ベンチャー業界に長くいると、活躍している人たちに共通した特徴のようなものが見えてきます。
全員が同じ特徴を持っているわけではありませんが、似たような特徴を持った人が多く在籍していることを実感しています。
そこで今回は、ベンチャーで活躍している人たちの特徴について、まとめていきたいと思います。
本記事でいう「ベンチャー企業」とは、原則として創業10年未満の未上場IT企業のことを意味することにします。
そのため、上場しているIT企業や創業から10年を超えた中堅企業等は含めないことにします。
グロース市場に上場しているIT企業の多くが、少し前まで本記事でいう「ベンチャー企業」でした。
そう考えると、本記事でいう「ベンチャー企業」は、近い将来グロース市場に上場するかもしれないIT企業と言っても良いかも知れないです。
ベンチャー企業の多くは、大体カオスです。
毎日何かしらの問題が起こって、その問題を解決しようと頑張っている間にまた別の問題が発生します。
それが何度も繰り返されるので徐々に小さい問題は放置するようになります。
その結果、カオスが日常になり、何もない日の方が珍しいという状態になります。
私はベンチャーの創業者になったことがないので、本当のところはわかりませんが、身近にいる創業者の皆さん見る限り、経営者は毎日メンタルと体力をすり減らす職業だなと思っています。
ベンチャーにおける創業経営者の最も重要な役割は、意思決定です。
毎日大小様々な意思決定を求められるので、その場で瞬時に正しい可能性が高い選択肢を選び続けないといけません。
ベンチャーにおいては、問題だけは毎日無限に発生していくので、カオスがカオスを呼んで、ずっと混沌としています。
朝の会議で意思決定をしたとしても、夕方にはもう状況が変わっている可能性も大いにあります。
そのため、ベンチャーの経営者の意思決定は朝令暮改であることが普通です。
組織の末端にいた頃は、朝令暮改は悪いことだと思っていた時期もありますが、今ではその経営者のレベルの高さを表す一指標かもしれないと考えています(ケースバイケース)。
朝令暮改くらいのスピードで変化していかないと対応できないのです。
ベンチャー企業とはそういう変化の激しい場所です。
私が見てきた事例だけの話なので、すべてを網羅できているわけではありませんが、ベンチャーで活躍している人たちの多くには、以下の7つの特徴があると思っています。
以下、一つずつ詳述していきます。
ベンチャーで活躍し続けている人たちのほぼ全員が高い変化耐性を持っています。
もっといえば、変化に対する耐性が高いだけでなく、自分から変化を起こしに行っている人が大多数です。
常に変化し続けていないとソワソワして気持ち悪くなってしまうのだろうと思います。
それくらい常に動き回っていて、新しい知識や能力を求めています。
自分の興味のある分野に関する知的好奇心が旺盛で、新しい情報にすぐ飛びついて学んでいます。
じっとしていられないタイプの人が多いので、変化が日常になっています。
次から次に手を出してしまうので、時々キャパを超えて自滅していることもありますが、変化を自ら起こそうという姿勢はとても素晴らしく、それ自体がベンチャーで生き残る唯一の手段だと思います。
こういった人たちは、完成されたシステムの中では「異端児」として扱われやすいかもしれません。
しかし、変化の激しいベンチャーの世界ではとても重宝されます。
ベンチャーで活躍し続けている人たちの多く(ほとんどといってもいい)は、通常ではけして耐えられないような状態でも最後までやり抜く傾向があります。
その他大勢から「それ儲からないでしょ。無理だよ」と言われても辞めません。
最後まで続けた結果、そのまま儲からずに組織が解散することも多いですし、回数でいえば失敗していることの方が圧倒的に多いとは思います。
しかし、成功者の多くはその数多くの失敗を乗り越えて来た人達ばかりなので最後までやり抜く能力というのは、極めて重要なものだと思っています。
ある意味「狂気」と言っても良いかも知れないもので、特別な才能であり、特徴です。
ベンチャーで成功を収めている人たちの多くには、自組織や自社にとって良い流れが来るまでずっと耐えて、コツコツとやり続けるという共通姿勢が根本にあると思います。
しかも、ずっと同じことをやり続けているわけではありません。
少しずつ変化しながらやり続けているのです。
小さな改善を数多く積み重ねて、価値のある事業・プロダクトにして変化させていっていきます。
こういう地道な活動を行える人は、ベンチャーで活躍できる可能性が極めて高いと思います。
