記事FV
法務
2024/07/21 更新

法務部に向いている人の特徴とは|やりがいや求められるスキルも紹介

「自分に合った職種は法務なのか」「未経験で法律に挑戦したいけど、法務の仕事ができるか不安」など、法務への転職を考えている際には、不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、法務への転職を考える方や既に法務部で働く方向けに、法務の適正や業務内容、必要な資格などを解説します。法務への適性や必要な能力を把握し、理想の転職を実現しましょう。

法務について

法務とは、法律や司法にまつわる業務や職種のことです。法務にはさまざまな種類があり、企業にまつわる法務は「企業法務」と呼ばれます。企業法務を担う法務部は、組織の「法の番人」として企業の健全な運営に重要な役割を担っています。

企業法務には「臨床法務」「予防法務」「戦略法務」の3種類があり、それぞれの役割は以下のとおりです。

企業法務の3つの種類

説明

臨床法務

企業に法的なトラブルが「発生した際」に対応する。
(例:不祥事が発覚した際の対応など)

予防法務

企業での法的なトラブルを「未然に」防ぐための対策をする。
(例:損害賠償のリスクを想定した契約書の作成など)

戦略法務

法律の専門知識を企業の経営戦略に活用する。
(例:経営陣からの新規事業の相談対応など)

法務に向いている方の特徴

法務は企業を法的側面から守り、ビジネスの進展を支える役割を果たします。法務に向いている方は以下のとおりです。

法務に向いている方の特徴

  • きちんとした作業ができる人
  • 学びに対して意欲的な人
  • 正義を重んじる人
  • コミュニケーションスキルが高い人
  • 危機管理意識が鋭い人

きちんとした作業ができる人

法務には、きちんと作業できる几帳面さや継続的な作業ができる能力が重要です。法務の担当者は契約書などの細部に注意が求められます。

たとえば、法務部では契約書における法令違反のチェック、「リーガルチェック」があります。微妙な言葉の違いが企業にとって大きな損害を引き起こす可能性もあるため、法務の役割は重要です。

こうしたプレッシャーの高い業務でも、几帳面でコツコツ作業ができる人は法務部で重宝されます。

学びに対して意欲的な人

法務担当者は単に法律の知識だけでなく、積極的に新しい関連知識を吸収し続ける学習意欲も求められます。なぜなら法務の基盤となる法律は頻繁に変更され、適切な業務遂行には常に最新の法律情報が必要だからです。

近年、企業法務には業務範囲が多様化し、グローバル化の影響で変化しています。書籍やセミナーを活用して情報を収集し、自己の専門知識を向上させることが求められます。

正義を重んじる人

常に規則や道徳を重んじる強い正義感を持つ人は、法務に向いていると言えます。企業の信用や従業員を守るためには、社内での不正行為やデータの改ざんなどを許さず、正しい判断を下す強い意志が必要です。

例えば、企業の利益に反することや上層部の指示であっても、不正行為やデータの改ざんなどは厳に禁じられます。法務は国の法律に基づいて業務を行うため、細かな規則を遵守し、正義感の強い人が適しています。

コミュニケーションスキルが高い人

法務では、柔軟に対応できるコミュニケーション能力が求められます。社内外で様々な立場の人々と円滑な交渉や利害調整を行う必要があるためです。

例えば、業務の委託契約を締結する場合、まずは社内の関連部門と契約内容や費用について話し合い、その後に業者との契約手続きを進めることもあります。また、訴訟やトラブルが発生した場合も適切に対処が必要です。

そのため、法務において円滑なコミュニケーション能力は極めて重要だといえます。

危機管理意識が鋭い人

法務において、あらゆる事態を想定し、トラブルやリスクを未然に防ぐ危機管理意識が極めて肝要です。

たとえば契約書の「免責条項」は、契約上起こり得る多岐にわたる問題を予測し、損害賠償の責任範囲を明確にする目的があります。法務では、各ケースでの潜在的な問題やリスクに的確に対処するための対策が必要なのです。

