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労務
2024/07/21 更新

労務管理とは?基礎知識から必要なスキルや注意点まで詳しく紹介

労務管理とは、企業が従業員が気持ちよく働くための条件や環境を適切に管理するための業務を指します。企業の円滑な運営と従業員の満足度向上には、労務管理が欠かせません。

この記事では、労務管理の基本的な知識・効果的に実施するために必要なスキル・注意すべきポイントについて詳しく解説します。

企業の成長と従業員の働きやすさを両立するためにも、労務管理に携わる方はぜひ参考にしてみてください。

労務管理の基礎知識

企業が持続的に成長するためには、労務管理の基礎をしっかりと理解し、実践することが不可欠です。

まずは、労務管理の基本的な知識について詳しく見ていきましょう。

労務管理とは?

労務管理とは、企業が従業員が働く上での条件や環境を適切に管理するための業務です。

具体的には、以下のような業務が労務管理として挙げられます。

  • 労働法や就業規則の遵守
  • 労働時間の管理
  • 給与計算
  • 労働災害の予防
  • 福利厚生の充実

上記のような業務を適切に行うことにより、従業員が安心して働ける環境を整え、企業全体の生産性向上を図ることが目的です。

労務管理の重要性を理解し適切に対応することは、企業が成長していく大きな鍵となります。

労務管理の重要性

企業の円滑な運営と従業員の満足度向上を図る上で、労務管理の業務はとても重要です。適切な労務管理が行われることで、従業員が安心して働けるだけでなく、企業の生産性が向上します。

また、企業の信頼性を高めるために、労働法を遵守し法的リスクを回避することも大切。さらに、福利厚生の充実は従業員のモチベーションを高め、優秀な人材の確保にもつながります。

そのため、企業の成功には労務管理の重要性を認識し適切に実施することが不可欠です。

労務管理の主な業務内容

労務管理の業務はとても幅が広く、さまざまな業務が含まれます。

この章では、労務管理の具体的な内容やそれぞれの業務の重要性について詳しく解説していきます。

法定三帳簿の作成

法定三帳簿の作成と保管は、労務管理の基本となる業務です。公的機関からの立入検査がある際、速やかに提出できるよう日頃から準備しておきましょう。

また、法定三帳簿には必須事項を漏れなく記録し、法で決められた期間保管しておくことが求められます

帳簿の種類

内容

保管期間

保管期間の起算日

労働者名簿

従業員の基本情報(氏名・住所・生年月日など)

3年

労働者の退職日

賃金台帳

従業員の賃金に関する記録(基本給・手当・控除など)

3年

最後の賃金支払い日

出勤簿(タイムカード)

労働時間の記録(出勤日数、労働時間、残業時間など)

3年

該当する記録の日

保管期間の起算日はそれぞれ帳簿によって異なるため、誤って処分することのないよう気をつけましょう。

労働契約を結ぶ

従業員と労働契約を結ぶ際は、法律で定められた5原則を理解し遵守しなければなりません。

【労働契約法の5原則】

  • 労使対等の原則
  • 均衡考慮の原則
  • 仕事と生活の調和への配慮の原則(ワークライフバランス)
  • 労働契約遵守・信義誠実の原則
  • 権利濫用の禁止

5原則は、労働契約法を根拠とし、働き方の多様化によって起こりうる労働紛争に対応するために定められた考え方です。

主に、「ワークライフバランスへの配慮や義務を履行すること」「権利を乱用しない」など、企業側と労働者が対等な立場であることが示されています。

労務管理では、これらの内容を理解し労働契約を結ぶことが大切です。

給与計算をする

勤怠管理情報をもとに、正確な給与計算を行うことも労務の仕事の一つです。大まかには以下の流れで計算し、労働者の対価である給与をミスがないように支払います。

  • 勤怠情報から労働時間を集計する
  • 労働時間から支給額を計算する
  • 各種保険や税金を計算する
  • 支給額から各種保険や税金分を差し引く

給与計算は勤怠管理情報をもとに行うため、従業員が働いた時間は正確に把握しなければなりません。

支払い記録は賃金台帳として、決められた期間保管しておきましょう

入退社手続き

従業員の入退社時に、手続きとして各種書類の用意も労務の仕事です。

労務が行う入退社時の業務は、以下のような内容が挙げられます。

入社時

退職時

  • 採用通知書や労働契約書の発行
  • 保険の加入手続き など

  • 保険の脱退手続き
  • 退職証明書の発行
  • 源泉徴収票の発行 など

入退社時の手続きは従業員の働き方と強く結びついているため、ミスにより会社の不信感につながるケースもあります。

労務は、従業員が安心して働けるように、それぞれの手続きを滞りなく行和なければなりません。

休職・異動手続き

労務は、従業員の休業や異動に伴い、以下のように保険金や手当金などの各種手続きを行います

育児や介護休業の申請があった場合

異動手続き

  • 労務は法律に沿って手当を支払う手続きを行う
  • 手当を受けるための要件や休業のルールについて把握し、相談があった際にはスムーズに対応する
  • 住所変更
  • 社会保険に関する届出を用意する

