今日は「優秀な経理財務人材とは」というテーマでコラムを書いていこうと思います。
ベンチャーがIPOを本格的に目指す段階で、まず強化しないといけない部署は経理財務です。
しかし、経理財務の優秀人材の定義を明確に出来ているベンチャーは多くありません。
そこで今回は、私見に基づいて経理財務の優秀人材の要件を言語化していきたいと思います。
これが唯一の正解というわけではございませんので、ここに書かれていることを参考にして、自社にとって優秀人材の定義を見つけていただければと思っています。
私は、ベンチャーおいては経理財務が経営の根幹であり、最も重要な機能だと思っています。
たしかに個人事業主や実質的個人事業といえるような小規模な会社であれば、経理・財務がいなくても社長自らがBS・PLを作れば足りますが、先々大きな会社にしたいという野望があるのであれば、経理・財務は必須になります。
彼らがいないと現在の経営状況も未来の経営戦略も何も見えません。
会計業務によってまとめられた情報こそが経営の基礎と言ってもいいくらい重要です。
会計には財務会計・管理会計・税務会計とありますが、経営者にとっては管理会計が特に重要だろうと思います。
その管理会計を正確に実施するためには、過去のお金の移動を正確に反映したBS・PLを作る必要があり、その役割を「経理」が担ってくれています。
彼らが日々行っている仕訳がすべての基礎です。
そして、将来の経営戦略を練る場合、または現在あるお金をどこにどれだけ分配するかを決める場合、過去のお金の動きに加えて、未来の資金繰り計画を作らないといけません。
経営者はビジョナリーな人が多いので、夢のような資金繰り計画を作りがちですが、本来は実現可能性の高いものを作成する必要があります。
それを担ってくれるのが「財務」です。
過去を経理、未来を財務がそれぞれ担ってくれるからこそ、経営戦略が日々実現されていくのです。
彼らがいないと経営なんてできません。
これから資金調達をしつつ急拡大していこうというベンチャーにとっては、経理財務こそが屋台骨であり、生命線です。
ここに優秀な人材を置かないと、後々いろいろな面で管理部門がボトルネックになってしまいます。
経理財務は極めて重要な存在なのですが、深刻な人材不足という問題を抱えています。
これはベンチャーだからという話ではなく、大手企業でも監査法人でも同様に人材不足が続いています。
どの分野でもそうですが、プロフェッショナルと呼べるような存在には、極々少数の人間だけしかなることができません。
経理や財務も同様で、経営の重要な役割を担えるようなプロフェッショナルはとても少ないのです。
『経理でもやってみようかな』と考えて簿記を学び始める若者が100人いたとしたら、その中で実際にプロフェッショナルレベルに到達できる人は2~3人だと思います。
そのくらい少数派です。
そして、その多くが、公認会計士・税理士を目指し、合格後は投資銀行・監査法人などに勤めます。
なぜならその方が報酬も高く、かつ、学びが多いからです。
そのため、一般企業の中で従業員として働くことを選ばない傾向があります。
その上、一般企業で働く場合、経理財務に対する理解不足があり、その専門性の高さや貴重さを経営者側が理解していないというケースが目立ちます。
それゆえに粗末に扱われてしまったり、コスト部門などと呼ばれたりして、モチベーションを削がれます。
そのような環境下で働くよりも、会計コンサルや監査法人で働いた方が給料も良いですし、専門家同士で会話ができるのでストレスも少ないです。
それにわざわざ事業会社に行かなくても、士業資格があるなら独立したほうが稼げます。
このような事情が複雑に絡み合って、なかなか転職市場にハイクラス人材が出てこないという状況が長い間続いています。
そしてこの状況が今後数年で変わるとも思えないので、これからも人材不足のままだと思われます。
さて、経理財務の優秀なプロフェッショナル人材は上述のとおりかなり不足しています。
それでも採用はしないといけないので、何をもって「優秀」と定義するかを決めておかないといけません。
この点については採用する会社の経営者次第だと思いますが、参考程度に私から見た優秀な経理財務人材を定義していきたいと思います。
私が思う優秀な経理財務人材は、以下の要件を満たす人材です。
各要件を1つずつ解説していきます。
まずは前提条件として、優秀な経理財務人材は、高い専門性を持っています。
この専門性を証明する資格としては、公認会計士、税理士、日商簿記1級、全経簿記上級、USCPA(米国公認会計士)などがあります。
これらのいずれか、または複数を持っていることが前提となります。
転職市場を見る限りでも、会計や財務専門職でスカウト数が多い人は上記の資格のいずれか、または複数を保有していることがほとんどです。
ハイクラス層になってくると2つ以上の難関資格を持っている人が増えます。
弊社WARCにも公認会計士が多いのですが、上記の資格のうち2つ以上の資格を持っている人がほとんどで、他の資格を合わせると3つ以上の人もいます。
