労務のキャリアを目指す方や、すでに労務として働いている方がキャリアアップを望む際、資格取得は非常に効果的です。労務の仕事は幅広い知識が求められるため、関連する資格は多岐にわたります。
本記事では、労務を目指す方々に向けておすすめの資格を紹介します。資格を取得すれば、労務に関する実践的な知識を証明でき、転職の際に有利に働くでしょう。
労務の仕事には資格だと思われますが、労務になるために必須の資格はありません。ただし、労務の仕事は事務処理や管理業務が主体で、従業員の労働環境を管理・サポートするなど、仕事内容は多岐にわたります。時には専門的な知識が要求される場面もあるでしょう。
具体的な労務の業務例として、勤怠管理、給与計算、社会保険の手続き、年末調整、福利厚生、安全衛生管理などが挙げられます。これらの仕事をこなす際には、さまざまな専門知識が必要です。
かつては未経験者が労務に転職するのは難しいとされていましたが、近年は人手不足の影響もあり、未経験者向けの求人が増えています。
資格は必須ではありませんが、労務に関する資格を取得していると専門知識を有していることが証明できるため、転職において有利なるでしょう。
労務の業務は幅広いため、関連する資格も数多くあります。以下で紹介している以外にも、労務に関連する資格はありますが、ここでは代表的なものを紹介します。
資格・検定名 | 種類 | 難易度 |
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ビジネスマネジャー検定 | 検定 | 比較的易しい |
労務管理士 | 民間資格 | 易しい |
給与計算検定 | 検定 | 比較的易しい |
経営心理士 | 民間資格 | 比較的易しい |
衛生管理士 | 国家資格 | 比較的易しい |
社会保険福祉士 | 国家資格 | 非常に難しい |
中小企業診断士 | 国家資格 | 非常に難しい |
メンタルヘルス・マネジメント1種 | 民間資格 | 比較的難しい |
年金アドバイザー2級 | 民間資格 | 難しい |
労務の仕事は資格がなくても就けますが、資格があれば転職時にアピール材料になります。労務担当者には、基本的なパソコンスキルはもちろん、保険や労働法、お金の知識などが求められます。
ここでは未経験から労務を目指す方におすすめの資格を紹介します。労務について経験がなくても比較的取得しやすい資格をピックアップしているので、参考にしてください。
未経験者向けの資格
中には講座の受講が条件となっている資格もあります。
ビジネスマネージャー検定は2015年に始まった歴史の浅い検定ですが、労務の仕事をするにあたって身につけておきたい基本的な知識を体系的に学べる資格です。
社員をチームとして捉え働きやすい環境を整えたり、個人個人が最高のパフォーマンスを出せるように管理したりするのに必要な、以下の3点について学びます。
ビジネスマネージャー検定には級は設定されておらず、100点満点中70点以上で合格となります。難易度はそこまで高くないため、初心者でも取得しやすい資格の一つといえるでしょう。
資格名 | ビジネスマネージャー検定 |
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試験形式 | マーク式 |
試験日程 | 年2回 |
試験時間 | 90分 |
受験料 | 7,700円(※CBTは9,900円) |
合格率(過去5年) | 39.1~57.6% |
公式HP |
参考:東京商工会議所
労務管理士は、一般社団法人日本人材育成協会と、一般社団法人日本経営管理協会が運営する民間資格で、名前の通り労務管理に関する知識を証明することができます。具体的には、労務に関する法令や採用から退職までの一連の管理を適切に処理できるかどうかが問われます。
労務管理士の資格は、公開認定講座を受けることを前提として試験へ進むことになるため、全く知識がない方や独学で一から始めるのが負担だと感じる人にとってもありがたい仕組みでしょう。労務管理士は20歳以上であれば誰でも受験でき、講座の内容をしっかり理解して臨めば合格が目指せます。
また、労務管理士の資格の取得には以下のような方法があり、選択肢が広いこともおすすめの理由です。
いずれの場合も資格認定試験・審査に合格したのちに、登録手続きを行うことで2級労務管理士として認定されます。ここからさらに資格者研修を受講したうえで昇級審査試験に合格した人は、1級労務管理士を名乗ることができるようになります。
