事務への転職を検討している人のなかには、年収が気になる人もいるのではないでしょうか。一般的に、事務の年収はそれほど高くないといわれています。しかし、事務の種類や勤務先によって得られる年収は異なるため、事務の年収は低いと決めつけるのは早計です。
本記事では、事務の平均年収を年代別、雇用形態別、企業規模別、種類別などで解説します。事務は年収が少ないといわれる理由や年収を上げる方法も解説するため、ぜひ参考にしてください。
事務職の年収は雇用形態や年代など、複数の要因によって変動します。
まずは、以下の項目での平均年収を見てみましょう。
それぞれでどのくらい事務の平均年収が変わるのかを解説します。
厚生労働省が行った令和3年賃金構造基本統計調査における雇用形態別の年収は、正社員は約466万円、正社員以外は約303万円です(※1)。企業規模や男女別によって金額は異なりますが、全体として、正社員のほうが給与が高い傾向があります。令和4年の給与所得者の平均給与は458万円のため、正社員は平均とほぼ同水準、正社員以外の場合は平均よりも低いといえるでしょう(※2)。
雇用形態別で見た場合の平均年収は、全年齢が対象かつ一般の職員から管理職まで含めた平均年収です。そのため、新卒や第二新卒などの経験が浅い段階では正社員でも平均年収に届かない可能性があります。それでも正社員のほうが将来的には高くなる可能性があるため、事務で働くのであれば正社員を目指したほうが年収は高くなりやすいでしょう。
(※1)参考:e-Stat「令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者」
(※2)参考:国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」
年代別で見た事務の平均年収は、以下の通りです。
年齢 | 平均年収(単位千円) |
---|---|
〜19歳 | 2388.8 |
20〜24歳 | 3074.3 |
25〜29歳 | 3854.1 |
30〜34歳 | 4348.1 |
35〜39歳 | 4826.1 |
40〜44歳 | 5015.9 |
45〜49歳 | 5145.5 |
50〜54歳 | 5471.1 |
55〜59歳 | 5614.6 |
60〜64歳 | 4159.7 |
65〜69歳 | 3350.6 |
70歳〜 | 3220.8 |
参考:e-Stat「令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者」
年齢別の平均年収では、約238万円から年齢を重ねるごとに年収が徐々にアップし、40代から500万円台になります。長く続けることで着実に年収アップは見込めますが、若いうちから高収入を狙うのは難しいのが実情です。年収をアップさせるためには、経験を積んでいくことが欠かせません。
また、60代以降は徐々に下がる傾向があります。事務職は体力的な負担が少ないため長く働ける職種ではありますが、定年後は給与が減る可能性がある点も注意が必要です。
男女別で見た場合の事務の平均年収は、男性は約574万円、女性は約390万円です(※1)。事務は男性のほうが年収が年収が高い傾向があります。この背景には全体として女性の労働者のほうが多く、さらに女性のなかでも若い年代が多いことが関係しています。
調査によると、39歳までの男性労働者が約87万人に対し、女性は約135万人です。40歳以降になると男性は約143万人、女性は約175万人と若干人数差が縮まります(※3)。
若く、まだ給与がそれほど上がっていない年代に事務職を務める女性が多いことが、男女別の平均年収にも影響していると考えられるでしょう。また、女性は結婚や妊娠・出産などのライフイベントによって退職したり時短勤務に変更したりすることもあります。こうした要素も年収に影響していることも考えられるでしょう。
(※3)参考:e-Stat「令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者」
企業規模別で見た場合の事務の平均年収は以下の通りです。
企業規模 | 平均年収 |
---|---|
10〜99人 | 約387万円 |
100〜999人 | 約454万円 |
1,000人以上 | 約533万円 |
参考:e-Stat「令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者」
企業規模別で見た場合、事務職は企業規模が大きくなるほど年収が高くなります。企業規模が10〜99人の場合と1,000人以上の場合では約146万円も差があるため、より高い年収を希望するなら企業規模の大きな企業の事務職を狙う必要があるでしょう。
