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2024/03/22 更新

知的財産とは?知的財産の種類や知的財産に関わる仕事についても解説

私たちの暮らしに密接に関わっている「知的財産」。あまり聞き馴染みがない言葉かもしれませんが、特許や著作権と聞くと、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この記事では、知的財産権について、種類やそれぞれの権利の内容、知的財産権に関わる資格、仕事などを解説しています。近年関心が高まっている知的財産権について理解を深めましょう。

知的財産とは?

発明や音楽、営業秘密など、人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物には、財産的な価値がありますこれらを「知的財産」と呼び、形がない無形物であるのが特徴です

知的財産基本法では、知的財産について「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」と記しています。

参考:首相官邸「知的財産基本法(平成14年法律第122号)」

反対に、土地や建物などの不動産、現金や有価証券など形のあるものを有体物といい、有体物を保護するための権利として所有権があります。 知的財産は、目に見えないためわかりにくいのですが、馴染み深い例の一つとしてアイデアや音楽、映画、絵画、チラシやポスターのデザインなどがあります。

知的財産権とは?

先ほど紹介したアイデアや芸術などの権利を守る法律が「知的財産権」です。

知的財産基本法において、「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利であることが定められています。

知的財産の特徴の一つとして、「もの」とは異なり「財産的価値を有する情報」であることが挙げられます。情報は、日々進歩している技術によって、簡単に模倣されてしまいます。しかも、利用されても消費されるということがないため、多くの人が同時に利用することまでできてしまうのです。このような状況から創作者の権利を保護するため、元来自由に利用できる情報を、社会が必要とする限度で自由を制限する制度が知的財産権制度です。

近年、政府では「知的財産立国」の実現を目指し、さまざまな施策を進めており、経済の活性化だけではなく、企業や大学・研究機関においても重要な位置を占めると認識されています。

知的財産の種類

知的財産権(※1、2)には、大きく分けて2つの種類があります。特許権や著作権などの創作意欲の促進を目的とした「知的創造物についての権利」と、商標権や商号などの使用者の信用維持を目的とした「営業上の標識についての権利」です。

知的創造物についての権利

知的創造物についての権利は、特許権、実用新案権、意匠権、著作権、回路配置利用権、育成者権、営業秘密に分かれます。馴染みのあるものから、あまり聞いたことのないものまであるかもしれません。それぞれの権利について紹介します。

(※1)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

(※2)参考:特許庁「知的財産権について」

特許権(特許法)

特許権は発明を保護するための権利です。 発明とは、技術的なアイデアのことをいいます。特許は、産業の発展に寄与することを目的としており、世の中の技術を進歩させるようなアイデア、簡単には思いつかないような新しいアイデアであれば該当する可能性があります。

身近なところでは、シャンプーなどの詰め替えパックをそのまま使用できるようにする便利グッズ、缶切りがなくても缶詰の蓋が開けられるプルトップ缶、劣化の早い生醤油を鮮度を保ちながら長く楽しめるやわらか密閉ボトルなど、私たちの身の回りには特許を取得した商品がたくさん存在しています。

特許権を取得すると、自身の特許発明の実施を独占できると共に、第三者が無断でその特許発明を利用していればそれを排除することができます。

(※2)参考:特許庁「知的財産権制度入門」日本弁理士会「特許権と特許出願」

実用新案権(実用新案法)

商品そのものから製造方法まで幅広い保護権を持つ特許と違い、「物品の形状、構造又は組合せに係る技術」に限定して保護が与えられるのが実用新案権です。権利を取得すれば、特許よりも制限がありますが、独占排他権を行使することができます。

身近なところでいうと、布団たたきや押しつぶせるティッシュ箱、フローリングワイパーなどが実用新案権で守られています。

実用新案は特許よりも審査が早く、登録になりやすく、費用が安いのが特徴です。そのため、特許を取得するような大きな発明まではいかない、日常生活の利便性を向上してくれるようなちょっとした工夫や発明で取得する例が多くあります。

