「渉外弁護士ってどんな人?」「普通の弁護士と何が違うの?」と疑問を持つ人は少なくありません。業務拠点や仕事内容を理解すると、渉外弁護士を目指す方法が分かります。
この記事では、渉外弁護士の仕事内容や平均年収について解説します。
渉外弁護士を理解するにあたり、まずは職業の全体像を知ることが必要です。ここでは、渉外弁護士の定義と、国際弁護士との違いについて解説します。
渉外弁護士とは、主に外国に関連する法律案件を扱う弁護士のことです。goo辞書(※1)によると「渉外」は以下の意味を持ちます。
つまり、渉外弁護士は外国や外国法に関係する取引を扱う弁護士を指します。
(※1)参考:goo辞書「渉外」
渉外弁護士と国際弁護士は、外国や外国法を扱う者という意味ではほぼ同じ立場です。ただし、渉外案件と国際案件に違いがあるとおり、両者を細かく定義すると役割は異なります。
渉外案件 | 主に日本国内で外国と関係する案件や、日本企業が外国で活動する際の法務。拠点は主に日本。 |
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国際案件 | より広義で、国境を越えたあらゆる法律問題や企業活動に関する法務。拠点は主に海外。 |
次に、渉外弁護士と国際弁護士の違いを見てみましょう。
渉外弁護士 | 日本の弁護士資格を持ちながら、国際的な案件を扱う弁護士。 |
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国際弁護士 | 日本の弁護士資格に加え、外国の弁護士資格も持っている弁護士。 |
渉外弁護士は「拠点は主に日本」「日本の弁護士資格を持つ」ことに対し、国際弁護士は「拠点は主に海外」「外国の弁護士資格を持つ」という違いがあります。
ここからは、渉外弁護士の仕事内容について解説します。国際的な案件を扱う渉外弁護士ならではの特徴があるので、参考にしてください。
国際的な紛争解決は、渉外弁護士の仕事の一つです。海外企業と日本企業の間でトラブルが発生した際、渉外弁護士は両者の仲裁に入ります。
国内外の紛争の例
これらのトラブルは、海外裁判所での裁判にも対応する必要があります。文化や習慣、商法ルールの違いから起きるトラブルに対して、渉外弁護士はクライアントに有利な立場で交渉を進めるスキルが必要です。
日本の企業が海外進出する際のサポートも、渉外弁護士が行います。現地の弁護士と協力し、日本側の窓口として対応するのが渉外弁護士の役割です。
そのため、渉外弁護士は日本だけでなく相手国の法律への理解が求められます。なお、海外の企業が日本に進出するインバウンドのサポートも、渉外弁護士の役目です。
渉外弁護士の業務で最も多いといわれているのが、M&Aです。M&Aとは直訳すると企業の合併・吸収ですが、実務ではビジネス承継という意味合いで使われます。
秘密保持契約や基本合意書を交わした後、デューディリジェンスの結果を基に交渉が実施されます。M&Aでは、クライアントにメリットがあるように交渉を進めていく必要があり、ミスは許されません。
渉外弁護士には高度な仕事内容が求められますが、労働の対価として報酬をどれほどもらえるのか気になるところです。ここでは、渉外弁護士の初年度の年収や、経験年収による変動について解説します。
渉外弁護士の年収は、初年度でも年収は1,000万円(※2)、ボーナスを加えると1,200万円程度からスタートします。さらに昇給すれば年収3,000万円を目指せるケースもあり、渉外弁護士の年収は高水準です。
パートナーとして法律事務所を経営する人の中には年収1億円を超える場合もあるため、渉外弁護士の年収の幅はかなり広いと考えておきましょう。
(※2)参考:no-limit「渉外弁護士の年収は1,000万円以上!激務とされる仕事内容や転職で渉外弁護士になる方法まで」
渉外弁護士の経験年数による平均年収の変動は、以下のとおりです。
初年度 | 1,000万円 |
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3〜4年後 | 1,500万円 |
入社から3〜4年ほど経ち、業務に慣れてくる頃には初年度の1.5倍にアップするケースがあります。4年目以降のキャリアは人それぞれのため、同じ事務所で働く場合とパートナーとして法律事務所を経営する場合とで年収に差が出るのが特徴です。
ただし、近年は渉外事務所のパートナーになるのは難しいといわれているため、同じ会社に長く所属する人が多いと考えられます。
ここでは、渉外弁護士になるための必要スキルや条件について解説します。司法試験の成績やインターン制度など、渉外弁護士へのチャンスが多いことを理解しましょう。
