「監査役会にはどのような役割があるのだろう?」と疑問に感じる方もいるでしょう。監査役会とは、企業が適切な経営を行っているかどうかを監視する組織です。監査役会を設置して監査体制を強化することで、企業の信用を高めることにつながります。
この記事では、監査役会について詳しく解説します。取締役会との違いや、設置することで得られるメリット・デメリットについてもまとめたので、ぜひ最後までご覧ください。
監査役会とは、企業が適切な経営を行っているかを監視・チェックするための組織です。とくに、大規模な株式会社では設置が義務付けられており、法令遵守や健全な経営を支えるうえで、なくてはならない存在といえるでしょう。
以下で、監査役会の主な役割や設置義務について、詳しく解説します。
監査役会の主な役割は以下のとおりです。
監査役会では、取締役や執行役が業務を適切に遂行しているか、財務諸表が正確で公正に作成されているかを確認します。株主や投資家に信頼できる情報を提供するために欠かせない役割です。
また、企業がリスクを的確に管理し、法令を守る仕組みが機能しているかをチェックするのも役割の一つといえます。これらの取り組みを通じて、監査役会は企業が株主や社会から信頼される基盤を支えているのです。
監査役会は、すべての企業に設置が義務付けられているわけではありません。設置が必要になるのは、次の条件を満たす株式会社です。
資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の企業が該当します。こうした大規模な会社では、経営の透明性を確保するために監査役会の設置が必須とされています。
株式を一般の人々に公開している企業です。株主や投資家を保護するため、監査役会を設置することが求められます。
公開会社と大会社の定義は、上場会社の定義とは異なるため注意が必要です。上場していなくても、公開会社や大会社のいずれかに該当する場合があります。
監査役会と取締役会は、それぞれの役割や目的が明確に異なります。取締役会は「会社の経営方針や重要な意思決定を行う場」であり、監査役会は「その経営が適切に行われているかを監視する場」です。両者の役割を正しく理解することで、企業ガバナンスの全体像をより深く把握できるでしょう。
以下に、両者の違いを簡潔にまとめました。
取締役会 | 監査役会 | |
目的 | 経営方針や重要な意思決定を行う | 経営の監視や業務執行の適切性を確認 |
構成メンバー | 主に取締役(経営陣が中心) | 監査役(独立性が重視される) |
業務内容 | 経営戦略の決定や重要事項の承認 | 業務監査、会計監査 |
法的義務 | ほぼすべての株式会社で設置が義務 | 大会社や公開会社など一定条件で設置が義務 |
監査役会は、取締役会が決定した経営方針や業務執行が法令や規則に従っているかをチェックする役割を担っています。一方で、取締役会は企業の舵取りを行い、経営全体の意思決定をする場です。
このように、監査役会と取締役会はそれぞれ異なる役割を果たしつつ、互いに補完し合いながら企業の健全な運営を支えています。
混同されやすい形態として、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社があります。
以下に、それぞれの違いをわかりやすくまとめたので、確認していきましょう。
指名委員会等設置会社は、経営の透明性を高め、株主の利益をより直接的に保護するための仕組みです。監査役会設置会社との違いは以下の表のとおりです。
監査役会設置会社 | 指名委員会等設置会社 | |
構成 | 監査役会が設置され、監査役が監視を行う | 指名、監査、報酬の各委員会が設置される |
取締役の役割 | 業務執行と監督を兼務 | 業務執行は執行役が担当し、取締役は監督を担う |
独立性の確保 | 監査役の独立性が重視される | 取締役の監督機能が強化される |
導入の目的 | 経営監視を強化する | 経営の透明性向上と株主利益の保護 |
指名委員会等設置会社では、監査役の役割を果たす監査委員会が設置されており、役割が重複するため監査役会を別途設置することはできません。
「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3つの委員会を設ける必要があり、それぞれが取締役会から独立して機能します。
監査等委員会設置会社は、指名委員会等設置会社と異なり、「監査等委員会」のみを設置する会社です。監査役会設置会社との違いは以下のとおりです。
監査役会設置会社 | 監査等委員会設置会社 | |
構成 | 監査役会が設置され、監査役が監視を行う | 取締役会内に監査等委員会を設置 |
監査対象 | 業務監査と会計監査 | 主に業務監査が中心 |
独立性の確保 | 監査役の独立性が重視される | 監査等委員会に所属する取締役が監視機能を担う |
