AIが進化する中で、公認会計士としての未来がどうなるのか、漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この先、自分の仕事はどう変わるのか、AIを活用しながら自分の強みをどう伸ばせるのかと悩むのは当然のことです。
この記事では、公認会計士がAIとどのように向き合い、キャリアを築いていくべきかについて掘り下げてお伝えします。AIによる業務の変化や人間だからこそ発揮できる価値を高める方法などを具体的に解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
公認会計士の仕事がすべてAIに取って代わられる可能性は低いものの、一部の業務はAIの力で効率化されると考えられています。これからの時代、AIが業界にもたらす変化を正しく理解し、自分自身の役割をどう進化させていくかを考えることが大切です。
まず、公認会計士の仕事がAIに奪われるといわれる理由から確認していきましょう。
近年、AIの能力は飛躍的に向上しています。AIは以下のような点で優れており、業務を迅速かつ正確にこなすことが可能です。
また、2015年に野村総研とオックスフォード大学が共同で行った研究では、601種の職業がコンピューター技術によって代替可能かどうかの確率が試算されました。
この研究によると、日本の労働人口の49%が従事する職種が、技術的には人工知能やロボットに代替される可能性が高いことが示されています。さらに、その代替可能性の高い職種の中に「会計監査係員」が含まれていたため、公認会計士の仕事もAIに奪われてしまうのではないかと不安を抱く人がいるようです。
引用:野村総合研究所「日本の労働人口に49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」
とはいえ、公認会計士の仕事がすべてAIに置き換わることはないでしょう。AIは確かに強力なツールですが、あくまで補助的な存在です。公認会計士の価値が失われることはなく、むしろAIをうまく活用して業務の幅を広げることが期待されます。
これからの時代、AIとの共存を図りながら自分の強みを活かすことが、さらに大きな可能性を切り開く鍵になるでしょう。
ここからは、公認会計士の仕事がすべてAIに置き換わることはないと考える理由について紹介します。
4つの理由について解説するので、確認していきましょう。
AIはあくまで決められたルールに従って判断するものです。
たしかに、AIは条件に沿って大量のデータを効率的に処理し、結果を導き出すことが得意です。しかし、現実の会計業務では、ルールだけでは解決できない問題が少なくありません。たとえば、特殊な事情が絡むケースや、背景に複雑な要因がある問題には、柔軟な対応が求められます。
こうした状況に対応するには、単なる知識だけでなく、経験に裏打ちされた判断力や洞察力が必要です。このような点で、公認会計士の存在は、AIに代わることのできない重要な役割を果たしているといえるでしょう。
AIを業務に取り入れたとしても、AIが分析したデータをどう活かすか最終的に判断するのは公認会計士の役目になるでしょう。
たとえば、AIが財務データを分析して異常値やリスクを検出したとしても、それが何を意味するのか、その背景や要因を正しく理解し、適切な結論を導き出すのは人間にしかできません。また、倫理的な配慮や法律に基づく判断が求められる場面も多く、これらはAIが対応できる範囲を超えています。
こうした重要な判断を正確に行うためには、専門知識だけでなく、これまでの経験や洞察力が不可欠です。
AIには、クライアントと信頼関係を築く力はありません。
公認会計士の大切な役割の一つは、企業や個人と直接話し合い、その人に合った的確なアドバイスをすることです。クライアントごとの状況やニーズを丁寧に理解し、適切なサポートを提供することは、AIでは対応できない領域です。
クライアントが何を求め、何を大事にしているのかを把握し、それを基に信頼を築くスキルこそ、公認会計士の持つ強みの一つといえるでしょう。
AIを活用する際には、リスクへの対応が欠かせません。このリスクを適切に管理するのは、公認会計士の重要な役割です。