渉外法律事務所の採用決定は、9月の司法試験の合格発表前に行われます。そのため、司法試験の成績は渉外事務所の採用合否に関係ありません。
ただし、司法試験の合格発表後に、成績上位者を対象として追加募集が行われる場合があります。一度目で内定が出なかった場合でも入社できる可能性があるため、司法試験は諦めずになるべく上位を狙いましょう。
サマー・クラークとは、法科大学院生を対象とした夏期インターン制度です。サマー・クラークで優秀と認められると、翌年の司法試験終了後に事務所から面接に参加するようオファーがきます。
なお、予備試験の合格者を対象としたウインター・クラークは、サマー・クラーク同様に事務所の業務を体験できる場です。事務所関係者に顔を覚えてもらえる機会でもあるので、積極的に参加しましょう。
渉外弁護士として活躍するには、渉外案件を扱う法律事務所への入所を目指す必要があります。国内トップクラス規模を誇る五大法律事務所には渉外弁護士案件も多いため、入所を目指すのが得策です。
上記の五大事務所は、もともと渉外案件を中心としていた歴史があります。渉外案件に関する豊富な経験と専門知識を習得できる機会が得られるため、渉外弁護士を目指す人は入所を視野に入れましょう。
▼五大法律事務所について詳しく知りたい方はこちら
国際的な案件を扱う渉外弁護士にとって、英語力は必須スキルです。限られた時間の中で英語の契約書を読解するスキルや、外国語で契約書を書くライティングスキルなど、ハイレベルな語学力が求められます。
相手と契約交渉ができるレベルの会話力も必要となるため、渉外弁護士には最低でもTOEIC850点が必要です。入社してからの英語力の土台を作るという意味でも、TOEICや英会話に励むことをおすすめします。
渉外弁護士の主な取り扱いジャンルは、企業法務案件です。そのため、中途採用の場合は企業法務の経験があると選考に有利になる可能性があります。
また、上場企業案件を経験した人は企業のシステムを理解している人材とみなされ、より好印象です。弁護士資格にプラスしてアピールポイントがほしい人は、企業法務や上場企業案件を経験すると採用の可能性を広げられます。
渉外弁護士は、一般的な弁護士よりも激務であるといわれています。激務の理由を、緊急度と時差の2つの点から理解しましょう。
渉外弁護士の業務は、緊急性の高い案件を扱うことも少なくありません。クライアントの要求や法的期限に対応するため、短期間で複雑な業務にあたる必要があります。
緊急対応では、多国間にまたがる法律の解釈や大量の文書のレビューなどで徹夜作業が発生するケースもあります。緊急性の高い案件における短期集中型の業務スタイルが、渉外弁護士の仕事を忙しくさせる理由の一つです。
渉外弁護士は海外のクライアントとやり取りを行うため、時差の問題に直面します。米国のクライアントと仕事をする場合、日本時間の深夜や早朝に電話会議や緊急連絡が必要になることも珍しくありません。
また、欧米とアジアの両方のクライアントを持つ場合、実質的に24時間体制での対応が必要です。海外顧客に合わせた勤務が、業務の忙しさを増幅させています。
渉外弁護士としてキャリアアップするには、具体的にどのような道があるのか気になるところです。独立と、別事務所への転職の2つの道について解説します。
パートナー弁護士とは、法律事務所の経営に関わりながら自らも弁護士として活躍する人のことです。パートナーへの道は通常、弁護士として5〜10年程度の経験を積んだ後に開かれます。
パートナーになれば収入が大幅に増加し、事務所の意思決定に関与できますが、同時に責任範囲も増えます。自身のスキルを高めつつ、事務所への貢献が求められるチャレンジングな選択肢です。
渉外弁護士のキャリアアップとして、転職エージェントを活用した別事務所への転職も方法の一つです。法律業界に特化したエージェントは各法律事務所の内部事情に詳しいため、キャリアの方向性を考える上で貴重なアドバイスを提供してくれます。
また、通常では内定が難しい法律事務所や、より高いポジションへのサポートを行ってくれるのも強みです。履歴書や面接の対策など幅広くサポートしてくれるため、効率的なキャリアアップを目指す人は利用を検討しましょう。
渉外弁護士は、主に外国企業とのやり取りを扱う国際的な弁護士を指します。渉外弁護士への道は決して簡単ではないものの、インターンや法務経験など、弁護士試験以外の努力からも開ける可能性のあるキャリアです。
渉外弁護士になるための全体像を理解し、今日から始められる努力をスタートしましょう。
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