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2025/05/02 更新

TOEICで差がつく?転職市場における英語スコアの実情とは

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はじめに

今回は、転職市場におけるTOEICについて解説していこうと思います。

日本では異常なまでの人気を誇っていましたので、受けたことがないという人の方が少数派かもしれません。
主に大学生の皆さんが受験する試験ですが、社会人でも転職に活用するために受験する人も多いようです。

果たしてこのTOEICは、転職市場でも役に立つのでしょうか。

この点について検討していきたいと思います。

 

1.TOEICとは

そもそもTOEICとは、“Test of English for International Communication” の略称で、一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会が実施する英語能力判定試験です。
試験自体は、アメリカのニュージャージー州に本部があるEducational Testing Service(ETS)が作成しています。
ETSは、おそらく世界最大の非営利民間団体(財団)で、TOEICの他にもGRE、TOEFL、SATなどの世界的に有名な試験の作成も行っています。

 

 

日本で実施されているTOEICにも複数の種類がありますが、一般的にはTOEIC® Listening & Reading Test のことを「TOEIC」と呼称します。
つまり、リスニング(聞く)とリーディング(読む)だけの試験であり、スピーキング(話す)とライティング(書く)の試験は実施されません。
それゆえに日本人にとても人気のある試験です。

ちなみに、TOEICにも、スピーキングとライティングの能力を測る TOEIC® Speaking & Writing Tests という試験がありますが、受験している人はあまりいません。
そして、TOEICは主に日本と韓国で人気がありますが、アメリカや欧州での人気はなく(ほとんどの人は存在すら知らない)、ハイスコアだったとしても評価はされません。
海外大学院等の入試でもTOEICスコアを認証している大学院は、少なくとも私はあまり見たことがありません。
したがって、アメリカの団体が作っているのに主に日本と韓国でだけ有効な不思議な試験だと思ってください。

 

2.受験資格及び受験料

TOEICに受験資格は存在しません。
そのため、誰でも受験することができます。

ただし、以下のような本人確認書類のいずれかが必要となります。

  • 運転免許証
  • 学生証/学生手帳/生徒手帳(デジタル学生証も可)
  • パスポート(パスポートは海外発行も可)
  • マイナンバーカード(個人番号カード)など

また、受験回数に対する制限もないので、何度でも受験することができます。
試験会場によりますが、東京ではほぼ毎月のように実施されているので、比較的簡単に受験が可能です。
地方にお住まいの場合は、2ヶ月に1回程度の頻度になると思います。

受験料は最近値上げされて7,810円(税込)になりましたが、他の英語資格と比較してもそこまで高くありません。
このように、気楽に受けられるという意味でも人気が高いようです。

 

3.試験内容

TOEICの試験内容は、リスニング約45分間とリーディング75分間のマークシート形式のテストです。
ただ点数の付け方が独特でして、10~990点の5点刻みのスコアで評価されます。
満点が990点という謎仕様で、かつ、スコアの数値は統計的処理がなされたあとの点数なので、1問あたり何点という配点ではありません。
そのため、正答数×点数という形での計算ができない仕様になっています。

さらにいうと、試験問題は非公開となっているので、問題用紙を持ち帰ることもできませんし、試験中に余白に書き込むことも禁止されています。
○、✕、レ点もすべてダメですし、下線を引くことも不正行為とみなされます。
試験問題を持ち帰れないは100歩譲れるとしても、試験中に問題文に書き込みできないとか「えぇ?なんで?」という気持ちではあります。
公式発表によると、カンニングや試験問題の漏洩につながる行為として禁止されているそうです。
本当に変な試験です。

さて、具体的な試験内容についてですが、こちらについては、リスニングパートとリーディングパートで分けてご説明しましょう。

 

(1)リスニングパート(100問)

リスニングパートは、Part1~Part4までございまして、合計100問出題されます。

各Partの概要は以下のとおりです。

【Part1 写真描写問題 6問】

1枚の写真について4つの短い説明文が1度だけ放送されますので、その4つの説明文の中で、その写真のことを最も的確に表現しているものを選んで解答用紙にマークする試験です。

