「公認会計士の実務経験はどこで積めばいい?」とお悩みの方もいるでしょう。
公認会計士試験に合格した後は、3年以上の実務経験を積み、原則として3年間の実務補習を修了したうえで、修了考査を受験する必要があります。経験を積む場所や具体的な条件、注意点を確認しておけば、スムーズに登録まで進めるでしょう。
この記事では、公認会計士として登録するために必要な実務経験の要件や期間、働ける場所、さらには注意点まで詳しく解説します。
登録までの道筋を描けるよう、この記事をぜひ参考にしてみてください。
公認会計士として登録するためには、実務経験の要件を満たす必要があります。具体的には、「業務補助」や「実務従事」という2つの要素に基づいた経験が必要です。
以下に、それぞれの内容を詳しく解説します。
「業務補助」とは、公認会計士や監査法人の指導のもとで行う実務作業のことです。公認会計士の監査業務や税務業務を支える役割を担い、日々の実務を通じて基礎的なスキルを身につけられます。
具体的には、次のような作業が含まれます。
単なる事務作業では要件を満たさず、専門性のある業務に携わることが求められます。
「実務従事」とは、公認会計士として独立した業務遂行能力を育成するために行われ、主に財務監査を中心に分析業務なども含まれます。
業務補助に比べ、実務経験の対象となる業務内容は明確に定められていますが、それが一律に判断されるわけではありません。公認会計士法施行令第2条で規定された業務を継続的に行っていたかどうかは、個別に判断されるため、注意が必要です。
対象となる業務は以下のとおりです。
業務内容が専門性に欠け、一般事務に近い場合は実務従事として認められない可能性があるため注意が必要です。証明書(業務補助等証明書)の発行も求められるため、指導者と連携する必要があるでしょう。
公認会計士についてさらに詳しく知りたい方は、「公認会計士になるには?登録プロセスと業務内容を解説」をご覧ください。
公認会計士として登録するためには「3年以上」の実務経験(業務補助等)が必要です。
2022年の公認会計士法改正により、必要な実務経験は2年以上から3年以上へと変更になりました。
実務経験と業務補助両方を経験している場合は、それぞれの期間を通算することが可能です。
この期間は、単に日数を満たすだけでなく、会計業務や監査業務といった専門的な実務に従事することが求められます。
公認会計士の実務経験を積める勤務先は以下のとおりです。
主な職場とその特徴を紹介します。
小規模な会計事務所や税理士法人でも実務経験を積むことができます。
ただし、一般的な会計監査や、資本金5億円以上の法人を対象にした原価計算や財務分析といった業務を行っている必要があるため注意が必要です。
すべての事務所がこのような業務を行っているわけではないため、実務経験の要件を満たすためには、事前に業務内容をしっかり確認しておくことをおすすめします。
一般企業の経理部門でも、実務経験を積むことが可能です。
上場企業の経理部門では、連結決算や財務報告といった高度な業務に従事するチャンスがあります。
監査法人での経験とは異なり、内部の視点から業務を学ぶことができる特徴があるでしょう。
なかでも、原価計算や財務分析に関連する業務などは、公認会計士としての実務経験の要件を満たす可能性があります。
しかし、ここでも資本金5億円以上の企業であることが条件となるため、注意が必要です。
コンサルティングファームでは、企業の課題解決や経営戦略の立案をサポートする業務に携わります。
財務や経営に関する知識を実践的に活かすことができ、クライアント企業に対する提案力が求められる環境です。
財務コンサルティング、経営コンサルティングの実務経験を積めるでしょう。
資本金5億円以上の法人などの原価計算や、財務分析に関する事務を行う場合、実務経験として認められます。
銀行や証券会社などの金融機関も、実務経験の場として選ばれることがあります。
貸し付けや債務保証など、資金運用に関する業務を通じて、会計の専門知識を深める機会が豊富です。金融業界ならではの特性を理解しながら経験を積めるでしょう。
ただし、別の部署に配属されてしまった場合は実務経験を積めません。就職の際、配属先や業務内容をよく確認しましょう。
