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監査法人
2024/07/29 更新

監査役監査と内部監査の違い|必要な資質や役割の差分とは

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企業が健全な経営を続けるためには、企業活動を点検する監査が不可欠です。監査には様々な種類があり、その一環として監査役監査と内部監査が挙げられます。ただし、これらの違いを理解していない方も多いでしょう。

この記事では監査役監査と内部監査の相違点や、それぞれが果たすべき役割に焦点を当て説明しています。また、監査人に必要な資質についても紹介していますので、最後までお読みいただき、監査に関する知識を深めてください。

監査役監査について

監査は、企業の経営状態や業務内容が法律や会社規定に適切に準拠しているかどうかを検査・確認する行為です。この検査の主な目的は、不正行為の発見や、株主・投資家などのステークホルダーに対し、企業の経営や活動に関する正確な情報を提供することにあります。

監査役監査は、株主総会で任命された監査役が行う監査を指し、役員としての取締役や従業員とは異なる人材が担当します。監査役監査は、会社法により「資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社」もしくは「取締役会を設置していて会計参与を置いていない会社」では必須です。

監査役監査の職務内容は主に「会計監査」と「業務監査」の2つに分かれます。

会計監査について

会計監査は、株主総会に提出される貸借対照表や損益計算書などの計算書類が公正で適切な会計基準に基づいて作成・表示されているか確認する監査です。これらの書類は取締役が作成し、法的な不正や株主に不利益な会計操作がないかを確認します。

この確認がなされた書類は、信頼性のある監査済みのものとして認識されます。そのため、会計監査を行う監査役には財務や会計の専門知識を備えた信頼性のある人材の選任が求められます。

業務監査について

業務監査は、取締役の職務執行が法令や定款に適切に従って行われているかを確認する監査です。これは「適法性監査」と呼ばれ、その他にも経営目標達成のための適切かつ合理的な業務が行われているかをチェックする「妥当性監査」を含むこともあります。

業務監査は、取締役が作成した事業報告書が法的に妥当であることを確認し、不正や違法な会計操作によって株主や従業員などが損害を被らないようにするために行います。業務監査が終了した後、監査役は報告書を作成する責任も持っています。また、子会社の取締役が不正行為を行わないように業務を監視することも業務の一環です。

内部監査について

監査は外部監査と内部監査に区分されます。外部監査は公認会計士や監査法人などが企業外から実施する監査です。

内部監査は「監査役監査」と、企業内に設置される内部監査部門による「内部監査」の二つに分かれます。これらは企業内での調査や分析を通じて、不正の防止や経営目標の達成、業務の効率化を促進することを目的としています。

監査役監査は法的に設置が求められていますが、内部監査は企業内で自主的に実施されます。かつては企業内部の不正を検出する役割が強調されていた内部監査ですが、近年では問題を見つけ出し、改善策を提案するコンサルティング的な側面も増しています。

監査役監査と内部監査の違いについて

監査役監査と内部監査はいくつかの類似点がありますが、多くの相違点も存在します。役割におけるこれらの違いを以下に整理しましょう。

役割の違いについて

まず大きく違うのは役割です。監査役監査と内部監査、それぞれの役割についてみていきましょう。

監査役監査の役割とは

監査役監査は、株主の負託を受けた、会社組織から独立した機関として設置されます。取締役の職務執行を監査することで、事業の運営が適切に行われているか、経営は健全かを監視・監督するのが役割です。

監査役監査には、企業の健全で持続的な成長を確保し、社会的な信頼に応えるガバナンス体制を構築していく責務があります。また、最近では財務や業務を監視する役割だけでなく、経営者や取締役会のコンサルタントとしての役割を担うことも多くなってきました。

内部監査の役割とは

内部監査の役割は、業務や会計に規定違反や法律違反が無いか調査・分析することです。社内で不祥事が発生しないよう問題の発見・把握し、不正の防止や低減につなげます。

また、経営目標を達成するために適正に業務が行われているかチェックし、改善策を提案したり、業務効率化の促進をはかります。企業が健全な経営状態が保てるように問題点の改善を行うことを目的とする機関といえるでしょう。

選出方法の違いについて

監査役は、選定基準を満たす候補者がまず選ばれ、その後、会社法に則り株主総会の決議によって決定されます。内部監査人は、企業の従業員の中から登用されたり、外部からの招へい、またはアウトソーシングの活用も可能です。

社内から登用する場合には、企業の従業員には内部監査経験者はいないことがほとんどでしょう。監査のための研修を受講し実務をこなしていきます。外部から内部監査経験者を招へいする場合は監査業務にはすぐ取り掛かれても、会社の業務全体を把握するのに時間がかかったり、人間関係で弱い点がデメリットです。

