「社外監査役の報酬はどれくらい?」と気になる方もいるでしょう。監査役としてのキャリアを考えるうえで、収入面は気になるポイントです。非常勤と常勤では報酬に大きな差があり、企業の規模や業務内容によっても異なります。さらに、報酬がどのように決まるのか、どんな基準で評価されるのかを知っておくことも大切です。
この記事では、社外監査役の報酬相場や決定プロセス、報酬額に影響を与える要素を詳しく解説します。監査役としての働き方を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
社外監査役の報酬は、勤務形態や企業の規模によって大きく異なります。以下で、非常勤および常勤の社外監査役の報酬相場を詳しくみていきましょう。
非常勤の社外監査役の報酬は、年間200万円未満から500万円未満が一般的です。具体的なデータを以下に示します。
~200万円未満 | 562社(31.5%) |
---|---|
200万円~500万円未満 | 709社(39.7%) |
500万円~750万円未満 | 286社(16.0%) |
750万円~1,000万円未満 | 114社(6.4%) |
1,000万円~1,250万円未満 | 73社(4.1%) |
1,250万円~1,500万円未満 | 27社(1.5%) |
1,500万円~1,750万円未満 | 9社(0.5%) |
1,750万円~2,000万円未満 | 1社(0.1%) |
2,000万円~2,500万円未満 | 3社(0.2%) |
2,500万円~3,000万円未満 | 1社(0.1%) |
3,000万円以上 | 0社(0.0%) |
引用:公益社団法人日本監査役協会「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて」
このデータから、非常勤の社外監査役の報酬は200万円〜500万円未満が最多です。 非常勤の監査役は、通常月に数回の取締役会や監査役会に出席し、企業の経営監視を行います。業務量に応じて日当制や出席手当が加算されるケースもあり、企業ごとの報酬体系を確認することが重要です。
常勤の社外監査役の報酬は、非常勤よりも高く設定される傾向があります。具体的なデータは以下のとおりです。
~200万円未満 | 10社(1.4%) |
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200万円~500万円未満 | 87社(11.9%) |
500万円~750万円未満 | 150社(20.5%) |
750万円~1,000万円未満 | 108社(14.8%) |
1,000万円~1,250万円未満 | 137社(18.8%) |
1,250万円~1,500万円未満 | 73社(10.0%) |
1,500万円~1,750万円未満 | 56社(7.7%) |
1,750万円~2,000万円未満 | 41社(5.6%) |
2,000万円~2,500万円未満 | 49社(6.7%) |
2,500万円~3,000万円未満 | 12社(1.6%) |
3,000万円以上 | 7社(1.0%) |
引用:公益社団法人日本監査役協会「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて」
このデータから、常勤の社外監査役の報酬は、500万円〜750万円未満が最も多いことがわかります。常勤の社外監査役は、企業の内部監査やガバナンス強化の役割を担い、日常的に監査業務に従事します。内部統制の構築や経営リスクの評価など、多岐にわたる業務を担当するため、責任の重さが報酬にも反映されています。
上場企業と非上場企業では、社外監査役の報酬に差が見られます。上場企業では、コーポレートガバナンスの強化や透明性の確保が求められるため、報酬が高めに設定される傾向にあるでしょう。一方、非上場企業では、企業の規模や業績に応じて報酬が設定されるため、上場企業よりも低めの報酬となることが一般的です。
社外監査役の報酬は、法的な手続きや企業の状況、個々の役割や責任範囲など、さまざまな要素によって決定されます。以下で、主な影響要素について確認していきましょう。
社外監査役の報酬は、会社法に基づき、定款の定めや株主総会の決議によって決定されます。具体的なプロセスは以下のとおりです。
これらのプロセスを経て、監査役の報酬が適正に決定されます。
監査役の報酬額は、以下の要素が影響して決定されます。
大企業や上場企業ほど、報酬水準が高くなる傾向があります。また、金融業や製造業など、監査業務の負担が大きい業界では報酬が高めに設定されることが多いでしょう。さらに、財務や法務、コンプライアンスの専門知識を持つ監査役は、より高額な報酬を受け取ることができます。監査役会の出席頻度や、内部監査との連携など、実際の業務負担によっても報酬は異なるでしょう。
社外監査役の報酬は、業務量や責任の重さに応じて決定されるものです。たとえば、以下のような要因が報酬決定に影響を与えるでしょう。