国税局や税務署での業務も実務経験として認められる場合があります。
具体的には、税務調査や監査などの業務を通じて、企業会計や税務に関する深い知識を習得できます。
公的な視点での経験は、民間では得られない貴重なものとなるでしょう。
公務員として実務経験を積む場合は、公務員の採用試験を受ける必要があるため、採用プロセスに注意が必要です。
公認会計士試験合格後の実務経験は、アルバイトやパート、非常勤といった形態でも認められます。
業務補助の場合は、監査法人の代表者から認定を受け、3年以上の期間で監査業務を学び、業務補助等証明書を発行してもらうことが条件です。
実務従事の場合、アルバイトやパートでも常勤と同じ勤務時間である場合は実務経験として認められます。ただし、勤務時間が少ない場合は3年では要件を満たせないため注意が必要です。
非常勤の場合は、定められた数の監査証明業務に3年間携われば、労働時間にかかわらず実務経験として認められます。
公認会計士の実務経験を積む際には、いくつかの重要な注意点があります。
とくに以下の2つは、多くの人が誤解しやすいポイントのため、確認しておきましょう。
監査法人で働いている場合でも、すべての業務が実務経験として認められるわけではありません。
たとえば、以下のような業務は要件を満たさない可能性があります。
専門性の高い業務でないと、実務経験として認めてもらうことができません。
事前に自分が担当する業務が公認会計士の実務経験に該当するか、所属する監査法人や指導者に確認するとよいでしょう。
実務経験を認めてもらうためには、「業務補助等証明書」という証明書の発行が求められます。
これは、自分が積んだ実務経験が公認会計士登録の要件を満たしていることを証明するための書類です。
証明書の発行には時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めておきましょう。
また、必要な情報が不足していると発行できない場合もあるため、記録を正確に保管してください。
公認会計士として登録するためには、実務経験のほかに「実務補習制度」と「修了考査」という2つのステップをクリアする必要があります。
公認会計士合格者が公認会計士として登録されるまでの流れは以下のとおりです。
実務補習や修了考査について、以下で詳しく説明します。
実務補習制度は、実務経験を積むと同時に理論的な知識を深める研修制度です。
実務補習所で講習を受け、単位を取得します。
この制度では、監査法人や会計事務所などで働きながら、研修会やグループディスカッションを通じて、実践的なスキルを習得します。
具体的な特徴は以下の通りです。
対象者 | 公認会計士試験の合格者 |
期間 | 3年間(実務経験と並行して行う) |
内容 | 監査 会計 税務 経営・IT 法規・職業倫理 |
実務補習制度の受講スタイルは、座学とWeb授業の2つです。必要な単位を取得し、考査や課題研究提出で一定の評価を得る必要があります。
修了考査は、実務補習制度を終えた後に受験する最終試験のことです。
この試験に合格することで、「日本公認会計士協会」の名簿に登録し、公認会計士として働けるようになります。
対象者 | 実務補習制度を修了した人 |
試験日 | 年1回(通常12月)2日間 |
受験会場 | 東京都 愛知県 大阪府 福岡県 |
試験科目 | 会計に関する理論及び実務 監査に関する理論及び実務 税に関する理論及び実務 経営に関する理論及び実務 (コンピュータに関する理論を含む) 公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理 試験時間は各3時間 |
合格点 | 総得点の60% ただし、40%に満たない科目が1つでもあれば不合格 |
合格率 | 70%程度 不合格の場合はさらに1年間補習所に通学する |
参考:日本公認会計士協会 修了考査について
公認会計士の登録までには、3年の実務経験を積むほか実務補習や修了考査を受ける必要があります。
これらの概要をよく理解し、プロセスを効率よくクリアすることで、公認会計士としてのスタートを最短で切ることができるでしょう。
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