ベンチャー企業で働く皆さんこんにちは。
突然ですが、皆さんが今の企業に入るとき、採用ピッチ資料ってありましたか。
採用ピッチ資料とは、求人に応募してくれた方や自社に興味を持ってくださっている候補者の皆さんに向けて、自社を紹介するための資料です。
会社説明会などで使うスライド資料なども採用ピッチ資料に含まれます。
最近のベンチャー企業の多くは、採用ピッチ資料をネット上に公開していることも多いので、検索をかければすぐに数十社は見つかると思います。
私は仕事柄、採用ピッチ資料を拝見することも多く、かつ、個人的にそういう資料を見るのが好きなので、いただいた資料には必ず目を通しています。
そこでいつも思うのは、企業側が伝えたい情報と、候補者側が知り合い情報に、若干のギャップがあるなということです。
採用ピッチ資料には、基本的には会社側が伝えたい情報が掲載されていて、良いことばかりが書かれています。
悪いことが裏では発生していたとしても、良いことに変換されて載っていることもあります。
それゆえ、候補者目線で考えると、もうちょっと深い情報がほしいなと思うことも多いです。
稀に、ミスリーディング(誤解を招くこと、判断を誤らせること)を誘発する内容が含まれていたりします。
そのため、候補者側からすると、ちょっと慎重に見ないといけない資料で、鵜呑みにはできないものです。
しかし、それはあまり健全ではないですよね。
本来、採用ピッチ資料は、候補者の皆さんに自社のことをより深く知ってもらって、認知度を上げたり、理解度を上げたりするために存在する資料です。
そうだとすれば、採用ピッチ資料は、会社と候補者間の情報の非対称性(情報格差)を解消するための資料といえます。
その目的を達成するためには、候補者側が欲しい情報を適切に掲載していかなければなりません。
そこで今回は、採用ピッチ資料に載せてほしい情報を候補者目線で考えて行きたいと思います。
この記事に書かれているようなことがきちんと書いてある企業については、信頼度が上がるはずです。
まず、一般的な採用ピッチ資料に、どのような事項が書かれているかについて、簡単にまとめていきましょう。
一般的な採用ピッチ資料には、以下の項目が記載されています。
以下では、各項目で記載すべきことを述べていきます。
会社概要に記載すべき事項としては、以下のようなものがあります。
会社概要の欄では、その会社を代表するような商品やサービス(例:任天堂でいうマリオ、ピカチュウなど)があるなら、その写真を載せたりもします。
このあたりはデザインの領域なので私にはわかりませんので、スライドを作るのが得意なデザイナーに任せましょう。
また、沿革を掲載する場合は、会社概要とは別ページに記載した方が良いと思います。
歴史ある会社の場合、沿革だけで相当な行数を取られると思うので、ページを分けたほうが見やすいです。
ただ、沿革に記載すべき事項は厳選しておいた方が良いと思います。
候補者が知りたいであろう沿革情報だけを記載しましょう。
なお、ベンチャー企業の場合は、沿革を載せても薄い情報しか載せられないと思うので、それだったら取締役全員の写真とプロフィール(経歴など)を記載したページを別途設けて掲載しておいた方が有益だろうと思います。
人数が少ないベンチャー企業なら、部長クラスより上は全員載せてもいいくらいです。
※本人の同意は必要
役員陣の経歴は候補者側からすると意外と気になる情報で、自分の部署を統括する人間や、会社を経営している人間たちがどういう経歴を辿って今に至っているかを把握しておきたいものです。
そのため、以下のような情報を掲載しておくと良いと思います。
私個人としては、役員陣の専門分野が特に気になるので、研究科や研究分野などが記載されているとより興味深く読むことができます。
写真も宣材写真のような真面目な写真よりは、プライベートな写真などの方が親しみやすいかもしれません。
候補者にどういう印象を与えたいのかを考えて、写真や記載事項を選びましょう。
こちらについては、会社それぞれでMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に込めた想いがあるはずなので、それを効果的に記載していただければ十分だと思います。
1ページですべてを示す必要もないので、3~5ページくらい使って、MVVをじっくり解説しても良いと思います。
転職者が、ベンチャーへの転職を決めたキッカケのうち、何割かは「MVVへの共感」があるので、ここは全力で記載しておいた方が効果的だと思います。
逆に、候補者側に対して言えることは、MVVの記載が薄い、又は意味がよくわからないようなら、ちょっと警戒したほうが良いです。
おそらくそういう会社のMVVは、社内でも全く浸透していませんし、意思統一もなされていません。
価値観の一致が弱い組織は、私の知る限りでは成功しづらいです。
事業解説では、以下のような項目を記載することが多いです。
これらの項目については、日頃から投資家(エンジェル投資家やベンチャーキャピタル)とのコミュニケーションでも資料を作っているでしょうし、IPOを目指しているなら社内に情報が溜まっているはずです。
それを効果的に配置して、読みやすい資料を作ってください。
また、採用ピッチ資料としては、その事業の客観的情報に加えて、内面的情報を記載したほうが良いと思います。
内面的情報の中には、なぜその事業を始めようと思ったのか(事業理念)という情報が含まれます。
単に、市場が拡大していて、競争が激しくなくて、儲かるからという理由で始めているなら、書くことは何もないかもしれませんが、通常はそういう薄い想いで事業を始めたりしないはずです。
ベンチャー企業の経営者の多くは、何らかの理想があって、実現したい未来があるから、その事業を始めています。
そして、ベンチャー企業がやっている事業の多くは「無謀」ですから、そういう情熱的な想いがないと、誰もついてきません。
