財務部は、会社の経営状態を把握して今後の予想と財務戦略を立て、必要に応じて資金調達を行う部署です。働く方にとっては待遇がよく、人気のコンサルタント職になるキャリアプランにも役立ちます。しかし、財務部への転職は一般に難しいのが事実です。
この記事では、財務部への転職が難しい理由と一緒に、財務部への転職を成功させるために役立つスキルと成功のポイントについて紹介します。税務部への転職を希望している方はぜひ参考にしてください。
財務部への転職は非常に困難です。まれに転職サイトに財務部の求人が掲載されることがありますが、条件が合わないと感じて応募しない方もたくさんいるでしょう。財務部への転職が難しい理由としてよく挙げられるのは、次の4つです。
財務部への転職が難しい理由
財務の仕事に必須の資格はありませんが、採用については経験者が圧倒的に有利です。実際に財務の転職求人を見るとわかりますが、ほとんどの企業は財務の仕事を5~10年程度経験している方を求めています。
また、財務部は相応に高いスキルが求められる部署です。未経験の方や経理の経験しかない方が採用される可能性は相当に低いと考えましょう。しかし、若い方・財務に有利な資格を持っている方・財務と近い仕事をしてきた方なら少し採用の可能性が高くなります。しっかり作戦を練って転職活動に挑むのも成功のコツです。
財務部への転職を希望する場合、経理の実務経験があっても充分なアピールにはなりません。経理と財務はどちらも企業のお金を扱う部署ですが、業務内容は全く異なります。それぞれの具体的な業務内容は以下の通りです。
【財務の主な仕事内容】
【経理の主な仕事内容】
財務は会社が事業をするための資金を集める、経理は会社が使った経費の管理をする仕事です。財務は経理のデータを使いながら仕事をしますが、実際に仕事をするには財務諸表を理解・分析する会計知識・交渉力・コミュニケーション力が求められます。経理の知識だけでは財務の仕事をするのに不十分です。
財務の仕事は、マネジメント能力や組織パフォーマンスを最適化する能力も求められます。実際にある財務の求人でも、マネージャー職や幹部候補の募集・マネジメント経験がある方を優遇、あるいは必須と書かれえているものが多いのが事実です。
財務はエリートが多い部署で、財務部のトップはCFO(最高財務責任者)と呼ばれます。CFOはCEOへの足掛かりになりえるポジションです。財務部には非常にハイレベルな人材が求められていると考えてください。
財務部の求人が少ない理由は、財務部がある会社が少ないこと、社内でも配属される人員数が少ないことの2つが挙げられます。経理部はどんな企業にもありますが、財務部があるのは大企業が中心です。中小企業で財務部を独立した部署として設置しているところはほとんどありません。
財務部に限らず、管理部門と呼ばれる部署はどちらの企業も少人数で仕事をこなしています。相当な大企業でも財務部にたくさんの人材を配置していないのが事実です。
財務部は経験者を求める企業がほとんどなので、未経験歓迎とうたう求人はあまりないのが事実です。仮に未経験可の求人があっても、応募が集中します。未経験可の求人に経験者が応募するのは可能なので、未経験者が採用される可能性は相当に低いでしょう。しかし、未経験から財務部への転職は絶対に不可能というわけではありません。
未経験から財務部に転職する方法
財務部未経験の方が財務部への転職を目指す場合は、上記の3点を意識して求人を探しましょう。この下で詳しく説明します。
財務の経験がなくても、財務の仕事内容と関係性が深い職種を経験していれば転職できる可能性が高くなります。具体的には、銀行員・中小企業診断士・日商簿記2級以上・ファイナンシャルプランナー・税理士・公認会計士などです。
税理士や公認会計士の資格を持っている方は少ないですが、企業にこれらの資格を持つ方がいると、取引先の信用が上がって融資を得やすくなったりします。資格を持っていたら忘れず履歴書や職務経歴書に書きましょう。
財務の仕事に役立つ資格は、以下の表に挙げるようなものです。
資格の種類 | 難易度 | 証明できる内容 |
---|---|---|
日商簿記3級~1級 | ★★★★ | 財務諸表を作成する能力財務諸表を読む力 |
ビジネス会計検定3級~1級 | ★★★ | 財務諸表が表す数値を理解・分析する力 |
中小企業診断士 | ★★★★★★★ | 中小企業の経営についてコンサルタントする力 |