このようなリスクマネジメントに長けた危機管理意識の高い人は、法務の分野に適性があるといえます。

法務の業務内容について

企業の法的関連業務を担う法務には、どのような業務があるのでしょうか。法務の業務は多岐にわたりますが、主に以下のようなものがあります。

法務の主な業務内容

  • 社内での法的相談
  • 契約関連の業務
  • 社内ルールの整備
  • トラブルへの対処
  • 法的手続きの業務

社内での法的相談

法務部は企業内での「法律相談窓口」として、経営陣から一般社員まで様々な立場の人々から相談を受けます。多岐にわたる相談に応じるためには幅広い法律知識が必要です。

たとえば社内で起きたハラスメントの相談に対しては、法務は法的リスクを評価し、場合によっては事業部や顧問弁護士に解決策の提案や報告を行います。また、法務は相談内容を社内の規則や研修に取り入れることで、トラブルの未然防止や同様のリスクを回避するための努力も必要です。

契約関連の業務

法務の主要な業務の一つが「契約法務」です。企業が取引先と締結する契約書の作成や審査、締結を行い、法的に問題がないかどうか、自社に不利益がないかを精査します。

契約法務において適切な判断を下すためには、以下のような視点が重要です。

契約法務で重要な視点

  • 取引上のリスクを最小限に抑える
  • 自社の利益を最大化する
  • 取引先との持続的な取引関係を築く

法務担当者は法律や自社の利益だけでなく、取引相手の状況や利益も総合的に考慮する視点が求められます。

社内ルールの整備

企業内での基準や規則を指す社内規定は、法務部が策定・メンテナンスを担当します。これは、多様な従業員の価値観や見解を調整し、組織の秩序を整え、業務の効率化を図るために作成されます。

就業規則など法律に基づいて整備されるものと、企業独自に必要に応じて設けられるものがあります。どちらも法令違反を犯してはいけないため、法務のチェックが不可欠です。

トラブルへの対処

法務の業務には、社内外で発生したトラブルや紛争への対応も含まれます。企業活動においては、顧客からの苦情や内部の不正行為、従業員間の嫌がらせなど多様なトラブルが発生します。法務部は単独で解決にあたる場合もありますが、訴訟など大きな紛争には外部の弁護士と連携して対処が必要です。

トラブルによる企業の損害を最小限に抑えるためにも、即座で的確な対応が求められる業務と認識しておきましょう。

法的手続きの業務

法務部は、法令や会社規則に基づいてさまざまな法的手続きを行います。すべてのビジネス活動は法的規制と密接な関わりがあり、円滑に進行させるために正確な法的知識が欠かせません。

たとえば、会社法に基づいた株主総会や取締役会の開催、子会社の設立や新株の発行など、重要な機関の運営に関するサポート業務を担います。これらの業務は「機関法務」とも呼ばれ、手続きに不備があれば経営に大きな問題を引き起こすリスクがあるため、極めて重要な役割です。

法務のやりがいは?

法務の仕事は専門性が高く、複雑な法的問題に取り組むため、次のようなやりがいを感じることができます。

  • 法律の専門家として評価されること
  • 課題を解決したりサポートしたりできること
  • 新しい知識を得る/自身の知識を深めること
  • チームで様々な課題に取り組むこと

法律の専門家として評価されること

法務の職務には、法律の専門知識が必要です。法学部や司法試験などで法律を学んだ方々は、獲得した専門知識を活かせるため、大きなやりがいを感じることができるでしょう。

法務の主な業務には、契約書の確認・作成、株主総会の対応、社内規定の作成・整備、法的なトラブル・紛争への対処などがあります。これらの業務には法律の知識を活用して対処が必要です。単に法律に詳しいだけでなく、「法律を実務で応用できる専門家」として高い評価を受けられます。

課題を解決したりサポートしたりできること

法務の仕事において、企業の課題を解決したり、様々な部署を法的観点から支援することができるのも、やりがいの一つと言えます。

法務の役割では、常に法的なリスクを最小限に抑えながら契約書の作成や交渉を行います。例えば、新規事業の立ち上げにおいて法務が関与し、効率性や利益を高めることで企業の成長をサポートする役目です。

企業や従業員を法的にサポートし、貢献できることが法務のやりがいの源と言えるでしょう。

新しい知識を得る/自身の知識を深めること

法務の基盤となる法律は頻繁に変化します。法務の担当者は、最新の法律知識を継続的に学びながら新たな知識を獲得することが不可欠です。

また、契約や事業に関連した法規やリスクへの対処法は柔軟に変化します。実務を通じて自身の法的知識をより深め、広げることで、法務担当者としての成長を実感できるでしょう。

