転職をするとき、ほとんどの事例で発生するイベントとして「退職告知」があります。
私の年齢層はちょうど転職をする時期なので、知人らの半数以上が少なくとも1回の転職を経験しています。
彼らの多くが悩むポイントとして、いつの時点で今の会社に退職を告知するかという論点があります。
もちろんケースバイケースで違ってくるとは思いますが、今日はこの論点について考えていきたいと思います。
結論としては、できる限りギリギリまで言わないほうがいいと思っていますので、その理由を中心に書いていきます。
まず、いつの時点で伝え得るのかについて、場合分けをしてみたいと思います。
私が思うに、主に以下の時点が考えられるのではないかと思っています。
以下、それぞれのタイミングについて、メリットやデメリットを検討して行きます。
今私の脳内では、時期尚早そうッ(A・RA・SHIの空耳)という言葉と共に透明なビニールの衣装を来た好青年たちが現れていますが、転職活動を始める前に退職を告げるという事例は、転職市場では非常によくある事例です。
まだ転職活動すら始めてもいないのに、上司と喧嘩したときや会社で理不尽な出来事に遭遇したときなどに、会社に対して「もう辞めます」と伝えてしまうケースが多いかと思います。
候補者側の立場で考えると、このタイミングで伝えてもほぼメリットがないと思います。
これからの転職活動でスムーズに次が見つかるかどうかわかりませんし、何より精神的に焦りが出て来やすい状況なので、できれば伝えることを避けた方が良いタイミングです。
親戚や知人の会社で働くことができるなどの事情がない限りは、デメリットの方が大きいはずです。
例外として、解雇回避のための退職(自分が悪いことをしてしまった場合)や早期退職制度に応募した場合などがあり得ますが、極めて例外的です。
会社の上司や社長と喧嘩した勢いで辞めると伝えてしまいそうになったら、まずは一度グッと堪えて、こっそり転職サイトに登録しましょう。
転職しようと決意して転職サイトに登録してみたら、意外と多くのスカウトが来て、次が簡単に見つかるような自信が出てきた時点で退職を伝える場合はどうでしょうか。
私の見解としては、この時点でも全然早すぎます。
先日、大手転職サイトでどの程度のスカウトが来るのかなという好奇心から、私もとある有名なサイトに登録してみました。
すると、審査完了後1週間で100件近いのスカウトが来ました。
私ごときでこれだけ来るのですから、専門職のエリートの皆さんには、きっと200~300くらい来るでしょう。
たとえそうであったとしても、私はまだ早いと思っています。
というのも、上記のスカウトメッセージをすべて精読してみたところ、99%がろくにプロフィールも見ずに送ってきた定型文スカウトメッセージだったからです。
自動送信機能でもついているのかなと思うほどでした。
ヘッドハンターからのスカウトメッセージは特にその傾向が強く、全く興味がない自分語り(自分はこんな業績を出してますとか、こういう業種に強いですなど)が9割以上を占めているようなメッセージでした。
しかも、読むのが辛くなるような長文です。
このようなあまり価値がなさそうなスカウトメッセージをいくらもらっても、転職につながる可能性は高くないと思っています。
一番驚いたのは、エージェントの名前が違うのに内容がほぼ同じスカウトメッセージを送ってきている会社があることです。
会社で定型文を使うのはあり得るとしても、せめてエージェントごとに文章を変えるくらいの努力はしてほしいものです。
そして、企業側のスカウトメッセージも、量産型の定型文がほとんどでした。
プロフィールの内容をほとんど読んでいないなという確信が持てるものばかりです。
したがって、スカウトが大量に来たという事実が、就職先がすぐ見つかるという根拠にはならないのです。
所詮は数撃ちゃ当たる戦法の一矢でしかないので、転職活動を初めてすぐの段階で退職を伝えるのは早すぎます。
一次面接や二次面接がとても良い感じで進んで、面接官から「私としては是非ご入社いただきたいと思っています」などと言われた時点ではどうでしょうか。
このような段階で「これはイケそうだな」と思うのは無理もないことです。