そのため、経営者側も上記の資格保有者を中心に考えていくと良いです。
最近の転職サイトでは資格保有の有無でフィルターをかける機能も充実してきていますから、資格で絞り込むとスカウトが打ちやすくなります。
もちろん資格がすべてではないですが、私の知る限りでは無資格で優秀な専門職というのは少数派だと感じているので、何らかの難関資格を持っていることは前提にして良いと認識しています。
専門職として生きていくための運転免許証みたいなものです。
ただし、20歳前後の若手の場合はまだ資格の取得ができていないかもしれないので、若手に関しては「今現在難関資格取得のために勉強をしている」ということが要件になると思います。
もっとも、20代であってもせめて日商簿記1級又はUSCPA(科目合格可)は持っておいてほしいというのが正直なところです。
優秀な経理財務人材にとって、資格はただの前提であり、通過点でしかないので、それらを持った時点で成長が止まってしまっている場合は優秀な人材とは言いづらくなります。
そのため、高い向学心も併せ持っていることが必要です。
専門職あるあるですが、難しい資格に受かった瞬間に燃え尽き症候群に陥りやすいです。
3~5年ほど勉強一色の青春時代を送りますので、受かった瞬間に気が抜けます。
これでもう人生は安泰だし、あとは気楽に過ごせればいいやとという気持ちになってしまいやすい時期です。
しかし、専門職にとって資格はゴールではありません。
むしろそこがスタートラインです。
合格後は専門家同士の競争に勝ち続けないといけないので、受験生時代よりも遥かに長い時間勉強(実務含む)しないといけません。
だからこそ、合格後も勉強をし続けているということが絶対条件になります。
同じ資格を保有している専門職の中でも優劣はたしかに存在していて、勉強を止めた人は数年間能力が変わっておらず、むしろ忘却していくため能力・知力共に低下していきます。
他方で、学び続けている人は常に新しい知識を身に着けて、最新の論点にても対応することができるようになっていくので能力が向上し続けています。
高い人件費をかける以上、成長し続ける人に投資しないとお金を無駄にしてしまいますから、優秀な経理財務人材には高い向学心を求めるべきです。
私の知る限り、優秀な経理財務人材は、謙虚な心も持ち合わせています。
こういう勘違いをしている人は専門職としては微妙です。
我々専門職の学びには終わりがないのだということを理解していれば、自ずと謙虚な気持ちになりますので、優秀な経理財務人材といえるためには、謙虚な心を持っている人でないといけません。
そもそも経理財務人材は、先々経理担当役員やCFOになってもらう予定の人材です。
そうすると、マネジメントスキルは必須で、人から尊敬され、信頼されるリーダーでなければなりません。
しかし、上記のような勘違いをしている人の場合、部下から嫌われます。
そういう人たちは将来性に疑問符がつくので、面接や雑談の中で自尊心の高さや自己愛の強さを感じたら、お見送りしておくべきだと私は思います。
通常、専門職というものは、勉強を続ければ続けるほど、自分の無知と無能を思い知らされることが増えます。
それゆえに「もっと学ばないと」と思えますし、自分が間違っているかもしれないという可能性を考慮できます。
そういう謙虚な心を持った人は、発言も謙虚なのですぐにわかります。
面接時にその人が使う言葉に着目しておけば、ある程度自尊心の高さがわかると思いますので、そこで判断すれば良いと思います。
自分がまだまだ未熟者なのだと理解できている人こそが先々優秀な人材になりうる人です。
最後に、ベンチャーにとって最も重要な要素が貢献意欲です。
我々専門職は、誰かに貢献するからこそ価値が生まれます。
どんなに知識が豊富でも、どんなに立派な資格を持っていても、誰かのために貢献したいと思えないなら宝の持ち腐れです。
どんなに優れた能力でも、他人の役に立たないなら存在意義はないのです。
得た知識や経験を会社の誰かのために活用してこそ専門職です。
ただ残念ながら、他人に貢献したいという欲求が強い人はそこまで多くありません。
専門職人材のうち、半数くらいは貢献意欲が低めです。
他人のために自分の知識を使おうとか、シェアしようという習慣があまりないので、ただ目の前の作業をこなしているだけで終わってしまいます。
自分から自発的に仕事を引き受けたりする人も少数派と言って良いと思います。
だからこそ、他人に対する貢献意欲が強い人を見つけて採用しないといけません。
履歴書・職務経歴書の記載内容や面接での受け答えなどを総合的に評価して、貢献意欲の有無を見極めましょう。
以上が優秀な経理・財務人材の要件です。
私の個人的な見解なので、他の意見も多数あると思います。
これを機に自社にとっての優秀人材の定義を考えてみるのも面白いかもしれません。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりご連絡ください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。