チームで様々な課題に取り組むこと

法務の仕事では、チームワークが重視されます。なぜなら、課題解決や契約手続きにおいて他部署と連携したり、外部の弁護士や税理士などと協力することが多いからです。

例えば、新規事業の開始において、法務部は営業部や総務部、経理部などと連携し、法的な観点から契約や事業内容を検討します。

関連部署と協力して課題に取り組み、良い結果をもたらすことで、やりがいを感じられるでしょう。

法務に活用できるスキル・資格6選

法務職に就くために必須の資格は特にありません。ですが、法務では法律の知識と実務経験が重視されますので、法律関連の資格を取得すると転職や実務に役立つでしょう。法務への転職を目指す方は、ぜひチェックしてみてください。

弁護士

弁護士は、法律関連資格の頂点にして合格率3〜4%(※1)という最難関の国家資格です。弁護士になるには法務省が主催の司法試験に合格し、その後約1年間実施される司法修習を終了する必要があります。なお、現行の司法試験(本試験)の受験には、以下のどちらかの「受験資格」が求められます。

<司法試験(本試験)の受験資格(※受験にはどちらか1つが必要)>

  • 法科大学院課程を修了する
  • 司法試験予備試験に合格する

近年では企業に勤める「企業内弁護士」も増加傾向にあり、キャリアパスの1つになっています。

参考:日本弁理士連合

司法書士

司法書士は法務省が実施する国家資格です。「街の法律家」「登記のスペシャリスト」とも呼ばれる司法書士は、不動産の登記や裁判所に提出する書類作成など、司法や法律に則ってさまざまな手続き業務を行います。

司法書士の平均合格率は例年3〜5%(※2)前後となっており、弁護士と並ぶ最難関国家資格の1つです。

一般企業に勤める司法書士は多くありませんが、法律や司法に関する高い専門性を有するため企業法務のパートナーとして重宝されるでしょう。

(※2)参考:法務省 令和5年度司法書士試験の最終結果について

行政書士

行政書士は国家資格であり、「示談書」や「告訴状」など、行政へ許認可申請が必要な場合の書類作成や、官公署に届ける書類に関する相談業務などを行う法律の専門家です。

難関資格ではありますが、平均合格率は10%(※3)前後のため法律系の資格の中では比較的難易度が低いと言えます。行政書士の資格を取得すれば法務系職種への転職に役立つほか、法務部で実務経験があれば評価が高まり、キャリアアップや開業に有利になるでしょう。

(※3)参考:一般財団法人行政書士試験研究センター

個人情報保護士

個人情報保護に関する正しい理解と知識を習得し、個人情報を適切に運用・管理するスキルを証明する民間資格です。全日本情報学習振興協会が主催しており、平均合格率は37.3%(※4)程度ですので十分に勉強して臨めば合格できる難易度と言えるでしょう。

ニュースでもよく取り上げられる「サイバー攻撃」や「個人情報漏えい事件」などから認知度が高まっている資格です。近年では、社員教育の一環で団体受検を実施する企業も増えています。

(※4)参考:個人情報保護士認定試験

ビジネス実務法務検定

東京商工会議所が主催する、ビジネスの業務上必要な法律の実務知識を問う民間資格です。法務部門はもちろん、営業や総務、人事などあらゆる職種に通用する実務レベルの法律知識を正しく習得できます。

ビジネス実務法務検定には1級から3級まであります。1級を取得すると法務への採用選考時に有利になりますが、平均合格率は20%(※5)前後と国家資格なみの難易度です。
転職だけでなく、法務担当者としてキャリアアップしたい方にもおすすめの資格といえます。

(※5)参考:東京商工会議所

ビジネスコンプライアンス検定

あらゆる業務に必要な、コンプライアンス(論理法令遵守)に関する知識や能力を判定する資格です。コンプライアンス検定委員会が主催する民間資格で、初級と上級があります。平均合格率は初級と上級を総合して60%(※6)前後と、難易度はさほど高くありません。

コンプライアンスの知識は、法務やコンプライアンス担当者だけでなくすべてのビジネスパーソンに求められます。取得すると他業種への転職の際にも良いアピールになるでしょう。

(※6)参考:株式会社アガルート調べ

法務に関するよくある疑問

ここでは、法務への転職に関連する疑問について解説します。

法務に関するよくある疑問

  • 法務の年収はどのくらい?
  • 未経験者でも転職できるのか?
  • 法務の仕事は負担が大きい?
  • 法務の将来性はあるのか?
  • 自分が法務に適していないと感じる時は?