たとえば、AIが誤ったデータを基に分析を行った場合、その結果をそのまま採用してしまうと、大きな問題につながる可能性があります。こうしたリスクをいち早く察知し、修正を図るには、人間による確認と判断が必要です。
さらに、AIは過去のデータをもとに判断する仕組みのため、予期しない状況に柔軟に対応することができません。だからこそ、公認会計士が先を見通し、適切な対策を講じることが求められるのです。このような役割は、AIでは決して代わりができない部分といえるでしょう。
AIは効率的なツールとして公認会計士の業務をサポートしますが、すべてを代替することはできません。最終的な判断やクライアントとの信頼構築、リスク管理など、人間だからこそ果たせる役割が多く残されています。
監査業務の分野では、AIの導入が進むことで効率化や精度の向上が期待されています。3つの理由を紹介するので、確認していきましょう。
今のビジネス環境では、企業が扱うデータの量が年々増え続けています。この膨大なデータをすべて人間の手で処理するのは、現実的に難しい状況です。
AIには、大量のデータを素早く正確に分析する力があります。たとえば、膨大な取引データを短時間で処理し、不正の可能性や異常なパターンを見つけることが可能です。これにより、これまで以上に広範囲で効率的な監査ができるでしょう。
とはいえ、AIが分析したデータをどう解釈し、どう判断するかは人間にしかできない重要な役割です。そのため、AIが人間に取って代わるというよりも、むしろAIと人間が補い合う形での活用が求められます。
AIの活用により、監査の精度がこれまで以上に高まる可能性があります。AIはパターン認識や機械学習を使い、不正やリスクの兆候を早い段階で見つけることが得意なためです。
具体例として、過去の監査データや市場動向を分析することで、人間の目では見逃しがちな小さな異常を発見できるようになります。その結果、監査の信頼性が向上し、透明性もさらに高まるでしょう。これは、クライアントとの信頼関係を築くうえでも大きなプラスになります。
とはいえ、最終的にリスクを評価し、意思決定を下すのは人間の仕事です。AIはあくまで監査を支えるツールとして活躍するに過ぎません。このバランスが、AIの正しい活用において重要です。
AIの導入によって、会計士の仕事のあり方にも変化が生まれています。これまで人の手で行っていた単純な作業がAIに任されることで、会計士はより専門性が求められる業務に時間を割けるようになるでしょう。
たとえば、クライアントに対するアドバイスや、複雑な経営戦略の提案など、創造力や高度な判断力が必要な分野への取り組みが増えていきます。こうした変化により、会計士自身のスキルや知識をさらに高める機会が広がるでしょう。
AIの進化は監査業務のあり方を大きく変えつつありますが、それは人間の役割を奪うものではなく、支える存在です。AIをうまく活用することで、業務の効率化や精度の向上が期待でき、公認会計士はより専門性の高い仕事に集中できるようになります。
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公認会計士の仕事内容とその魅力とは?年収・キャリアパスについても解説
AIの進化によって監査業務や会計の現場は大きく変わりつつあります。ただし、AIはあくまでツールであり、公認会計士がその力を活用することが重要です。
ここからは、どのようにAIと向き合っていったらよいのか解説します。
監査品質を向上させるため、AIを活用することができるでしょう。膨大なデータを短時間で処理できるAIは、不正やリスクを見逃さずに検出する力を持っています。そのため、これまで人間の手作業では気付きにくかった細かな問題点にも対応できるようになりました。
たとえば、取引データの異常値をピックアップしたり、不正リスクをパターン分析で特定したりする作業は、AIの導入によって大幅に効率化することが可能です。
AIが提供する分析結果をもとに、会計士が的確な判断を行うことで、より信頼性が高く高品質な監査が行えるでしょう。
AIの導入によって監査業務の進め方が大きく変わりつつあるため、その変化に適応する必要があるでしょう。
これまで多くの時間を費やしていたルーティン作業はAIが担うようになり、その分、会計士はより専門性の高い業務に専念できるようになりました。たとえば、AIが分析したデータを基に、その結果を解釈したり、クライアントに的確なアドバイスを提供したりと、会計士に求められる役割も変化しています。
