今回は、英語資格としては最高難易度の一つといわれているTOEFL(トフル)について解説いたします。
ここ数年で少しずつ知名度も上がってきているので、もしかしたら何年か先には有名資格の仲間入りを果たしているかもしれません。
TOEFLとは、“Test of English as a Foreign Language” の略称で、翻訳すると「外国語としての英語テスト」となっています。
つまり、母国語が英語じゃない人たち向けの英語能力試験です。
TOEFLの試験は、アメリカのEducational Testing Service(ETS)が実施しています。
ETSは、あの有名なTOEICの実施機関でもあるので、とても大きな教育系団体です。
TOEICとの大きな違いは、TOEFLの方が、圧倒的に難易度が高いという点です。
TOEICは、リスニングとリーディングの2種類の英語能力を測る試験で、内容も日常でよく活用する比較的簡単な英語が出題されます。
他方でTOEFLでは、総合的な英語能力(ライティングとスピーキングもある)を試される試験で、しかも大学院等で必要となる英語運用能力を試す試験となっているので、アカデミックな内容を扱う問題が多く、TOEICと比べると相対的に単語の難易度が高くなります。
それゆえ、日本人で受験する人は極めて少数です。
主に長期の海外留学を予定している人が受ける試験であるため、日本ではあまり知名度が高くない試験ですが、世界的にはトップレベルの認知度・評価を誇る英語能力判定試験です。
事例をいくつか挙げると、ケンブリッジやオックスフォードなどを始めとした欧州の有名大学院、及びマサチューセッツ工科大学やスタンフォードなどのアメリカの有名大学院の入試でも活用されています。
したがって、高得点を取るのは非常に難しい試験であるといえます。
なお、TOEFLにはいくつかの種類がありますが、一般の受験生が受けるのは “TOEFL iBT” なので、以下ではTOEFL iBTについて解説していきます。
TOEFLに受験資格はないので、誰でも受験することができます。
しかし、受験料はそこそこお高いです。
2025年4月から値下げされたのですが、まだ高いです。
ここまでの値段になってくると、気軽に受けられない金額なので、日本で受験する人は一気に減少します。
それに加えて、TOEFL iBTの試験を大学院の英語試験として必須にしている日本の大学院はほとんどなく、東大の一部の研究科くらいかなと思います。
東大のその他の研究科や他の大学院では、TOEFL iBTのスコアを参考資料(他のテストで代用可能)としているか、TOEFL を使うとしても、教育機関などの団体向けテストであるTOEFL ITPという試験を使っている研究科が多いので、日本でTOEFL iBTを活用する機会は実質的にはあまりありません。
それゆえに日本での認知度はかなり低く、かつ、受験経験がある人も少数です。
一方で、海外大学や海外大学院を目指しているようなハイレベルな英語力を持っている人たちは、TOEFL iBTを受験することになりますので、見方を変えると、TOEFL iBTを受験して自分のスコアを外部に出せるような人たちの多くは、英語の猛者である可能性が高いということです。
企業側(英語を日常的に使用する企業)としても、そういう視点を持っていることが多いと思います。
ここまでの説明で、すでに9割以上の人はTOEFL iBTを受けないとは思いますが、一応試験の内容も解説していきたいと思います。
TOEFL iBTは、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を総合的に測定するテストで、大学や大学院レベルのアカデミックな内容が出題される試験です。
そして、インターネットから配信される問題を全セクションコンピュータ上で解答する形式なので、なんと自宅でも受験できます!