法務の年収はどのくらい?

法務の平均年収は約544万円(※7)です。国税庁による令和3年の調査によると、日本の平均年収は443万円(※8)であることから、法務の年収は平均より100万円ほど高い水準にあると言えます。

さらに、法務経験を5〜10年ほど積んだ管理職クラスの平均年収は以下のとおりです。

法務の管理職クラスの平均年収

  • 課長クラス:600〜900万円
  • 部長クラス:1,000〜1,300万円

あくまで目安ではありますが、法務は順調にキャリアを積めば高い年収が期待できる、有望な職種と言えるでしょう。

(※7)法務の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)求人ボックス(令和5年5月算出)
(※8)令和3年分 民間給与実態統計調査 国税庁「概要」

未経験者でも転職できるのか?

結論として、未経験でも法務への転職は可能です。しかし、法務は高い専門知識や実務経験が重視される職種のため、未経験からの転職は難しいと言えます。

新卒や第二新卒(25歳前後)であれば未経験でもポテンシャルが評価されますが、30代以降では「即戦力」を期待されるため転職の難易度はさらに高くなるでしょう。

まずは総務や人事など別の職種で入社してから、法務部への配属を狙うのも方法の一つです。まずは法務に不可欠な法律系の資格取得から始めましょう。

法務の仕事は負担が大きい?

法務部の仕事がきついかどうかは、企業から求められる役割や業務範囲、社内体制などによって異なります。

処理する契約書の数に比例して負担も増えますし、海外企業との取引があれば外国法のチェックが発生したりと業務範囲も広がります。また、適切な法的判断をするために、頻繁に改正される法律の知識を常にアップデートする必要もあるでしょう。

企業によっては法務部が総務部などの業務を兼務するケースもあります。目指す企業の社内体制を事前にチェックしましょう。

法務の将来性はあるのか?

法務は企業にとって必要不可欠な部署であり、将来性も豊かといえます。近年のSNSの発達や労働者の権利意識の高揚で企業の法的リスクは増しており、あらゆるリスクを想定して防止する法務の重要性も高まっているからです。

また、各業界で導入が進む機械化やAIツールは法務の仕事にも登場してきています。ですが法務の業務は多岐に渡り、複雑な訴訟の対応や労使間トラブルなど、人の感情が絡む事案の解決には実務経験の豊富な法務担当者が今後も求められるでしょう。

自分が法務に適していないと感じる時は?

「法務部に配属されたけど、専門知識や実務経験がない自分にやっていけるのか」「法務部で業務をこなしているけど働きづらく感じる。向いていないんじゃないか」

現在あなたが法務部で働く中で、こうした悩みを抱えているかもしれません。

知識や実務に自信がないなら、まずは法務の基礎となる「民法」をしっかり学び、法的問題に的確な判断をするための「リーガルマインド」の習得から始めましょう。また、法務部のあり方は、企業における立ち位置や役割、社内体制などによって異なります。法務そのものに適性があっても、そうした理由で違和感を覚えることもあるでしょう。

このように「法務に向いていない」と感じるのは自身の専門性を高めたり、所属する組織を変えたりすることで解決できる可能性があります。時には転職も視野に入れつつ、信頼できる上司や外部の転職エージェントなどに相談してみましょう。

法務職に向いている人の特徴を理解して転職に役立てよう

法務の職務には、几帳面で学ぶ意欲の高い人、正義感や危機管理の意識が強く法令を厳格に順守できる人が向いています。未経験からの法務転職は難しいですが、関連資格を取得するなどの手段を用いて法務への転職はめざせます。

まずは法律に関する知識を身につけ、法務部門での転職に向けて情報収集を始めましょう。

著者画像

株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。

満足度98%のキャリアコンサル

無料カウンセリングはこちら