「監査役って、取締役会に毎回出席しないといけないの?」「もし欠席したら、会社の意思決定に影響は出るのかな……」とお悩みの方もいるでしょう。取締役会と監査役は、それぞれ独立した立場でありながら、企業運営においては密接につながっています。
この記事では、監査役と取締役会の関係性を解説します。職務や権限の詳細、欠席時の影響を実務に役立つ視点でわかりやすく紹介するので、参考にしてみてください。
監査役と取締役会は、企業ガバナンスを支える両輪です。それぞれが果たすべき役割を理解することで、適切な意思決定と健全な組織運営が可能になります。それでは、両者の役割の違いや関係について詳しく見ていきましょう。
取締役会と監査役は、それぞれ「経営判断を行う者」と「その判断を監視する者」という関係にあります。取締役会は会社の業務執行の基本方針や重要な意思決定を行う一方、監査役は取締役が職務を適切に遂行しているかをチェックし、違法行為や経営上の不備がないかを確認。監査役は取締役会に出席し、議論の経緯や判断の妥当性に対して意見を述べることで、企業統治の一翼を担っています。この関係性がしっかり機能することで、経営の透明性が保たれ、ステークホルダーの信頼にもつながっているのです。
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会社法によると、取締役会を設置している株式会社には、原則として監査役の設置が求められています。とくに、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)の場合は、会計監査人とともに監査役も必須です。これにより、経営の意思決定を行う取締役会と、それを外部的立場でチェックする監査役の牽制関係が成立します。
ただし、非上場の中小企業では、取締役会や監査役の設置義務はありません。そのため、企業規模や将来的な資本政策を見据えて、監査役の設置を検討することが重要です。制度上必須でなくても、第三者による監視機能を持つことには大きな意義があります。
監査役は原則として取締役会に出席し、意見を述べる立場にあります。しかし、やむを得ず欠席した場合、その影響は決して小さくありません。以下では、監査役の欠席による取締役会への影響を具体的に見ていきます。
監査役が取締役会に出席できない場合、会議の進行や決議そのものに法的支障は生じませんが、その欠席は組織運営上のリスクと見なされる可能性があるでしょう。監査役は、経営上の重要な判断がなされる場に立ち会い、必要に応じて指摘や意見を述べる役割です。その役割が欠けることで、取締役会のチェック機能が不十分と評価される恐れがあります。また、後に不正やトラブルが発覚した際に、「なぜ監査役は出席していなかったのか」という説明責任が問われることもあるでしょう。したがって、やむを得ない事情がある場合でも、事前に議題を確認し、意見書の提出などの対応を講じることが望まれます。
監査役の欠席は、取締役会の「決議そのもの」の効力には影響しません。会社法では、取締役会の決議は出席取締役の過半数によって成立し、監査役は議決権を持たないためです。したがって、形式上は監査役不在でも会議を成立させることができます。
しかし、実務上はまったく別の話です。とくに不祥事リスクがある議題や経営判断において、監査役の出席・意見陳述がなかった場合、社内外から「チェック機能が働いていなかった」と疑念を持たれる可能性があります。また、監査役の指摘があれば回避できたリスクに後から気づくことも。法的効力には影響しなくとも、ガバナンス体制としての信頼性には影響があると認識しておくべきです。
監査役は、企業が健全に運営されるための「最後の砦」ともいえる存在です。経営に直接関与せず、外から取締役の動きをチェックするという独自の立場にあるからこそ、備わっている権限も明確に定められています。監査役の権限と義務について詳しく確認していきましょう。
監査役には、取締役や従業員から業務内容の報告を受けることができたり、必要な書類をチェックできたりする調査権限があります。これらはすべて、取締役が法律や定款に沿って仕事をしているかを確認するために与えられたものです。
また、問題が見つかったときには、それを取締役会や株主総会に報告する義務もあります。つまり、「気づいたけれど、何もしなかった」は許されません。会計監査人と協力しながら、経理まわりをチェックする場合もあるでしょう。こうした権限は決して無制限ではありませんが、きちんと使えば、企業にとって強力な守り手となるのです。
監査役の仕事は、取締役会とのつながりを抜きにしては語れません。監査役には、取締役会に出席して内容を把握し、必要があれば意見を述べる責任があります。会議で何が決まったかを「あとから知る」のではなく、「その場にいて、違和感を感じ取る」ことが重要なのです。
とくに、議題が経営の方向性や組織改編など重大なものであればあるほど、監査役の視点は組織にとって貴重なブレーキ役になります。もし異論や懸念がある場合は、その場で発言するだけでなく、議事録にしっかり記録しておくことも大切です。
体調不良や予定の都合などで、監査役が取締役会に出席できないこともあるでしょう。その場合、「欠席したから仕方ない」で済ませてしまうと、あとから思わぬ問題に発展することがあります。欠席を補うためのポイントをチェックしておきましょう。
