「内部監査士を取ったらキャリアアップできる?難易度はどのくらい?」現場で内部監査に携わる方やこれから資格取得を目指す方の中には、こうした疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。内部監査士資格は専門性の高さと実務への応用力が問われる、非常に実践的な資格です。
この記事では、内部監査士資格の役割や効果的な勉強法、さらに取得後のキャリア展望までを徹底的に解説します。これからのキャリア形成に向けて、ぜひ参考にしてみてください。
内部監査士(QIA)は、日本企業の監査体制に即したスキルを証明する国内資格です。企業の内部統制やリスクマネジメントを評価し、健全な経営体制の構築に貢献できる人材の育成を目的としています。以下で詳しく見ていきましょう。
内部監査士の役割は「企業のガバナンスを内部から支える専門職」です。財務報告の正確性や法令遵守の状況、業務の効率性など、多角的な視点から企業の健全性を確認するのが主な任務です。
実務では、部門横断的なヒアリングや資料検証をし、課題の発見と改善提案を行います。とくに昨今は、サステナビリティや情報セキュリティなど新しい分野のリスク評価も求められており、内部監査の幅は拡大しているのが現状です。このように、内部監査士は単なるチェック機能ではなく、経営の意思決定を支える「戦略的なパートナー」としての役割も担っています。
QIAとCIAは内部監査の専門資格である点は共通しているものの、カバーする範囲や取得方法に違いがあります。
QIAは日本国内の実務に即した内容で、講義と修了論文を通じて資格を取得します。日本企業で即戦力として働くうえで有効な資格です。
一方、CIAは国際的に通用するグローバル資格で、英語試験を含む3部構成の筆記試験が中心です。海外展開企業や外資系でのキャリア構築を目指す人には最適な資格といえるでしょう。
つまり、QIAは「国内実務向き」、CIAは「国際志向」のため、目的や職場環境に応じて選ぶことが重要です。
内部監査士(QIA)資格は、企業内の監査業務に必要な知識とスキルを証明する国内資格です。以下で詳しく解説していきます。
内部監査士資格は、日本内部監査協会が主催する「内部監査士認定講習会」を受講し、修了論文に合格することで取得できます。筆記試験はなく、講習の受講と論文評価を重視している点が他資格との大きな違いです。
講習は24科目・48時間に及び、内部統制やリスク管理、コンプライアンスなど、監査に必要な幅広いテーマを体系的に学べます。また、受講条件も比較的緩やかで、実務経験がある方や大学で会計・経営を学んだ方なら受講資格を得られるのも特徴です。
内部監査士資格の目的は、企業内部から信頼性と健全性を高めるための専門家を育成することです。単なる形式的なチェックにとどまらず、経営リスクの予見や業務改善の提案ができる実践力ある監査人の輩出を目指しています。
日本企業の組織文化や実務環境に即した内容であるため、国内企業で監査業務に携わる人にとっては、即戦力として評価されやすい資格といえるでしょう。そのため、経理・財務・法務など他職種から監査領域にキャリアチェンジを図る際のステップアップとしても有効です。
内部監査士資格は「勉強すれば十分に取得可能な実務型資格」です。試験という形ではなく、講習内容の理解と修了論文の提出・審査を通じて資格認定が行われます。
ただし、講義内容は専門性が高く、受講後に論文をまとめるにはある程度の実務経験や理解力が必要です。講習修了後の論文では、実際の監査現場を想定した課題に対して、ロジカルかつ具体的な提案が求められます。
合格率は公表されていませんが、受講者の多くがビジネス経験者であることから、一定の基礎力が前提となっていると考えてよいでしょう。
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内部監査について解説|内部監査の手順や必要な資格を理解しよう
内部監査士資格は、筆記試験がないとはいえ、決して「簡単に取れる資格」ではありません。それぞれの要因を詳しく見ていきましょう。
内部監査士資格では、会計・法務・経営戦略・リスクマネジメントなど、多岐にわたる知識が求められます。監査の手法だけでなく、企業の全体像を把握したうえで評価する視点が必要です。
たとえば、財務諸表の読み解きや、内部統制制度の仕組み、IT統制や情報セキュリティなどの分野にも対応しなければなりません。加えて、近年重視されているESGやSDGsといった非財務領域にも関心を持つことが重要です。
このように、単一分野にとどまらない横断的な知識と、それを活用できる思考力が難易度を高めている要因です。
内部監査士資格では、理論の理解だけではなく、それをどう実務に落とし込めるかが評価されます。とくに修了論文では、ケーススタディ形式で与えられた課題に対して、改善提案を含めた具体的な監査アプローチを示すことが求められるでしょう。