導入の目的 | 経営監視を強化する | ガバナンス強化と迅速な意思決定 |
監査等委員会は取締役の人事や報酬の決定権を持たず、主に監査機能を担いますが、取締役会での議決権を有している点が特徴です。これにより、複数の委員会を設けることなく、意思決定の透明性向上やガバナンスの強化が期待されます。
指名委員会等設置会社の導入が進まなかった背景を受け、中間的な位置付けとして新設され、監査等委員会が議決権を持つ取締役で構成される形をとっています。また、監査役会を別途設置することはできません。
監査役会設置会社は、経営の監視体制をしっかり整え、透明性を高めることを目的とした会社形態です。この仕組みの人員体制や役割、必要手続きについて、詳しくみていきましょう。
監査役会は最低3名以上の監査役によって構成されています。そのうち半数以上は社外監査役です。また、常勤の監査役が1名以上必要となります。監査役の任期は4年です。
監査役が担当するのは、業務監査(取締役や執行役が業務を適切に行っているかの確認)と会計監査(財務諸表が正確かどうかの確認)の両方です。独立性の高い監査役が担当することで、企業の内部からの圧力に左右されず、公平で効果的な監視を行うことができます。
監査役会設置会社の特徴は、経営の監視を徹底することで企業の信頼性を高める点にあります。監査役会の主な役割は以下のとおりです。
業務執行が法令や社内規定に則っているかをチェックすることで、コンプライアンスの確立を支援し、経営の健全性を保つ役割を担います。また、公正な会計監査や業務監査を行うことで、株主や投資家が安心して企業に期待を寄せられる環境を整える役割もあるでしょう。さらに、経営リスクの兆候を早い段階で察知し、必要に応じた是正措置を講じることで、企業のトラブルや危機を未然に防ぐこともできます。
監査役会は、いわば「経営の守り手」として、企業の安定的な成長を支える重要な存在といえるでしょう。
監査役会を新たに設置するための具体的な流れは以下のとおりです。
まず、監査役会を設置する旨を定款に明記する必要があります。この変更には、株主総会での特別決議が必要です。次に、株主総会で監査役を選任します。選任された監査役が就任を承諾したら、承認効力発生日から2週間以内に、株主総会議事録、定款、株主リスト、新任監査役の就任承諾書および本人確認証明書を添えて、法務局へ登記申請を行う流れです。
監査役会を設置することで、企業にとって以下のメリットがあります。以下で詳しく確認していきましょう。
監査役会を設置することで、企業の監査体制はより強固なものになります。独立性を持つ監査役が業務や会計をしっかりチェックすることで、経営の透明性が高まり、不正やリスクの芽を未然に防げるでしょう。
また、こうした取り組みを通じて、株主や投資家からの信頼を獲得しやすくなります。この信頼は、資金調達を円滑にし、市場での競争力を強化するうえで大きな武器となるでしょう。
株主数が多い会社においては、定款で定めることにより剰余金配当を取締役会決議で行えるのもメリットといえるでしょう。監査役会を設置することで、利益配分を柔軟に行うことができます。ただし、監査役会・取締役会・会計監査人を置く会社で取締役の任期が1年となっており、会計監査人の無限定適正意見、監査役会の会計監査人の監査の方法・結果を相当でないと認める意見がないことなどが必要です。
株主への利益分配を公正に行える仕組みが整うことで、社内外からの信頼を得やすくなります。こうした取り組みが、社内の結束力を強化し、企業の持続的な成長につながる重要な要素となるでしょう。
一方で、監査役会を設置するデメリットも存在します。監査役会を設置するには、人材の確保と人件費の負担増加が課題となる場合があるでしょう。
監査役には専門知識や高い独立性が求められるため、適任者を見つけるのは簡単ではありません。中でも中小企業では、候補者の選定や採用が思うように進まないこともあるでしょう。
また、監査役を配置することで、当然ながら人件費がかさみます。それに加え、監査役会の運営や関連業務を支えるための費用も必要となり、企業の財務に一定の負担がかかることを理解しておきましょう。
監査役会は、企業が法令を守りつつ、健全な経営を進めるうえで欠かせない仕組みです。監査役会が設置されているかどうかや、その運用状況を確認することで、その企業のガバナンス体制や内部管理の強さを評価できます。また、監査役会がしっかりと機能している企業は、投資家や市場からの信頼が厚く、成長性が期待されることが多いでしょう。
企業の本質を見抜く視点を養うことが、より良い選択につながります。監査役会のメリットや課題を正しく理解し、それを自分のキャリア形成や企業選びの判断材料として活用しましょう。
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