他の手続きや書類を用意を用意しなければならないケースもあるので、漏れのないよう十分に確認しましょう。

社会保険への加入

従業員の入社時に、各種社会保険への加入手続きを行うことも労務の仕事です。

【従業員が加入する主な社会保険】

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 労災保険
  • 雇用保険 など

これらの社会保険は、従業員それぞれに合わせて加入することが求められます。ただし、加入要件は保険によって異なるので、従業員へ正しく説明しましょう

また、保険によって書類の提出先や期限が異なるため、従業員を雇用した際は速やかに対応しましょう。

安全面や衛生面の管理

安全面や衛生面の管理として主に挙げられるのは、従業員への健康診断やストレスチェック実施です。

法律上、企業には従業員の健康状態のチェックのために、定期的な健康診断が義務付けられています。また、近頃ではパワーハラスメントによる精神的苦痛が仕事に影響をきたすケースも少なくありません。

労務には従業員が働く環境を守るための法律を把握し、適切に管理することが大切です。

就業規則を定める

法律上、「常時10人以上の従業員がいる企業では就業規則を作らなければならない」と定められています。

就業規則は法的な書類であり、従業員との取り決めを行う際の基本的な内容が示されていなければなりません。とくに、従業員が毎月もらう賃金には有給や労働時間が関わるため、適切に規則を作成しておかないとトラブルにつながります。

そのため、働き方のルールを作成し、従業員と企業による内容の合意が必要です。

労務管理の基本「法定三帳簿」とは

法定三帳簿とは、公的機関からの立入検査の際に求められる3つの書類です。従業員のいる企業には、法定三帳簿の作成と一定期間の保管が法律で義務付けられています。

この章では、労務管理の基本となる法定三帳簿について解説するので、自社での記録方法と照らし合わせて理解を深めてください。

労働者名簿

労働者名簿とは、従業員一人ひとりの情報をまとめた書類です。これには、以下のような内容が記録されています。

  • 氏名
  • 住所
  • 生年月日
  • 性別
  • 雇用開始日および終了日
  • 所属部署および職務内容

保管しなければならない期間は、従業員が働いている間ではなく会社を辞めた後からです。保管期間は3年間で、起算日は「退職した日」「解雇した日」「死亡の日」となります。

出勤簿

従業員が日々働いた証拠として、タイムカードやICカード記録による出勤簿の作成を行います。

労働時間の管理は「働き方改革」の客観的な記録が必要との考え方から、従業員が自ら作成した出勤簿は禁止となっているため注意しましょう。

保管期間は3年間で、起算日は「最後の賃金について記入した日」となっています。

賃金台帳

法定三帳簿には、従業員一人ひとりへの給与支払い状況をまとめた賃金台帳も含まれます。

賃金台帳とは、従業員の基本給・手当の種類・控除額など給与に関する情報が記録されているもののことです。

賃金台帳は出勤簿との結びつきが強く、従業員に正しく給与を支払っていることの証明となります。保管期間は3年で、起算日は「最後の出勤日」です。

労務管理に必要な知識・スキル

幅広い知識とスキルを身につけることで、企業の労務管理体制を強化し、従業員の満足度を高められます。

この章では、労務管理で身につけておきたい主な知識とスキルについて見ていきましょう。

労働法規の理解

労務管理の基本は、労働法規の理解です。労働基準法・労働契約法・労災保険法など、労働に関する法律を熟知することで、企業が法的リスクを回避し従業員の権利を守れます。

法律

特徴

定めている内容

適用範囲

労働基準法

労働条件の最低基準を定めた基本法

  • 労働時間
  • 休憩時間
  • 休日
  • 賃金
  • 解雇の条件
  • 安全衛生

など

すべての労働者と使用者(企業)

労働契約法

労働契約に関する基本的なルールを定めた法律

  • 労働契約の成立・変更・解除
  • 解雇のルール
  • 労働条件の変更

労働契約を締結するすべての労働者と使用者

労災保険法

業務上の事故や病気に対して労働者を保護するための法律

  • 労災保険給付の種類
  • 給付の要件
  • 給付の手続き

業務上の事故や病気により労働者が負傷・疾病になった場合

これらの法規を正確に理解し適用することで、企業の法的安定性を確保しましょう。

問題解決力

労務管理には、従業員からの相談やトラブルに迅速かつ適切に対応する能力が欠かせません。

問題解決力には、分析力・判断力・対応力の3つが含まれます。これらの能力を養うことで、労務管理に関するさまざまな課題に柔軟に対応し企業の健全な労働環境を維持することが可能になります。

コミュニケーションスキル

労務管理には、高いコミュニケーションスキルが不可欠です。労働者との円滑なコミュニケーションを図り信頼関係を築くことで、労務管理の質を向上できます

労務管理で身につけたいコミュニケーションスキルには、以下のような項目が挙げられます。

  • 従業員の話に耳を傾ける「傾聴力」
  • 企業の方針や決定を従業員に理解してもらうための「説得力」
  • 労使間の意見の違いを調整し合意を形成する「交渉力」

