労務の仕事は企業にとって不可欠であり、従業員の就業状況を正確に把握するのに重要です。労務に関心がある方々は、転職を考える際に「平均年収はどの程度なのか?」「どのくらいの年収アップが見込めるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、労務と社労士それぞれの平均年収や年収アップの手段についてご紹介します。
労務とは、従業員の給与計算や社会保険に関する業務などを担当し、就業状況を正しく把握、同時に従業員の健康や安全管理を担っています。
まずは、労務の具体的な役割・年収について見ていきましょう。
企業経営において、労務は人材管理を担当する部門です。
労務は、会社の経営に不可欠な人的リソースを管理し、企業の運営を円滑に進めるための役割を果たしています。
具体的な労務の業務には以下のようなものがあります。
労務は日々の出退勤や休憩だけでなく、有給休暇の取得日数や欠勤日数など労働時間の管理も行います。また、福利厚生や社会保険の手続きも担当し、従業員が健全な環境で働けるよう支援する存在です。
労務の年収は企業規模や経験年数によっても左右されます。そのため一概に年収を割り出すことは困難ですが、目安としての一般社員、課長クラス、部長クラスそれぞれの年収は以下のとおりです。
役職 | 年収 |
---|---|
一般社員 | 300万〜450万円 |
課長クラス | 450万〜700万円 |
部長クラス | 700万〜900万円 |
一般社員クラスであれば年収は300万円〜450万円(※1)で、500万円には届かない可能性が高いでしょう。課長クラス以上の管理職になれば500万円以上もみえてきます。
部長クラスになれば700万円以上が見込めますが、1,000万円までは届かないでしょう。
国税庁が行った令和元年民間給与実態統計調査によると、全国平均の給与は436万円のため、一般社員クラスであれば全国平均とほぼ同じといえます。
(※1)参考:国税庁 長官官房 企画課「令和元年民間給与実態統計調査」
労務の年収は、企業の規模やポジションなどの要素だけでなく、経験年数や資格の有無なども影響します。年収を伸ばすためには経験だけでなく、具体的な目標をもって取り組むことが大切です。
ここでは、労務の年収を増やすための4つの方法をご紹介します。
まず、社会保険労務士資格の取得です。この国家資格は労働関連法や社会保障法に精通した専門家を示し、社会保険や雇用に関する文書作成などを行います。
社会保険労務士資格は、社会保険や年金、雇用分野において特異な国家資格であり、企業からの需要が高く、資格を取得すれば年収の向上が期待できます。
労務管理の実務経験を積むことも、年収向上につながります。労務は労働や社会保障に関する法令知識が不可欠であり、年に一度の業務である算定基礎届の提出や年末調整などを含む業務もあります。このため、労務士として包括的な業務を担当するには3〜5年の実務経験が必要です。
多岐にわたる業務に対応できる人材は企業から重宝され、年収アップの可能性が高まります。とくに高度な専門知識や経験を要する業務を担当できれば、責任ある業務を任されたり管理職に昇進したりする可能性が広がります。一般的な管理業務だけでなく、高度な知識や経験が必要な業務にも取り組むことが年収向上につながります。
年収アップを目指すなら、労務管理以外の業務経験も積んでおきましょう。労務の年収は全職種の中でも平均的であり、高収入が期待できる職種ではありません。企業によっては専任の労務を置かず、総務や経理、人事などと兼任している場合があります。
労務管理以外の業務も経験していれば、責任の重い業務を任されたり、年収が上がりやすい他の部署へ異動したりすることで年収アップを目指せるでしょう。
転職して年収アップを目指す方法もあります。現在勤めている企業では年収が頭打ちになっている場合や、年功序列の文化が色濃く残る企業であれば、個人がどれだけ努力しても年収があがらないでしょう。
経験を積んだり業務範囲を広げたりしても年収があがる見込みがない場合は、より高い年収を実現できる企業への転職がおすすめです。
先ほどご紹介したように、年収が上がらない場合は転職を考えるのも一つの手段です。
ここでは、労務の転職を成功させるポイントを紹介します。
労務の転職を成功させるためには、転職までに5年以上の実務経験を積みましょう。先述したとおり、一人前の労務士になるには3〜5年の実務経験が必要です。
新卒入社であれば社員教育の一環で0から育ててもらえる環境があるかもしれませんが、中途採用では即戦力となる人材が求められます。5年以上の実務経験があれば、労務の仕事全般ができる即戦力としての活躍が期待できるため、実務経験をアピール材料として現在よりも年収の高い企業へのチャレンジもできるでしょう。
マネジメントを経験することも、転職を成功させるためにおさえておきたいポイントです。労務に限らず、どの職種においても管理職のほうが年収は高くなる傾向があります。管理職への転職でよく重視されるのが、マネジメント経験の有無です。
とくに労務は従業員の労働環境を整えたり、勤怠管理をしたりといった「ヒト」に関わる業務を担当します。そのため従業員のマネジメントや業務改善などの経験があれば、管理職としての転職を目指す際のアピール材料となります。
志望動機を明確にすることも、転職を成功させるために大切なポイントです。企業の採用担当者は、応募者を採用することでのメリットや会社との相性、熱意などをみています。そのため、志望動機では「なぜ労務を志望するのか」を明確にし、労務への熱意や自身の強みをアピールすることが大切です。志望動機が曖昧では熱意や本気度が伝わりません。