テストの時間は、今まで3時間でしたが、約2時間(2023年7月26日以降の試験)に変更になります。
スコアは、今までどおり120点満点で採点される形式です。
試験の各セクションは以下のとおりです。
まず、Readingセクションでは、アカデミックな長文読解問題が大問で2つ出題されます。
一つの文章の単語数は約700語で、各10問ずつ小問がついているので合計20問です。
主題される分野は、自然科学、社会科学、芸術など幅広い分野から出題されます。
次に、Listeningセクションでは、講義形式(3題)と会話形式(2題)の2種類の問題形式があります。
講義形式(3題)では、講義を聞いて、その後の問題(各6問×3題=18問)に回答していきます。
講義形式の出題では、長文読解問題と同様に、幅広い分野の教養科目を題材とした講義(3~5分程度の講義)を聞いて回答することになります。
そして会話形式では、会話を聞いて、その後の問題(各5問×2題=10問)に解答していきます。
会話形式の問題では、教授と学生、大学職員と学生、学生同士などの会話が3分ほど放送されるので、それに対して答えていきます。
続いて、Speakingセクションでは、PCのマイクを通して回答音声を録音する形式です。
出題形式は2種類あって、まずひとつ目がIndependent task です。
これは、身近なトピックについて意見を述べる形式のSpeakingテストで、1問出題されます。
準備時間は15秒で、解答時間は45秒間与えられます。
次に、Integrated tasks です。
こちらは、 読んだり聞いたりした内容を要約して話す形式のSpeakingテストで、3問出題されます。
Integrated tasks の解答の形式は以下のとおりです。
最後に、Writingセクションがあります。
Writingセクションは、タイピングで回答します。
こちらも2種類の出題形式があり、Integrated task(1問 20分)では、読んで聞いた内容を要約してエッセイ形式で書く問題が出題されます。
書く単語数は、150単語以上となっています。
次に、Academic Discussion task(1問 10分)では、アカデミックな場面において自分の考えを明確に構成立てて、制限時間内にまとめる英語力を測定する問題が出題されます。
目安としては100単語以上のライティングが必要になるそうです。
10分で100単語以上の文章を書ける人が日本人何%いるかですね。
以上4つのセクションをPCで受けていく形式です。
内容を見た段階で極めてレベルの高い英語試験だということがわかります。
留学経験等のない一般的な大学受験英語しか学んでいない日本人にとってはほぼ対応不可能な試験なので、少なくとも2年程度はTOEFL iBTに対応した英語の勉強をしないといけないでしょう。
やっと本題に入ります。
上記のとおり、TOEFL iBTの日本での認知度はかなり低く、かつ、受験経験がある人も少数です。
それでも転職に役立つのか。
結論としては、とても役に立ちます。
もっと踏み込んで言うと、英語を多く使う企業の採用担当や管理職にはとても受けが良い国際資格といえます。
以下、その理由も踏まえて、以下の各項目を詳述します。
TOEFL iBTは、たしかに受験経験者も少なく、スコアを保有している人に出会うことも少ないです。
転職市場を見ている限りでは、1割もいないのが現状だと思います。
以前、とある転職サイトで検索してみたことがあるのですが、TOEFL iBTのスコアを書いている人の割合は2%未満でした。
※転職サイトによって割合は変わるとは思います。
しかし、英語を日常的に使う企業での認知度は抜群に高く、かつ、評価も高いです。
というのも、TOEFL iBTはいわゆる「英語ガチ勢」のための国際資格でして、相当に英語に自信がある人、又は本格的な海外留学(海外MBA等)を目指していた人しか受験しないため、受験者層の平均的な英語力が非常に高いのです。
それゆえに企業としてもTOEFL iBTのスコアを持っている人に対しては「本気で英語を学んできた人」という認識を持っています。
私自身もそのように認識していて、TOEFL iBTのスコアをかなり信頼しています。
現に私の知人らの中でTOEFL iBTのハイスコアを保有している人たちは、全員長期留学経験者であり、かつ英語ペラペラです。
主に日本と韓国だけで人気のTOEICで900点を持っているからといって英語ができるとは限りませんし、むしろできない人の方が多いのですが、経験則上TOEFL iBTのハイスコアを保有している人で英語ができない人は稀(少なくとも私は見たことがない)なので、信頼性の高い国際資格だなと感じています。
また、外資系企業に勤める知人のアメリカ人(日本とアメリカのハーフで国籍はアメリカ)に聞いたところ、TOEFL iBTはアメリカ人でもハイスコアを取るのが難しいという認識らしく、採用の際にTOEFL iBTの点数が高いと有利に働くらしいです。
彼が勤めている外資系企業でも信頼の厚い国際資格のようです。
ただし、元々アカデミックな世界で用いられる試験なので、転職に直結するかといわれると少しズレていますので、その点は注意が必要です。
そして、上記はあくまでも「英語をよく使う企業」での話であって、純粋な日系企業ではTOEFL iBTはあまり認知されておりません。
それゆえに、玄人向けの国際資格という位置づけです。
そもそも日本では、TOEFL iBTが120点満点の試験であるという認識すら持たれていないことが多いので、たとえハイスコアだったとしても、それがどれだけ凄いのかを理解してもらえないことの方が多いです。
