労務の仕事に就きたい方、労務の仕事でスキルアップや年収アップを図りたい方は、資格を取得しましょう。しかし、労務の仕事は広範な知識が求められるうえ、関連する資格も多岐にわたります。どの資格を取るとよいのか悩む方が多いのも事実です。
この記事では、労務への就職や転職におすすめの資格について解説します。難易度が低いものから高いものまで紹介するので、ぜひ参考にしてください。
企業の労務部門で働くのに、特別な資格は不要です。しかし、雇用保険や社会保険の手続きなど、資格がないとできない仕事を担当する場合は資格が必要になります。企業の労務担当者に労務資格が求められる理由を見てみましょう。
労務はバックオフィスで、企業の従業員に必要なお金や数字・書類に関する事務手続きや管理をしています。企業によって違いはありますが、担当する業務は主に以下のようなものです。
給与計算については税金や社会保険に関する法律、勤怠管理など労務管理については労働基準法や労働安全衛生法など労働関係の法律の知識が求められます。労務に資格が求められるのは、業務の遂行に専門的な知識が必要だからです。
労務の業務は幅広いので、関連する資格も多くなります。この項では、とくにおすすめの資格を11件紹介するので、参考にしてください。
資格 | おすすめ度 | 合格率 | 試験頻度 | 受験料 |
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社会保険労務士(社労士) | ★★★★★ | 6.4%(2023年度) | 毎年8月の第4日曜日 | 15,000円 |
衛生管理者 | ★★★★★ | 第二種:49.6%第一種:46% (2023年度) | 毎月1回 | 6,800円 |
労務管理士 | ★★★★★ | 非公開 | 非公開 | 8,000円~20,000円(申し込み方や受験方法により異なる) |
メンタルヘルス・マネジメント検定 | ★★★★☆ | Ⅲ種:71.9、Ⅱ種:56.5%、Ⅰ種:20.5%(2023年11月実施分) | Ⅰ種は年1回、Ⅱ種とⅢ種は年2回 | Ⅰ種:11,550円、Ⅱ種:7,480円、Ⅲ種:5,280円 |
キャリアコンサルタント | ★★★★☆ | 学科:63.7 %、実技:66.5 %(2024年) | 毎年3回 | 学科:8,900円、実技:29,900円 |
中小企業診断士 | ★★★★☆ | 5.5%(最終合格率、2023年度) | 毎年1回 | 1次試験:14,500円 、2次試験:17,800円 |
ファイナンシャルプランナー2級 | ★★★☆☆ | 学科:39%、実技61.12%(2024年1月実施分) | 毎年3回 | 学科:5,700円、実技:6,000円 |
経営心理士 | ★★★☆☆ | 非公開 | コースごとに異なる(講習受講後に課題を提出) | コースごとに異なる |
年金アドバイザー2級 | ★★☆☆☆ | 20.49%(2023年3月実施分) | 毎年2回 | 8,250円 |
人事総務検定 | ★★☆☆☆ | 非公開 | 毎年2回 |
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給与計算検定 | ★★☆☆☆ | 2級:69.16%(2024年3月実施分) | 3級:随時、2級:毎年2回、1級:毎年1回 |
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まずは、労務関係で難易度が低く、初心者向けのおすすめ資格を3つご紹介します。
労務管理士は、労働基準法や労務管理について専門知識を有し、労働者や人材の適正な管理ができることを証明できる民間資格です。20歳以上であれば誰でも受験できます。実務経験重視で、取得方法を4つ用意しているのも特徴です。
労務管理士の資格を取ると、総務・人事・経営などの知識も身に付くので、活躍できる範囲が広がります。企業によっては資格手当が支給されるかもしれません。
ITパスポートは、ITに関する基礎知識を証明できる国家資格です。DX化が注目される近年、さまざまな業界や職種の方が受験しています。試験は通年実施されているうえ、合格率は50%程度と高いので、ぜひチャレンジしましょう。ITパスポートを取得するメリットは以下のようなものです。
