「監査役は資格がないと就けないの?」「どのような人が選ばれるんだろう?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。実は、監査役になるのに必須の資格はありません。ただし、会社の信頼性や内部統制に深く関わる立場だからこそ、専門的な知識や経験がある人材が求められるのも事実です。
この記事では、監査役にふさわしい人物像や実務で役立つ資格について、わかりやすく解説します。選任の参考にしたい方や、これから目指したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
企業の内部統制や法令遵守を支える監査役は、経営の健全性を確保する重要な存在です。ここでは、監査役の基本的な業務や役割、設置義務についてわかりやすく解説します。
監査役の業務は取締役の職務執行を監視・確認することです。具体的には、取締役会や株主総会への出席、重要な意思決定の内容確認、会計帳簿や業務記録の閲覧、必要に応じた実地調査などを行います。これにより、経営が法令や定款に則って適切に運営されているかをチェック。報告徴収や業務監査を通して、不正や誤りを未然に防ぐ仕組みを整える役割も担っています。
監査役の本質的な役割は「会社の番人」であることです。会社が法的に正しく、公平に運営されるように目を光らせ、経営陣の判断に問題があれば報告や是正勧告を行います。株主や取引先などのステークホルダーにとっても、監査役の存在は企業の信頼性を支える重要な要素です。中でも社外監査役の場合は、より客観的な視点からの判断が期待されます。
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公開会社(株式を市場で取引している会社)で、かつ資本金5億円以上または負債200億円以上の大会社は、監査役を置くことが法的に義務づけられています。また、監査役会を設置する場合は3人以上が必要で、その半数以上は社外監査役とし、うち1人は常勤でなければなりません。一方、非公開の中小企業では任意設置となりますが、近年ではガバナンス強化の観点から導入するケースも増えています。
監査役には法律上の資格要件はありませんが、実務上は専門知識や経験が重視されます。以下で、資格や役立つスキルについて確認していきましょう。
監査役になるためには、特別な資格が必要だと考える人も多いでしょう。しかしそのようなことはなく、監査役になるために特定の資格を取得する必要はありません。法律上は「誰でも監査役になれる」ことになっています。会社法では監査役の資格について明確な要件は定められておらず、原則として誰でも選任可能です。
ただし、会社法で定められた「欠格事由」に該当する場合は就任できません。たとえば、法人そのもの、成年被後見人、過去に重大な法令違反で刑を受けた者などは対象外となります。無資格でも選任できるものの、企業としては適切な能力を持つ人材を選ぶ責任があるでしょう。
監査役に必須ではないものの、下記のような資格は非常に有利に働きます。
公認会計士(CPA) | 財務諸表監査のプロフェッショナルであり、数字から企業の健全性を見抜く力があります。 |
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弁護士 | 法令違反の有無を見極めるうえで、法的知識と分析力は大きな武器となります。 |
税理士 | 税務リスクへの対応力があり、経営判断の裏付けとして活躍できます。 |
内部監査士(CIA)やコンプライアンス関連資格 | 内部統制やリスクマネジメントの視点を持ち、組織運営に実務的に関与できます。 |
これらの資格は、信頼性の高い監査を実現し、企業のガバナンス体制を強化するうえで有効です。
監査役には資格が必須ではないとはいえ、特定の専門資格を持っていることで信頼性や実務力が大きく向上します。ここでは、とくに評価されやすい資格と、それぞれがもたらすメリットをみていきましょう。
公認会計士は、会計と監査のプロフェッショナルです。財務諸表の信頼性や内部統制の妥当性を的確に評価する力があるため、会計監査において極めて高い専門性を発揮します。とくにIPO(株式上場)を目指す企業や、大規模な財務活動を行う会社では、監査役に公認会計士が就任していると社外への信頼度が格段に上がるでしょう。金融機関や投資家に対する説明責任も果たしやすくなるのが大きな強みです。
弁護士は法令や契約、紛争対応などに精通した法律の専門家です。監査役として法的リスクのチェックやコンプライアンス体制の評価を担う場面では、弁護士の目線が大きな力になります。中でも、取締役会の意思決定が法的に妥当かどうか、企業の行為が法令違反に当たらないかなどを判断できる点が評価されます。最近では、不祥事防止の観点から、企業外部から社外監査役として弁護士を招くケースも増加傾向にあるようです。
税理士は、税務申告や税務調査対応のプロです。企業経営において、適正な納税義務の遂行や税務リスクの管理は非常に重要といえます。監査役が税理士資格を持っていれば、法人税や消費税、移転価格税制といった複雑な分野にも強く、会計監査と併せて税務の側面からもリスクチェックが可能です。とくに、中堅・中小企業にとっては、実務に即したアドバイスができる存在として重宝されるでしょう。
監査役の選任は、法律に基づいた厳格なプロセスが求められます。ここではその選任方法と関連するルールをみていきましょう。
監査役は、株主総会によって正式に選任される会社法上の役員です。
先述の通り、資格そのものは不要ですが、就任には欠格事由に該当しないことが条件となります。会社法335条1項・331条各号によれば、以下の人は監査役になれません。
また、監査役の適格性については、会社の定款や取締役会の方針で細かく規定されている場合があります。社外監査役の場合、「過去にその会社や子会社の役員でなかったこと」など独立性に関する要件も求められるでしょう。
▼監査役の選任方法について詳しくはこちら
常勤監査役の選定方法|設置対象となる会社や向いている人を解説
監査役はほかの役職と兼任できない場合が多いでしょう。会社法により、監査役は当該会社の取締役・会計参与・支配人・その他使用人を兼ねてはならないと定められています。これは、監査役が独立した立場から取締役の職務を監督する必要があるためです。ただし、親会社の監査役が子会社の役員を兼任する場合など、一部例外も存在します。兼任の可否は企業グループ全体のガバナンス体制にも関わるため、慎重な判断が求められるでしょう。
監査役会は、3名以上の監査役で構成される組織で、公開会社かつ大会社である株式会社で設置が義務づけられています。その中で少なくとも半数は社外監査役でなければならず、また1名以上の常勤監査役が必要です。監査役会では、各監査役の業務分担や調査結果の報告、意見交換などを通じて、より効果的な監査を行います。組織的な監査体制を整えることで、単独では見逃しがちなリスクや問題点を早期に発見・対処することが可能です。
監査役に就任するための資格は法律上定められていませんが、実務では専門性の高さが求められます。監査役として信頼されるには、「形式的な資格の有無」よりも、「資格を活かした実践力」が問われると言えるでしょう。自社にとって必要な専門性や視点を持つ人材を選ぶことが、ガバナンス強化への第一歩になります。
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