【Part2 応答問題 25問】

1つの質問又は文章が放送されて、その後すぐに、それに対する3つの答えがそれぞれ1度だけ放送されますので、その質問又は文章に対する解答として、最もふさわしい答えを選び解答用紙にマークする試験です。

【Part3 会話問題 39問】

2人又は3人の登場人物がいて、それらの人たちによる会話が1度だけ放送されます。
その会話について、設問が1度だけ放送されるので、問題用紙に印刷された設問と解答を読み、4つの解答候補の中から最も適当なものを選び解答用紙にマークする試験です。

なお、各会話に対する設問は3つずつあって、会話の中で聞いた内容に関する設問や問題用紙に印刷された図から読み取れる内容を会話の内容と関連づけて解答する設問もあります。

【Part4 説明文問題 30問】

例えば、美術館や遊園地、スーパーなどの施設内で放送されるようなアナウンスやラジオのナレーションのようなミニトークが1度だけ放送されます。
そのミニトークを聞いて、問題用紙に印刷された設問と解答を読み、4つの解答候補の中から最も適当なものを選び解答用紙にマークする試験です。

なお、設問は3つずつあって、ミニトークの中で出てきた内容や問題用紙に印刷された図などで見た情報をミニトークの内容と関連づけて解答する設問もあります。

 


上記のリスニングパート全体でいえることは「迷ったら負け」です。
昔のTOEICは素直な良い問題が多く出題されていましたが、現在は疑義が残る引っ掛け問題も多く出てくるので、一瞬でも迷ったら、あっという間に次の問題の放送が始まってペースを乱されます。
わからない問題は一瞬で切り捨てるという損切精神がないと高得点は狙えないでしょう。

ただし、傾向はある程度決まっているので、何千問も解いていれば勘で解答しても7割くらい正解できるようになっていきます。

 

(2)リーディングパート(100問)

リーディングパートは、Part5からPart7まであり、こちらも合計100問出題されます。

それぞれの概要は以下のとおりです。

【Part5 短文穴埋め問題 30問】

これはよくある穴埋め問題です。
短文の中の一部が( )になっているので、4つの候補の中から最も適当なものを選び解答用紙にマークする試験です。
品詞や語彙を問う問題が多く、適切な品詞(動詞、形容詞、副詞など)や適切な接続詞を選ばせる問題などが出ます。

【Part6 長文穴埋め問題 16問】

こちらもPart5とほとんど変わりません。
Part5より長めの文章の中に、4箇所( )があるので、その4つの答えを正しく選択して解答用紙にマークする試験です。

【Part7 1つの文書:29問 複数の文書:25問】

Part7は、比較的長い文章が出題され、その文章に対する設問が2~5つほどあります。
それらの設問を読み、4つの選択肢の中から最も適当なものを選び解答用紙にマークする試験です。
メール、広告、チャットなど、いろんなタイプの文章が出てくるので楽しく読めると思います。

 


以上のPart1~Part7の合計で200問出題され、それらを約2時間で解く試験です。

リスニングは無理やり解かないといけないのでなんとか完答できると思いますが、リーディングについてはほとんどの受験生が時間切れになるなかなか大変な試験です。
しかも、ここ数年で難化傾向が進んでいるので、昔高得点を取った人たちでも今は100点以上下がるということがよく起こる試験となっています。
それもあって、最近ではTOEICの受験生自体が減少し続けており、人気が低迷してきています。

 

4.TOEICは転職で役に立つのか

さて、TOEICの試験内容がある程度わかったところで、ここからは転職に関する話をしたいと思います。

なお、以下で述べる見解は、あくまでも私個人の経験則に基づく私見でございますので、一個人の意見としてお読みいただければと思います。

 

(1)何点取れば良いのか

まず気になる点は、転職で活かせるレベルですよね。
何点から評価されるのだろうかと。

私自身も専門職の採用に携わることが多いので、英語を重要視している企業の経営者の方とお話する機会も比較的多いです。
その中で一つの目安となっているのは800点という数字です。
ただし、これは「TOEICの点数を参考にするとすれば」という条件付きです。

最近ではTOEICの点数をあまり重視しない会社も増えてきていますので、そもそも点数を気にしていないという企業の方が多いと思います。
元々TOEICはリスニングとリーディングのみの試験で、大学生が受けるものという認識があるので、転職市場における重要性はかなり低いのです。