このような変化に対応するには、AIを効果的に活用するスキルと、新しい働き方に柔軟に適応する力が欠かせません。AIの力を上手に取り入れることで、会計士としての価値をさらに高めることができるでしょう。
AIの普及に伴い、公認会計士にはこれまで以上に新しい分野への挑戦が求められているといえるでしょう。
たとえば、データ分析を活用した業務や、非財務情報を対象とした監査など、従来の枠にとらわれない分野が注目されています。また、クライアントの課題を解決するためのコンサルティング業務も、会計士が活躍できる場です。
これらの新しい分野でスキルを磨き、実績を積むことは、公認会計士としての価値を高める絶好のチャンスといえます。
AIを効果的に活用するためには、それを扱う人材の育成が欠かせません。
たとえば、AIツールの使い方を理解し、分析結果を正確に読み解くスキルは必須です。また、ITリテラシーを高めることで、新しいテクノロジーやシステムにも柔軟に対応できる力が身につきます。
さらに、会計士としての専門知識に加えて、データ分析やコンサルティングのスキルを磨くことができれば、業務の幅を広げ、より高い付加価値を提供できるようになるでしょう。これからの時代、自分の強みを活かしながら新しいスキルを身につける努力が大切です。
AIの導入には多くのメリットがある一方で、注意すべき制約も存在するため、把握が必要です。
たとえば、AIが誤ったデータを基に分析を行った場合、その結果に頼りすぎると大きな問題を引き起こす可能性があります。また、AIの判断は過去のデータをもとにしているため、予想外の状況や特別なケースには対応が難しいという弱点もあるでしょう。
こうした制約をしっかりと理解し、リスクを見極めながら活用していくことが、AIを効果的に使うための重要なポイントです。人間の判断力とAIの能力を組み合わせることで、より良い結果を生み出せるでしょう。
AI時代に公認会計士としての価値を高めるためには、新しいスキルや視点が必要です。ここからは、AIに代替されないために意識すべき以下の3つのポイントについて詳しく解説します。
AIの進化が進む今の時代、デジタルスキルを身につけることは会計士にとって必須といえるでしょう。
たとえば、データ分析ツールやAIを活用したソフトウェアを使いこなすスキルがあれば、これまで以上に効率的で精度の高い業務が可能になります。こうしたスキルを持つことで、クライアントからの信頼をさらに高め、より専門性の高い仕事にも対応できるようになるでしょう。
さらに、ブロックチェーンやクラウド会計といった最新の技術に関する知識を深めれば、これからの業界の変化にも柔軟に対応できます。
AIを普段の業務に取り入れて活用し、業務を効率化する必要があるでしょう。これまで多くの時間がかかっていたデータ入力や仕分け作業をAIに任せれば、その分、会計士はより重要な業務に集中できます。具体的には、クライアントに対する提案や経営戦略のアドバイスなど、創造性や専門性が求められる仕事に時間を充てることが可能です。
大切なのは、AIを単なる便利なツールと捉えるのではなく、クライアントにとって本当に役立つ方法で活用することです。その工夫次第で、業務の価値をさらに高めることができるでしょう。
AIには対応できない「人間らしい判断」や「対人コミュニケーション」の力を高める必要があるでしょう。これらの力は公認会計士にとって大きな強みとなります。
たとえば、クライアントとの信頼関係を築き、その場の状況や背景を考慮した的確なアドバイスを提供するのは、人間にしかできない仕事です。また、会計データの解釈や不確実なリスクを見極める際には、経験や直感といった人間特有の能力が求められます。
こうしたスキルを磨き続けることは、公認会計士としての価値をさらに高めるだけでなく、AIが進化する時代でも必要不可欠な存在であり続けるための鍵になるでしょう。
AIが進化を続ける中でも、公認会計士としての価値を維持し、さらに高めることは十分に可能です。デジタルスキルを磨き、AIを活用して業務の効率を上げるとともに、人間ならではの判断力やコミュニケーション力を育てることで、AIには代替できない存在になれるでしょう。
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