企業経営には財務会計と管理会計が重要です。しかし、企業経営と財務会計の役割や違いについて分からない人も多いと思います。
財務会計の主な目的は、企業の財務状況を社外の関係者へ正確に伝えることです。仕訳・記帳から固定資産管理、決算書作成、資金繰りや予算管理まで、多岐にわたる専門的な業務が含まれています。
この記事では財務会計と管理会計の違いから、財務会計の目的や仕事内容、年収も解説。財務会計としてのキャリアを進もうとしている方の手助けができるでしょう。
財務会計とは、事業の財政状態や経営成績を正確に把握し、外部の利害関係者に伝える重要な業務です。財務会計では貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を作成し、企業会計原則に従って外部に報告します。
報告された情報は投資家や債権者、税務当局などの外部利害関係者が企業の財務健全性を評価する際の基礎となります。
財務会計の基礎となる企業会計原則は、1949年に企業会計審議会によって制定され、経済状況の変化に応じて適宜改正されてきました。財務会計は「社外の利害関係者向けの会計」として位置づけられ、外部の関係者に対して企業の財務状況や経営状況を明確に伝える役割を担っています。
財務会計があることで、投資家は投資判断を、金融機関は融資の可否を判断するための情報を得ることが可能です。財務会計は、透明性と説明責任を企業経営にもたらし、健全な経済活動を支える基盤となっています。
財務会計と管理会計は企業会計の二大柱ですが、目的と対象が異なります。
財務会計は、主に社外の利害関係者(株主、債権者、税務署など)に対して企業の財務状態や経営状況を伝えるための会計です。法律に基づき定められた会計基準に従って財務諸表を作成し、公開します。
管理会計は社内の経営管理者向けの会計です。管理会計は形式や書式が法律で厳密に定められていません。経営判断を迅速に行うためにリアルタイムの財務情報を、企業ごとに最適な方法で実施します。
財務会計は「社外報告」に注力し、法的要件を満たす正確な情報提供が目的です。対して管理会計は「社内管理」を目的とし、経営の意思決定を支援するための情報提供に焦点を当てています。
財務会計と管理会計の違いは、企業の日々の運営において重要であり、適切な会計情報の提供が企業の健全な成長と発展に不可欠です。財務会計と管理会計は互いに補完関係にあり、どちらも企業経営の効果的な運営に欠かせない役割を果たしています。
財務会計の目的は、企業の財政状態や経営成績を透明かつ正確に社外の利害関係者に伝えることです。財務会計があることで投資家、債権者、税務当局などが企業の健全性や信頼性を判断できやすくなります。
財務会計の主な業務としては、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書といった財務諸表の作成です。財務諸表は、それぞれ資産・負債・資本、収益・費用、資金の流れを示し、企業の経済的状況を把握するための基盤となります。
財務会計は法的義務に基づいて行われ、企業会計原則や国際会計基準に則って行われることが多いです。
財務会計は株主や潜在的な投資家、融資を考慮している金融機関の意思決定ツールとなります。税務当局に対しては、正確な税金の計算と報告のために必要です。正確な財務会計は、企業の信頼性を高め、将来の資金調達や事業展開の基盤を固める重要な役割を果たします。
財務会計の理論構造を理解するには、会計公準、会計原則(会計基準)、会計手続きという3つの要素を把握することが重要です。
会計公準、会計原則(会計基準)、会計手続きについて解説します。
会計公準は、企業会計における基本的な考え方や前提条件を示すものです。会計処理の枠組みと目標を定め、企業会計を理解し実践する際の基礎となります。
公準は「要請的公準」と「構造的公準」の2つに分けられ構造的公準は、企業会計の基本構造を示すものです。
企業実体の公準では以下の3つに分けられます。
企業実体の公準では、企業と所有者(株主や経営者)は独立した存在であり、企業の会計は企業自体の取引のみを対象としているという考え方です。
継続企業の公準は、企業は継続して活動するものと見なされ、その活動は短期間に限られず長期にわたるという考え方。貨幣的評価の公準では、会計行為はすべて貨幣単位で測定され、一貫した価値基準を提供します。
「要請的公準」は、会計情報の目標や要求を示し、2つの公準があります。
有用性の公準は、会計情報は利害関係者にとって有用であり、意思決定に役立つべきという考え方です。
公正性の公準は、会計情報は公平で偏りがなく、すべての利害関係者に対して役立つものであるべきという考え方です。
公準は、企業が会計情報をどのように処理し提供すべきかについての基本的なガイドラインを提供します。公準は財務報告の品質を保証するために不可欠です。
会計原則(会計基準)は、財務諸表の適切な作成と評価のために定められた一連のルールや基準です。企業の財務状況を正確かつ公正に反映させ、関係者に信頼される情報を提供するためにあります。
会計原則(会計基準)は主に3つの部分に分けられます。
一般原則には真実性、正規の簿記、資本取引と損益取引の区分、明瞭性、継続性、保守主義、単一性などが含まれます。会計情報が正確で透明、一貫性があることを保証します。
貸借対照表原則は貸借対照表の作成に関するルールで、企業の財政状況を適切に把握するために重要です。