しかし、今の会社に退職を伝えるタイミングとしては、ここでもまだ早すぎます。
面接が上手くいくと気持ちも大きくなって、ついつい今の職場でも「転職を検討している」ということをポロッと言ってしまいそうになるでしょうし、何割かの方は実際に同僚などに言ってしまいます。
人の噂は恐ろしい速度で駆け巡りますから、一人に言えば数日で上司やトップ層まで広がります。
その結果「あの人辞めるらしいよ」という噂が広まって、現在の職場に居づらくなります。
その上で今進んでいる選考が上手く行かず、落ちてしまうというと、候補者側には損しかありません。
したがって、この段階でもまだ退職を告知するタイミングではないと考えています。
そもそも、一次面接や二次面接では、主に人事担当者が面接を担当します。
そして、一次面接や二次面接は、基本的には簡易フィルターとしての機能しかありません。
能力が明らかに不足している場合、性格や価値観がミスマッチな場合などの明確な不合格以外は、通ることが多いのです。
本当に重要な面接は、部長面接や役員面接以降からです。
なぜなら、その人達が採用の意思決定権限を持っているからです。
それまでの面接がいかに高評価でも、最後のCEO面接で「違うかも」と思われたりしたらその時点で終わりなので、一次面接や二次面接に通ったくらいで安心してはいけません。
まだまだ先は長いので、退職を告げるには早すぎるタイミングです。
では、内定が出た時点ではどうでしょうか。
多くのケースではこの時点で会社に伝える人が多いです。
退職に向かって一気に行動し始める時期です。
しかし、私の見解ではまだ早いかもしれないと思っています。
なぜなら、内定は取り消しも可能だからです。
たしかに企業側に法的な制約はありますが、やろうと思えばできてしまいます。
また、内定を早期に出す企業をすぐに信用するのも危険だと思います。
面接で意気投合して、一気に盛り上がった結果内定を出すというケースはよくありますし、人手不足が深刻すぎてとにかく早く採用したいというケースでもすぐに内定が出ます。
いずれのケースであったとしても、候補者側は一旦落ち着いた方が良いと思います。
盛り上がった末の内定であっても、深刻な人材不足による早期内定であっても、今すぐに退職を伝えることに候補者側にそこまで大きなメリットは無いはずです。
短期間で盛り上がったテンションは、一気に冷めてしまうことが多いですし、深刻な人材不足の場合は、入った後に苦労がすることが多いです。
候補者側としては一旦落ち着いて、冷静に企業分析をし直しましょう。
落ち着いてよく考えると、他の会社も見てみたいということだってよくある話です。
先に退職を伝えてしまうと、自分で自分の立場を追い込んでいくだけなので、あまりメリットはありません。
内定が出て嬉しい気持ちを一旦抑えて、まずは状況を整理して、冷静に一から分析し直すくらいの余裕がほしいところです。
内定通知の後、通常は1~4週間程度で内定承諾期限日が来ます。
この期間を「熟慮期間」と言うことにしますが、この熟慮期間は長くても1ヶ月程度です。
そして熟慮した結果、内定承諾書を提出することにした場合、この時点で会社に退職を伝えるべきでしょうか。
私の見解ではこの時点で伝えても良いとは思っていますが、できることならもう少し後の方が良いと思っています。
なぜなら、内定承諾をした後、候補者側は辞退できるからです。
転職市場でも新卒市場と同様、内定辞退は日常茶飯事です。
企業によっては候補者の立場を考えて、余裕のある熟慮期間を設けてくれる会社もあるのですが、採用に焦っている会社や採用を急ぎたい事情がある会社ほど熟慮期間を短く設定します。
場合によっては内定通知を手渡しにして、その場で承諾してほしいと迫る企業もあります。
このような場合、熟慮することすらできずにとりあえず内定承諾書だけ提出するということになります。
内心はまだ固まっていないのに承諾だけはしないといけないという、とても気が引ける状況ですが、企業側がそうせざるを得ないような状況をあえて作ることも多いのです。
そのような戦法は内定辞退率を上昇させる結果を招くのであまり良い事ではないと思いますが、現実的なお話として、内定承諾が得られないと他の人の選考を進める必要があるので、企業側からすると非常に困ったことになるのです。