上記のようなコミュニケーションスキルを磨くことで、労務管理に関するトラブルを未然に防ぎ、従業員の満足度を高められます。

労務管理士におすすめの資格4選

労務管理士としてキャリアを築くためには、専門的な知識とスキルを証明する資格が強みとなります。

ここでは、労務管理士におすすめの4つの資格をご紹介します。

労務管理士

労務管理士資格は、労務管理の専門知識を身につけるための基本的な資格です。

企業内での労務管理業務に従事するための基礎知識を習得でき、労働法規・労働条件の設定・労働者の健康管理など、幅広い分野に対応できます。

学習内容

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働契約法

などの労働関連法規の理解と実務への適用

メリット

  • 企業内での労務管理業務の基盤を築ける
  • 初級から中級レベルの労務管理スキルを証明できる

試験情報

  • 資格試験は年に数回実施
  • 受験者の実務経験に応じた内容が出題される

社会保険労務士

社会保険労務士は、労働法規と社会保険制度に関する専門的な知識を有する資格です。

この資格は、企業の人事労務部門や社会保険事務所などでの活躍が期待されます。

学習内容

  • 労働基準法
  • 労災保険法
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法

などの社会保険制度全般

メリット

  • 法的知識を深く学べる
  • 企業の法務・労務管理において高い専門性を発揮できる

試験情報

  • 試験は年に1回実施
  • 合格率は低く、綿密な勉強計画を立てるのがおすすめ

ビジネス・キャリア検定

ビジネス・キャリア検定は、労務管理に関する幅広いビジネススキルを証明する資格です。

労務管理だけでなく、経営全般の知識を持つことが期待されます。

学習内容

  • 労務管理
  • 人事管理
  • 経営管理
  • 財務管理

などのビジネス全般の知識

メリット

  • 労務管理士としてのスキルをビジネスの他の分野にも応用できるようになる
  • キャリアの幅が広がる

試験情報

  • 試験は年に数回実施
  • 複数のレベルがあり、自分の実力に応じたレベルで受験できる

中小企業診断士

中小企業診断士は、企業経営に関する幅広い知識と診断スキルを持つ資格です。

労務管理に関する知識だけでなく、経営戦略やマーケティングなどの経営全般を学べます。

学習内容

  • 経営戦略
  • マーケティング
  • 財務管理
  • 人事労務管理
  • 経営法務

などの総合的な経営知識

メリット

  • 中小企業の経営診断やコンサルティングを行う際に労務管理の知識を活用できる
  • 経営者としての視点が養われる

試験情報

  • 試験は一次試験と二次試験に分かれている
  • 合格には総合的な学力と実務経験が求められる

労務管理の注意点

最後に、労務管理を行う上で注意すべき点を解説します。

とくに、近頃の労務は時代の変化に伴い働き方の転換期を迎えていることにも留意しましょう。

コンプライアンスに反しない

労務管理は、会社経営で守るべき法律を熟知し、企業の健全な運営に貢献しています。

企業活動を行うには、労働基準法や労働安全衛生法など守るべき法律の理解が不可欠です。また、一度法律を理解すれば良いわけではなく、時代の変化に伴いルールが変わる場合にも対応しなければなりません。

労務は、会社運営を支えているとの自覚を持ち、世の中の動きを常に追い続けることを意識しましょう。

環境改善を目指す

日本の職場環境は常に変化しているため、時代に合わせた会社運営が求められます

とくに最近では、職場でのパワーハラスメントが従業員からの告発で発覚するケースは後を絶ちません。以前は受け入れられてきた従業員への指導方法が、今ではパワーハラスメントに当たるという可能性も多いです。

知らないうちに違反しないよう、ルールを深く理解し共有していきましょう。

生産性向上のための施策立案

企業の生産性向上には、労務を含めたバックオフィス業務の効率化が必要とされています。

バックオフィス業務は企業の利益に直接関わりはないものの、従業員の働き方を整えることが生産性アップにつながると考えられているからです。

今まで手作業で行っていたデータ作成をパソコン上で行うなど、手間を少しずつ減らしていくことで従業員は本来の仕事に集中できるようになります。

労務が率先して企業全体の働き方を変えていき、生産性アップにつなげていきましょう。

時代に合わせた働き方改革

就業規則の策定を担当する労務には、時代に合った働き方改革を率先して提案する役割が期待されます

昨今のコロナ禍では多くの企業が緊急事態宣言時にテレワークを導入し、自宅で安全に働けるように手配しました。その後、働き方を自ら選びたいと考える人は増え、ライフスタイルに合わせて出勤方法を選択できるようにした企業もあります。

労務は、率先して従業員に安心して働き続けてもらうためのアイデアを提案していきましょう。

労務管理の基礎知識を学んで業務効率化を目指そう

労務の仕事を日々忙しく感じる人も多そうですが、慌ただしい時こそ基礎を振り返ることが大切です。便利なツールを頼りつつ、自らの知識をレベルアップさせることで労務の効率化に努めましょう。

また、労務の仕事をしてみたい人や転職を検討している人には、転職に特化したWARCエージェントの利用がおすすめです。管理職専門サイトを利用し、労務への転職を成功させましょう。

著者画像

株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。

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