資銀行部門)とは

IBDとは日本語で投資銀行部門と呼ばれますが、一般的な銀行とは異なり企業への資金調達を目的とした会社です。ここでは、主な業務内容や代表的な企業について理解しましょう。

IBD(投資銀行部門)の業務内容

IBDとは証券会社とも呼ばれ、法人に対して株や債権など有価証券の発行サポートを行う企業です。企業は新たな事業をスタートするときや、買収を行う際にお金が必要となります。IBDは企業が大きな資金を必要とする際、貸付で経営サポートを行う立場です。

また、IBDでは資金調達だけでなく、クライアントのさまざまなニーズにも応えます。財務サポートやM&Aに関するアドバイスなど、投資のスペシャリストとして高度な専門知識が求められる仕事です。

投資銀行業界の代表的な企業

金融業界において、投資銀行との呼び名は外資系企業を指す場合が多いといわれています。世界的に有名な外資系投資銀行は、以下の通りです。

米系企業

  • ゴールドマン・サックス
  • モルガン・スタンレー
  • J.P.モルガン
  • BofA(バンク・オブ・アメリカ)
  • シティ・グループ

欧州系企業

  • バークレイズ
  • ドイツ銀行グループ
  • UBSグループ
  • クレディ・スイス証券
  • BNPパリバ

また、外資系投資銀行より規模は小さいものの、日系企業もあります。

  • みずほ証券
  • 野村證券
  • SMBC日興証券
  • 大和証券
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

IBD(投資銀行部門)の部署

IBDには主に2つの部署がありますが、それぞれについて知らない人は多そうです。案件獲得チームとプロジェクト遂行部隊の2つに分かれ、円滑な運営体制となっていることを理解しましょう。

『ガバレッジ』

ガバレッジとは、クライアント企業へ営業を行い案件獲得を目指す部門です。クライアントや案件の獲得には、相談を待っているだけでなく自ら積極的なアプローチが求められます。営業活動やディスカッションで信頼を獲得し、クライアントが資金調達を行うときにサポーターとして選んでもらうことが目的です。なお、案件獲得の際にはピッチブックと呼ばれる提案資料をもとに、クライアントへアイデアを出していきます。

『プロダクト』

プロダクトとは、ガバレッジが獲得した案件を遂行し、クライアントの要望に応える部門です。ガバレッジが案件を獲得する流れでもディスカッションをしましたが、プロダクトはプロジェクト遂行のためにさらに踏み込んだ話し合いを行います。なお、プロダクトはクライアントのニーズに合わせるために、株式発行と債権担当の2チーム体制です。ほかにもM&Aチームも用意されており、クライアントの要望に合わせたサポートを行います。

未経験でもIBD(投資銀行部門)に転職は可能か

IBD未経験であっても、日系企業であれば転職できる可能性があります。日系投資銀行では、IBDの経験者と未経験者を半数ずつ募集するケースが多いといわれているためです。ただし、未経験者といっても全く知識がない人でも採用されるわけではなく、IBD関連分野の実務経歴が求められます。IBD関連分野とは、コンサルティング会社で企業分析に携わった経験やM&Aの知識などです。自身が知識不足だと感じる場合は、M&A実務に関する本を読んだり、IBDに関連の業務に携わってから転職準備を行いましょう。

なお、外資系投資銀行は経験者のみの募集が多いため、志望する場合は日系企業で実務経験を積む必要があります。

IBD(投資銀行部門)に転職するメリット

IBDへ転職するメリットがわかると、ジョブチェンジの意欲に繋がるものです。将来性を期待できる上、給与水準が高めである点を理解しましょう。

専門的なスキルが身につく

IBDでは、専門的なスキルとしてコーポレートファイナンスの知識が身につきます。コーポレートファイナンスとは、簡単にいうと企業価値を最大化するために行われる資金のやりくりです。企業を成長させるには、資金調達だけでなくお金のやりくりを適切に行うスキルが求められます。IBDでさまざまな経験を積むと、実務を通して専門スキルや判断力を養えるでしょう。実務で高度なスキルを培うと、次節で説明するようにキャリアの幅が広がります。