資格名 | 労務管理士 |
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試験形式 | 択一式筆記試験 |
試験日程 | 随時開催 |
試験時間 | 不明 |
受講料・受験料・審査料 | 公開認定講座:10,000円、通信講座:20,000円、書類審査:20,000、web資格認定講座:8,000円 |
合格率 | 非公開 |
公式HP |
参考:日本人材育成協会
給与計算実務能力検定は、給与計算に関する一連の業務をおこなうための知識を証明できる資格です。
給与計算は、労務部門において必須となる業務の一つといえます。給与を適正に支給することは、安定した会社経営や従業員の安定した雇用にもつながるため、企業にとっても従業員にとっても大切です。
また給与計算には、所得税の源泉徴収や社会保険料控除など、税務や保険など専門的な知識が必要になります。
給与計算実務能力検定は以下の通り2つのレベルに分かれています。
1級の方が難易度が高く、2級の合格者もしくは労務経験者が受験可能です。
資格名 | 給与計算技能検定 |
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試験形式 | 2級:マーク式、1級:マーク式・記述式 |
試験日程 | 年2回、2級:11月・3月、1級:11月 |
試験時間 | 120分 |
受講料 | 2級:8,000円、1級:10,000円 |
合格率(過去5年) | 2級:69.45~86.65%、1級:46.23~59.19% |
公式HP |
参考:実務能力開発支援協会
経営心理士の資格は、ビジネスコミュニケーション心理、組織心理、顧客心理の3つの分野を扱います。
労務の仕事では、部署を超えてさまざまな社員とのコミュニケーションをとりながら、企業と従業員双方の立場に立ち最善の環境を整えます。経営心理士としての知識は、労務職にとって非常に役立つと言えるでしょう。
経営心理士の資格は入門講座と分野ごとのコースを受講した上で、課題を提出することで取得できる資格です。
カリキュラムは以下のとおりです。
資格名 | 経営心理士 |
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試験形式 | 試験なし(課題提出) |
試験日程 | 試験なし |
試験時間 | なし |
受講料 | 経営心理入門講座:59,400円、全コースセット:524,700円、別個に申し込み:623,700円 |
合格率 | 非公開 |
公式HP |
参考:日本経営心理協会
衛生管理士の資格は、労働安全衛生法に基づいた国家資格です。
従業員の労働環境の管理や健康管理、労働災害の防止の知識を身につけられます。
常時50人以上の従業員が働いている企業では、必ず衛生管理者を設置する必要があるため、衛生管理士の資格保有者は転職・就職市場でもニーズが高いと言えるでしょう。
また衛生管理士には第一種と第二種があり、第一種の方が高難易度です。
資格名 | 衛生管理者 |
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試験形式 | マーク式 |
試験日程 | 毎月1~5回程度 |
試験時間 | 3時間 |
受講料 | 6,800円 |
合格率 | 二種:29.7~55.2%、一種:42.7~46.8% |
公式HP |
参考:安全衛生技術試験協会
経験者の転職の場合、もちろん経験か業績、対応できる業務の広さなどは強いアピールポイントになります。しかし、さらに大きくキャリアアップするには、これまでの経験以外にも資格を持っていた方が評価されやすいでしょう。
ここで経験者向けとして紹介している資格は、ある程度の知識や経験がなければ取得の難易度が高いものが多いです。なかには受験資格が制限されている資格もあるため注意しましょう。
経験者の転職向けの資格
社会保険労務士(社労士)は社会保険労務法に基づく国家資格で、労務に直結する国家資格としては唯一の資格です。
社会保険労務士は労務のプロフェッショナルであり、企業における採用から退職までに起こり得る労働・社会保険・年金の相談など多岐に渡って扱えます。社会保険労務士にしか行えない独占業務もあり、非常に重宝される存在です。
受験資格は、学歴・実務経験・試験合格の3つがあり、いずれかに該当していれば受験できます。
社労士試験は、非常に難易度が高いことで知られており、合格率は例年1桁です。