また、応募先の企業が労務に何を求めているかを調べておくことも大切です。企業研究を行って理解を深めたうえで、労務を志望する理由や活かせる経験・スキル、どのように会社に貢献できるのかを明確に伝えましょう。
未経験で労務に転職する場合は、法律・手続きの知識を身につけましょう。労務は未経験での転職も可能です。しかし、専門知識が必要とされる業務が多いため、未経験では難しいともいわれています。
労務の業務の多くは雇用や社会保障に関わる法律に基づく手続きの実施や管理業務です。そのため、未経験での転職を成功させるためには、法律・手続きの知識を身につける必要があります。
細かな業務内容を覚えるよりも、まずは法律の知識や手続きの概要を勉強しておくことが大切です。
労務の年収アップに役立つ資格には「社会保険労務士(社労士)」があります。年収アップも期待できるため、資格取得を目指している方もいるのではないでしょうか。
ここでは、社労士の定義や年齢別の平均年収を見ていきましょう。
社労士は社会保険労務士法に基づいた国家資格であり、「ヒト」に関わる業務のスペシャリストです。労働や社会保障関連の法令に則って業務を遂行し、労働者が健全な環境で仕事に従事できるように支えています。
社労士の主な業務内容は以下のとおりです。
社労士資格を受験するには「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」のいずれかを満たしている必要があります。また、社労士試験は難易度が高く、合格率6%(※2)台です。10科目のマークシート方式で、合格するためには労務に関する幅広い知識が必要とされます。
(※2):参考:資格の学校TAC
社労士の平均年収は約500万円(※3)といわれていますが、年齢によって平均年収は異なります。
年齢別の平均年収は以下のとおりです。
年齢 | 月収 | 賞与を含む年収 |
---|---|---|
30~34歳 | 41万円 | 670万円 |
35~39歳 | 30万円 | 940万円 |
40~44歳 | 35万円 | 700万円 |
45~49歳 | 39万円 | 760万円 |
50~64歳 | 58万円 | 1,380万円 |
70歳~ | 25万円 | 450万円 |
(※3)参考:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」
年齢があがるほど年収はアップする傾向にあり、経験年数が関係していることがわかります。
先述したとおり、令和元年の平均給与は436万円です。賞与などによっても左右されますが、社労士の年収は全国平均よりも若干高めといえるでしょう。
また、社労士は大きくわけて「企業勤務型」と「独立開業型」の2つに分かれ、それぞれで平均年収も異なります。独立開業型のほうが年収が高い傾向にあるため、年収アップを目指すのであれば、独立も視野にいれましょう。
社労士の年収に関する口コミは、実際の収入状況に対する厳しい現実を示しています。
以下の3つの口コミを見ていきましょう。
シャロで年収だとキツイですよね〜。
ワイも負け組。一生勤め人時代の年収には届きません。(出典:X)
1日2時間程度でゆるゆる仕事して年収1000万円の、ひとり社労士事務所ポストを見ることがあります。どうやったらそんなパラダイスが築けるのか膝をつめて聞いてみたい。(出典:X)
社労士の方、契約社員なときあって、給料も低くて、ダブルワークしてたって。
ちょっと泣ける。
ちょっと頑張ろうかなって考えてたのに、そんな闇。つら。(出典:X)
社労士としての年収には大きなばらつきがあり、一部の成功例を除いて、多くの社労士が収入面で厳しい現実に直面していることが分かります。
資格を取得しても、それだけで高収入が保証されるわけではなく、戦略的なキャリア形成や多角的な取り組みが必要となります。
弁護士や司法書士、税理士と並ぶ士業の国家資格である社労士。しかし、その平均年収は民間企業全体の平均年収と大きな差はありません。
ここでは、社労士が年収を上げるための具体的な方法を2つご紹介します。
社労士が年収をアップする方法の一つとして、「開業」があります。
独立して開業することで、自らのクライアントを持ち、自由に報酬を設定できるようになります。開業当初は顧客獲得が課題となりますが、信頼を築き、顧客基盤を確立することで安定した収入を得ることが可能です。
さらに年収を大幅に増やしたい方は、以下の方法も有効です。
開業にはリスクも伴いますが、自己成長や収入の大幅な増加が見込めるため、多くの社労士が挑戦する価値のある方法といえます。
もう一つの方法は、「転職」です。
現在の職場よりも待遇が良い企業や、社労士としての経験やスキルを高く評価してくれる企業に転職することで、年収をアップさせることが可能です。
とくに、転職エージェントや専門の転職サイトを利用することで、自分に適した求人を効率的に見つけることができます。
おすすめの転職エージェント3選
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労務の年収は全国平均とほぼ同じですが、社労士資格の取得や管理職クラスへの転職などで年収アップが目指せます。
転職で年収アップを目指すのであれば、実務経験を積み、労務以外の人事や総務に関連する業務も経験しましょう。また、社労士としてコンサルティングに力をいれることも、年収アップにつながります。
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