また、TOEICの点数の高さが実務英語の実力の高さを示していないというのが現実なので、実務で英語を使う会社でTOEICの点数を気にするということ自体があまりないかもしれません。
それよりは、英語で実務を行った経験があるかどうか、スピーキングがどの程度できるかの方が重要です。
したがって、書類選考時点では800点を超えているのであればそれで問題なしとみなされて、それ以降は実務経験や実際の実力を見られるという認識を持っておけば良いと思います。

大前提として、高い英語能力を求めている企業自体が日本ではかなり少ないので、英語能力自体をあえて履歴書等に記載しない人の方が多いのが実情です。
学生時代にTOEICを受けたことはあるけど、点数はあえて書かないという人が多数派ではないでしょうか。
ちなみに私も書きません。

過去の高い点数を記載することで、余計な期待などを持たれるケースが多いので、期待値を上げすぎないようにするためにも、直近2年以内に受けていない場合は記載しない方が良いのではと思います。
そのため、もしTOEICの点数を書くなら、直近2年以内に受験していて、かつ、800点以上を取っている場合という感じで良いかと思っています。

社会人だと、直近2年以内にTOEICを受験したという人は少数派だと思いますが、このくらいの厳しい期限設定をしておいた方が結局は自分のためになります。
というのも、転職市場で英語能力を積極的に書く層の方々は、留学経験も豊富(原則2年以上)で、しかも900点以上の点数を叩き出している人が多いからです。

私の知る限りだと「ビジネスレベルの英語もできます」という人の多くが2年以上の留学経験がある又は海外の大学院を修了していますので、そういう層と真っ向から英語能力で戦いに行くのであれば、上記のような限定を設けた方が良いのではと思っています。
実際に800~860点くらいを取った事がある人は皆さんわかると思いますが、そのくらいの英語力では、本格的な留学経験がある人や帰国子女の方にはどう頑張っても敵いませんよね。
800~860点ではほとんど喋れない、書けないという人が多いでしょうから、実際にビジネスで英語を活かせるほどのレベルかと言われているとかなり厳しいと言わざるを得ないでしょう。

なお、時々10年以上前の高得点(890~920点くらい)を書いている人もいるのですが、それはほとんど意味がないので、書かない方が良いと思います。
昔のTOEICと今のTOEICは別物なので、書くなら直近のスコアだけにしましょう。
受験後の約10年間の実務で英語を使い続けてきたというのであれば10年前のスコアを書く意味も出てきますが、実務でほぼ使っていなかったとすると、面接で聞かれたときに困ります。

英語能力を求める企業の多くは、TOEICで求められるシンプルな英語能力よりもかなり高度なビジネス英語力を求める傾向があります。
しかも、経営管理部門の専門職の場合、より高度な専門英語が必要になるので、自分でハードルを上げてしまうと非常に危険です。
入社までは誤魔化せるかもしれませんが、結局は損失の方が大きくなりやすいのであまりオススメはできません。

私は法務なので余計にそう思うのかもしれませんが、法務で必要となる英語力はTOEICや受験英語の能力だけでは測ることができません。
たとえ留学経験があって、ある程度喋れるという場合であっても、それとは別の能力(そもそもの法学知識や国際法の知識)が高度に要求されるので、仮にTOEICで900点超えていても、専門職としての英語能力が身についているといえるかはかなり怪しいところです。
おそらく普通の契約書の読解ですらも難しいと思います。
したがって、専門職の転職では、よほど現在の英語力に自信がない限りは何年も前のスコアを書かない方が良いのではと思っています。
あくまでも「最低限のリーディングができますよ」という意味合いで直近2年以内の800点以上の点数を書くというスタイルが無難です。

 

(2)どの程度効果があるのか

続いて、TOEICの点数が高い場合(目安として800点以上)に、どの程度効果があるのかについて検討していきましょう。

 

まず大きな効果として、書類選考を通過しやすくなるという効果があります。

転職市場において、応募者数がとても多い企業(有名企業)では、TOEICの点数などで候補者を篩にかけることがあります。
応募者全員に会うことができないので、何らかの客観的根拠を持って絞り込む必要があるためです。
有名な大手企業等のケースでは800点くらいが足切りラインになると思います。
そのため、それ以上の点数を保有しているのであれば、プロフィールや履歴書を見てもらいやすくなります。