これは「現場で使える監査力」を証明する場でもあります。机上の空論ではなく、現実の業務フローや組織構造を意識した柔軟な分析と提案力が必要です。そのため、監査未経験の方や理論だけで学んできた方にとっては、想像以上に高いハードルとなることがあります。
内部監査士資格では、一般的な択一式の試験ではなくすべての知識を講義+論文で評価する形式です。この「論述式による審査」が難易度を押し上げる要因のひとつです。
論文では、与えられたテーマに対して、論理的な構成と説得力のある主張を展開することが求められます。さらに、講義で学んだ内容を的確に応用し、実務と結びつける視点が不可欠です。
また、講習は指定期間内にすべて受講しなければならず、働きながらの受講者にとってはスケジュール調整の面でも大きな負担となるでしょう。
内部監査士試験で成果を出すためには、講義の受講に加えて、効率的な学習と実務的な視点の融合が不可欠です。社会人にとっては限られた時間をどう使うかが重要になります。それぞれの視点から、具体的な勉強方法を見ていきましょう。
「週単位の学習計画」と「復習時間の確保」が合格へのカギといえるでしょう。QIA講座は48時間・24科目のボリュームがあり、無計画に進めると挫折しやすくなります。
まずは全体の講義スケジュールを逆算し、1週間ごとに受講科目と復習時間を割り当てましょう。たとえば「平日2時間+週末4時間」など、自分の生活に合わせた無理のない設計が理想です。
さらに、復習は講義直後24時間以内に行うと記憶が定着しやすくなります。学習アプリやスプレッドシートで進捗管理をするのもおすすめです。
内部監査士試験には公式のテキストや問題集が用意されていないため、学習は講義内容が中心となります。しかし、講義スライドや配布資料だけで理解が難しい場合は、市販の内部統制・監査関連書籍を活用しましょう。
おすすめなのが以下のようなジャンルの書籍です。
また、論文対策としては過去の論文例やテーマ集に目を通して、構成や論点の流れをつかんでおくと安心でしょう。
内部監査士の講義や論文では、抽象的な知識よりも「実務に即した理解と分析力」が評価されます。そこで、現在または過去の実務経験を学習内容に結びつけて整理することが効果的です。
たとえば、過去に関わった監査業務や内部統制整備の場面を振り返り、「なぜそう判断したか」「どんな課題があったか」を記録に残しておきましょう。この情報は、修了論文の事例検討にもそのまま応用できます。
また、同僚との意見交換や社内研修で得た知見も、論理構成の裏付けとして役立ちます。まさに「実務は最高の教材」です。
内部監査士資格は、単なる知識の証明にとどまらず、今後のキャリア形成や転職市場でのアピールにも大きな武器となります。ここでは、取得後にどのような可能性が広がるのかを詳しくみていきましょう。
内部監査士資格を取得することで、「監査部門での昇進」や「他部門へのキャリアシフト」が現実的になります。内部監査の専門知識と実務的な改善提案力は、経営企画やリスク管理など上流工程の職務でも重宝されるスキルです。
実際に、経理・法務・情報システムといった他部門から監査部門に異動し、QIAを取得後に部門責任者や内部監査室長として活躍している事例も多く見られます。キャリアの専門性を高めたい方、より経営に近いポジションを目指したい方には、非常に有効なステップアップ資格といえるでしょう。
内部監査士(QIA)は、日本企業において高い評価を受けています。「講習形式で実務に即した知識を身につけた人材」として、監査部門だけでなくガバナンス強化やコンプライアンス体制構築を担う場でも重宝される存在です。
近年では、内部統制の強化が義務付けられる上場企業だけでなく、中堅・中小企業でもQIA保持者を採用する動きが見られます。その背景には、J-SOXやESG対応など、監査の領域が拡大している実情があります。「社内での評価向上」と「社外での転職価値」どちらにも有効な資格といえるでしょう。
内部監査士資格を持つことで、自身の専門領域に対する「第三者評価」を得ることができ、転職市場でも信頼性の高い人材として認識されます。また、修了論文が協会誌などに掲載されることもあり、自身の専門性を社外へアピールする機会にもなるでしょう。
さらに、QIA取得後は公認内部監査人(CIA)などの上位資格を目指すステップとしても有効です。実務経験と資格を連動させながら、キャリアを段階的に構築できるのがこの資格の強みといえます。
今後ますます、内部監査の役割は「守り」から「攻め」へと変化していくでしょう。その変化に対応できる人材として、QIA保持者の価値はさらに高まることが予想されます。
内部監査士資格は計画的な学習と実務経験の活用で十分に取得可能な資格です。この資格を通じて、監査の専門性を高めるだけでなく、経営に貢献する力も磨かれます。確かな知識と信頼を武器に、次のキャリアへ自信を持って踏み出しましょう。
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