キャリアの幅が広がる

IBDに入社しさまざまな業務を経験すると、人生におけるキャリアの幅が広がります。投資銀行で触れるコーポレートファイナンスは、金融業界で特に重要とされるスキルです。一度身につけると金融関連の業種で応用可能なため、若手のうちに習得しておくと今後の職業人生で役に立つでしょう。具体的には、外資系投資銀行にチャレンジできるほか、PEファンドやブティック型M&Aファームなど多様なジャンルでの活躍が可能です。

高収入が得られる

IBDに入社すると、新卒の時点から高収入を得られることもメリットの一つです。企業にもよりますが、投資銀行業界では新卒の給与が年収900万円ほどといわれています。

また、IBDには以下の4つの階級があり、新卒はアナリストからのスタートです。

  • アナリスト
  • アソシエイト
  • バイスプレジデント
  • マネージングディレクター

アナリストからアソシエイトに昇格する年は、サインアップボーナスという祝い金をもらえます。場合によっては、昇格年の年収が3000万円になるケースもあるようです。高収入を目指し、転職でIBDにチャレンジする人も少なくないでしょう。

IBD(投資銀行部門)に求められる条件

IBD転職のメリットを理解したところで、採用で求められる条件についても知りたいものです。未経験転職の場合、応募にある程度の制限があることを理解しましょう。

学歴は未経験なら四大卒以上

IBDに未経験としてチャレンジするなら、四年制大学以上の学歴が必要です。野村證券株式会社(※1)によると、営業職での募集要件は四年制大学以上の卒業、または同等の資格を有する場合となっています。また、出身大学の名前が合否に関わる場合もあり、四大卒以上だからといって必ず入社できるわけではありません。ただし、転職の場合なら、大学の名前だけでなくキャリアや資質をアピールし内定を目指せる可能性があります。

(※1)参考:NOMURA RECRUITMENT オープンコース

年齢は30代前半まで

IBD未経験の転職なら、採用対象となる年齢は第二新卒から30代前半までといわれています。年齢も採用に関わる業種のため、チャレンジしたいと考える人はタイミングの考慮も必要です。持っているスキルによっては、30代後半でも採用される可能性があるでしょう。ただし、年齢相応の高度な経験値やスキルを求められることを念頭に置く必要があります。

関連業務での経験

IBDへの転職には、選考でのスキル証明のために投資銀行分野に近い業務経験が求められます。同レベルの人材が2人いた場合、専門知識がある人とない人とでは採用の可能性が大きく異なるものです。今まで自分が金融や財務に携わった経歴を振り返り、応募書類に書けるよう準備しておきましょう。特に、IBDでは大手メーカーや総合商社での事業投資、または財務担当の経験が重要視されます。

IBD(投資銀行部門)に求められる資質

IBD転職を成功させるには、応募条件を満たすだけでなく仕事を遂行するための資質も必要です。ここでは、IBDの業務を行う上で必要なスキルを解説します。

数学的能力

IBDは会社の数字と向き合う仕事であるため、数学的能力は必須スキルといえます。具体的に求められるレベルは、微分積分や統計学、確率論など高校数学以上の知識です。IBDに応募できる四大卒以上の人であれば一度は学習している内容なので、選考前に軽く復習を行うとよいかもしれません。また、面接では暗算やクイズを出されることがあるため、試験前はネットの過去問を活用した対策がおすすめです。

ファイナンススキル

IBDのメイン業務は企業経営のサポートであるため、ファイナンススキルは必須です。IBDは企業経営に責任を持つ立場であり、金融市場や財務戦略に関する知識が求められます。知識を持っているだけでなく、実際に運用できるほどの経験や経済動向を掴むセンスも必要です。日頃から経済の動きに関心を寄せ、財務のスペシャリストとして企業にアドバイスできるよう心がけましょう。