これは非常に大きなアドバンテージです。

 

次に、自分の英語力(LR能力のみ)の証明として使えます。

英語系資格を全く保有していない状態でいくら「英語の実務経験があります」と言ったところで、企業側からすると本当かどうかわかりません。
単なる経験則ですが、転職市場では、英語ができると自称する人ほど実はできないという事例が散見されます。

その点、TOEICで800点以上を獲得しているということが証明できる人については、最低限のリスニング(L)とリーディング(R)の能力は持っているということを証明できるので有益だと思います。

 

最後に、英語を使う職種の選考で有利になりやすいです。

具体的には、選考の途中で候補者が複数いた場合、点数が高い人の方が優先される傾向があります。
ただし、専門職の選考で明らかに有利になるのは900点以上からかなと思います。
というのも、英語を日常的に使う専門職に応募してくる人たちの平均点が大体860点くらいなので、800点台だと差別化が図りづらいのです。
900点以上だとある程度貴重になってくるので、そのくらいの点数が有利になる基準点かなと思います。

 

(3)今から取るべきか

では最後に、今から取るべきかという論点について考えてみましょう。
この点については、場合分けして考えていきます。

 

まず、一度も受けたことがない人の場合は、800点以上を1回取るまでは勉強した方が良いだろうなと思います。

転職で英語を活かしたいという欲求がない場合は、実際に受験してスコアを獲得する必要まではないかもしれませんが、最低限TOEICに出てくる簡単な英文くらいは読めるようにはしておくべきです。
これからの時代、最低限の文章読解能力は必須になるでしょうから、TOEICのリーディングくらいは解けるようにしておくべきだと思います。

もっとも、この点についてもDeepLやGoogle翻訳があるので、正直なんとかなる時代になりました。
最近ではAIも発達してきて、ほとんどの内容をAIが翻訳したり作文してくれたりするので、英語を読める必要すらなくなってきています。
高校卒業レベルの英語ができる人なら、ツールを使って実務を回せてしまうのです。
そういう点も踏まえて、TOEICを受ける必要があるかをご検討ください。

 

次に、過去に800点以上を取ったことがある人の場合は、英語を活かした職業に就きたいという特別な感情がない限りは、別に受験する必要はないと思います。

どうしても英語を活かせる職業に就きたいとか、今後は外資系企業で勝ち上がって行きたいなどの特別な感情が無い限りは、日系企業で英語を使う場面は少ないので、わざわざ長い時間を投資してまで受け直して、高得点を狙いに行く必要はないです。
それに、すでに800点を超えているのであれば、基礎は十分だと思うので、TOEIC以外の資格を受けた方がメリットも大きいですし、今のTOEICは昔より難しくなっているので下手したらスコアが悪くなってしまいます。
それならばもっと転職市場での価値が高い有益な資格、例えば、米国公認会計士(USCPA)、米国公認管理会計士 (USCMA)、海外MBA、日本のEMBA(英語で学ぶ大学院)などを取りに行った方が効率的です。

TOEICは、差別化があまり図れない「新卒」という集団の中では非常に効果的な資格ですが、専門職の転職では、TOEICで高得点だったとしても、実務で使える英語力を持っているかどうかについて、かなり怪しいという認識を持たれています。
高得点だったとしても、最低限の読み・聞きができるのだろうという推定が働くだけです。

一方で、米国公認会計士や海外MBAなどの英語系専門資格・学位であれば、勉強する内容が実践的で、知識の何割かがそのまま実務で応用できるものとなります。
そして、実務家として必須となる専門知識を英語で学ぶことができます。
そちらの方が一石二鳥も三鳥もあるので、TOEICより遥かに価値が高いです。

以上より、過去にすでに800点以上を獲得している人に関しては、他の英語系専門資格を狙うほうが効率的だと考えます。

 

おわりに

だいぶ長くなりましたが、TOEICの解説をさせていただきました。

皆さまの参考になれば幸いでございます。

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著者画像

株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です

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