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監査法人
2025/03/14 更新

監査役と取締役の違いとは?業務内容や役割などを解説

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企業経営に関わる重要なポジションである監査役と取締役。どちらも組織の運営には欠かせない役職ですが、その役割や権限、法的な立場は大きく異なります。

この記事では、監査役と取締役の違いをわかりやすく整理し、具体的な業務内容や責任範囲、選ばれる基準について解説します。どのような人がそれぞれの役職に向いているのかも紹介するので、自分のキャリアを考える参考にしてみてください。

監査役と取締役の違いとは?

企業の経営にはさまざまな役職がありますが、とくに重要なのが監査役と取締役です。それぞれの役割や責任は異なり、適切に機能することで企業の健全な運営が維持されます。

監査役は取締役の業務を監視し、企業統治の透明性を確保する立場にあります。一方、取締役は会社の方針を決定し、経営戦略を推進する役職です。両者の違いを理解することで、企業経営の全体像がより明確になるでしょう。

監査役と取締役の違いとは?法的位置づけと役割

ここからは、監査役と取締役の違いについて、詳しく紹介します。法的な位置づけや権限の違い、任期など、それぞれ確認していきましょう。

監査役と取締役の基本的な役割の違い 

監査役と取締役は基本的な役割が異なります。監査役は、企業の経営が適正に行われているかを監査する役職です。具体的には、取締役の業務執行を監視し、不正や法令違反がないかを確認。財務諸表の適正性や会計監査にも関与し、企業が適切なガバナンスを維持できるよう監督します。

一方、取締役は会社の経営方針を決定し、業務を遂行する役割です。取締役会での意思決定や、事業戦略の策定、資金調達、企業の成長戦略を推進する役割を担い、経営判断に直接関与します。

監査役と取締役の法的位置づけの違い 

監査役は、会社法に基づき取締役の業務執行を監視するための独立した機関です。監査役を置くかどうかは、会社が自由に決定することができます。しかし、大企業では監査役の設置が義務付けられており、経営のチェック機能を果たしています。

一方、取締役は会社の経営を担う責任者であり、株主総会によって選任されます。取締役会を構成し、企業の方向性を決定する重要な役割を担っています。

権限と責任範囲の違い

監査役は、取締役の業務執行を監視する立場にあり、会社の意思決定には直接関与しません。監査の結果を報告し、必要に応じて是正措置を促すことが求められます。業務執行に対する責任を負うことはなく、経営判断にも関与しません。ただし、取締役の行動を適切に監査することで、企業の健全な運営を支える役割を担います。

一方、取締役は業務執行の責任を負い、経営戦略の策定やリスクマネジメントを担当します。会社の経営方針を決定し、それを実行することで企業の成長を推進する役割です。たとえば、新規事業の立ち上げや資金調達、業務効率化の施策決定などが取締役の具体的な権限行使の例として挙げられるでしょう。

任期と再任の違い 

監査役の任期は通常4年であり、再任も可能です。とくに大企業では、監査体制の継続性を確保するため、長期的な視点で任命されることが多いでしょう。一方、取締役の任期は原則2年(非公開会社では最長10年)が一般的です。監査役は取締役より任期が長く、それだけ立場が強いと考えられるでしょう。

報酬体系の違い 

監査役の報酬は、監査業務の独立性を保つため、固定報酬が一般的です。企業の業績とは関係なく、監査役としての役割に応じた報酬が支払われます。

一方、取締役の報酬は業績に応じて変動することが多く、企業の利益や成長率、株主への貢献度が評価基準となります。企業の業績を上げることで報酬が増える仕組みになっている場合が一般的です。

▼監査役の役割について詳しくはこちら

監査役とは?役割、権限、報酬、適性などを解説

監査役の役割と業務内容

監査役は、企業の業務執行が適正に行われているかを監視する重要な役職です。ここでは、具体的な業務内容について詳しく解説します。

監査役の主な業務内容 

監査役の具体的な業務は以下のとおりです。

  • 取締役会への出席と意見陳述
  • 業務監査・会計監査
  • 監査報告書の作成

監査役は取締役会に出席し、経営判断の妥当性を確認しながら、必要に応じて意見を述べます。また、取締役や従業員の業務が適正に行われているかを調査し、会計監査では財務諸表の正確性を確認し、会計監査人と連携して企業の財務健全性を確保するのも監査役の業務です。これらの監査結果は監査報告書にまとめられ、株主や取締役に提出され、企業の透明性向上に役立てられます。