企業規模で年収が大きく異なる要因の一つに、賞与や特別給与額の差もあります。同調査では10〜99人規模の企業の「年間賞与その他特別給与額」は595.8千円に対し、1,000人以上の規模の企業では1121.0千円です(※1)。年間賞与や特別給与額に倍近く差があることで、企業規模別での年収でも差が大きくなっていると考えられます。
事務は種類によっても年収が異なります。
続いて、以下の種類別の年収を見てみましょう。
種類によって仕事内容も異なるため、年収とあわせて仕事内容も解説します。
一般事務は書類作成やファイリング、電話・来客対応などを行う職種で、平均年収はdodaによれば約343万円です(※4)。企業運営を円滑に行うためのサポート的な業務を中心に行い、企業規模や体制によっては経理や会計業務なども担当することがあります。
業務内容は専門性の高いものは少ないため、特別な知識や高度なスキルはあまり必要とされない傾向がある職種です。派遣や契約社員などの非正規雇用で働く人も多いことが、平均年収にも影響しています。
(※4)参考:doda「平均年収ランキング(平均年収を検索)【最新版】」
営業事務は営業業務のサポート的な業務を担当する職種で、平均年収は一般事務とほぼ同じで約345万円です(※5)。主に見積書や契約書の作成、受発注手続きなど、営業が顧客とスムーズにやりとりできるようにサポートをします。場合によっては、営業のプレゼン資料作成の手伝いをすることもあるでしょう。
営業事務は営業担当者との連携が必要ではありますが、一般事務と同じく特別な知識やスキルは問われない職種です。そのことが平均年収にも影響していると考えられるでしょう。
(※5)参考:doda「平均年収ランキング(平均年収を検索)【最新版】」
貿易事務は貿易に関わる各種書類の作成や手続きを行う職種であり、平均年収は約393万円です(※6)。事務のなかでは高収入を狙いやすい傾向があります。
貿易事務の同じ業務は、輸出入に関わる書類や税関関係の書類の作成、海外の取引先からのメール対応などです。そのため、ビジネスで通用する語学力が必要とされるだけではなく、貿易に関する知識が求められます。他の事務職よりも専門性が高いことから、年収も高くなる傾向があるのです。
(※6)参考:doda「平均年収ランキング(平均年収を検索)【最新版】」
人事事務は企業の人事に関する業務を担当する職種であり、平均年収は約490万円です(※7)。人事事務は企業の採用業務や社員の評価制度の運用などを担当します。人事に関するさまざまな業務を担当するため、社員の育成や異動、昇進などに関わる業務を行うこともあるでしょう。
また、社員の勤怠状況や有給休暇の取得状況、給与の計算なども人事事務が担当することが多い業務です。社員の雇用に関わる業務を多く扱うため、丁寧かつ正確な業務が求められます。
(※7)参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)「人事事務」
医療事務は病院やクリニックなどで受付や会計業務などを担当する職種で、dodaによると平均年収は約291万円です(※8)。医療事務は主に患者のカルテ作成や保険証の確認、診療後の診療費の計算などを行います。
医療の専門知識は必要がなく、事務のなかでも年収が低い傾向があるのが特徴です。ただし、診療報酬の計算方法やカルテの作成方法などの知識が求められます。また、患者と医療スタッフをつなぐ役割もあるため、コミュニケーション能力が必要です。
(※8)参考:doda「平均年収ランキング(平均年収を検索)【最新版】」
これまで見てきた通り、事務は年収がそれほど高くない職種です。では、なぜあまり年収が高くないのでしょうか。事務の年収が少ない理由には、主に以下の2つが挙げられます。
年収が少ない理由を把握し、事務職への理解を深めましょう。
事務職の年収が少ない理由の一つとして、直接会社の利益を生み出す職種ではないことが挙げられます。事務の仕事は、企業の各種業務を円滑に行うためのサポート的な業務が中心です。営業や販売のように直接的に利益を生み出す仕事とは役割が異なります。
たとえば営業の場合、契約件数や契約金額などの数字が出るため、企業の利益にどれだけ貢献したかが明確です。一方事務は直接利益につながるような数字で評価される業務はほとんどありません。このように、明確に利益につながる仕事ではないことが、年収が上がりにくいことに関係しています。
残業が少ないことも、事務職の年収が少ない理由として挙げられます。事務は社内業務が中心であり、定時で終わることが多い職種です。
残業が少ない分ワークライフバランスがとりやすく働きやすい一方、残業代が発生しにくい傾向があります。残業が多い職種はその分残業代が発生し、年収も高くなりがちです。
仕事と家庭やプライベートとの両立を考えた場合に、残業の有無は大きく関係します。プライベートも大切にした場合には、年収が多少少なくても残業が少ないほうがよいという場合もあるでしょう。
