「社外監査役は、どのような仕事をするんだろう?」とお悩みの方もいるでしょう。
社外監査役は、会社の運営を健全に保つために欠かせない存在です。経営の透明性を高め、不正を未然に防ぐ役割を果たします。業務を行ううえで、とくに会計や法務の専門知識が必要です。
この記事では、社外監査役の具体的な役割や必要なスキルについて詳しく解説します。ぜひ最後までご覧いただき、キャリアを考える参考にしてみてください。
社外監査役は、経営者や内部関係者ではなく、第三者の立場から企業を監視します。企業の透明性を高め、不正を防ぐために欠かせない存在です。
具体的には、以下のような役割を担っています。
このポジションでは、法律や会計に関する専門知識が不可欠ですが、それに加えて業界特有の知識や客観的な視点も求められます。
社外監査役の主な役割は、企業が法令を守り、健全に運営されているかをしっかり監視することです。そのために、次の3つの業務を担っています。
経営陣の監視 | 取締役会での意思決定が適切かを確認し、必要に応じて客観的な意見を伝える。 |
業務監査 | 日々の業務が規則や方針に沿って進められているかをチェックする。 |
会計監査 | 財務諸表や会計記録を精査し、不正やミスを未然に防ぐ。 |
これらを通じて、社外監査役は株主や投資家だけでなく、社会全体からの信頼を得るための大きな役割を果たしています。企業が持続的に成長していくために、なくてはならない存在といえるでしょう。
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社外監査役はすべての企業に必要なわけではありません。法律で設置が義務づけられている企業に限られます。
社外監査役は、監査役会を設置している会社に必要な役職です。会社法328条によると、監査役会自体の設置義務があるのは、公開会社(株式の譲渡が自由な会社)で、かつ大会社(資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上)の場合です。しかし、この条件に当てはまらない場合でも、ガバナンスを強化するため社外監査役を自主的に設置している企業もあります。
また、会社法335条3項によると、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない決まりがあります。
社外監査役になるためには、以下の要件をクリアする必要があります。
【会社法2条16号 社外監査役の要件】
・就任前の10年間、その会社または子会社の取締役、会計参与、従業員として勤務していないこと。
・就任前の10年以内に、その会社または子会社の監査役を務めた経験がある場合、さらにその就任前10年間に、その会社または子会社の取締役、会計参与、従業員として勤務していないこと。
・会社経営を支配している者、親会社の取締役、監査役、従業員でないこと。
・兄弟会社の業務執行取締役や同等の役職についていないこと。
・その会社の取締役、支配人、または重要な従業員の配偶者や二親等内の親族ではないこと。
このように、経営陣や会社と直接的な利害関係を持たない立場であることが求められます。これらの条件を満たすことで、企業の透明性を守り、信頼される監査役としての役割を果たすことが可能です。
社外監査役には、高度な専門知識やスキルが求められます。ここからは、社外監査役に求められるスキルについてみていきましょう。
社外監査役には、法律や会計の専門知識が欠かせません。
企業の財務状況や取引の透明性をチェックするためには、会計や財務に関する深い理解が必要です。
さらに、企業が法律を守りながら運営されているかを監視する役割を果たすため、会社法や労働法などの法務知識も求められます。中でも、複雑な会計報告書を的確に読み解き、不備があれば経営陣に指摘できるスキルは非常に重要です。
これらの知識とスキルが、信頼される監査役として活躍する土台となります。
監査を行う企業の業界に関する深い知見も必要です。
例として、IT業界と製造業では、抱えるリスクや監査で注目すべきポイントが異なる可能性があります。IT業界ではデータセキュリティや技術の急速な進化が課題となる一方、製造業では品質管理やサプライチェーンのリスクが大きなテーマとなるでしょう。
こうした業界特有のトレンドや規制、リスク要因を正確に把握することで、より実効性の高い監査が可能です。逆に、この知見が欠けていると、監査内容が表面的なものにとどまり、十分な成果を上げることが難しくなるでしょう。
社外監査役にとって、調査能力は欠かせないスキルのひとつです。何か問題が発生した際、その原因を突き止め、的確な解決策を提案するには、情報を集めて分析する力が求められます。
その方法はさまざまで、社員や外部関係者へのヒアリング、内部資料の確認、さらに必要に応じて外部の専門家や第三者から情報を収集するなど、多面的なアプローチが必要です。こうした調査能力があれば、企業内で潜むリスクを早い段階で発見し、迅速に対応できるでしょう。
社外監査役と社外取締役は、どちらも外部の視点から企業を支える重要な役割を担っています。しかし、具体的な仕事内容や必要なスキルには大きな違いがあるでしょう。