それゆえに、熟慮期間を長く設定できないというのが実情です。
このような状況下で、内定承諾書を提出した時点で退職を伝えるのは、候補者側からするとリスクがあります。
そうだとすると、今の会社に伝えるのはもう少し後でも良いと思っています。
内定承諾書を提出したとしても、そこからしばらくはじっくり考えましょう。
自分の中で確信が持てるまでは、熟慮期間です。
私の結論としては、転職先が確定して、入社日の1ヶ月前になった時点が伝え時だと思っています。
自分の勤める会社の就業規則をまずは確認していただきたいですが、8割くらいの会社が退職する場合は1ヶ月前までに伝えるようにと定めているはずです。
したがって、この時点が退職を告げるべきタイミングです。
企業によっては2ヶ月前告知を義務付けていることもあるので、その場合は2ヶ月前に伝えることになります。
言い換えると、現在勤めている会社の就業規則が定める期限ギリギリまで伝えないということです。
候補者の利益を考えると、そうするべきだと思います。
内定は取り消される可能性がありますし、内定した後でマイナス面がたくさん見えてしまうこともあります。
いつどういうタイミングで転職先候補が消えるかわからないので、候補者側としてはギリギリまで退職を伝えない方が良いでしょう。
というのも、退職の意思表示は、原則として撤回ができないからです。
厳密に言うと「退職届」(辞職の意思表示)と「退職願」(合意解約の申込み)で意味合いが異なるのですが、原則は退職届となるでしょうから、撤回ができません。
このような撤回ができない行為については、慎重に行うべきです。
私は会社側より候補者側の立場に立つタイプなので、私見としてはギリギリまで伝えないという手法が良いと思っています。
転職活動は最後まで秘密裏に行うべきという立場です。
なお、会社によってはなかなか退職させてもらえないという謎企業もあるかと思いますが、そこは強い意志で辞めると伝えるしかないです。
あまりに強制的な会社(退職届を受理しない、脅迫めいたことを言ってくるなど)の場合は、弁護士なども活用しましょう。
退職の告知はギリギリまで遅らせた方が良いと述べましたが、実際のところはケースバイケースになってくると思います。
会社の就業規則にもよりますし、どれだけ今の会社を辞めたいか、どれだけ転職先を信頼できるかなど、様々な要素を総合的に考慮した上で決定することになります。
ただどのような場合であっても信頼できる人間に一度は相談した方が良いと思います。
自分をよく知る他人が、今回の転職についてどういう見解を持っているのかを知るのは大切なことです。
転職活動というものは、不思議な現象が多々起こります。
日頃はとても論理的で分析能力も高い人が、なぜかあまり評判の良くない会社に転職してしまって大失敗したりします。
転職活動の過程で発生する様々な状況(大抵はイレギュラーな出来事)が判断を誤らせるのです。
だからこそ、一旦冷静になるためにも、客観的な意見をいくつか集めておいた方が良いです。
特にベンチャー企業に転職する場合は、その分リスクも大きくなりますから、慎重になるべきだと思います。
私は比較的長い間ベンチャー業界にいるので尚更そう思います。
この業界は合う合わないがかなり強く出るので、転職をするという決断をする前に、様々なデメリットを理解した上で、覚悟を持って入るべき業界です。
もしベンチャー転職を検討しているなら、まずはベンチャーに詳しい人達に相談してみましょう。
転職先候補があるなら、その候補先のことなども聞いてみると良いと思います。
客観的な意見はいくらあっても損はしませんから、いろいろな人の話を聞いて、情報を整理して、それでも転職しようとなれば、そこではじめて退職を伝えるというくらいの余裕をもって活動すると上手くいくはずです。
今回は退職することを伝えるタイミングについて検討してまいりました。
現在転職を検討している皆さんの参考になれば幸いでございます。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
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