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2025/06/16 更新

司法書士は転職で活かせる?登記のプロが評価される場面と限界を解説

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はじめに

今回は、司法書士という国家資格について解説したいと思います。

この資格は、法律資格の中でも合格率が低い難関資格の一つですが、転職市場でどのような評価を受けるのでしょうか。
この点について書かせていただきます。

 

1.司法書士とは

司法書士とは、不動産登記や商業登記、裁判所提出書類の作成などを中心とした法務の専門家です。
とりわけ登記業務に関しては、他の法律系資格を含めても、司法書士が最も深く、そして幅広く携わることができる資格といえます。

司法書士試験は法務省所管の国家試験であり、毎年7月に筆記試験が実施されます。
筆記試験に合格した後、口述試験を経て最終合格となります。
出題範囲は、不動産登記法・商業登記法・民法・会社法・憲法・刑法・民事訴訟法など、非常に多岐にわたります。
その中でも不動産登記法と商業登記法については、条文知識だけではなく、登記実務を深く理解していなければ対応が難しい出題が多く、実務寄りの法知識が要求される試験であることが特徴です。

合格率は例年おおよそ3%から4%程度で、国家資格の中でも難関に分類されます。
多くの受験者が複数年にわたって学習を継続しており、合格までに2,000〜3,000時間以上を要するとも言われています。

なお、司法書士の専門分野は主に登記業務ですが、民事訴訟における簡裁訴訟代理権を取得することで、140万円以下の民事訴訟については弁護士と同様に代理人となることも可能です(認定司法書士制度)。
また、成年後見や遺言・相続に関する書類作成、会社設立時の各種手続など、業務範囲は多様化しています。

 

2.司法書士の転職市場での価値

それでは、司法書士の転職市場での価値について私見を述べていこうと思います。

 

(1)知名度及び転職市場での評価

司法書士という資格の知名度は非常に高いといえます。
特に不動産業界や法務分野で働く方々にとっては、馴染み深い資格であり「登記といえば司法書士」と言えるほどの認知度を誇ります。
そのため、登記分野に関しては司法書士が事実上の第一人者であり、実務経験のある司法書士であれば即戦力として評価されることも少なくありません。

ただし、転職市場全体で見たときには、資格そのものの評価はやや限定的です。

たしかに、商業登記の知識や経験を高く評価する会社(主に不動産業界)では重宝されますが、企業法務全体で見てみると、司法書士資格のみではカバーしきれない範囲も多いため、法務の求人であれば漏れなく評価されるというわけではありません。
例えば契約審査やM&A、コンプライアンス対応など、商業登記とは別の知識や経験が求められる分野では、評価は限定的です。

また、本格的に法務部門を強化しようとしている企業については、原則として弁護士資格保有者を優先的に採用するため、司法書士資格では少し弱いという場面が多いです。
最近では、司法書士への外注費(登記の外注費)もだいぶ安くなっているので、商業登記のためだけに司法書士を正社員で雇う合理性もなくなってきています。
そのような状況なので、司法書士という資格は、法務職としての転職の場面で一定のアドバンテージはあるものの、弁護士資格と比較した場合には「補助的な専門性」として評価されるにとどまるケースが多いのが実情です。

もし企業内法務職としてキャリアを築いていきたいのであれば、司法書士資格の取得に加えて、上位のロースクールを卒業しておくことが望ましいでしょう。
企業側としても、最近では訴訟対応や契約紛争など幅広いリスクに対応できる人材を求める傾向が強いので、弁護士資格やそれに準ずる学歴・経歴がある人の方が好まれます。

 

(2)今からでも取るべきか

では、これから司法書士資格を目指すことに意味があるのかという点について述べておきます。

まず結論から言えば、登記業務が好きな方や、将来的に司法書士として独立開業したいと考えている方にとっては、取得する価値は十分にある資格です。
司法書士は独立しやすい資格のひとつであり、地域に根ざした業務展開ができる点が魅力です。
特に不動産取引が盛んな地域では、地元の不動産業者や金融機関とのつながりを築くことで、安定的に案件を受注できるケースも多く、生活基盤を確立しやすい職業でもあります。

しかしながら、単に法務人材として企業で働きたいという目的で司法書士を目指すのであれば、やや非効率な選択肢であるとも言えます。
というのも、前述のとおり、司法書士資格は登記業務に特化しており、それ以外の法務領域ではあまり活かせる場面がありません。
また、合格率は3%前後と極めて低く、学習には最低でも2年程度の時間と相当な労力を要します。

このように考えると、同じ労力をかけるのであれば、上位ロースクールに進学して、司法試験を目指す方が、より汎用性のあるキャリアパスを描ける可能性があります。
もちろん、ロースクールには多額の学費が必要であり、時間的・経済的な負担は大きくなりますが、将来的な収入や選択肢の広さを考えれば、投資に見合う価値があると考える人も多いでしょう。
自分自身が将来どういう法律家・法務専門家になりたいのかをよく考えて、それに適した選択をすることが重要です。

 

おわりに

司法書士は、日本において登記の分野で最も専門性が高く、独立性も高い国家資格です。
合格までの道のりは厳しいものの、実務での活躍の場は確かに存在し、特に登記分野で活躍していきたい方にとっては理想的な職業のひとつです。

ただし、企業法務の世界においては、資格そのものの評価がやや限定的であり、弁護士との比較では差がつきやすいこともまた事実です。
そのため「なぜ司法書士を目指すのか」「どのように活かすのか」といったビジョンを明確に持つことが、学習を始める前に求められます。

取得難易度の高い資格なので、よく考えた上で決断してください。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が今後の進路選択やキャリア形成の一助になれば幸いです。

 

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株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です

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