今回は日商簿記と同じ役割を持っている「全経簿記」という資格の転職市場での価値について検討していきます。
会計分野の勉強をしたことがある人にとっては有名な資格ですが、それ以外の方々からすると全く知らないという人の方が多いかもしれません。
しかし、意外と使える資格なので、簿記を勉強したい思っている方は取得候補の一つとして考えてみるべきだと思います。
全経簿記とは、正式名称を全経簿記能力検定といいます。
公益社団法人全国経理教育協会が実施する、簿記の能力を測る検定試験です。
日商簿記と同様に、最上級の試験(全経簿記上級)に合格すると、税理士試験の受験資格が与えられます。
資格の等級としては、以下のとおり基礎から上級まで存在しています。
上記のとおり、全経簿記は、日商簿記と異なり1級までは科目別に受験することができます。
そのため、商業簿記と工業簿記を別々の試験日に受験して、一つずつ合格することが可能です。
したがって、一歩ずつ着実に歩んでいきたい方には向いていると思います。
では本題に移ります。
全経簿記は転職で役に立つのでしょうか。
この点について日商簿記と比較しながら検討していきたいと思います。
全経簿記も日商簿記と同様に、間違いなく役に立ちます。
経理・財務などの専門職を対象とした転職市場でも高く評価される傾向があります。
しかし、日商簿記と比較した場合、日商簿記の方が、圧倒的に知名度が高いので、簿記検定を受けるなら日商簿記を受けた方が良いと思います。
また、全経簿記は、テキストや問題集があまり出ておらず、勉強のツールが限られているという難点もあります。
多くの受験生が、選択肢が乏しい中で公式が出しているテキストと問題集を使って学ぶことになります。
日商簿記と全経簿記にはこのような大きな差があるので、どうしても日商簿記の方が転職市場ではメジャーな資格であると評価されてしまいます。
そのため、日商簿記の1級まで取得できるほどの実力があるならば、日商簿記を最優先で取得した方が効率が良いです。
もっとも、皆さんご存知のとおり、日商簿記2級と1級との間には大きな難易度差があり、日商簿記1級に合格できる人は10%程度しか存在しません。
国家資格ですらない資格試験でここまでの難易度を保っている資格も珍しいです。
だからこそ、多くの人が日商簿記1級の取得を諦めてしまいます。
そこで使えるのが全経簿記です。
全経簿記と日商簿記では、各級の難易度に差があるので、それを上手く利用すれば段階を踏んで取得していくことができます。
例えば、日商簿記2級まで合格している人であれば、次に日商簿記1級をいきなり取ろうとするのではなく、一旦全経簿記1級(商業・工業)を取得するという方法があります。
全経簿記1級(商業+工業)の難易度は、日商簿記2級と1級の間にあると考えられるので、日商簿記1級を取得する前も肩慣らしに使えるのです。
また、全経簿記1級を取っておけば、履歴書の見栄えという点でも有効です。
特に経理や財務という職種にとって、日商簿記2級は最低限必要となる「前提条件」という位置づけですが、全経簿記1級(商業・工業)まで持っていれば、日商簿記2級のみの人よりは評価が高くなりやすいといえるでしょう。
より具体的なイメージで言うと、日商簿記2級のみの人だと「日商簿記2級までで満足してしまったんだな」と感じますが、全経簿記1級まで取っていると「この人は日商簿記1級又は全経簿記上級を目指している人なんだろう。少なくとも、最上級資格を本気で目指したことがある人ではないか」という推定が働きます。
その結果、学習意欲がまだ消えていないのでは?というプラスの推定が働きやすいです。
そもそも経理や財務の転職市場においては、日商簿記2級保有者が大量に存在します。
それゆえに日商簿記2級だけだと全く差別化が図れない状態です。
そのような市場内で全経簿記1級まで取っている人がいると、少しだけ目を引きます。
そういう意味でも、持っておいて損はない資格だと思います。
なお、言うまでもないですが、日商簿記1級又は全経上級を取得できるなら取った方が良いです。
いずれも難易度が高い試験なので、受かるかどうかは運次第なところもありますが、持っているととても有利になります。
ちなみに、難易度としては日商簿記1級と全経上級は同程度となりますが、知名度的には圧倒的に日商簿記1級が上です。
よって、簿記検定の最上級を狙うなら日商簿記1級にすべきだと思います。
全経簿記は、比較的マイナーな試験であるため、転職での効果を期待するのであれば、日商簿記2級を取得する方が学習教材の量、知名度の双方でメリットがあるだろうと思います。
そして、会計専門職として長く活躍したいのであれば、日商簿記1級を取得しないといけません。
しかし、日商簿記1級の難易度がかなり高いので、短期間で日商簿記1級まで合格するのは難しそうだと感じたら、日商簿記2級取得後に全経簿記1級を目指してみると良いと思います。
そういう活用方法として全経簿記を受験するのは理にかなっています。
また、先々税理士になりたいという方で、受験資格がない人の場合は、受験戦略上、全経簿記上級を目指すのもありだと思っています。
日商簿記1級の合格率は10%程度で、実施される回によっては一桁の合格率となっています。
一方で全経簿記上級は毎年15%前後で推移しているため、日商簿記よりは合格し易いことがわかります。
わずかな差でしかないのですが、それでも税理士試験の受験生にとっては大きな数%です。
それに、日商簿記を受けたことがある人はわかると思いますが、あの試験は難易度のバラつきが本当に激しくて、意地の悪い問題も多く出題されます。
それに比べると、全経簿記の方がまだ素直な問題が多く、努力量でカバーできる部分が大きいと言えるでしょう。
そういう意味でも、全経簿記はとても有益な資格だと考えています。
今回は全経簿記について解説させていただきました。
全経簿記を知っている人は会計分野の人達くらいなので、マイナーな資格ではありますが、全経簿記1級以上を持っているとカッコイイと思いますので、若手の皆さんでもし会計に興味がある人がいれば、取得をご検討ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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