精神的・肉体的タフさ

IBDは一般的にどの企業でも業務が忙しいため、精神的・肉体的なタフさが求められます。投資銀行が忙しいといわれる理由は、膨大な資料作成業務があるためです。案件獲得のためには、クライアントに納得してもらえるよう充実した資料を作らなければなりません。資料作りでは膨大なデータを処理する上、情報の質にもこだわる必要があります。日々の業務が忙しくなりやすいため、IBDで働くには激務に耐えうる体力が求められるでしょう。

コミュニケーションスキル

IBDの業務では、クライアントの要望に応えるコミュニケーション能力が必要です。ガバレッジとして営業を行う場合、クライアントに信頼してもらえるように真摯な対応が求められます。また、プロダクトとして実際にクライアントに携わる場合、相手のニーズを的確に理解する力が必要です。コミュニケーションスキルが備わっていると、案件を引き続き依頼してもらえるメリットもあるでしょう。

高い英語力

IBDの業務では英会話を行う場面があるため、選考では高い英語力が必要です。外資系投資銀行の選考では、英語でのインタビューがあり英会話の実力を見られます。また、日系企業であっても、中途採用の場合は英語力が求められる場合が多いようです。日系投資銀行ではクロスボーダー案件が増えているものの、対応できる人材が不足しています。英語に自信のない人は、IBDを目指す前に一定の英会話力を身につける必要があるでしょう。

IBD(投資銀行部門)に転職を成功させるには 

IBD転職への条件を知り、自分がチャレンジできるのか不安になった人は少なくなさそうです。ここでは、転職成功の確率を最大限引き上げられるようなコツを解説します。

スキルを磨いておく

実力主義のIBDにおいて、実践的なスキルは転職において強い武器となります。IBDにチャレンジできる条件として大学の名前や年齢を挙げましたが、あくまでも目安にすぎません。IBDが求めるのは即戦力や応用力であり、最も重要なのはIBDでどのように活躍できるかのアピールです。現在所属している会社でキャリアを積んだり、金融や財務について勉強したりしながらIBD関連スキルを磨いていきましょう。

資格の取得

IBD転職において、金融や財務系資格の取得は選考時にアピールできるためおすすめです。ただし、IBDでは高度な専門知識を求められるため、ファイナンシャルプランナーや日商簿記ほどのレベルだとインパクトに欠けると考えられます。資格でアピールするなら証券アナリストやUSCPA(米国公認会計士)、公認会計士レベルを目指すのが得策です。すでに資格を持っている人は、選考でアピールできそうな自分の得意分野を書き出しておきましょう。

転職エージェントの活用

IBD転職をスムーズに進める方法の一つとして、エージェントの活用が挙げられます。IBDの求人は、転職エージェントで非公開求人として掲載されることがほとんどです。非公開求人は自分とマッチする企業を見つけやすい上、ほかの求職者からの応募が殺到しにくいというメリットがあります。今まで転職サイトで求人を探してみたものの、マッチする企業がなかった人にもおすすめといえるでしょう。

IBD(投資銀行部門)のネクストキャリア

IBDを経験したのちのネクストキャリアとして、以下の選択肢が挙げられます。

  • IBD同業他社
  • 投資会社(バイサイド)
  • 企画部門でのM&A業務
  • ファイナンシャルアドバイザリーサービス

IBD日系企業から、外資系投資銀行にチャレンジする人も少なくないようです。また、投資会社といって、IBDから金融商品を受ける側にまわり活躍することもできます。資金のやりくりやM&Aに携わった経験を、企画部門やファイナンシャルアドバイザリーサービスで活かす人もいるようです。ほかにも、ベンチャー企業のCFOや、自身でビジネスを起こす人も珍しくありません。IBDで身についたスキルは汎用性が高く、ネクストキャリアの選択肢は多岐にわたります。

IBD(投資銀行部門)をよく知り、転職を成功させよう

IBDへ転職すると、高収入を目指せたりキャリアの幅が広がったりとさまざまなメリットがあります。ただし、求められる資質や条件が厳しい業種でもあるため、転職のタイミングや前もっての準備が必要です。

IBDへ転職するには今の自分に何が必要かを見極め、ジョブチェンジを成功させる準備を行いましょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。