立ち上げ時期にアウトソーシングを利用することで内部監査体制の構築が容易であったり、プロのノウハウを享受できるなどのメリットがあります。

監査対象の違いについて

監査役監査が取締役および会計参与の職務執行について行われるのに対し、内部監査は全従業員を対象に業務活動のチェックを行います。

組織の経営目標を効果的に達成するため、ガバナンス・プロセス、リスクマネジメントおよびコントロールに関連するすべての経営諸活動が対象です。

そのため、監査役が経営・財務などの専門知識を必要とするのに対し、内部監査人は企業内の規定や業務に精通しており、調査しやすいようにキーパーソンと人間関係を持っていることも重要になります。

任期の違いについて

内部監査人はとくに任期は定められていませんが、監査役の場合は会社法によって原則4年と定められています。一部例外があり、株式の譲渡上限を定めている非公開会社の場合は、定款により10年まで延長することが可能できます。

同じ役員である取締役の任期が2年なのに対し、任期が長くなっているのは、監査役の実効性を高めるためです。

求められる資質の違いについて

監査役、内部監査人ともに必須資格はあちません。しかし、その職務上、選ばれる人材にはそれぞれに合った資質が求められます。監査役と内部監査人では求められる資質も変わってきます。

監査役に求められる資質について

監査役は、誠実であることはもちろん、職務を遂行するに足る専門知識や能力のある人材がふさわしいです。会計監査を行える一定の財務・会計の知識や経験があることは必須条件になります。

また、さまざまな問題を適切に解決できる問題解決能力に長けていることも求められる資質の一つです。問題が見つかった際には、取締役会で取り上げ意見できるような積極性や発言力も必要でしょう。

以上の点から監査役にふさわしい人材として、公認会計士や税理士、中小企業診断士などが選出されることが多くなっています。

内部監査人に求められる資質について

一方で内部監査人に求められるのは、専門知識より社内調査に役立つ能力があるかが問われます。調査で対話をする場合に上手に相手の話を引き出せるコミュニケーション能力があげられます。

また、ちょっとした違和感に気づける観察力や洞察力も必要です。そのためには社内の業務に精通していて、どのように行うと効率的なのか、正しい方法で行われているかの知識を持っていることが重要でしょう。監査役と同じように誠実さも選出のポイントといえます。

監査役監査の注意すべきこと

監査役監査を行う場合には注意が必要な点がいくつかあります。監査役に課せられた義務や監査役会の設置などについて解説します。

①善管注意義務

「善管注意義務」とは「善良な管理者の注意義務」の略で、他人から業務の委任を受けた人は善良な管理者としての注意義務を持って行わなければなりません。監査役も善管注意義務を負う役職です。

善管注意義務違反が発生した場合は、責任を追及され、損害の補填を求められます。さらには、重大な過失や監査報告の重要な虚偽記載、特別背任罪や利益供与罪などに該当する行為があると、会社や第三者に対する損害賠償責任を負ったり、行政罰や刑罰に処せられることがあります。

②監査役会の設置

監査役会とは複数の監査役によって作られる機関のことで、取締役会の業務を監査することを目的としています。大会社かつ公開会社では法律で監査役会の設置が義務付けられており、その他は任意です。

監査役会は取締役から独立した権限を持つため、監査役が正しく機能しているかチェックができ、機能が形骸化してしまうリスクが避けられるのがメリットとしてあげられます。監査役会を設置する場合は、3人以上の監査役が必要であり、半数以上が社外監査役であること、1人は常勤監査役であることが必要です。

③取締役会への出席義務

監査役は取締役会で不当な決議や違法な決定がなされないよう、すべての取締役会の会合に出席し、監督しなければなりません。

また、取締役の不正行為や法令違反行為が見つかった場合は、取締役会を招集できますし、会合で意見を述べたり、不正や違法行為を止めるように請求する権限を持っています。

監査役監査と内部監査の関係性とは

会計監査人監査と監査役監査、内部監査を合わせて「三様監査」といいます。三者の目的や役割、視点、立ち位置などは異なりますが、それぞれが連携することでより良い監査が可能です。

監査役と内部監査人が日頃から積極的に調査や監査の結果について意見交換したり、定期的に監査に同行するなどして連携を深めることで、有効で効率的な監査につながるでしょう。

最近の上場審査でも三者が定期的に会議を行うことが求められており、ガバナンス構築のためにも三者の連携が重要になっています。

監査役監査と内部監査の違いを理解しよう

監査役監査では、会計上の計算書類を監査する会計監査と、取締役の職務執行を監査する業務監査を行います。内部監査で行う監査とは同じ業務上の監査であっても監査の対象と目的です。

また、監査役と内部監査人では、求められる人材も選出方法にも違いがありますが、どちらも企業の経営目標の達成や健全な企業活動を守る重要な存在でしょう。両者が連携することで企業にとっても大きなメリットが得られます。監査役監査と内部監査の違いを知り、今後の業務に役立てましょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。

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