新卒採用の場においては、もはや都市伝説とはいえないレベルでたしかに存在している学歴フィルターですが、中途採用の場面でも学歴フィルターは存在するのでしょうか。
今回はこの点についてお話していきます。
中途採用においても、会社によっては学歴要件を設けている場合があります。
これは単に「4年制大学卒」という要件の場合もありますし、明確に偏差値等でラインを引いていることもあります。
企業や職種によって様々です。
また、中途採用においては、募集するポジションを管轄している事業部長又は役員の思想や価値観が大きく反映されるため、会社としては学歴を気にしないという方針であっても、当該事業部長又は役員が学歴を重視する人であるならば、実質的には学歴フィルターがかかってしまうこともあります。
したがって、会社の方針というよりは、採用の最終的意思決定を行う人によって学歴フィルターが存在する場合があるという方が正確です。
私の経験談でいうと、以前カジュアル面談をしてもらったとある企業で、面接官である部長さんが「俺は早慶上理以上じゃないと採らない。学歴は重要だからな」と面談の中で言っちゃうような人でした。
こういう人に当たってしまった場合は、出身大学でフィルターをかけられます。
さて、ここで候補者側の立場で考えてみていただきたいのは、そんな人の下で働きたいと思いますか?
私は嫌だったので、その面談の先には進まず、辞退しました。
学力や学歴はたしかにその人の努力の結果なので、重要な要素だと思っていますが、中途採用の場面では経験や資格などのほうがより重要だと思っています。
多くの企業の管理職のみなさんも、転職においては学歴よりも経験と資格と実績を重視する傾向が強いのではないかと思います。
以上のことを踏まえると、実質的な学歴フィルターが存在する会社はあるものの、基本的には学歴より資格や経験の方が重視される傾向が強いといえるのではないかと考えています。
前述のとおり、転職においては学歴よりも資格や経験の方が重視される傾向があると述べましたが、もう少し場合分けして考える必要があります。
なぜなら、手企業に関しては少し話が変わってくるからです。
中途採用において、明確に学歴フィルターを設けている大手企業は少ないとは思うのですが、実際には心理的なバイアスがかかっていることが多いです。
どういうことかというと、そもそも大手企業の場合、新卒時に学歴フィルターがかかっていることが多いです。
仮に明確な学歴フィルターがなかったとしても、内定が出る頃には不思議と有名大学出身の人しか残っていません。
その結果、有名企業の場合、社内で働く大多数の人が有名大学卒の人たちです。
そしてさらに不思議なことに、上層部に行けば行くほど、東京一工や早慶が増えていきます。
新卒採用で学歴フィルターを設けたりしていなくても、難易度の高い学力検査や面接試験等をくぐり抜けてくる人たちのほとんどが有名校の学生なので、結果的には学歴フィルターをかけた場合と同様の結果になるのです。
このような状況下で、わざわざ社内のメンバーと異なる学歴を有する人を中途採用するのか?