事務職に就く人が年収を上げる方法には、以下の7つが挙げられます。
事務職でも働き方次第で年収をアップできる可能性があります。具体的にどのような方法があるのかを見てみましょう。
事務職で年収を上げるには、給与水準が高い業界を選びましょう。業界によって同じ職種でも年収は大きく異なるものです。業界自体の給与水準が高ければ、事務職の給与も高い傾向があります。
たとえば、IT業界や金融業界は全体的に給与水準が高い業界です。こうした業界の事務職であれば、他の業界に比べて高収入が得られる可能性が高まります。事務職で年収アップを目指すのであれば、就職前に業界全体の給与水準も調べておきましょう。
専門性が高い業界を選ぶことも、事務職の年収を上げる方法の一つです。専門性が高いと、その分高度な知識やスキルが必要とされます。そうした知識やスキルへの対価として、年収も高くなりがちです。
たとえば、先述したように貿易事務の場合は貿易関連の知識や語学力が求められ、その分年収も高い傾向があります。ほかにも、経理事務は経理・会計の専門知識が必要とされるため年収アップが狙える職種です。このように、専門性が高い業界で年収を上げられるでしょう。
長期間働き管理職を目指すことも、年収を上げる方法として挙げられます。一つの企業で長期間働くと、経験を積めるだけではなくその企業の事務職に精通した人材としての活躍が可能です。企業からの評価も得やすく、管理職が目指せるでしょう。
管理職になればその分年収のアップも期待できます。管理職を目指す場合、管理職にふさわしい知識やスキルを身につけることが大切です。事務スキルだけではなく、コミュニケーション能力やチームをまとめる力なども身につけましょう。
資格を取得することも、年収を上げる方法の一つです。企業によっては、資格取得者に対して資格手当を支給している場合があります。特に専門性の高い資格であれば、手当を受けられる可能性も高まるでしょう。手当が支給されれば、基本給は変わらなくても受け取れる金額は増加します。これにより年収アップを実現できるでしょう。
また、資格の取得はキャリアアップにも役立つものです。資格を取得すれば、キャリアアップによって年収を上げることも目指せるでしょう。
事務職で年収を上げるなら、都市部で働くことも一つの方法です。地方よりも都市部のほうが賃金が高い傾向にあるため、都市部の企業であれば年収アップが期待できます。
令和3年の厚生労働省の調査によると、全国の賃金平均は約307.4千円で、最高は東京都の364.2千円、最低は宮崎県の244.6千円でした(※9)。このことから、都市部と地方では大きな差があることが分かります。年収を上げたい場合には、都市部の企業への就職も検討しましょう。
(※9)参考:厚生労働省「都道府県別にみた賃金」
本業だけではなく、副業をして年収を上げる方法もあります。本業で培った事務スキルや得意なことを活かす副業によって収入を得れば、取り組み次第では大幅に年収を上げることも可能です。
ライターや動画編集業務のほか、短期間だけ対応する事務作業などの副業は、事務処理のスキルやPC関連の知識が役立ちます。本業のスキルを活かしながら働けるだけでなく、副業を通してスキルアップできる場合もあるでしょう。
ただし、企業によっては副業を禁止していることがあります。また、副業のやり過ぎで本業に支障が出ることも避けなければなりません。副業をする場合は、企業の規則を確認するほか、本業とのバランスを考えながら取り組みましょう。
転職エージェントを利用して転職活動を行うことも、年収を上げる方法の一つです。転職エージェントであれば、転職活動に精通したプロのアドバイザーからのサポートが受けられます。応募書類や面接対策の相談などもでき、安心して転職活動を進められるでしょう。
また、転職エージェントが保有している求人のなかから、自身の希望にあった求人を提案してもらえる点も特徴です。求人サイトや求人誌などには公開されていない非公開求人の紹介を受けることで、年収の高い企業へ転職できる可能性が高まります。
事務職は平均年収はあまり高くない傾向がある職種です。書類作成や来客対応など幅広い業務を担当しますが、高いレベルでの専門知識やスキルが必要とされないことが多い傾向があります。残業も少ないため、残業代が発生しにくい点も年収に影響している要素です。
より年収が高い事務職を目指すのであれば、専門性の高い職種を選んだり、年収が高い業界の企業を選んだりすることが大切です。また、資格取得をして知識やスキルを磨くことも欠かせません。スキルアップや転職なども考慮して、事務職での年収アップを目指しましょう。
「WARCエージェント」なら、大手上場企業からIPO準備企業のベンチャー求人まで幅広く対応しています。
業界トップクラスの転職実績もあり、業界に精通しているエージェントも多数在籍していますので、ぜひ気軽にご相談ください!