損益計算書原則は企業の経営状態を示す損益計算書に関する基準です。収益や費用が発生した際に計上する「発生主義」や、実際に取引が完了した時点で収益を計上する「実現主義」などが含まれます。
会計原則は、透明で信頼性の高い財務報告を作成するための基礎となり、企業の経営において重要な役割です。
会計手続きは、企業の財務会計における具体的な処理方法を示すものです。公準や会計原則に基づいて行われ、正確で透明な財務諸表の作成を目的としています。
会計手続きは、財務会計の正確性と信頼性を確保するために、企業内で日々行われる重要な活動です。企業は財務諸表を正しく作成し、投資家や規制当局などの外部関係者に対して透明かつ信頼できる情報を提供することができます。
財務会計の主な役割は、利害関係者に対して重要な情報を提供し、企業関係者間の利害を調整することです。財務会計の役割についてそれぞれ解説します。
財務会計の役割の一つに、利害関係者への情報提供があります。情報提供とは、企業の財務諸表を通じて投資家やその他の関係者に、企業の財政状態や経営成績を透明に伝えることです。
投資家は財務会計の情報を参考にして、企業の将来性や収益の安定性を判断し、投資の意思決定を行います。財務諸表には企業の利益や市場での位置づけ、将来の成長見込みなどが反映されており、企業に対する資金調達や信用度の決定にも影響を与えます。
透明かつ正確な情報提供は、企業の存続と成長にとって不可欠な要素です。
財務会計の役割の一つが、企業関係者間の利害の調整です。投資家や債権者などの利害関係者に企業の財務状況を透明に伝えることで、関係者の期待と企業の現実を調整します。
株主は企業の利益が増加し配当が得られることを望む一方、債権者は企業が安定した財務状態を維持し、負債の返済能力があることを重視するでしょう。財務会計は、財務諸表を通じて異なる利害を調整します。
財務会計の仕事内容は多岐にわたります。仕訳や記帳を通じて日々の取引の記録、固定資産の管理や企業の財務状況、決算書の作成などです。資金繰りや予算の管理を行い、企業の財務戦略をサポートします。それぞれ解説します。
財務会計の仕事内容の中核が「仕訳・記帳」の業務です。日々の取引を貸借対照表や損益計算書に記録するために、注文書や請求書などの書類を勘定科目ごとに仕訳を行います。
仕訳とは取引を貸方と借方に分けて記録することで、仕訳帳に基づき総勘定元帳へ転記する作業が記帳です。仕訳や記帳は財務状況を正確に反映するために不可欠であり、財務会計の基本的かつ重要な業務とされています。
財務会計の重要な仕事の一つが、固定資産の管理です。企業の所有する土地、建物、車両、オフィス機器などの固定資産を管理することで、企業の財政状態を正確に把握できます。
固定資産は購入時の支払いから、使用中の減価償却費の計算、現物の管理、そして廃棄や売却時の帳簿からの除去までの一連のプロセスが含まれます。固定資産の管理は、企業の財務諸表が投資家や債権者に対して正確な情報を提供するために不可欠です。
財務会計の仕事内容に決算書の作成があります。企業の財務状況を反映する重要な書類であり、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の3つの財務諸表が主要です。
3つの財務諸表は企業の一定期間の経営成績や財政状況、お金の流れを示し、外部の利害関係者への報告資料としても用いられます。仕訳伝票や固定資産、原価などのデータを集計し、財務諸表を作成することが決算書作成の主な流れです。
財務会計の仕事の一つが資金繰りと予算管理です。予算管理は、経営計画に基づいた予算と実際の業務成績を比較し、進捗を把握し改善策を検討します。
予算編成、実行、分析、改善の4ステップで進められ、事業運営に使える予算の有無を見極めることが不可欠です。
資金繰りは企業の入出金を管理し、資金の過不足を防ぐために重要です。資金繰り表を作成し、現金や預金などの流れを正確に追跡し、企業の健全な運営を支えます。
資金繰りや予算の管は、企業が安定して運営を続ける上で欠かせない役割です。
財務会計の年収は、年代や経験、企業の規模によって異なります。20代前半では年収はおよそ300万円台後半からスタートし、20代後半で400万円台、30代では500万円台後半に上昇します。
40代になると600万円台、50代以降は700万円以上が一般的です。大企業や外資系企業ではさらに高い年収が期待できます。
経験やスキルに応じて、財務会計の職種は高収入を目指しやすい分野です。ただし、ポジションが限られているため、年収の高さと同時に競争も激しいと言えるでしょう。
財務会計は企業の財政状態や経営成績を外部に伝える役割を持ち、主な業務には仕訳・記帳、固定資産の管理、決算書の作成、資金繰りや予算の管理が含まれます。
年収は経験や役職、企業の規模によって異なり、20代前半で年収約300万円からスタートし、年齢が上がるにつれて増加する傾向にあります。
財務会計の分野に興味がある方は、財務会計の基礎知識を学び、さらなるスキルアップを目指しましょう。企業側は財務会計の重要性を理解し、優秀な人材の確保と育成に努めることが求められます。
財務会計の専門家として成長し企業の財務健全性と成長を支えることが、今後ますます重要になっていくでしょう。
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