資格名 | 社会保険労務士 |
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試験形式 | 選択式、択一式 |
試験日程 | 年1回、8月 |
試験時間 | 選択式80分、択一式210分 |
受講料 | 15,000円 |
合格率 | 6.3~7.9% |
公式HP |
中小企業診断士は国家資格で、日本版のMBA(経営学修士)と言われることもあり、キャリアアップを目指す社会人が取得したい資格の中で最も人気がある資格と言われています。 企業をさまざまな角度・視点から診断し、問題点を見つけながら最適化できるようアドバイスできるようになります。
近年中小企業を取り巻く環境は激変しているため、経営の課題を指摘・アドバイスを求めている企業は非常に多く、様々な場面で活躍できるでしょう。
そのため中小企業診断士になるためには、会計・経理、労務、経営、生産管理、ITなどとても幅広い知識が必要です。中小企業診断士の資格は科目数が多く難易度も非常に高くなります。資格の取得が難しく、企業のニーズは高いことから中小診断士の資格を取得できれば、転職市場でもとても有利に進めることができるでしょう。
資格名 | 中小企業診断士 |
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試験形式 | 1次試験:選択式、2次試験:口述試験 |
試験日程 | 年1回、一次試験8月、2次試験翌1月 |
試験時間 | 各科目60~90分 |
受講料 | 一次試験14,500円、2次試験17,800円 |
合格率 | 4.5~7.8% |
公式HP |
参考:中小企業診断士
メンタルヘルス・マネジメント検定は、大阪商工会議所が運営している民間資格です。
企業の従業員が心身ともに健康に働くことができる職場環境を整えたり、従業員の悩みなどに対して適切な対処・ケアを行ったりできるようになります。
近年働きすぎによる疾患や過労死が多いことはよくニュースでも取り上げられており、従業員の心の健康は企業にとって直近の課題の一つであるとも言えるでしょう。
従業員の労働や健康管理はまさに労務の領域であり、資格を取得しておくと労務の業務に有益に活かせます。
メンタルヘルス・マネジメント資格には、以下の通りⅠ種〜Ⅲ種までレベルが分かれており、Ⅰ種が最も難しいです。
資格名 | メンタルヘルス・マネジメント資格Ⅰ種 |
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試験形式 | 選択式、論述式 |
試験日程 | 年1回、11月 |
試験時間 | 前半2時間、後半1時間 |
受講料 | Ⅰ種11,000円(Ⅱ種6,600円・Ⅲ種4,400円) |
合格率 | 17.6~21.3% |
公式HP |
年金アドバイザー2級は銀行業務検定協会が実施している資格です。
名前からも分かるとおり、年金・公的保険に関する顧客相談や内部研修・指導に応じるための実践的・専門的知識を身につけられる資格で、金融機関で働く人が多く受験すると言われます。
一般企業においても、従業員から定年後の働き方の相談や、その際の年金について相談を受けるケースが想定できます。労務で働く身としては、従業員に対して適切なアドバイスをしたいですが、年金の知識は思っている以上に奥が深く専門的です。
年金アドイザーは、4級からありますが、最上級が2級で、1級はありません。2級は企業で講師ができるほどハイレベルで、難易度も非常に高いことで知られています。
資格名 | 年金アドバイザー2級 |
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試験形式 | 記述式 |
試験日程 | 年1回、3月 |
試験時間 | 3時間 |
受講料 | 8,250円 |
合格率 | 21.06~26.37% |
公式HP |
参考:経済法令研究会
労務の仕事は従業員の労働環境を守りながら、企業の経営のサポートにもつながる大切な役割を担っています。そのため労務に求められる知識は非常に幅が広く、ときには専門知識が必要です。
労務への転職は未経験からでも目指せますが、経験が優遇されることも事実です。未経験から目指す場合やさらなるキャリアアップのために転職をするのであれば、労務に関連する資格を持っておくことは成功への一つの近道でしょう。また労務などのバックオフィスに強い転職エージェントを利用することで、よりスムーズに転職を進められます。