ITパスポート試験では、労務の仕事に必要な労働基準法に関する問題も出題されます。
メンタルヘルス・マネジメント検定は、大阪商工会議所が運営している民間資格です。Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種とありますが、実務や転職に活かすならⅡ種を目指しましょう。Ⅱ種は管理監督者(管理職)を対象としていますが、出題はすべて選択問題で、合格率も高いのが特徴です。メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種を取得すると、以下のような知識があることを証明できます。
従業員の労働や健康管理は労務の領域です。資格を取得すると、実務のレベル向上に直結するでしょう。
前項で解説した資格を取得したら、ビジネスマネージャー検定・給与計算検定・経営心理士・衛生管理士に挑戦してみましょう。詳細は以下に解説するとおりです。
ビジネスマネジャー検定も、管理職向けでありながら労務初心者にも適した検定試験です。仕事環境の問題・管理職の使命や役割・部下のマネジメント・リスクマネジメントなど、労務の管理職に求められる基本的な知識が幅広く身に付きます。検定合格でとくにメリットとなるのは、以下に挙げる3点です。
ビジネスマネジャー検定は、企業にとってもメリットがあります。企業側は従業員に検定を受験させれば、自社で研修の時間や費用を割く必要がなくなるからです。
給与計算実務能力検定は、給与計算業務に関する知識と実務能力を測る検定試験です。レベルは1級と2級で設定されています。試験では労務コンプライアンスや労働法関連・税務・社会保険の知識も問われるので、労務で働く方はぜひ受験しましょう。1級と2級で証明できるスキルは、以下のとおりです。
給与計算実務能力検定1級は、2級に合格した方しか受験できません。
経営心理士資格は、心や脳の性質に基づいて、人材育成・売上向上・組織拡大・業績向上を図る能力があることを証明できる民間資格です。労務では、他部署とコミュニケーションを取りながら職場環境を整えるのに役立ちます。
経営心理士資格は、入門講座と分野ごとの講座受講後、課題を提出すれば取得できるのも魅力です。取得して得られる知識やスキルは、以下のようなものがあります。
衛生管理者は、労働安全衛生法で定められた国家資格です。従業員50人以上の企業は必ず、1人以上選任するよう法律で義務付けられています。選任された有資格者が担う役割や業務は、以下に挙げるようなものです。
衛生管理士試験には受験資格が設けられています。しかし、労務担当者にとっては業務内容に直結した内容の資格です。キャリアアップや年収アップにもつながる可能性があるので、ぜひ取得しましょう。
労務の仕事でキャリアアップを目指すなら、メンタルヘルス・マネジメント1種と年金アドバイザー2級がおすすめです。以下で、それぞれの詳細を解説します。
メンタルヘルス・マネジメント検定は、大阪商工会議所が運営する民間資格です。メンタルヘルスについてまなべるので、労務・人事・管理職の方に適しています。レベルはⅠ種・Ⅱ種・Ⅲ種とありますが、労務で役立てるなら、Ⅰ種を目指しましょう。Ⅰ種の出題内容は以下のとおりです。
参考:大阪商工会議所「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」
年金アドバイザーは年金相談に応じるのに必要な年金の基本的知識や実践的応用能力を証明できる資格です。レベルは4級・3級・2級で設定されています。労務の仕事をしているなら、ぜひ2級を目指しましょう。年金や公的保険について研修講師や指導者レベルの知識が身に付きます。年金アドバイザー2級の試験内容は以下のとおりです。
2級が難しい場合は、3級から受験しましょう。年金アドバイザーの資格を実務で役立てるなら、3級以上の知識が必要です。
労務のプロを目指したい方、独立開業を目指したい方は社会保険労務士や中小企業診断士の資格を取得しましょう。以下に、それぞれの詳細を解説します。