そのため、日本での日系企業への転職では、さほど効果はないとお考えください。
では、TOEFL iBTで何点取れば転職での評価が高くなるのか。
この点は会社によるとしかいえませんが、目安となる点数を英語猛者の知人らに聞いてまいりました。
前出の知人アメリカ人がいうには、日本国内で働くことを前提とした場合と、アメリカなどの英語圏で働くことを前提とした場合(海外駐在)で点数が変わってくるとのことで、目安としては、日本国内で働くなら原則として80点あれば良く、海外駐在するなら90点以上(できれば100点以上)はほしいとのことでした。
ちなみに、純粋なジャパニーズピーポーがTOEFL iBTで80点を叩き出すのは、至難の業でございます。
他の試験に無理やり換算すると、TOEICなら930点以上、英検でいうと1級にギリギリ合格するかどうかくらいのレベルに相当するかなと思うので、本気で勉強しないと難しいと思います。
別の知人(海外生活6年以上の経験あり)がTOEFL iBTで100点以上を保有していたので聞いてみたところ、英語をあまり勉強して来なかった人が80点を超えるのは相当に難しいとのことで、その人自身も本気で英語を学びはじめてから2年を超えたあたりでやっと安定して80点以上が取れるようになったそうです。
なお、彼は有名な国立大学の出身者なので、日本の受験英語は相当できる人なのですが、それでも80点を超えるのに2年かかっております。
その人にとっては、SpeakingとWritingが鬼のように難しかったようで「毎日死ぬほど勉強したのに全然スコアが上がらない時期が半年くらいあって、死にたくなった」らしいです。
TOEFL iBTは、アカデミックな内容が出るので、苦手な分野から出題されると何を言っているのか(書いてあるのか)もよくわからないらしく、その点も難易度が高いようです。
やはりガチ勢向けの試験ですね。
最後に、今からTOEFL iBTを受けるべきかという点について私見を述べさせていただこうと思います。
この論点については、場合分けが必要だと思いますので、以下分けて書いていきます。
まず、現時点で英語系資格又はスコアを保有していない場合は、まずはTOEICから受験しましょう。
したがって、TOEFL iBTを受験する必要はありません。
現時点で英語系資格等を保有していない人の場合、日本で就職・転職をするケースがほとんどだと思いますので、まずは日本で最も評価と認知度が高いTOEICから片付けるべきです。
そして、TOEICで800点以上の点数を安定的に取れるようになってきたら、英語の基礎的な能力が身についているはずなので、TOEFL iBTの勉強を開始しても良いと思います。
しかし、ほとんどの人はTOEICで800点を超えた辺りで満足するはずなので、TOEFL iBTを受験することはないだろうと思います。
TOEFL iBTは受験料も高く、極一部の企業でしか認知されていないので、日系企業で働く限りはあまり合理性がないのです。
次に、すでにTOEICで800点以上又は英検準1級以上を保有していて、より高い次元の英語力を身に着けたいと思っている場合については、TOEFL iBTは最適な英語系資格だと思います。
1~2年くらい勉強すれば、80点以上を狙えると思いますし、高い点数を取得すれば、海外大学院への進学も夢ではありません。
また、英語をよく使う企業群における転職市場での評価も間違いなく高くなりますから、良いことばかりです。
最後に、単に転職市場での評価を高めたい場合については、TOEFL iBTはオススメできません。
なぜなら、難しすぎるからです。
TOEFL iBTは、そもそも大学や大学院に留学する際に使う試験なので、転職に直結する資格ではありません。
また、内容もアカデミックに偏っているので、ビジネスですぐに活用できるような知識でもありません。
それにもかかわらず、受験料と難易度がとても高いので、資格としてのコスパは非常に悪いといえます。
したがって、転職市場での価値や評価を高めたいという目的に対してはあまり合理的な選択肢とはいえません。
もし、ビジネス英語力を示す指標がほしいのであれば、より安価なTOEICで900点以上を目指した方が効率的です。
以上のとおりですが、英語の実力をTOEFL iBTやTOEIC以外でも示しておきたいという方もいらっしゃると思います。
その場合は、米国公認会計士(受験コストがとても高い)や米国公認管理会計士などを検討すると良いと思います。
その他にも、EMBA(英語で授業が行われるMBA)などもある程度有効な手段だと思います。
有名なところだと早稲田・筑波・一橋などで開講されています。
ということで今回はTOEFL iBTについて解説させていただきました。
上述のとおり、日本ではまだまだ知名度が低く、知る人ぞ知る国債資格という位置づけですが、ハイスコアを保有していると英語を常用する企業での評価は高くなります。
特に英語学習を本気でしたことがある人が面接官を務めている会社からの評価はとても高くなるので、スコアを持っていて損する事はまずないでしょう。
ただし、難易度は非常に高いので、安易な気持ちで受験することはあまりオススメできない試験です。
英語ガチ勢向けの試験なので、本気で英語力を上げたい人や海外大学院等への留学を検討している方向けの試験です。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりご連絡ください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。
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