ただし、実用新案法は、特許のような「方法」や「物質」は、保護の対象とならないため、注意が必要です。

(※3)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

意匠権(意匠法)

意匠権は、物や建築物、画像などのデザインに対して与えられる独占排他権です。意匠権では、全体的なデザインのほか部分的に特徴のあるデザインが保護され、その期間は出願の日から25年です。意匠権で守られるのは、登録された意匠と同じものだけでなく、類似のものまで含まれます。第三者からデザインを模倣されたり、類似品を販売されたりするのを防ぐためです。

意匠権の対象となるものは、文房具類、調理用品、おもちゃなどの日用品、テーブル、システムキッチン、照明器具などの住宅関連品、服や鞄などの衣服類、携帯電話などの機械関連品、ペットボトルや包装容器など、数えきれないほどあります。農産物の形状や、工業用の使用ができないものは範囲の対象外です。

(※4)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

著作権(書作権法)

著作権とは、著作物の利用に関して、著作物を創作した者(著作者)に認められた権利をいいます。

著作権は、ここまでに解説した特許権や実用新案権、意匠権と違い、著作物を創作したときから自動で発生する権利です。

著作権によって保護される「著作物」とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものを指します。例を挙げると、小説、脚本、論文など言語の著作物、曲、歌詞など音楽の著作物、映画、テレビ番組、ゲームソフト、YouTube動画など映画の著作物、このほか写真や設計図なども含まれます。

著作権は、原則として著作者の死亡した年の翌年以降70年が経過するまで保護されます。

(※5)参考:特許庁「知的財産権制度入門」日本弁理士会「著作権とは」

回路配置利用権

導体集積回路の回路配置の適正な利用を確保し、回路配置に関してコピーされることを防ぎ、開発者の利益を守ろうとするのが回路配置利用権です。特許権や著作権などと近い概念であるとも考えられます。

もし、回路配置利用権による保護がなければ、誰でも電子回路の模倣・コピー品が無断で自由に作れることになってしまいます。そうすると、大きなコストをかけながら新たな技術を開発しようという開発側の意欲が削がれます。開発して早々に模倣品を安価で販売されてしまうと、開発にかかる費用が回収できないからです。そこで、半導体に関する開発が促進されず、経済全体にも悪影響が及ぶことを回避するため、きちんと保護する目的で回路配置利用権が定められています。

(※6)参考:一般財団法人ソフトウェア情報センター「半導体回路配置利用権登録」

育成者権(種苗法)

育成者権は、新しく育て上げられた植物品種を保護する権利のことです。育成権のある種苗は、他人が勝手に利用することができません。このように、新品種を育て上げた者に、種苗、収穫物、加工品の販売などを独占できる権利を与えることで、第三者が容易に増殖させ利益を得ることを防ぎます。

身近な例では、おいしさと病気への強さを両立させたコシヒカリや皮ごと食べられるシャインマスカット、いちごなどが挙げられます。

育成者権には期限が付いており、期限を過ぎると育成者権は消滅します。保護される期間は、育成者権品種登録の日から25年間で、樹木など永年性植は登録の日から30年間です。育成者権が消滅した登録品種は育成者の承諾なしに誰でも販売や増殖ができるようになります。

(※7)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

営業秘密(不正競争防止法)

営業秘密とは、秘密として管理されていて、生産方法や販売方法その他の事業活動に有用なノウハウであって、公然と知られていないものを指します。しかし、情報が公開されないよう特許出願をせず営業秘密として管理していると、従業員や取引先などから内容が漏洩してしまう場合があります。このような情報の流出を防ぐため、「営業秘密」として管理される情報には、不正競争防止法において、その不正取得、開示、使用等に対して一定の条件のもと、民事的保護または刑事罰が適用されます。