また、監査役には社外監査役と常勤監査役があります。社外監査役は独立した立場から企業の監査を行い、客観的な視点で経営の助言をする一方、常勤監査役は日常的に社内で業務監査を行い、内部統制の強化に取り組む点が特徴です。

監査役に与えられる法的権限

監査役には、取締役の業務執行を調査する権限が与えられています。

  • 取締役会への出席義務
  • 業務財産調査権
  • 取締役の行為差止請求権

たとえば、取締役会の議事録の確認や会計帳簿の閲覧が可能です。企業の経営状況を把握し、問題があれば指摘し、是正措置を促すことが求められます。

また、必要に応じて株主総会で意見を述べることもでき、企業のガバナンスを強化する役割を果たします。

監査役が選任される要件と適性 

監査役は株主総会で選任され、法律や会計の知識を持つことが求められます。中でも、公認会計士や弁護士など、専門的なスキルを持つ人材が適任とされることが多いでしょう。

また、監査役には独立性が求められ、経営陣とは異なる立場で企業の監視を行う必要があります。そのため、公平な視点を持ち、企業のリスク管理を適切に行える人物が望まれます。

取締役の役割と業務内容

取締役は、会社の経営方針を決定し、業務を遂行する立場の役職です。ここでは、取締役の具体的な業務内容や責任について詳しく解説します。

取締役の主な業務内容 

取締役は会社の運営全般に関わり、経営の方向性を決定する役割を担います。具体的な業務内容は以下のとおりです。

  • 経営戦略の策定
  • 業務執行の決定
  • 代表取締役の選定

経営戦略の策定では、市場の動向を分析し、新規事業の立ち上げや事業拡大の方針を決定します。また、業務執行の決定では、資金調達や財務管理、人事方針の策定といった企業運営に不可欠な業務を統括。加えて、代表取締役の選定も取締役会の重要な役割であり、企業の成長を支える経営陣の構築に関与します。

取締役は社内外のステークホルダーとの関係構築や交渉も担当し、企業の信用やブランド価値を向上させるための対応も求められます。このように、取締役の業務は多岐にわたり、企業の成長と競争力維持のために欠かせない存在です。

取締役に与えられる法的権限と義務 

取締役には、会社の業務執行を決定し、実行する権限が与えられています。会社法に基づき、取締役会の決議を通じて企業の方向性を定め、適切なガバナンスを確保する役割です。

また、取締役には、会社の利益を最優先に考え、誠実かつ合理的な経営判断を行う「忠実義務」が課されています。さらに、株主や従業員、取引先など、企業の関係者に対して誤った判断を下さないよう、「善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)」も求められています。

取締役が負う責任と制限 

取締役は、企業経営を担う立場として、さまざまな法的責任を負います

  • 対会社責任:業務上の過失や義務違反により会社へ損害を与えた場合、賠償責任を問われる。
  • 対第三者責任:取締役の判断が外部の取引先や顧客に損害を与えた際に、企業だけでなく個人としても責任を負う。
  • 株主代表訴訟:株主が会社に代わって取締役の責任を追及することもある

こうしたリスクに対応するため、責任限定契約を締結し、損害賠償の上限を設定することが可能です。また、役員賠償責任保険(D&O保険)を活用すれば、訴訟リスクによる経済的負担を軽減できます。取締役には、経営判断の責任を自覚しながら、こうした仕組みを適切に活用することが求められるでしょう。

監査役と取締役の共通点と関係性

監査役と取締役は、それぞれ独立した役割を持ちながらも、企業の適正な運営を支えるために密接に関わっています。ここでは、両者の共通点や関係性について詳しく見ていきましょう。

