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2025/01/30 更新

常勤監査役の選定方法|設置対象となる会社や向いている人を解説

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常勤監査役は、会社の経営が適正に行われているかをチェックし、内部統制を強化する重要なポジションです。転職やキャリアアップを考えている人にとっては、その選定基準や選ばれるプロセスを知ることで、新たな可能性が広がるでしょう。

この記事では、常勤監査役の役割や選定の流れを解説します。設置のメリットについても紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも監査役とは?

監査役は、企業が健全に経営されるよう、経営陣の業務を監視し、不正や違反を防ぐ役割を担っています。取締役の職務執行をチェックし、法律や定款に違反がないかを確認するのが主な仕事です。監査役には「社内監査役」と「社外監査役」の2種類があり、常勤監査役は社内監査役が務めることが多い傾向にあります。

監査役の業務は大きく分けて業務監査と会計監査の2つがあります。業務監査は、経営陣の意思決定や業務執行が適正に行われているかをチェックし、経営判断の妥当性を見極めるものです。一方、会計監査は、財務諸表や決算書に誤りがないかを調査し、企業の財務状況が正しく開示されているかを確認する役割を担います。

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監査役選任の3つのステップ

監査役を選任するための3つのステップを紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。

候補者への打診と事前調整

監査役を選任する際は、まず適任者を選定し、合意を得ることから始まります。

最初に、企業の経営状況や今後の方針を踏まえ、ふさわしい候補者をリストアップします。監査役の役割は、経営を監視し、法令や社内ルールの遵守をチェックすることです。そのため、以下のような人がふさわしいでしょう。

  • 法律や財務に関する知識があること
  • 会社と直接的な利害関係がなく、独立性が確保されていること
  • 経営や監査の経験を持っていること

候補者を選んだら、まず本人に事前の打診を行います。その際、監査役としての職務内容や責任の範囲をしっかり伝え、引き受ける意思があるかを確認することが大切です。同時に、その経歴やスキルが企業の監査体制に適しているか、慎重に見極める必要があります。

監査役または監査役会の同意手続き

監査役の候補者が決まったら、次に監査役または監査役会の同意を得るステップへと進みます。これは、監査役が独立した立場で企業を監視する役割を担うため、適切な資質を持つ人物かどうかを慎重に審査し、正式に承認する必要があるからです。

審査の際には、候補者が企業の支配を受けず独立性を保てるかどうか、監査業務を遂行するだけの知識や経験を備えているか、さらに倫理観やコンプライアンス意識が十分にあるかといった点が重要視されます。監査役会が設置されている場合は、過半数の同意が必要です。

株主総会での選任決議

最後のステップとして、株主総会で監査役の選任決議が行われます。一般的に、監査役の選任は株主総会の普通決議によって決まります。普通決議とは、出席した株主の議決権の過半数をもって可決される方式ですが、企業の規模や定款によっては、より厳格な基準が求められることもあります。たとえば、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、選任方法が異なるため、事前にしっかり確認しておくことが大切です。

また、株主総会では、候補者の経歴や選任理由を説明することが求められるでしょう。決議が承認されると、監査役は正式に就任し、企業の監査業務を担うことになります。

常勤監査役設置の対象企業

企業の透明性を高めて健全な経営を維持するために、常勤監査役が必要です。ただし、すべての企業に必ず必要なわけではありません。

ここからは、どのような企業に常勤監査役が必要なのか、そして設置することで得られるメリットについて詳しく解説します。

設置が必要な会社の基準

常勤監査役の設置は、会社法に基づき、一定の条件を満たす企業に義務付けられています。

大会社に該当する企業(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)で監査役会を設置している場合は、少なくとも1名の常勤監査役を置くことが法律で定められています。企業の業務が多様化・複雑化する中で、社内の動きを常に把握し、迅速な監査を行う必要があるためです。

