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2024/03/22 更新

著作権侵害の事例|身近な例や罰則、著作権を侵害しないために知っておくべきことを解説

著作権とは、著作物の利用に関して、著作物を創作した者(著作者)に認められた権利です。その権利が侵害され、ニュースで取り上げられたのを目にした人もいらっしゃるでしょう。

では、著作権侵害について、どのような行為であるのか正確に把握していますか?とても身近な存在である著作権。この記事では、著作権がどのような時に成立するのか、侵害するとどのような罰則があるのかなどについて解説します。

著作権とは

著作権は、絵や文章を書くことによって、誰もが持つことのできる権利です自分の考えや気持ちを作品として表現したものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」といいます。この著作者に対して、法律によって与えられる権利が「著作権」です。著作権は、著作権法によって守られており、侵害すると差止請求や損害賠償請求などの対象になります。

参考:公益社団法人著作権情報センター CRIC「著作権って何?(はじめての著作権講座 )」

具体的に「著作権とは」

著作権によって保護される「著作物」とは、具体的に、人間の思想や感情を創作的に表現したもので、文芸や学術、美術、音楽などの分野に属するものを指します。

著作権がなく、たとえば漫画の海賊版が無料で見られたり安価で購入できると、その漫画を描いた著者の収入が減ってしまい創作活動を維持できなくなってしまうかもしれません。そのような事態を防ぐためにも、著作権は大切な権利であるといえます。著作権があると、権利によって保護された行為を独占的に行うことができるほか、第三者に許諾してライセンス料を得ることが可能です。

著作権は発生する際に法律上の手続き等はなく、著作物が創作された時点で自動的に発生する権利です。保護期間は、原則として著作者の死亡した年の翌年から70年が経つまでとなっています。

著作権侵害の5つの要件

では、この著作権が侵害されているというのはどういう場合なのでしょうか。

著作権が侵害されているかどうかを確認するためには、以下の5つの要件がすべて満たされているかがポイントです。

  1. オリジナルの創作物が著作物であること。著作権が認められるためには、作者の個性が表現されていてありふれた表現でないことが必要です。
  2. 著作権の存在が認められること。著作権が保護されるのは原則として創作者の死後70年です。
  3. 依拠性が認められること。既にある他人の制作物に偶然類似してしまったという場合は、依拠性の要件を満たしません。
  4. 類似性が認められること。既存の著作物を参考に作成した場合も、既存のイラストや画像に類似していなければ著作権侵害にあたりません。
  5. 著作物を利用する権限を持っていないこと。

著作権侵害にならないケース

著作物であっても、権利が制限されることがあります。著作権侵害にならないケースとしては、下記のような場合が当てはまります。

  • 個人的または家庭内など私的な使用だけのために複製した著作物を利用する場合
  • 学校で使うことを想定した教材の一部を授業で使うためにコピーする場合
  • 試験問題として複製して使う場合
  • 引用がわかるように記載し利用する場合
  • 視覚障害者・聴覚障害者のために複製する場合
  • 営利を目的としない上演の場合

上記は一例で、このほかにも利用したコンテンツが著作物ではなかった場合や、許可を得ることなく利用できる場合、権利の譲渡を受けた場合なども著作権侵害に当たりません。

身近にある著作権侵害の実例

著作権についてや、著作権侵害に当たらないケースなどは前述した通りですが、たとえばテレビ番組の録画や好きな漫画のコピーをする場合でも個人や家族で楽しむ場合は著作権侵害にはなりません。ここからは、身近にある著作権侵害の例をいくつか紹介します。

音楽を無断で使用する

飲食店やスーパーマーケットなどのお店で音楽をかける場合、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)を通じて使用許可をとっていないまま流してしまうと、著作権侵害に該当してしまいます。家などで個人的に楽しむ分には問題ないのですが、店内でお客さんに聞こえるよう音楽をかける行為は無断使用とみなされる場合があります。

また、著作権のある音楽をSNS等で配信するのに使う場合も著作権侵害に当たるため行ってはなりません。テレビCMでも注意喚起されていますが、YouTubeなどに著作権のある音楽やライブ映像を無断でアップロードすることも禁じられています。

お店などで使う場合は、JASRACに登録するか、著作権フリーの音楽を探してかけるようにしましょう。

テレビ番組や漫画をネットで配信する

好きなテレビ番組や漫画のコンテンツをたくさんの人に知ってもらいたいと、インターネット上で配信するという行為も、著作権侵害に当たります。海賊版とも呼ばれ、無料や著作権者が販売するのよりも安価に見られるようにすると著作権者の利益を奪うことになります。販売されている漫画を模して自分で描いた場合でも、他人にあげたり販売したりするのは著作権侵害です。

録画して個人や家族で楽しむ分には許可なく複製し閲覧することができますが、友人など他者に配ったりする行為はやめましょう。また、私的利用の場合も、DVDなどに設置されたコピーガードを外して複製する行為や、違法に配信されたものをダウンロードする行為は、著作権侵害に当たるため注意が必要です。

SNSのアイコンにタレントや漫画を使用

こちらも知らず知らずのうちにやってしまいがちな著作権侵害の例ですが、SNSのアイコンにタレントや漫画の写真を利用することは著作権の侵害に当たります。たとえば、写真を利用して現物のアルバムを作り、自分で楽しむ分には、私的利用になるため著作権侵害には該当しません。しかし、SNSのように不特定多数の人が見たり共有したりできる場所で勝手に使ってしまうと著作権を侵害する行為となります。

また、市販のキャラクターカードをスキャンや撮影して、アイコンにした場合もNGです。自分で似たようなイラストを作成する場合も、元々の著作物と酷似しないよう気を付けましょう。SNSのアイコンは、フリー素材やアイコン作成アプリなどを利用して作ることがオススメです。

