企業の成長には、労務管理の効率化が不可欠です。しかし、労務管理にはさまざまな課題が存在し、これらの課題を適切に解決して企業の運営を円滑に進めなければなりません。
この記事では、労務管理が抱える主要な5つの課題を詳しく解説し、それぞれの課題に対する効果的な対策方法を紹介します。
労務管理とは、従業員にかかわる職場環境を管理する業務です。
まずは、労務管理の業務内容と混合されがちな「人事管理」の違いについて見ていきましょう。
労務管理は、企業における従業員の労働条件や環境を適切に管理する業務です。
主な業務内容は、以下が挙げられます。
労務管理は、従業員の健康管理や福利厚生の充実、労働条件の改善を通じて、従業員のモチベーション向上や企業の生産性向上に大きく貢献します。また、企業と従業員の橋渡し役として、両者の信頼関係を築くための役割を果たしています。
労務管理と人事管理は、企業の人材に関する業務を担当する点で共通していますが、役割と目的に違いがあります。
以下に、それぞれの目的や業務内容をまとめました。
労務管理 | 人事管理 | |
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目的 |
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主な業務内容 |
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対象 |
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役割 |
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つまり、労務管理は法令遵守や労働条件の維持・改善を重視し、人事管理は人材の育成や活用を重視します。
▼労務管理について詳しく知りたい方はこちら
労務管理の課題には大きく分けて5つあります。
次に、それぞれの課題について詳しく見ていきましょう。
労働法の改正が進む中、コンプライアンスの遵守はますます重要になっています。
働き方改革に伴い、2019年4月から随時、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化などが施行されました。これに対応するためには、労務担当者が常に最新の情報を把握し、適切に対応することが求められます。法令に違反することは企業にとって大きなリスクとなり、罰則や信用失墜に繋がります。
労働基準法などの改正情報を定期的に確認し、企業全体でコンプライアンスを徹底することが労務担当者の責務になります。
現代では、正社員、契約社員、派遣社員、パートタイマーなど、さまざまな雇用形態が存在します。
今まで企業では、正社員を中心に雇用し、必要な場合に派遣社員やパート・アルバイトを補充する形式が一般的でした。しかし最近では、正規雇用だけでなく、派遣社員やアルバイトなどの非正規雇用に加え、フリーランスなど個人自業主との契約を結ぶ企業も増えています。
これに伴い、異なる雇用形態に応じた労働時間の管理や給与計算、福利厚生の適用範囲の調整などが求められます。また、労働契約の内容や更新手続きも異なるため、各雇用形態に応じた対応が必要です。
雇用形態の多様化により、勤務時間の適正な管理が一層難しくなっています。
たとえば、正社員、パートタイマー、フリーランスなど、さまざまな雇用形態に対応するためには、それぞれの勤務時間を個別に管理する必要があります。この複雑さから、残業時間の把握や休憩時間の管理、勤務時間の記録などの業務において、ミスが発生するリスクが高まります。
これにより、従業員の労働時間を正確に把握できず、結果的に法令違反や従業員の不満を招く可能性があるため、労務管理担当者の負担が大きくなっています。
新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務やテレワークが急速に普及しました。その結果、労務管理にも新たな課題が生じています。
【在宅勤務・テレワークでの課題】
課題 | 内容 |
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労働状況の不透明さ |
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テレワーク移行の障害 |
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社内部署での不平等 |
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上記の表でもわかる通り、在宅勤務の際には、勤務時間の管理や労働環境の整備が課題です。
また、コミュニケーションの不足による業務の停滞やメンタルヘルスの問題も発生しやすくなるため、適切なサポート体制を構築することが必要です。
業務の効率化のために労務管理の一部をアウトソーシングする企業も増えていますが、これには管理の課題が存在します。
まず、アウトソーシング先の選定や契約内容の確認、業務の進捗管理などが求められます。信頼性のあるアウトソーシング先でなければ、情報の漏洩やセキュリティのリスクが発生する可能性があるためです。リスクを最小限にするために、情報管理やセキュリティ対策を徹底しましょう。