また、上場企業の多くもガバナンス強化の一環として常勤監査役を任命しています。金融商品取引法の適用を受ける企業は、適切な監査体制を整えることが求められ、事実上、常勤監査役の配置が欠かせない状況です。

企業規模が大きくなるほど監査の重要性も増し、チェックすべきポイントが増えるため、常勤監査役の設置は欠かせないものとなっています。

常勤監査役を設置するメリット

常勤監査役を置く最大のメリットは、経営のチェック機能を強化できることです。社内に常駐していることで、会社の動きをリアルタイムで把握し、不正やコンプライアンス違反の兆候をいち早く察知できます。問題が発生する前に対処できるため、企業のリスク管理がより確実になるでしょう。

また、監査体制がしっかり整っている企業は透明性が高く、リスク管理が徹底されていると評価されやすいため、信用を高めることができるメリットもあります。

常勤監査役の権限

常勤監査役には、独任制としての権限監査役会としての権限があります。独任制の権限としては、取締役の業務を独自に調査できる権限、企業の財務や業務状況を監査する権利、取締役の違法行為を差し止める権限などです。また、取締役と企業の間で対立が生じた際の訴訟代表権や、取締役が被告となった場合に企業が補助参加することへの同意権も持っています。

一方、監査役会としての権限は、監査役の選任に関する同意権、会計監査人の選任・解任の決定権、取締役や会計監査人からの報告を受ける権限などです。これらの権限を適切に行使することで、企業のガバナンスを強化し、株主や取引先などの信頼を得ることにつながります。

常勤監査役に禁止されていること

監査役が取締役の職務を兼務することは認められていません。監査役の最も大切な役割は、経営を独立した立場から監視することであるため、兼務すると監視機能が弱まり、役割を十分に果たせなくなる可能性があるからです。

さらに、利益相反を避けるため、監査役が会社と特別な利害関係を持つことも厳しく制限されています。たとえば、監査役が企業の取引先や競合他社と個人的な取引を行うことは、利益相反行為とみなされる可能性があるでしょう。このような行為は、監査の公正性や信頼性を損なう恐れがあるため、厳しく規制されています。

常勤監査役に向いている専門職

常勤監査役には専門知識や実務経験が必要とされるため、特定の職種や経歴が適しています。ここからは、常勤監査役に向いている3つの職種について詳しく紹介するので、確認していきましょう。

法務部門の経験者

法務部門での経験を持つ人は、企業のコンプライアンスや法律に関する深い知識を活かせるため、常勤監査役として非常に適しています。企業が法律や規則を守りながら経営を行っているかを監視する際、法的な観点から迅速かつ的確に判断できる力が求められるからです。また、これまでの法務経験を活かして、経営陣に的確なアドバイスを提供することも期待されます。

公認会計士

公認会計士も常勤監査役に向いている職種の一つです。財務諸表や会計記録を正確にチェックするスキルは、監査業務において欠かせない重要な能力です。不正会計や数字の矛盾を見抜く力は、企業の透明性を保ち、株主や取引先といった利害関係者の信頼を守るうえで非常に重要です。また、財務面での専門知識を活かして、経営陣に適切なアドバイスを行うことで、企業の意思決定をより的確なものにすることも期待されます。

内部監査の経験者

内部監査の経験がある人は、社内業務や経営の実情を深く理解しているため、常勤監査役としてすぐに力を発揮できる存在です。日々の業務フローやリスクのあるポイントを把握しているため、問題が起きそうな箇所を的確に監視することができるでしょう。また、内部の視点を持ちながらも監査役としての独立性を保つことで、企業全体の改善に具体的な提案を行える点が大きな強みです。

常勤監査役の選定方法を理解し転職に役立てよう

常勤監査役への転職を目指すなら、選ばれるためのプロセスや企業が求める基準をしっかり理解することが大切です。また、法務部門の経験者や公認会計士、内部監査の経験者は、常勤監査役として活躍しやすいでしょう。まずは自分の経験やスキルがどのような企業にマッチするのかを分析することから始めてみてください。

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WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。