文章を複製する

論文や小説などの文章も著作物に当たるため、無断で使用したり複製したりすることはできません。すでに発表されている著作物を、あたかも自分で書いたように少しだけ変更して使うことも著作権侵害とみなされます。

しかし、登場人物の性格やシーンの場面設定が似ている程度であれば、「表現」ではなく「アイデア」とみなされ著作権侵害に該当しない場合もあります。使う言葉などの表現が似通っていて初めて著作権侵害となりうるのです。

大学での論文の執筆やアマチュアの小説執筆など、何らかの創作活動にあたっては、先人が生み出した成果を参考にすることがあっても、自分の個性やオリジナリティをしっかりと追求するという気持ちで臨むようにしてください。

著作権侵害をしたら

著作権侵害を犯すと、差し止め請求や損害賠償請求といった民事上のリスクに加え、刑事罰を受けるなど、民事、刑事両方の責任を追及される可能性があります。いずれも重大であるため、著作権侵害を軽い気持ちで考えてはなりません。

民事上の責任

民事の上では、著作権を侵害されたものは、侵害したものに対し、次のような請求が可能です。

  • 侵害行為の差止請求(第112条)
    著作権者は、侵害行為に対して、販売中や配信中の商品やコンテンツの回収、停止を求めることができます。
  • 損害賠償の請求(民法第709条・719条、第114条)
    著作権侵害に当たる行為に対し、著作権者は損害賠償を請求することができます。
  • 不当利得の返還請求(民法第703条・704条)
    著作権者は、権利を侵害した相手が著作物を利用し得た利益の返還を求めることができます。
  • 名誉回復などの措置の請求(第115条)
    著作権者は、謝罪広告等の掲載など、名誉を回復するのに適切な処分を求めることができます。

刑事上の責任

刑事上では、被害者である著作権者が告訴することにより、以下のような対応で侵害者を処罰してもらうことが可能です。

  • 著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
  • 著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金

加えて、企業などの法人による侵害の場合は、3億円以下の罰金を支払わなければならなくなる場合があります。

刑事告訴については必ず受理されるというわけではなく、受理されてもすぐに刑事手続きが始まるとは限りません。そのため、告訴する側である場合は、民事上のペナルティを要求する手続きを進めながら、刑事告訴をするかどうか、また時期はどうするのかなどを総合的に判断し、進めていくのが良いでしょう。

著作権侵害をしないために注意するポイント

普段何気なく過ごしていても、気付かない間に著作権を侵害してしまっているということも少なくありません。軽い気持ちで他人のコンテンツをアップロードし利益を得てしまうなど、身近に起こっていると罪の意識がないままに行ってしまう場合もあります。しかし、著作権侵害は立派な犯罪に当たります。著作権侵害にならないよう、以下のことに気を付けましょう。

著作権について全社で深く理解する

企業で考えると、まずすべての社員、スタッフが著作権とは何か、何をすると侵害に当たるのかなどといった著作権についての基本的な知識を深く理解しておくことが大切です。業務で関係のありそうな事例を挙げるなど、身近なことと捉えてもらえるようにしましょう。プレゼン資料を作るときや社内でイベントを行うとき、広報活動をするときなど、気を付けるべきタイミングはたくさんあります。部署によっても業務が異なるため、複数の事例を用意しておくと良いでしょう。

社内での啓蒙活動は、一度ではなかなか伝わりづらいものです。継続して実施することで、著作権を守ることが当たり前にできる雰囲気・社内文化を作っていきましょう。

弁護士に相談する

著作権に関わる問題は、細かなところまでしっかりと確認しなければならないため、自社だけで判断することが難しい場合もあります。著作権が関わってきそうな案件や契約を行う前は、弁護士に相談すると安心です。法的な根拠を検討したうえで損害賠償請求ができたり、相手方とのやり取りを代理で行ってもらったりすることが可能です。

これまでの業務の中で、著作権に関わるような事例が頻繁に起こる場合は、顧問弁護士をつけておくと良いでしょう。これまでの流れを把握したうえでアドバイスがもらえるなど相談がスムーズで、的確なアドバイスも期待できます。

また、弁護士の中でも、これまでに著作権侵害の相談を扱ったことがあるなど、著作権に強い事務所に依頼することも検討しましょう。

委託先と著作権に関する契約内容を確認、締結

業務内容によっては、外注先にコンテンツ制作を依頼することがあるでしょう。たとえば、ロゴの制作やチラシ、CMなどがわかりやすい例です。この場合、委託先が著作権について理解し、侵害行為をしていないかどうかを確認することが大切です。オリジナルで作っているにも関わらず、似てしまうこともあるでしょう。制作側だけでは把握しきれないものもあります。万一著作権を侵害してしまうと委託元も罰せられるリスクがあるため、外注したからとスルーするのではなく、提出されたものに対してきちんと目を通しましょう。

また、委託契約を交わす際は、契約書において著作権侵害をしないことやトラブルを起こさないことを明記したうえで、万一侵害した場合の対応や規則についてもきちんと定めておくことが大切です。

著作権について正しい知識を身につけ、トラブルを避けましょう

著作権侵害という言葉はよく耳にしますが、誰しも知らない間に犯してしまう可能性があります。著作権侵害の罪は重く、立場や年齢に関わらず逮捕される例も起きています。自分が侵害される側になることもないケースではありません。

また、SNSなど不特定多数が見られるものでなくても、社内で利用すると著作権侵害に当たる場合もあります。大丈夫だろうと思っていると、思わぬリスクになる可能性があります。

トラブルを起こさないためにも、正しい知識を身につけ、著作権を侵害しないよう配慮しましょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

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