取締役会を欠席する場合でも、監査役としての責任がなくなるわけではありません。事前に議題を確認し、自分の意見や懸念がある場合には、書面などで伝えておくのが理想です。それを会議の場で読み上げてもらったり、議事録に添付してもらったりすることで、自分の立場や見解がきちんと残せます。
また、会議のあとには議事録を確認し、必要があればコメントや訂正意見を追加するなど、事後対応も忘れずに行いたいところです。とくに、M&Aや経営方針の転換など重要な議案が扱われる場合は、可能なかぎり出席すべきでしょう。
欠席は避けられないとしても、「黙って休む」のではなく、何らかの意思表示を残しておくことが、監査役としての信頼につながります。
取締役会を開かずに全員の同意で物事を決める「書面決議」は、便利な反面、注意も必要です。
監査役は通常、書面決議の直接的な当事者ではありませんが、だからといって関係ないとは言えません。議題の内容が法的に問題ないか、リスクが潜んでいないかなどを確認するために、あらかじめ議案の内容を共有してもらう必要があります。
とくに、「この議案はちょっと危ないかもしれない」と感じたときには、その意見を取締役や代表者に書面で伝えておくことが大切です。実際に決議に参加できないからこそ、「声を届ける手段」を意識しておくべきでしょう。
書面決議が多用される環境では、監査役の影が薄くなりがちですが、だからこそ一歩踏み込んだ対応が求められます。
取締役会と監査役は、どちらも企業の健全な経営に欠かせない存在ですが、その役割はまったく異なります。以下でそれぞれの役割をみていきましょう。
取締役会は「経営判断を下す立場」、監査役は「それを外から監視する立場」です。取締役会は、企業の経営方針や重要な業務執行について意思決定し、その一方で監査役は取締役の業務が適切に行われているかをチェックする責任があります。権限の範囲も目的もまったく異なるといえるでしょう。
たとえば、取締役は会社の利益や成長を目的に行動しますが、監査役は経営陣が法令や定款に従って行動しているかを注視し、不正や不適切な行為を未然に防ぐ役割です。両者は互いに独立した立場であるものの、どちらかが機能不全に陥ると、企業ガバナンス全体に影響があります。だからこそ、それぞれの責任範囲と立ち位置を明確に理解し、役割を果たすことが求められるのです。
監査役と取締役会が健全な関係を保つには、距離を取りつつ、必要な場面ではしっかりと関与するバランス感覚が求められます。
取締役会で監査役が意見を述べることはできますが、議決権はありません。つまり、発言はできても意思決定に直接影響を与えるわけではないという微妙な立場にあります。そのため、関係性を築くうえでは、単なるチェック機関として構えるのではなく、経営陣と一定の信頼関係を保ちつつ、冷静な視点で適切なタイミングでの指摘や助言を行う姿勢が重要です。
たとえば、日頃から情報共有の場を設け、取締役と対話の機会を持つことで、必要な時に建設的な提言ができるようになります。監査役が孤立してしまうと、本来果たすべき監視機能もうまく作用しません。関係性は「近すぎず、遠すぎず」。緊張感と信頼感、その両方をバランスよく維持していくことが、実効性のある監査につながるでしょう。
ここからは、法律的な要件と実務的な関わり方の両面から整理していきます。監査役と取締役会の決議要件についてみていきましょう。
会社法によると、取締役会の決議は「取締役の過半数の出席」と「出席取締役の過半数の賛成」で成立します。ここでのポイントは、監査役には議決権がないという点です。つまり、監査役が出席していなくても、取締役会の決議は法律上成立するということになります。ただし、それで「すべて問題ない」とは言い切れないでしょう。
たとえば、不祥事やリスクのある案件に対して、監査役が一切関与していなかった場合、後から「チェック機能が働いていなかったのでは?」と批判を受けることも考えられます。実務においては、たとえ形式的に議決に関与できなくても、監査役がその場にいてプロセスを見届けていること自体が、企業の透明性を支える要素となるのです。法律と現場運用、その両方を意識した立ち回りが求められます。
監査役は取締役会で意見を述べることができます。この「意見陳述」は、ガバナンス上とても重要だといえるでしょう。たとえば、取締役が提出する議案に対して「この内容には法的な問題があるのではないか」「情報開示の観点でリスクがある」といった懸念を口にすることで、取締役の判断にブレーキがかかることもあります。
この発言が記録に残されることで、「監査役が警鐘を鳴らしていた」という証拠にもなります。逆に、黙っていたことが後々の説明責任に響くケースも少なくありません。意見を述べることは義務ではありませんが、状況によっては義務に準じる行為とも言えます。沈黙ではなく、必要なときに必要な言葉を残す、責任ある姿勢が求められているでしょう。
ここまで見てきたとおり、監査役と取締役会は「意思決定する側」と「それを監視する側」という明確な役割分担があります。ただ、その関係性は単なる対立構造ではなく、適切に連携することで企業のリスクを減らし、信頼性を高めるパートナーでもあるといえるでしょう。
監査役がしっかりと自らの立場を理解し、適切なタイミングで発言し、経営陣と建設的に関わっていくことが、企業ガバナンスを実のあるものに育てていきます。これらをよく理解し、適切な運営をしていきましょう。
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