ゆえに内面的情報が重要を記載しておく必要があります。
そもそも候補者にとってはベンチャー企業に転職すること自体がリスクですから、それだけのリスクを冒しても良いと思えるほどの理由が必要になってきます。
その理由となり得るのは、経営者の情熱への共感です。
仮に、市場拡大中、売上増加中、競合優位性あり、ストックオプションももらえるみたいな経済的理由でその会社を選んでいる人が多いのであれば、事業がほんの少し傾いただけで大量退職が発生します。
経済的理由でついてきている人は経済的理由で離れるものです。
ベンチャーでの生活が長い人はわかると思いますが、ベンチャーの業績は小さな市場の変化やキーマンの離脱(退職)で大打撃を受けることが多いので、業績の波が非常に激しいです。
だからこそ、正念場を耐え抜くためには情熱が必要です。
そういう意味でも、採用ピッチ資料には創業者が持っている情熱や想いなどの内面的情報を多く掲載しておいた方が良いです。
労働条件の項目で記載すべき事項は以下のとおりです。
これらの情報を掲載するときは「盛り過ぎない」ことが重要です。
採用ピッチ資料あるあるなのですが、オフィスをキレイに見せるために画像を過度に加工したり、ほとんど利用者がいないような福利厚生をさぞ皆が喜んでいます風に書いてみたり、リモートワークなんて原則ダメなのにリモートワークOKと書いてみたり、日頃殺伐としているのに仲良さそうな笑顔の写真を使ったりなど、いろいろな「熱盛」がなされます。
このような現実と乖離しすぎている内容を記載することはオススメできません。
その乖離が大きければ大きいほど、入った後の失望も深くなるので早期退職に繋がります。
できる限り現実に近似した内容と写真を使いましょう。
募集ポジションの項目に記載すべき事項としては、以下のようなものがあります。
募集ポジションについて詳細に記載する趣旨は、候補者の不安を無くすことにあります。
候補者側の立場で考えると、やはり転職先に関して何も知らないということ自体が大きな不安要素であり、リスクです。
そのため、できる限り詳細な情報を提供して、不安要素を消してあげる必要があります。
なぜそうしないといけないのかというと、優秀な人材であればあるほど、採用時の競争が激しいからです。
自社が情報を出し渋っている間に、採用における競合企業は、当該候補者に対して赤裸々に情報を開示しています。
優れた人事や管理職がいる会社ほど候補者に誠実に対応しますから、包み隠さずにすべての情報を開示します。
採用に強い会社は、私から見ても「そこまで言っちゃうんだな」と驚くほどの情報を開示しています。
候補者側からすると、重要な情報を何も開示しない会社より、自分を信頼してすべてを開示してくれる会社の方が信頼できます。
言われてみると当たり前のことなのですが、実際に採用現場でこれができている企業は少数派です。
だからこそ、ベンチャーにもチャンスがあるとも言えます。
大手企業の場合、重要な機密情報の開示については、法務やコンプライアンス部の承認が必要になることが多いので、たとえ採用のためといえども、資料に勝手に載せるわけにはいきません。
そのため、無難な公開済み情報しか載せられないというのが通常です。
一方でベンチャー企業であれば、自社の情報の管理はCEOが直接行っているでしょうし、人数が少ないので承認プロセスも比較的簡易です。
ゆえに、採用ピッチ資料に載せられる情報も多くなります。
このアドバンテージを活かすべきです。
候補者の立場に立って、入社時の不安を解消し得ると思われる情報は全て載せてしまいましょう。
ここは企業の個性が出るところなので、本当に千差万別です。
ただの例示として、私が過去に見たことがある採用ピッチ資料の中で、面白いなと思った事項は以下のようなものがあります。
何を書いても正解だと思いますが、私の見解としては、自社の雰囲気や弱点がわかる内容にした方が良いと思っています。
上記の例でいうと、部活動の活動報告を記載した企業の資料では、登山部で山登りに行ったときの写真や、ゲーム部が社内でゲームをしている写真などが掲載されていて、社員間の仲が良いのだろうという雰囲気が伝わりました。
また、活躍している社員が述べる自社のメリット・デメリットを掲載していた企業の場合は、特にデメリットの部分が秀逸で、入る前に知れてよかったと思えるような内容でした。
入社する前に覚悟を決められたかどうかで、その後のパフォーマンスが大きく変わるので、非常に有益な情報だったと思います。
そして、特定の候補者へのメッセージも効果的だと思います。
とある会社の採用ピッチ資料は、デザイン的には全く手が込んでいなくて、Canvaかパワポで簡単に作ったものだったのですが、候補者の心を鷲掴みしていました。
というのも、会社説明部分以外のページが、全部個人向けの歓迎メッセージだったのです。
割合でいうと、2:8で「ぜひうちのチームに来て欲しい!」という歓迎メッセージです。
一緒に働くことになる10名程度の社員全員が、特定の候補者に対して、どれだけうちに来てほしいか、入ってくれたらどれだけ嬉しいかを述べたメッセージです。
選考が終了して、内定通知と同時にその資料をもらったら、とても嬉しいでしょうし、もう断れないですよね。
私なら即日で内定承諾書にサインしてしまいます。
このように、会社によって様々なことを載せていますが、いずれにしても候補者の立場に立って考えることが重要です。
以上、採用ピッチ資料について私見を述べさせていただきました。
企業の人事の皆さんや、これから転職をしようと思っている皆さんの参考になれば幸いです。
また、採用ピッチ資料は定期的に更新すべきだと思うので、定期的に見直して、情報を最新の状態に保ちましょう。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
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