ファイナンシャルプランナー3級~1級 | ★★★★ | 資産運用・税金・保険・不動産等に関する知識がある |
FASS検定レベルE~レベルA | ★★★★ | 資産・決算・税務・資金など実務レベルの経理・財務のスキルがある |
公認会計士 | ★★★★★★★ | 財務諸表の監査・会計・税務・コンサルティングができる |
税理士 | ★★★★★★★ | 税務上の知識がある・決算書の作成や納税申告の代行ができる |
級に分かれている資格については、できるだけ上の級を目指しましょう。日商簿記なら2級以上でないとアピールの材料になりません。ビジネス会計検定も2級程度が目安です。FASS検定は試験の総点数を5段階で分類してスキル評価します。中小企業の間ではまだ知名度が低く、取得者も少ない資格です。Bランク以上なら、経理や財務の仕事について十分な理解と業務の技能があると証明できるのでぜひチャレンジしてみましょう。
ファイナンシャルプランナーは個人向けの内容ですが、2級になると財務と重なる分野が多く出題されます。資格を取得すると経理業務の知識と一緒にアピールできるのもよいところです。
公認会計士・税理士はどちらも難関資格です。税理士を名乗るには実務経験が必要ですが※、転職の場合は科目合格だけでも有利とされています。公認会計士の資格があると会計・税務・コンサルティングのほか、有資格者ならではの業務である監査ができるので企業で重宝されるでしょう。
※いくつかの方法があるうち、一般的な方法の場合
参考:FASS検定(経理・財務スキル検定)とは?概要やメリット、転職での活かし方
大企業では経理と財務を別々の部署として設置していますが、中小企業やベンチャーの場合は兼任させているケースがよくあります。経理の経験しかない方でも、経理と財務を兼任させている企業なら財務に関われる仕事への転職が高くなる可能性があるので、探してみましょう。
財務に転職するには、豊富な経験と知識が重要です。応募するのに十分なキャリアやスキルがない場合は、経理職からのステップアップを目指しましょう。
経理は財務と比べて採用の間口が広く、会計処理・決算業務・税務申告などの基本的な経理業務を学べます。経理の仕事に付就けたら、実際に仕事をしながら財務諸表の作成など財務の仕事に必要な知識やスキルを少しずつ覚えていきましょう。同時に、財務に有利な資格を取得するのもおすすめです。
財務部の仕事に必須とされるスキルは企業によって少しずつ異なるのが事実です。しかし、以下に挙げる4つのスキルは、どちらの企業も共通して転職者に求めています。
財務部への転職に必要なスキル
財務の仕事では、知識や分析力などのハード面だけでなく、コミュニケーション力のようなソフト面のスキルも求められます。面接でいままでの職務で行ったことを具体例に挙げてアピールすると、採用の可能性が高くなるでしょう。
財務の仕事をするには、経営・金融・会計・法律の知識が必要不可欠です。経営や会計の知識がないと、財務分析や財務戦略を立てる業務ができなくなります。金融の知識は資金調達の業務に必要です。
経理の実務をしていれば帳簿上のお金の処理はできるようになりますが、お金の集め方や使い方の知識を身に付けるのは難しいのが事実です。財務戦略の業務では企業戦略の方針・方向性を決めます。財務戦略は経営的な判断となるので、経営者の視点や、経営の基礎をしっかり身に着けておきましょう。
日本には、会社の会計に関する法律が定められています。財務や経理の仕事をするなら、会社法・金融商品取引法・法人税法の3つについては特にしっかり身に着けてください。
財務戦略の立案は、会社の収益性・安全性・生産性・成長性を分析し、自社の問題点の発見・解決策の提案・競合企業との比較をする業務です。貸借対照表や損益計算書等の財務諸表を分析する能力と、財務諸表を分析した結果から正確に自社の現状と問題点把握する能力がいります。正確に分析・把握ができないと会社経営をよい方向に導けません。
財務の大きな業務は財務諸表の分析だけでなく、M&Aの財務分析・企業価値の分析もあります。M&Aは株式移動など資金の移動を伴う企業の合併や買収の意味です。財務の職員には企業がM&Aを円満に実行できるよう、3期~10期と長期に渡る譲渡企業の貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書から分析する力と、適切な買収価格を算出する力が求められます。
