監査法人は、企業の不正を防ぐために重要な役割があります。ここでは、監査法人の仕事内容や給与、監査法人になった際のキャリアについて解説します。監査法人に興味がある方は参考にしてください。
監査法人は、企業の会計を点検し、正確に処理されていることを確認する機関です。
近年では、企業がステークホルダーや社会からの信頼を獲得するために、コーポレートガバナンスや国際的な基準に適合した財務管理の重要性が高まっています。監査法人は、金融商品取引法や会社法などに基づく監査を通じて、クライアントの財務管理の透明性を確保し、企業の公正な経済活動を支援する役割を監査法人は渡す役目です。
監査法人は、所得や規模に応じて以下のカテゴリーに分けることができます。
【監査法人のカテゴリー】
公認会計士および監査審査会の「令和4年版 モニタリングレポート」によれば、国内の上場企業を主に100社以上監査し、1000人以上の常勤監査実施者を抱える4つの法人を大手監査法人(BIG4)と指定しています。これらの法人は、国際的な4大ネットワークに加盟し、「BIG4」として有名です。
これらの法人は高い知名度を持ち、多くの大手企業と仕事をしているため、仕事の幅も広いでしょう。
参考:公認会計士・監査審査会「令和4年版 モニタリングレポート」
【大手監査法人(BIG4)】
モニタリングレポートによれば、監査法人に所属する公認会計士の7割が大手監査法人に在籍しており、大規模な組織で活躍したい志向の人や高収入を希望する人にとっては魅力的な職場と言えます。しかしながら、作業量が多く、長時間勤務が必要なため、ハードワークを楽しむ意欲やエネルギーが必要です。
前述のレポートでは、規模の点で大手監査法人に近い準大手監査法人を以下の5つ挙げています。
【準大手監査法人】
モニタリングレポートによれば、準大手監査法人の社員数は30~100人、常勤職員は200~800人とされています。大企業向けのプロジェクトなどで活躍の機会が豊富で、仕事とプライベートの調和が取りやすい環境を提供しています。大手監査法人での経験を持つ社員が転職して入社するケースも多いです。
業務のボリューム、収入、ライフワークバランスを重視する人におすすめでしょう。
規模が大手または準大手でない法人は、中小監査法人として分類されます。
中小監査法人の業務では、クライアントとの関係がより密接で、監査だけでなく実務や経理のアドバイザリー役割も果たす場合も多いです。規模が小さいため、昇進の機会も比較的容易で、コミュニケーションやマネジメントスキルに長けた人々にとっては快適な環境と言えます。
監査法人で公認会計士が行う主な業務は、以下に大別できます。
【監査法人の仕事内容】
監査業務では、財務諸表(たとえば賃借対照表や損益計算書)を基に、組織の財政状況、経営、キャッシュフローが正確に反映されているかどうかを審査し、内部コントロールを評価します。この業務にはクライアントの場所へ赴いて帳簿や資産を確認し、経営状況についてインタビューも含まれると覚えておきましょう。
また、監査法人の対象となるのは通常一般の企業だけでなく、学校法人、独立行政法人、社会福祉法人なども含まれます。
コンサルティング業務では、企業の経営戦略や国際財務報告基準、株式評価、知的財産、不正防止などに関するアドバイスや業務サポートが行われます。上場やM&Aなどの場面で、会計専門家の視点から指導や助言が求められる立場です。
監査法人での年収は、令和3年の賃金構造基本統計調査において、公認会計士や税理士の職種別の「現金給与の平均額」や「年間賞与およびその他の特別給与の平均額」をもとに算出されます。ここでは企業の規模に応じて大手、準大手、中小の法人に分類されたデータを元にしました。
【監査法人の年収相場】
令和2年の民間給与実態統計調査によれば、給与所得者全体の平均給与は433万円であることから、監査法人の従業員は規模に関係なく高収入を得ていると言えます。中には、通常のサラリーマンの2倍以上の収入を得ているケースも珍しくありません。
監査法人でのキャリアを築くためには、以下のステップを踏む必要があります。
監査法人に就職を希望する多くの人々が、まず公認会計士試験に合格しなければなりません。
難易度 公認会計士試験は日本の三大国家資格とされ、弁護士や医師の資格に次ぐ難易度があると言われています。公認会計士試験の合格率、勉強時間、偏差値などを他の資格と比較すると、以下のような特徴があります。
資格の種類 | 合格率 | 勉強時間 | 偏差値 |
---|---|---|---|
公認会計士 | 7.7% | 4,000時間 | 74 |
簿記2級 | 26.9% | 500時間 | 58 |
宅建士 | 17.0% | 400時間 | 60 |
税理士 | 19.5% | 4,000時間 | 72 |
医師免許 | 91.7% | 5,000時間 | 74 |
弁護士(司法試験) | 45.5% | 8,000 時間 | 75 |
公認会計士の資格は難関として知られていますが、特に年齢や学歴に制約はありません。
これは、他の三大国家資格とは異なり、学歴を気にする必要がない唯一の資格です。そのため、商学部出身でなくても、独学で勉強するか、専門学校に通学して試験を受験できます。
公認会計士試験は、2つの段階で行われます。
論文式試験で合格しなかった場合でも、短答式試験に合格している限り、2年間は短答式試験を再受験する必要はありません。また、論文式試験でも一定の成績を収めた科目については2年間の受験が免除されます。
公認会計士試験の合格に必要な平均勉強時間はおおよそ4,000時間と言われています。これは、毎日6時間を勉強に費やす場合でも、約2年以上がかかる計算です。社会人として働きながら試験に備える場合、さらに時間がかかる可能性が高いでしょう。
上記の理由から、試験対策のために専門学校に通うか、独学で試験に挑むかにかかわらず、効率的な学習計画が必要です。通勤時間や休憩時間などを利用して学習を進めたり、休日を有効活用して問題解決スキルを向上を目指しましょう。
監査法人での就職は、公認会計士試験の論文試験合格者を対象にしています。そのため、一般的な就職活動とは異なるスケジュールに従う必要があります。
一般的に、公認会計士の合格発表は11月中旬ごろで、それから就職活動がスタートすると考えておくべきでしょう。一度就活シーズンが始まると、適性テスト、1次面接、2次面接などを経て、内定が12月中に出されることが多いため、スケジュールの速さに注意してください。
公認会計士の資格を持つには、試験に合格した後に特定の要件を満たす必要があります。つまり、監査法人や会計事務所などで働くだけで自動的に公認会計士と名乗ることはできないのです。
公認会計士として登録するためには、試験に合格した後に以下の要件を満たす必要があります。
【公認会計士として登録するための要件】
したがって、公認会計士の資格を取得しただけでなく、上記の要件を満たすことが必要です。これによって、公認会計士として正式に登録され、監査法人でのキャリアを築くことが可能となります。
会計・財務の専門家として知識と経験を積み、長期間にわたってキャリアを築きたい方にとって、監査法人は理想的な職場と言えます。
公認会計士の資格取得や実務経験の獲得に続く、監査法人でのキャリアを維持するには、数段階にわたる要件が存在しますが、粘り強い努力とスキルの向上への意欲を持つことが、将来的に成功を収めるための鍵となります。
ファイナンスに関する知識を活かし、職場で頼りにされる専門家としての地位を築くことを目指して、段階的に取り組んでみましょう。
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