営業秘密として法的保護を受けるために必要な最低限の水準は、経済産業省により策定された「営業秘密管理指針」に定められているため、参考にしてみてください。

(※8)参考:経済産業省「営業秘密管理指針」

営業上の標識についての権利

「知的創造物についての権利」と合わせて知的財産権として保護されるのが「営業上の標識についての権利」です。営業上の標識とは、商標や商号、マークやロゴ等、営業する時に消費者に識別してもらうために表示するものを指します。

(※9)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

商標権(商標法)

「商標権」とは、登録された商標(登録商標)について認められる権利です。商品を購入したりサービスを利用したりするときに、知っている企業のマークのものを無意識に選んでしまう経験をした人も多いのではないでしょうか。その時に目にしたマークが商標です。

商標権は、商標が勝手に他人に使われることによって、ブランドの信頼やイメージを損ねたり損害が生じたりするのを防ぐために定められています。文字や図形などのマークと、そのマークを使用する商品・サービスとの組合せで一つの権利となっており、マークだけでは登録することができません。また、同じような商標が2つ以上あったとしても、商品・サービスが異なれば登録できる可能性があります。

(※10)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

商号(商法)

商号とは、「〇〇商店」や「株式会社〇〇」など、会社・個人事業主が営業を行うにあたって使用する名称です。商標との違いは、商標が商品やサービスの名称であるのに対し、商号は個人事業主や会社自身の名称である点です。また、商号は、文字(一部符号を含む)に限られています。

不正の目的をもって、誤認される恐れのある名称や商号を使うことは禁止されています。

不正のつもりではなく、偶然他社と似たような商号を用いてしまった場合であれば商法・会社法の違反にはなりません。

商号を決める場合は、顧客や取引先に与える印象を考慮したうえで、似たようなものがないか十分にリサーチし決定することが大切です。

(※11)参考:契約ウォッチ「商号とは?屋号や商標との違い・商法・会社法のルールや 決める際の注意点などを分かりやすく解説!」

商品等表示(不正競争防止法)

不正競争防止法の文面では、商品等表示のことを「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう」と定義しています。すなわち、種類や方法を問わず、ある事業者の商品又は営業を表示するものであれば保護の対象となりえるのです。

商品等表示が保護されるためには、商品表示性、周知性、類似性、加えて侵害者の行為が、需要者に「混同を生じさせる行為」があることが必要です。

商品等表示として認められるものは、氏名や商号、看板、商品の容器など多岐に渡ります。過去に裁判となった例では、コメダ珈琲の店舗外観、パソコンのiMac、育成ゲームの「たまごっち」などがあります。

(※12)参考:特許庁「不正競争防止法における商品形態に関する裁判事例」一般社団法人日本知財学会「意匠法・商標法による店舗の外観・内装保護と不正競争防止法による保護の関係」

地理的表示

地理的表示は、地域風土に根付いた独自の環境や伝統的に受け継がれた製法で作られ、この地域ならではの個性を持った農産品や食品につけられています。たとえば、但馬牛、夕張メロン、越前がに、鳥取砂丘らっきょうなどです。

農林水産省では、地理的表示を知的財産として保護し、生産者の利益確保と信頼の保護をはかる目的で「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」を定め、「地理的表示(GI)保護制度」を運用しています。

登録できるのは、食用の農林水産物と飲食料品、政令で指定された非食用農林水産物と飲食料品以外の加工品で、登録内容を満たす産品は、地理的表示を使うことが可能になり、登録標章であるGIマークを使用することができます。

(※13)参考:特許庁「知的財産権制度入門」

産業財産権とは

ここまでに解説した知的財産権のうち、「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」の4つは「産業財産権」と呼ばれています。

アイデアや技術などを勝手に使われたり、まねされたりしたのでは、新しいものを創造しようとする創作者の意欲が失われてしまうばかりではなく、本来経済的利益を上げられる権利を失うことにもなりかねません。そこで、独占権を与え、模倣防止のために保護し産業の発展を図ることを目的として産業財産権制度が定められているのです。

ただし、アイデアや技術は常に進歩するため、特許権には保護期間が定められています。一方、商標権はブランドの永続性を確保するために、更新手続きを行うことを条件として、いつまでも存続することが許されています。