どんな仕事でもコミュニケーション力は求めらますが、財務の仕事では上司・部下など社内の関係だけでなく、関係先や銀行など他社の方とのコミュニケーション力もが必要です。具体的に挙げると、財務データ分析の結果・データ分析から得られた問題点・今後の見通し・今後取るべき対策など事実を伝える力・上司などに質問し、議論する力・他社の方と交渉・折衝・相手を納得させる力になります。
仕事の成功に導くコミュニケーションを取るには、仕事で関わる相手と普段から良好な関係を築くのはもちろん、チームワークを円滑にする力やリーダーシップを発揮する力も必要です。
財務は強い正義感と道徳心を備えた方に適した仕事です。財務はお金を扱い、企業を健全に運営・発展させていくのが役目なので、不正を許さない気質の持ち主がいると喜ばれるでしょう。正義感や道徳観のほかには、細かいお金のデータを正確に読読み取る注意深さや几帳面さも必要です。
財務部への転職に成功するには、自分のスキルや経験をしっかりアピールでき履歴書や職務経歴書を書く以外にしておくべきことが3つあります。ポイントにごとに解説するので参考にしてください。
財務部への転職を成功させるコツ
財務を含め、経理系の求人は毎年1~2月と7~8月に多くなる傾向があります。財務への転職活動をするなら、7~8月がおすすめです。7~8月は中期決算前で財務・経理・経理のどちらも1年で最も仕事であること、決算や株主総会が終わって退職する方が出てくる時期であることから、企業も新しい人員の獲得に力を入れます。
1~2月に多くなるのは、決算や株主総会などの忙しい業務がない時期だからです。逆に、決算や株主総会が行われる4~6月は経理系の部署にとって繁盛期にあたり、求人数は非常に少なくなります。
どんな職種でも、転職希望者が増えるのは3月です。年度末は経理系の部署にとって一年の決算が終わる時期にあります。株主総会の準備で忙しい時期は少し先なので、3月をめどに転職活動を始める方が多いのが事実です。採用を獲得するには、3月より早い時期から就職活動の準備を始めるようにしましょう。
財務への転職を希望する方は、就職活動を始めるまでに転職後のキャリアプランをしっかり立てておきましょう。キャリアプランは将来に向けて仕事や働き方の進め方について立てる中長期的な計画です。入社意欲を図るのに最終面接時にはほとんどの企業が尋ねてきます。
面接維持に入社後のビジョンや意欲をしっかりアピールできるようにしておくと、よい印象を持ってもらえるでしょう。また、現在は年功序列だけでのキャリアアップは保証されない時代です。どのような職に就くにしても、自分のキャリアについては自分でしっかり考える必要があります。
キャリアプランの質問に対する回答例を以下に紹介するので、悩んでいる方は参考にしてください。
面接時のキャリアプラン例
面接では、独立を希望している旨は言わない方が無難です。転職を推奨している企業でない限り、辞めていくとわかっている方を雇用するのは企業として躊躇します。面接では、「貴社に入社したらこのような活躍ができる人材になりたい。」とアピールする方が採用の可能性が高くなるでしょう。
財務に限った話ではありませんが、転職先は自分のスキルと募集の人物像がマッチしている企業を選んでください。転職では、新しいことにチャレンジできる・現在の企業より給与などの条件がよい・求人内容が理想的な企業に惹かれて応募しがちです。しかし、求人から得たイメージと実際に働いてからの現実が違いすぎると、応募しても採用されにくいだけでなく、早期離職の原因にもなります。
また、企業側が転職者に求めるのは即戦力です。条件がよいから応募してきた方を雇う企業はまずありません。転職すると決めたらしっかり自己分析を行い、自分の強みを明確にしましょう。自分の強みをっ明確にしたら、自分の希望を固め、企自分が人材として求められそうな企業の求人を探します。
財務部への転職は簡単ではありません。しかし、財務に関するスキルや資格を身に着ける・明確なキャリアプランを練る・求人の多い時期に転職活動をする・自分とマッチングする企業に応募するなど、この記事で紹介したコツを守りながらチャレンジすれば、転職に成功する可能性は高くなるでしょう。
未経験の方なら財務の求人に応募するのではなく、経理など関連する部署の仕事を経験してから再度転職活動をするのもよい方法です。転職に成功したら現在のスキルや資格だけで満足せず、さらにレベルアップする努力を怠らないようにないようにしましょう。
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