ここからは、仕事内容や求められる専門性、収入の3つの観点から、社外監査役と社外取締役の違いを詳しく解説します。
社外監査役と社外取締役の大きな違いは、役割の焦点にあります。社外監査役は「監視」を、社外取締役は「助言」を主な役割としています。
社外監査役は、企業が法令を守りながら適正に運営されているかを監視する立場です。取締役会の議事録を確認したり、内部監査報告を精査したりすることで、経営の透明性を確保することが求められます。
一方、社外取締役は、企業の成長を支える経営戦略や方針についてアドバイスを提供し、実際の経営に深く関与します。
要するに、社外監査役は「経営のチェック役」、社外取締役は「経営のアドバイザー」として、それぞれ異なる形で企業を支えているのです。
社外監査役に求められるのは、特に法律や会計に関する専門知識です。財務諸表を分析したり、企業が法令を守っているかをチェックしたりするコンプライアンス業務が主な役割となるため、会計・財務・法務の知識が欠かせません。
一方で、社外取締役には業界の深い理解や経営の実務経験が重視されます。市場の動向を把握し、経営陣とともに戦略を描ける力が求められるでしょう。
簡単に言えば、社外監査役は「規則に基づいて経営をチェックする役割」、社外取締役は「経営の方向性を共に考える役割」として、それぞれ異なる形で企業を支えています。
社外監査役より社外取締役の方が、収入が高くなる傾向にあります。社外監査役の年収の目安は200万円から500万円程度です。それに対して社外取締役は600〜800万円程度といわれています。
社外監査役は監査業務に特化しているため、報酬は固定額で支払われることが多いようです。一方で、社外取締役は企業の成長や収益に直接関わるポジションのため、成果報酬やボーナスが加算されるケースもみられます。
社外監査役として、弁護士が多く活躍しています。以下で、弁護士が社外監査役に適している理由を紹介するので、確認していきましょう。
弁護士はその職業柄、独立した立場を保つことが求められています。この独立性は、社外監査役としての役割を果たすうえで大きな強みとなるでしょう。
企業の内部事情や利害関係に左右されることなく、公平かつ客観的な視点で経営を監視できるのが弁護士の特長です。また、普段から利害調整に関わる経験を積んでいるため、どのような状況にも冷静に対応できる判断力を備えています。その結果、企業の透明性を守り、健全な運営を支える役割を十分に果たすことができるのです。
弁護士は、法律の専門家として深い知識を持ち、トラブルが発生した際には迅速かつ的確に対応する力があります。
労働問題や契約トラブル、さらには法令違反が疑われるケースでも、弁護士であれば問題の核心を正確に見極め、適切な解決策を提示できるでしょう。
また、複雑な法令や規制を的確に理解し、それに基づいて具体的な助言を行うことで、企業が抱えるリスクを最小限に抑えるサポートができる点も大きな強みです。
ここからは、弁護士が社外監査役に就任した事例を紹介します。佐貫葉子弁護士と相澤光江弁護士、2つの経歴を確認していきましょう。
佐貫葉子弁護士は、1996年に医薬品卸売業のクラヤ三星堂(現メディパルホールディングス)の社外監査役に初めて就任しました。この役職を約10年間務めた後、2007年に明治乳業(現明治ホールディングス)の社外監査役に就任し、経営統合後は同社の社外取締役として9年間活動しました。
さらに、2011年には、りそな銀行の社外取締役に就任。翌年からは親会社であるりそなホールディングスの社外取締役を務め、2015年には監査委員長に任命されました。同社ではガバナンス強化を目指し、内部監査部門や執行部門との連携を積極的に推進。監査の実効性を高めるため、多くの情報収集と対話に取り組みました。
佐貫弁護士は、法務の専門知識を活かし、企業の透明性向上とリスク管理に大きく貢献しています。
相澤光江弁護士は、事業再生の専門家としての経験を評価され、多数の企業で社外役員を務めてきました。これまでに、カルビー株式会社やサミット株式会社、株式会社コジマ、株式会社オカモトなどで社外監査役や社外取締役として活動し、現在もコジマの監査等委員およびプルデンシャルホールディング・ジャパンの社外監査役を務めています。
相澤弁護士は、企業の業態や収益構造、財務状況を深く理解することを重視し、各社の経営課題に適切に対応してきました。また、女性の経営参画の重要性を訴え、女性が経営に携わることで組織の多様性を促進し、社会的な固定観念を変える第一歩になると考えています。そのリーダーシップと専門性は、多くの企業のガバナンス強化に大きく貢献しています。
参考:日本弁護士連合会 社外役員に就任している女性弁護士インタビュー
社外監査役は、企業の経営を外部から監視し、透明性を確保する役割を担う重要なポジションです。監査役を目指すなら、まずはその役割を正しく理解し、自分のスキルと目標をすり合わせてみることをおすすめします。それが、キャリアの次の一歩を踏み出すための大切な第一歩となるでしょう。
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