たぶんないでしょう。
有名大学卒ばかりの集団の中では『この人は◯◯大学卒の人か。じゃあ財務部の◯◯さんの出身校だな』という連想が起こるので、無意識的にバイアス(偏ったイメージ)が発生します。
ということは、候補者側から見ると、自分と同じ大学の出身で、その会社で活躍している人がたくさんいればいるほど、有利に働くのです。
面接官と同じ大学の出身だったことで、面接で盛り上がるなんてことも転職では日常茶飯事です。
また、大手企業の場合、中途採用の求人に対してもかなりの数の応募が来ます。
そして、その中には偏差値の高い有名大学を出た人もたくさんいます。
仮にバイアスなしで普通に選考をする場合であっても、学歴は当然に学力の評価対象の一つとなりますから、学歴が良い方が有利です。
経験値や人物面の評価が同等であれば、少なくとも学生時代に勉強を頑張ってきた人を採るというのは致し方ないことかなと思います。
したがって、学歴フィルター自体は無かったとしても、実質的には学歴フィルターが存在する場合と同じような結果になります。
あと、一部の大手企業では、学閥というものが存在します。
これは、社内の非公式OB会のようなものです。
社内に有名大学卒の人が非常に多いので、入社する前から先輩後輩の関係だった社員も多く在籍していて、簡易的な同窓会のようなものが自然形成されていくのです。
会社の歴史が長いほど、その同窓会の中から役員等が生まれやすくなるため、組織の中で力を持ちやすくなっていきます。
私が若い頃に勤めていた会社にも、早慶や東大などの非公式OB会がありました。
こういう会では、新卒時に大学の後輩を人事部に推薦したり、出世のときにOB会に所属している人を(意識的・無意識的に)推薦したりする現象が起こります。
現に私の同級生はこの非公式の団体からの推薦を獲得して、大手企業の中途採用で内定を勝ち取っていました。
これもある意味学歴フィルターの一種だと思います。
特定の大学の出身者であるということが有利に働く一例です。
このように、大手企業では有名大学卒の従業員が多いので、どうしても学歴による影響が出てしまうものだと思います。
学歴による影響そのものが悪いことだとは思いませんが、有名大学を出ていない人にとってはかなり不利な戦いになるでしょう。
では、ベンチャー企業ではどうでしょうか。
結論から言うと、ベンチャーで学歴フィルターをかけているような会社は少数派です。
すぐに思いつく範囲では数社しか知りません。
それ以外のベンチャーは、学歴よりも実力、実績、資格、話すスピード、論理性、価値観の一致などを重視しています。
私の知人の経営者に至っては、本人は凄い大学を出ているにもかかわらず「中途採用では学歴とかどうでもいい。その人が残してきた実績が一番大事。大学なんか高校生の頃に頑張ったかどうかでしかない。現に僕の同級生はベンチャーでは全く役に立たないよ」と明言しています。
その明言どおり、中途採用では学歴に関係なく、努力と根性で乗り切ってきた人たちばかりを採用しています。
そもそも、ベンチャーでは学歴が役に立つ瞬間があまりありません。
むしろ邪魔になることの方が多いかもしれないです。
私の個人的な見解で申し上げますと、良い大学を出ている人の多くは、試験的な正解を導くことがとても得意です。
正解のある問に対する耐性が高く、難問であっても既存の知識を応用して解き方を導き出せます。
そうやって正解を導き出すことに特化した能力を持っていて、正解を出し続けることが誇りでもあります。
しかし、ベンチャーの世界では、そもそも正解があるかどうかも怪しい論点が多く、かつ、やってみないとわからないこととか、やっても9割以上の確率でダメだろうなと思われることが多いです。
そして、現に9割近い確率で失敗に終わります。
極端な言い方をすると、ベンチャーでの事業活動の多くは失敗することを前提にしているようなところがあるのです。
こういう失敗を前提として突き進むような行動は、高学歴の方々にとっては、若干嫌悪感を覚えやすい活動です。
なぜなら、今まで正解を出すことこそが正義という世界で生きてきたからです。
高学歴の皆さんは、失敗する、不正解を出すということにあまりに慣れておらず、とても大きな不安や恐怖に襲われることが多いです。
それに、失敗するとわかりきっていることをやり続けることも苦痛でしょうし、自分が失敗するという事実を受け入れる事自体、プライドが許さないでしょう。
そのため、ベンチャー企業との相性があまり良くないことが多いです。
一方で、大手企業であれば、新卒には手厚い研修が用意されていますし、業務も細分化されていて正解(何をやればいいのか)がハッキリわかります。
何をどうすればいいのかという方法論がある程度確立されているので、今まで学校でやってきたことを少し応用するだけで適応できます。
そういう意味では、大手企業との相性が良いです。