(※14)参考:特許庁「スッキリわかる知的財産権」

知的財産に関わる仕事

知的財産権は、ビジネスにおいて非常に大事な要素になります。知的財産に関わる仕事をしたいと思ったら、どのような仕事があるのでしょうか。ここでは、弁理士、特許技術者、企業の知財部での仕事を紹介します。

弁理士

弁理士は、知的財産に関する専門家で、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)に関わるすべての手続きを代理することができます。弁理士の資格は、産業財産権の取得や産業財産権の紛争解決をスムーズに行うことができる、唯一の国家資格です。

手続きの代理だけでなく、知的財産の専門家として、権利取得についての相談から、自社製品を模倣されたときの対策、他社の権利を侵害していないか等の相談まで、知的財産全般について相談を受けて助言、コンサルティングを行うことも仕事の一つです。このほか、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの侵害に関する訴訟に、補佐人や代理人として参加することもあります。

特許技術者

特許技術者とは、特許を出願するため、および出願後に特許庁とやり取りをするために必要となる書類を作成する「特許実務」を行う人のことです。特許の出願手続きは弁理士が行わなければならないという法律があるため、特許技術者は弁理士のもとで実務を行います。特許実務は、技術に関して深く理解していることに加え、特許法や特許の審査基準に精通することの両方が求められるため、非常に高度で専門的な仕事であるといえます。

特許技術者を目指す場合、未経験者はまず特許事務所に入所し、経験を積むところからスタートするのが一般的です。特許実務の十分な経験を積んだあとは、他の特許事務所や一般事業会社の知財部門へ転職する道もあります。

企業知財部

企業の知財部とは、知的財産権の管理業務を担当する部署のことです。自社の製品・サービス・技術などの知財関係を取り扱うことが多く、特許にまつわる仕事をスピーディーに行うために設けられています。

代表的な仕事は、特許の出願から登録までに関わる業務です。このほか、企業の規模によっては、契約や紛争対応の業務もあります。特許事務所との業務の違いは関わる工程です。企業の知財部では、権利化の方向性を決定し、特許事務所が具体的な出願書類を作成するという役割を担います。

また、特許に関しては、権利化ができなかったとしても出願内容が第三者に無償で公開されるため、出願した特許を第三者に使用されないようにすることも大切な仕事といえるでしょう。

知的財産に関わる資格・知的財産管理技能検定とは?

弁理士以外に、知的財産に関わる資格の一つとして、知的財産管理技能士検定があります。知的財産管理技能士試験は、知的財産に関する知識や知的財産を管理する技能の習得レベルを証明するための国家資格です。検定試験は厚生労働省の職業能力開発促進法にもとづいて、実施されています。

知的財産管理技能士は、弁理士のように著作権などのトラブルに対して具体的な手続きや対応を行うことはできません。しかし、取得することで知的財産権への理解の深さを示すことができ、転職やキャリアアップに役立つ資格といえます。著作権などの問題も複雑化しているため、知的財産に関する知識を持った人材へのニーズは、今後も拡大していくでしょう。

知的財産管理技能検定について、詳しくは下記を参照してみてください。

(※15)参考:SYNCA 「知的財産管理技能検定の種類と難易度|資格を取得するメリットや活かせる仕事を紹介!」

知的財産管理技能検定で知的財産のエキスパートになろう

モノや情報が溢れる現代において、重要度が高まっている権利の一つが知的財産権です。さまざまな種類があり、深い理解が必要とされる分野でもあります。より知識を深めるためには、知的財産管理技能検定を受けると良いでしょう。取得していると企業の知財部や法務部、特許事務所で生かすことができます。

また、知的財産に関わる仕事への転職やキャリアアップを検討しているなら、法務部や知財部などバックオフィスに特化した転職エージェント「WARCエージェント」がオススメです。専門知識を有するエージェントのサポートを利用し、効率よく採用活動を進めましょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。