ベンチャーで活躍し続けている人たちには、大雑把な人たちが多いです。
普通の人が普通にできることができない(やらない)ということもよくあります。
全員ではないですが、彼ら(彼女らも含む。以下同様)の机の上は大抵メッチャクチャで、ゴミなのか、重要資料なのかよくわからないものが散乱していることが多いです。
よく考えてみると、ベンチャーで長く活躍している人たちの中にはちゃんとした人の方が少ない気がします。
まともな人をすぐに思い出せないくらいには変わっている人が多い印象です。
おそらくですが、彼らは自分のリソースをあえて事業に全振りしているのだろうと思います。
彼らが本気で「普通」を目指せば、おそらく殆どのことをこなせます。
でも、それをあえて捨てているのです。
私はこれを「戦略的大雑把」と名付けています。
事業に集中するがあまり、他のことがいろいろと疎かになっているのです。
それほどの集中をしていると言い換えてもいいです。
ベンチャーで生き残っていくためには、自分のリソースを全振りするくらいじゃないと勝てないのでしょう。
一つ注意しないといけないのは、ベンチャーの採用で全振り型の人ばかりを採用してしまうと、その組織はもうどうしようもない状態になります。
採用する側の視点でいえば、構成割合をきちんと考えないといけません。
組織は2割の変人と8割の常識人で成り立っているのだと思うので、あまりに多くの変人を入れすぎると危険です。
ベンチャーで活躍している人たちのルールに対する認識は、一般とはかなり異なっています。
彼らは、ルールというものは自分で作るものだという感覚をどこかで持っている人が多いです。
どうやったらルールを作る側に回れるのかという発想をよくします。
ベンチャー企業の一部は、まだ法整備が進んでいない領域を攻めています。
そこに新規市場があるかもしれないからです。
その潜在的市場が大きければ大きいほど、先行者利益も大きくなります。
利益が大きくなる市場だとわかると、それだけ後発参入者が増えますので、悪徳な業者も増え、消費者等に損害を及ぼす可能性も高くなります。
このような事態を防止するために、政府側が新しい法規制を設け始めます。
最近ではFinTechが急速に発展していっておりますが、この分野もほんの10年前までは全然法整備が進んでいない分野でした。
でも、多くのベンチャー企業がそこに参入したことで不祥事も多発することになりました。
それが原因となって立法が進み、法が出来上がって来ています。
このような領域では、ルールを作る側に回るにはどうすればいいかという視点が重要になってきます。
政府機関と連携して、新しいルール作りに参画するという発想を持てるかどうかです。
こういった活動をロビー活動と言いますが、先進的なベンチャーではよく行われている活動です。
もっといえば、ルールを作る側に回ることにより、参入障壁を形成してしまおうという発想まで持っていると尚良いです。
法規制が及ぶ前にその事業をある程度完成させておくと、政府主導の制度設計の議論に参画できる可能性が高まります。
ルールさえ出来上がれば、後発企業に関しては一から基準をクリアしにいかないといけないという状況を作れますので、高い参入障壁として機能します。
新規参入における許認可の基準が厳しければ厳しいほど、参入障壁も高くなるという構造です。
現に、先ほど例示したFinTech分野の許認可は、ここ10年で以前とは比べ物にならないほど厳格化しています。
今から参入しようとする企業は圧倒的に不利な状況での参入となりますから、実に見事な参入障壁の構築でした。
こういう思考を常日頃から行っている人はベンチャー向きだと思います。
長くベンチャーで活躍している人たちは、他人を頼るのが上手です。
一方で、あまり上手く行っていない人や短期間だけの活躍で終わってしまう人の多くは、すべてのタスクを自分一人でやろうとする傾向があります。
ベンチャー企業では、拡大期というものが突然やってきます。
それはたった一つの契約から始まるかもしれませんし、市場の変化によってもたらされることかもしれません。
いずれにしても、突然急拡大をし始めます。
そして、ベンチャーが拡大期に入ると、自分たちだけでは到底回せない量のタスクが積み上がっていくので、それに対処するために急激に人を増やします。
しかし、新入社員の受け入れ体制や教育制度等が全然追いつかないので、採用された後に組織内でぼーっとしているだけの人が増えていきます。
さらに、採用ミスなども多発し、結局その後すぐに急縮小します。
これは将来を有望視されたベンチャーであってもよく起こる現象です。