つづいて、先ほどご紹介した課題に対しての対策方法を4つご紹介します。
まず、企業が抱える労務管理の課題を明確にすることからはじめましょう。
課題を明確にすることで、適切な対策を講じることが可能になります。
たとえば、勤務時間の管理や在宅勤務の対応、副業・兼業への対応など、具体的な課題を洗い出し、それに対する対策を検討します。
「労務管理」と一言でいっても、企業ごとに課題は異なります。課題を明確にするためには、従業員からのフィードバックを積極的に収集し、現状の問題点を把握することが大切です。
労務管理の効率化とコスト削減のためには、ペーパーレス化が有効な手段です。
従来の紙ベースの書類管理では、書類の保管や管理に多くの時間と労力がかかり、紛失や管理ミスのリスクも増加します。ペーパーレス化を進めれば、業務中に作成したデータをオンライン上で保存でき、紙の文書やファイルの管理負担を軽減することができます。
労務管理の課題に対して、社労士や労務コンサルタントなどの専門家を依頼することも有効です。労務管理の専門家は、労働法規や労務管理の実務に精通しており、企業が抱える課題に対して適切なアドバイスを提供してくれます。また、専門家の知識や経験を活用することで、労務管理の効率化やトラブルの防止が可能になります。
労務管理の課題に対して、ITツールやシステムの導入は効果的な対策となります。
人事労務システムを導入することで、入退社手続きや雇用契約書の作成、従業員の個人情報管理などの作業をシステム上で一元管理できます。
また、クラウド型のシステムを利用すれば、インターネット環境さえあればどこからでもアクセス可能です。
人事労務システムを導入すれば、外出先や出張先からでもスムーズに業務を進められ、無駄な時間を削減し、プライベートの時間を確保しやすくなります。
最後に、ユーザーの評価が高い労務管理の課題を解決してくれるおすすめのツールを4つご紹介します。
4年連続市場シェアNo.1を誇る労務管理ツール「SmartHR」。
特徴として、質問に答えるだけで重要書類が自動作成できる手軽さがあります。Web上で書類の作成や管理ができるため、印鑑の押印などの手間が省けます。
社員情報を一元管理するシステムで、社労士がいない企業や社員数が多い企業にとくにおすすめです。
初期費用 | 0円 |
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月額費用 | 600~850円 |
利用人数 | 無制限 |
公式サイト |
「オフィスステーション労務」は、自社に必要な機能を自由に選択できる人事労務管理システム。
年末調整、有給休暇管理、給与計算など、複数のサービスを組み合わせることでバックオフィス業務全般の効率化が可能です。社会保険や雇用保険の手続きも100種類以上の書類作成に対応し、書類作成の負担を大幅に軽減します。また、法改正や機能追加に伴うバージョンアップ費用は無料であり、月額費用も低額で利用できるのが支持されています。
初期費用 | 11万円(登録料) |
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月額費用 | 440円/人 |
利用人数 | 無制限 |
公式サイト |
「クラウドハウス労務」は、労務管理業務をペーパーレス化し、コストや手間を大幅に削減できるツールです。
使いやすい操作画面と充実したヘルプ機能により、誰でも簡単にスマホやパソコンで操作可能。入社手続きや雇用契約書の締結、年末調整などをオンラインで完結できます。
ただし、給与計算や勤怠管理には対応していないため、導入時には注意が必要です。
初期費用 | 課題に応じて見積り |
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月額費用 | 月数万円~(要問合せ) |
利用人数 | 要問合せ |
公式サイト |
ジョブカン労務管理は、労務業務初心者にも最適なツールです。
使いやすさを重視し、不慣れな方でも書類作成から申請まで簡単に行えます。また、クラウド型で即日利用可能な上、電子申請機能付きのため役所への申請も簡単です。
初期設定に不安がある方向けの代行サービスもあり、導入から運用までスムーズに行えます。
初期費用 | 無料 |
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月額費用 | 400円/人 |
利用人数 | 無制限 |
公式サイト |
労務管理の課題は多岐にわたり、企業ごとに異なるニーズや状況があります。コンプライアンス遵守、雇用形態の多様化、勤務時間管理の負担増加、在宅勤務・テレワークの対応、アウトソーシング管理といった具体的な課題に対して、明確な対策が求められます。
それぞれの課題を解決するには、社内ルールの見直しや専門家の活用、適切な人事労務システムの導入が有効です。対策を実施して、労務管理の効率化と従業員の満足度向上へとつなげましょう。
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