社会保険労務士は社会保険労務法に基づく、労務関係で唯一の国家資格です。人事・労務管理・社会保険の専門家で、企業や個人事業の人事労務管理業務などの独占業務ができます。企業にとっては、採用から退職までに起こりうる労働・社会保険・年金の相談などに乗ってもらえる貴重な存在です。
受験には学歴や実務経験の制限が設けられているうえ、非常に難しい資格ですが、合格すれば以下のようなメリットが得られます。
中小企業診断士は、日本版のMBA(経営学修士)とも呼ばれる国家資格です。経営全般の知識や能力を証明できるので、キャリアアップを目指す多くの社会人が受験しています。 中小企業診断士の業務内容は、主に以下のようなものです。
中小企業診断士資格が役立つ職種は多いです。キャリアの幅も広がるので、転職や独立開業の可能性も高まるでしょう。
労務関係の資格を取得すると、キャリアアップ・年収アップ・企業内での評価向上などさまざまなメリットがあります。以下に詳しく解説するので、参考にしてください。
労務で働く方の資格取得で最も大きいメリットは、キャリアアップができることです。資格取得のために勉強をすると、職務に必要な知識やスキルが身に付きます。とくに、専門知識を有する従業員は企業内で重宝されるでしょう。
また、資格取得は就職・転職・独立開業にも役立ちます。現時点の実務経験や将来のキャリアパスを見通したうえで、適切な資格を取得するようにしてください。
資格を取得した従業員に資格手当を支給する企業は多いです。また、資格を取得すると昇進しやすくもなります。年収アップは資格取得によって得られる非常に大きいメリットとなるでしょう。
労務の年収は、一般社員では350万円~450万円程度ですが、係長や課長クラスになら450万円~700万円、部長クラスになると700万円~900万円にもなります。*1
*1 HUPRO MAGAZINE「労務担当の転職で年収を上げたい!年収相場と年収アップのポイント」
資格取得を目指す方の中には、企業内での評価向上が目的の方もいます。しかし、資格を取得しただけでは評価につながらないケースがあるのも事実です。
企業内での評価を上げるには、資格取得で得た知識やスキルを活かして仕事の質を高めるように努力しましょう。また、従業員のひとりよがりではなく、企業が有資格者の従業員に求めている方向に努力することも大切です。
労務関係の資格取得に向けて勉強するには、さまざまな方法があります。中でもおすすめなのは、オンライン講座の受講・書籍での学習・試験対策セミナー受講の3つです。
忙しくて勉強のためにまとまった時間を確保しにくい方、隙間時間を使って勉強したい方にはオンラインで学べる資格取得講座がおすすめです。PCやスマートフォンを使って、いつでも好きなところで学習できます。
オンラインコースの講座は動画での講義なので、価格設定が低めです。また、動画は見直しや聞き直しがしやすいので、苦手なところを繰り返して勉強できます。
参考書・問題集・専門書籍での学習は、最もポピュラーな方法です。ネット通販や大型書店で必要な書籍を購入しましょう。書籍なら持ち運べるので、好きな時に好きな場所で学習できるのもメリットです。
しかし、書籍で学習する場合は独学になるので、きちんと計画を立てなければなりません。曖昧なスケジュールを立てたり勉強の目的を見失ったりすると、短期間での合格は難しくなるでしょう。
1人で資格試験の勉強をするのが難しい方には、スクール形式の試験対策セミナーがおすすめです。セミナーを受講するメリットには、以下のようなものがあります。
スクール形式のセミナーは、勉強のモチベーションを維持しやすいのもよいところです。
労務は従業員の労働環境を守りながら、企業の経営のサポートも担う大切な仕事です。仕事をこなすには幅広い知識が求められます。労務の仕事をするなら、労務関係の資格を積極的に資格して知識やスキルを深めましょう。
労務に限らず、仕事に関する資格は取得していても、実務で活かせなければ有益な人材と認められません。資格を取ってからも日々の実務を怠らず、継続的にスキルアップするように努力を続けてください。
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