このようなことはベンチャーでよく発生していることなのに、なぜ繰り返すのでしょうか。
すべてのベンチャーを見てきたわけではないので、あくまでも少ない事例を見る限りの話ではありますが、私自身は、他人を頼れない人達が重要な役職についていたからという点に原因があると考えています。
少なくとも間近で見てきた事例のすべてはそれが原因でした。
プレイヤーとしては優秀だけど、マネージャーとしては不適格だったという事例です。
ベンチャーで成功し続けるためには、必ずどこかでマネージャーとしての技能を学ぶ必要があります。
マネージャーにとって極めて重要な資質は、他人を信頼できることです。
自分が優秀だと勘違いしている人達は、基本的に他人を信頼しません。
自分でやった方が早いし、自分の方が優秀だと思い込んでいます。
その結果、多くの重要なタスクを抱え込み、自滅していきます。
こういう人たちは基本的には自分のこと中心に考えているので、他のメンバーの能力や成長余地に対して懐疑的な見解を持っています。
そして、教育に力を入れようという発想そのものがあまりないので、教育力も皆無のまま役職だけ上がっていきます。
それらの負の連鎖を経て、採用ミス・育成不足が多発します。
運良く良い人材を採用できても育てられず、早期離職を発生させてしまうのです。
一方で、ベンチャーで長く活躍し続けている人たちは、他人を頼ることに慣れているので、日頃から「この人に何を任せようか」「この人をどう育てようか」という視点で他人を観察し続けています。
元々他人に対する関心を持っているので、人を見る目も養われていきますし、教育も上手です。
こういった人がマネージャーに任命されている組織は、急拡大期に入っても柔軟に対応していくことができます。
マネージャー自身が部下に対してどんどんタスクを割り振るので、部下も育ちます。
このようなマネージャーは、長期的に見て、従業員にもベンチャー企業にも有益な人材と言っていいと思うので、このような特徴を持っている人は、ベンチャーで長く活躍できると思います。
ベンチャーで長く活躍している人たちには、情熱的な人間が非常に多いです。
これを最近の流行りに乗って「情熱ドリブン」と表現することにしましょう。
ベンチャーで活躍している人たちの多くは、個人的な夢を持っていて、それが会社の目標と一部共通しています。
それゆえに個人的な情熱と会社の進みたい方向が一致して、努力がそのまま会社の業績に繋がっていくという好循環が生まれています。
そういう人たちは組織内でもムードメイカーとして機能する事が多く、徐々に重要な役割を任されるようになります。
ベンチャーにいる人の中には、一見すると暗い人なのかな?と思えるような人もいるのですが、話を深く聞いていくと、とんでもない情熱をうちに秘めていることが多いです。
そういううちに秘めた情熱は、少しずつ周りの人間にも良い影響を与えていきます。
情熱が伝播して、組織が一つにまとまっていき、最終的にチームワークが完成したとき、とても心地よい組織に仕上がるのですが、勢いのあるベンチャーではそういう組織がよく発生します。
そして、一度でもそういう組織で働いてしまうと、もうベンチャーから抜けられないかもしれません。
ベンチャーで長く活躍している人たちには、アンガーコントロール能力が高い人が多いです。
10年以上活躍し続けている人たちに至っては、怒っている・怒鳴っている瞬間を一度も見たことがない人も多いです。
他方で、ベンチャーでなかなか上手く行っていない人たちは、しょっちゅう誰かに不満をぶち撒けていたり、怒鳴っていたりするイメージがあります。
そういう人の場合、部下からも愛されないので、組織から排除されることが多いです。
神の気まぐれで上級役職に就けたとしても、数年以内にパワハラ系の問題を起こしていなくなります。
やはりベンチャーで長く活躍するためにはアンガーコントロールは必須なのだろうと思います。
管理職やCEOが毎月キレ散らかす会社なんて長く働きたくないですもんね。
今回はベンチャーで長く活躍している人の特徴7つについて解説させていただきましたが、参考になりましたでしょうか。
自分自身の性格や特徴と見比べてみて、ベンチャーに向いているかも?と思った人は是非ベンチャーの世界にお越しください。
大歓迎です。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりご連絡ください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。