共通する法的地位と職責 

監査役と取締役は、どちらも株主総会で選任され、企業の健全な運営に責任を持つ役員です。どちらも会社法の規定に基づき、その職責を果たす義務があります。

また、両者には職務を遂行する上での厳格なルールが適用され、企業の信頼性を維持するために行動することが求められます。特に、会社の利益を最優先に考え、適切な判断を下すことが重要です。

監査役と取締役の関係性 

監査役と取締役の関係は、企業のガバナンスを強化するうえで不可欠です。監査役は取締役の業務執行を監視し、不正行為や法令違反がないかをチェックする役割を持っています。

一方、取締役は監査役の指摘を真摯に受け止め、企業運営の改善を図る必要があります。両者が協力し合うことで、企業の透明性が高まり、経営リスクの低減にもつながるでしょう。

監査役と取締役を兼任できるか

会社法では、監査役と取締役の兼任は禁止されています。これは、監査役が独立した立場で取締役を監視する必要があるためです。もし同じ人物が両方の役職を兼任すると、監査機能が適切に機能しなくなる恐れがあります。

ただし、企業の規模によっては、監査役を置かずに監査機能を取締役が分担するケースもあります。この場合、監査役を置く義務がない企業では、取締役の中から監査の役割を担う者を決める場合もあるでしょう。

監査役と取締役の選任方法と選ばれる基準

取締役と監査役には明確な役割があり、選任時には適切な基準に基づいた手続きが求められます。以下で監査役と取締役の選任方法や基準について解説するので、確認していきましょう。

監査役の選任方法と基準

監査役は、企業の健全な経営を保つために、取締役の業務執行を監査し、不正防止や適正な財務報告を支える役割を担います。そのため、監査役には高い倫理観と法務・会計の専門知識が求められるでしょう。監査役の選任は、株主総会で決議されるのが原則です。会社法により、大規模な株式会社では監査役の設置が義務付けられています。

【監査役の選任基準】

  • 独立性の確保:取締役から独立し、客観的な視点で監査を行えること。
  • 専門知識:会計・法律・内部統制の理解があり、監査業務を遂行できること。
  • 経営経験:企業経営や財務管理の経験があると、より的確な監査が可能。
  • 実行力:必要に応じて是正措置を提言し、企業の透明性を維持できること。

適任者を選ぶことは、企業の信頼性を高めるために不可欠です。監査役は、取締役とは異なる視点で経営を監視し、適正な企業運営を確保する役割を担います。

▼監査役の選定方法について詳しくはこちら

常勤監査役の選定方法|設置対象となる会社や向いている人を解説

取締役の選任方法と基準

取締役は企業の経営方針を決定し、事業戦略の策定・実行を担当します。そのため、強いリーダーシップと経営能力が求められるでしょう。

取締役も監査役と同様に株主総会で選任されます。任期は一般的に2年(定款により変更可能)で、再任も可能です。取締役会を構成するメンバーは、企業の成長を支える重要な役割を持つため、慎重な選定が必要でしょう。

【取締役の選任基準】

  • 経営能力:会社の成長を促進し、的確な経営判断ができること。
  • リーダーシップ:組織を統率し、社員の意欲を引き出せる資質を持つこと。
  • 財務・マーケティング知識:市場分析や財務管理に精通し、経営戦略を支えられること。
  • 法令遵守の意識:コンプライアンスを徹底し、企業の社会的責任を果たせること。

取締役の選定は、企業の方向性を決定する重要なプロセスです。適任者の選定により、持続可能な成長が期待できます。

監査役と取締役の違いを理解し、企業統治の仕組みを把握しよう 

監査役と取締役は、それぞれ独自の役割を担いながら、企業の発展を支える重要な存在です。取締役は企業経営を担い、監査役はそれを監視することで、適正な経営が行われているかを確認します。

企業統治(コーポレートガバナンス)を強化するためには、両者の役割を明確にし、それぞれが機能することが不可欠です。監査役と取締役の違いを正しく理解し、それぞれの役割と責任を把握することで、企業の持続的な成長を支えることができます。

本記事が、監査役や取締役を目指す方にとって、役職の理解を深める一助となれば幸いです。今後のキャリア検討や役員選任の際に参考にしてみてください。

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WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。

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