以上を前提にすると、ベンチャーで学歴フィルターを設けてもあまり意味を成さないので、学歴を重視しているベンチャーもそこまで多くないのではと思っています。
私の知る限りでは、良い大学を出て、ベンチャーで活躍している人たちの9割くらいが変わり者(明らかに少数派に属する人たち)です。
普通の人がどれだけいるかなと脳内で思い出そうと努力してみたのですが、活躍している人=類稀な業績を出している人たちなので、普通の人が思い当たらなかったです。
良い大学を出て、ベンチャーで活躍している人の大半は、ずば抜けた行動力を持っていたり、失敗を全く恐れない強靭な精神を持っていたり、天才過ぎて失敗なんて微塵も考えてない人だったりします。
少なくとも、普通ではないです。
そういうどこかの要素で外れ値を持っているような人でないとベンチャー業界に居続けるのは難しいのかもしれないです。
では、ベンチャー企業では学歴は関係ないのでしょうか。
10年近くベンチャー業界に居続けていますが、小規模なベンチャーなら学歴はほとんど関係ないというのが実感です。
より正確に表現すると、学歴を重視したところで採用できなくなるだけなので、あまりやらないです。
そもそも日本では安定志向がまだ根強いので、偏差値の高い大学の学生ほど大手企業を目指します。
それゆえに、わざわざリスクの高いベンチャーに飛び込もうという人が少ないのです。
そのような状況でベンチャーが学歴にこだわっても、採用が困難になるだけです。
ゆえに、多くの小型ベンチャーでは、学歴フィルターなどはかけていないのが現状だと思います。
他方で、ベンチャー業界全体でみると少しずつ変化が出てきています。
最近のベンチャー企業の経営者・役員などに高学歴な方々が多くなってきているのです。
まず、ここ数年で大学発ベンチャーが多く生まれています。
大学系のベンチャーキャピタルも多く設立されているので、東京大学等を始めとして、有名な大学が学生起業を後押ししています。
その結果、高学歴のベンチャー経営者が急激に増えました。
修士号又は博士号を持っている経営者も増えてきております。
また、そういう経営者は同級生や同じ大学の先輩・後輩などを誘う傾向があるので、結果的に高学歴集団のベンチャー企業が増えてきています。
それ以外のベンチャーでも、徐々に学力を重視する傾向が拡大していっていて、最近ではSPI等の学力検査を設けるベンチャーも出始めています。
さらに、ベンチャーの規模が大きくなっていけば行くほど、内部統制が構築されていって、業務も細分化され、徐々に高学歴の皆さんが活躍できる土壌が整っていきます。
その結果、IPO(新規上場)を目指す頃には徐々に従業員も高学歴化していきます。
そして、職種によっても学歴を重視されることがあります。
例えば、ベンチャーといえども経営管理部門については、比較的学歴を重視される傾向が強いです。
より特定していうと、財務・法務は学歴を重視する人が多いと言って良いでしょう。
会計や法律分野の専門家(主に公認会計士・弁護士)の大半が高学歴集団なので、どうしても学歴を重視する人の割合が増えます。
上記のような事情により、大学発ベンチャーや大手企業化しつつあるベンチャー、又は特定の職種においては、今までよりも学歴が重要視されている傾向が見て取れます。
もう少し踏み込んでお話すると、学歴以上を求められる傾向すら出てきています。
ベンチャーでは、学校の勉強ができたかだけでなく、どれだけ自発的に行動できるか、どれだけ自分で実務を学べるか(学んできたか)が重視されてきています。
ベンチャーは、思っている以上に変化が激しい業界なので、自分で自発的に学ぶ人じゃないとすぐに置いていかれて落ちこぼれてしまうのです。
自分で考えて、行動して、試行錯誤を繰り返せる人じゃないと難しい環境です。
そのため、大学を卒業した後にどう生きてきたのかが重要になってきます。
そういう意味では、大手企業よりも難易度が高いかもしれません。
その分報酬が上がりやすい傾向があり、若くして大手企業の管理職以上の年収を稼ぐ人も多く存在しています。
こういう環境を好む人は少ないでしょうが、早期に成功を収めたいならベンチャーは良い選択肢だと思います。
ベンチャー業界は、挑戦する人、努力してきた人に敬意を払う文化があるので、若き優秀な挑戦者たちはいつでも歓迎されています。
私自身も歓迎しております。
今回は中途採用と学歴フィルターというテーマで書かせていただきました。
ただの私見なので不正確な部分もあるかと思いますが、参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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内容に応じて担当者がお返事させていただきます。
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