このように、社外監査役の報酬は単に固定給として決められるのではなく、業務内容や責任の大きさに応じて適正に決められます。企業の報酬制度を確認し、自身のスキルや経験を活かせる環境を選ぶことが重要です。
社外監査役の報酬は、基本報酬を中心に、賞与や株式報酬、退職慰労金などが組み合わさっています。それぞれの仕組みを理解し、報酬体系の特徴を押さえておきましょう。
社外監査役の報酬は、固定給として支払われるのが一般的です。取締役とは異なり、監査役は業績連動報酬を受け取らず、一定額の報酬を得る形が基本とされています。
支払いは月額または年額で設定され、企業によっては監査役会や取締役会への出席回数に応じて日当が加算されることもあります。監査役の業務負担に応じて、報酬額に差が生じる点も特徴です。企業によっては、監査役の業務を委託契約として処理し、業務委託報酬として支払うケースもあります。企業ごとの方針や監査役の役割に応じて報酬形態が決まるため、就任前にしっかり確認しておくことが大切です。
原則として、社外監査役の報酬は企業の業績とは連動しません。これは、監査役の独立性を守り、公正な監査業務を遂行するための措置です。ただし、一部の企業では、監査役にも業績を反映した賞与を支給することがあります。
とくに海外では、監査役に一定の業績評価を適用する企業が増えており、日本でも一部の企業が導入を検討しています。しかし、業績と報酬を直接結びつけると監査の公平性が損なわれる可能性があるため、多くの企業では慎重な姿勢をとっています。
監査役の株式報酬は、取締役のように一般的なものではありません。ストックオプション付与を行っている企業は少なく、全体の5.8%ほどにとどまっています。これは、監査役が株価の変動に直接影響を受けると、公正な監査が行えなくなる可能性があるためです。
ただし、一部のスタートアップ企業や新興企業では、ストックオプションや株式交付信託を活用し、監査役に長期的な視点で企業価値向上を意識してもらう仕組みを導入しています。
株式報酬を採用する場合、会社法上の規制や監査役の独立性を考慮する必要があり、慎重な運用が求められます。導入を検討している企業では、他社事例を踏まえて適正なルールを整備することが重要です。
参考:公益社団法人日本監査役協会「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて」
退職慰労金の金額は、在任期間や企業ごとの方針によって異なりますが、かつては年額報酬の2〜3年分を目安に設定されることが多かったようです。現在では固定報酬に一本化し、退職慰労金を廃止する企業もあります。退職慰労金の支給制度がある企業は4割(43.0%)程度です。
また、監査役には、業務上のリスクを補償するD&O保険(役員賠償責任保険)への加入が一般的です。これにより、監査業務に関連した訴訟リスクへの備えが可能になります。その他、交通費や研修費用の会社負担なども福利厚生の一環として提供されることが多く、実質的な報酬に含まれるケースもあるでしょう。
監査法人で非常勤監査役として働く場合、企業の社外監査役とは報酬体系や業務内容が異なります。監査法人における非常勤監査役の報酬について、具体的な相場や注意点を確認しておきましょう。
監査法人の非常勤監査役は、時給制や日当制が基本となり、時給4,000円〜10,000円程度が一般的な相場とされています。報酬額は、業務経験やスキルに応じて異なり、特に公認会計士資格を持つ人材は高額報酬を得ることが可能です。
非常勤監査役は、特定の企業の監査業務を担当するのではなく、監査法人のチームの一員として、複数の企業の監査を担当することが多いでしょう。そのため、繁忙期には長時間労働が発生することもあります。とくに決算期(3月や9月)は業務負担が増えるため、柔軟な働き方が求められます。
監査法人での非常勤勤務と企業の社外監査役には、以下のような違いがあります。
監査法人非常勤 | 企業の社外監査役 | |
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役割 | 監査業務の補助 | 経営監視・監査 |
勤務形態 | 時給制・短期契約が多い | 年間契約が基本 |
報酬 | 時給4,000円~10,000円 | 年間200万円~750万円 |
責任範囲 | 監査業務に限定 | 経営判断の監視も含む |
必要資格 | 公認会計士が多い | 資格不要な場合もある |
監査法人の非常勤監査役は、柔軟な働き方が可能な点が特徴ですが、安定した収入を得るためには複数の契約を掛け持ちするケースもあるでしょう。
社外監査役の報酬は、企業の規模や業務内容、監査役の経験や専門性によって大きく異なります。自分のスキルやキャリアプランに応じて、どのような報酬体系が適しているのかを検討することが大切です。
「非常勤で掛け持ちするか、一社に専念するか」「どの業界・企業の監査役を目指すか」などの視点を持ちながら、自分に合った働き方を選びましょう。適正な報酬を得ながら、監査役としてのキャリアを充実させるための参考になれば幸いです。
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