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2024/09/06 更新

社労士(社会保険労務士)試験の難易度|仕事の内容や年収・やりがい・将来性を解説

社労士の資格とは、具体的にどんなもので、どんなことができるのか、わからない方も多いでしょう。

この記事では、社労士の仕事内容や年収、将来性などを解説します。さらに、社労士となるために必要な条件についても紹介するので参考にしてください。

社労士(社会保険労務士)について

社労士の正式名称は「社会保険労務士」です社会保険労務士法に基づいた国家資格に該当し、社労士試験に合格することで国家資格者となります労働・社会保険関係の国家資格は社会保険労務士のみであり、非常に価値のある資格と言えます

社労士は人材に関する専門家であり、企業において社会保険関連や労務関連の制度運用、年金や福利厚生などの相談に応じるのが仕事です。

一見、行政書士や労務管理士などの資格が類似していますが、これらの資格では社労士の業務を担当することはできません。社労士の資格なくして社労士の業務を行った場合は罰則が適用されます。

社労士を設置する目的には「労働、社会保険関連の法令の円滑な実施」、「事業の健全な発展を促す」、「労働者等の福祉の向上に役立つ」などがあります。

社労士(社会保険労務士)の業務内容

社労士の仕事内容には、以下のような分野があります。

社労士が扱う分野

  1. 年度更新・算定基礎
  2. 年金関連
  3. 労働安全衛生関連
  4. 労使関連

社労士の仕事は多岐にわたり、これらの分野において雇用主の企業が必要とするだけでなく、社員からの相談を受けたり、各種申請の代行や書類作成なども社労士の業務の一環です。

社労士の業務は、1号業務から3号業務までが存在し、それぞれ以下のように分類されます。

  1. 号業務:行政機関への提出書類の作成、労使間の紛争や行政機関との交渉代理人
  2. 号業務:労働社会保険関連の法令に基づく帳簿書類の作成
  3. 号業務:労務管理関連、社会保険関連の相談対応や指導

これにより、社労士は幅広い分野で企業や個人に対して専門的なサービスを提供しています。

①年度更新・算定基礎

「年度更新・算定基礎」に関連する詳細な業務は、以下のとおりです。

具体的な業務内容

  1. 労働社会保険の適用
  2. 労働保険の更新
  3. 社会保険の算定基礎
  4. 各種給付金の申請
  5. 就業規則の作成や変更

労働保険料は年払いの先払いであり、毎年、1年間の保険料の見込み額を先払いし、年度末に精算した上で次年度の先払いを行います。この手続きが年度更新です。

また、給与に応じて適切な社会保険料が設定されているかを毎年見直す作業が算定基礎です。毎年7月に見直しを行い、年金事務所に対して算定基礎届を提出します。

②年金関連

「年金関連」の具体的な業務は、以下のとおりです。

具体的な業務内容

  1. 年金の相談
  2. 年金の請求

社労士は公的年金に関連する唯一の国家資格者として、年金についての疑問に答えたり、年金請求の手続きを補助したりする業務を担います。年金制度は非常に複雑であり、制度の改正も行われるため、年金加入者は自分がもらえる年金や支払っている年金について疑問を持つことがよくあります。

③労働安全衛生関連

「労働安全衛生関連」の具体的な業務は、以下のとおりです。

具体的な業務内容

  1. 安全衛生管理
  2. 安全衛生教育
  3. 就業環境の改善

労働安全衛生関連のさまざまな事項は、労働安全衛生法に細かく定められています。この法律は、労働者の安全や健康を確保し、職場を快適に保つための法律です。例えば、労働者の健康管理は、メンタルヘルスも含めて社労士の介入すべき業務の一つでもあります。他にも、労働災害を防止したり、快適な職場環境を整えたりすることも、労働安全衛生関連の社労士の業務と言えます。

④労使関連

「労使関連」の社労士の業務は、以下のとおりです。

具体的な業務内容

  1. 個別労働関係紛争の防止
  2. 労務診断
  3. 雇用や人事・賃金などの相談
  4. 給与計算

社労士に給与計算を依頼することは、企業にとって、社会保険関連の業務も含めて行うことができるためメリットがあります。雇用相談なども含めて、企業が快適な職場環境を作り上げているかどうかを診断するのが、労務診断です。一方で、こうした状況のなかでも、雇用主と労働者との間で労使間紛争が起こることもあります。労働関連などの法律に基づいた、裁判に頼らない和解を導くのも社労士の業務です。

社労士(社会保険労務士)の年収について

2019年に厚生労働省によって行われた「令和元年賃金構造基本統計調査」によれば、社労士の年収平均は、男性で約512万円(※1)、女性で約434万円です

なお国税庁がホームページで公開している情報によれば、日本人の平均給与所得は男性が567万円、女性が280万円です。この数字だけを見ると、とりわけ男性にとって社労士は飛び抜けて年収が高いとはいえない仕事かもしれません。

ただし、年齢が上がるごとに年収も上がる傾向で、45歳以上になると600万円を越えるとする調査もあります。社労士の資格を基盤としてさらなるキャリアアップを図れることも考えると、社労士は高い年収へのポテンシャルを持った資格といえます。

(※1)参照:国税庁「1年を通じて勤務した給与所得者」

社労士(社会保険労務士)のやりがいとは

社労士のやりがいは、自らの力が経営者や労働者に貢献していると感じることにあります

社労士は経営者や労働者から信頼を得て、企業の労働環境を整える重要なポジションを担っています。双方の意見の調整など困難な瞬間もありますが、結果として満足度の高い職場を築くことができれば、深い信頼を築くことができるでしょう。

また、自分の力で企業の環境を整えることができる実感は、人に貢献している実感につながります。これらは社労士が持つ資格によって特有のやりがいと言えるでしょう。

社労士(社会保険労務士)の将来性とは

社労士は国家資格であり、その業務には社労士以外ができない仕事も含まれているため、将来性が非常に高い職業です。

冒頭で1号業務から3号業務に社労士の仕事が分類されていることを述べました。1号や2号業務は今後、AIによって代替される可能性があるかもしれませんが、3号業務はAIでは不可能です。

3号業務は、労働者一人ひとりの事情や環境を十分に理解し、その個々に合ったアドバイスが求められます。適切なサポートを提供することで、優れた人材が企業に集まり、留まることができるようになり、これは企業の業績にも大きく影響します。従って、同じ社労士の業務であっても、3号業務に特化し、その内容を向上させることで、今後ますます価値ある存在となるでしょう。

社労士(社会保険労務士)になるには免許が必須

社労士になるためには、国家試験に合格し、社労士の免許を取得する必要があります。

社労士試験は、全国社会保険労務士会連合会試験センターによって主催されている試験です。試験は同団体が指定する全国のテスト会場で行われます。全都道府県で行われるわけではないため、試験会場が発表されたら近くの会場を探しましょう。会場の種類はさまざまですが、大学のキャンパスなどを試験会場とする場合がほとんどです。

試験は年に1度で、従来、8月の第4土曜日に行われています。

社労士免許は、有効期限がなく、一度取得できれば一生使うことができます。ただし国家試験に合格しただけでは、まだ社労士を名乗ることはできません。合格したのちに、労働社会保険関連の実務経験を2年つみ、さらに、全国社会保険労務士会連合会で社会保険労務士名簿に登録する必要があります。

社労士(社会保険労務士)の受験資格について

社労士には何種類か受験資格があります。いずれかの資格があれば社労士試験を受けることができるため、あらかじめチェックしておきましょう。

社労士の受験資格は以下のとおりです。

  • 学歴による受験資格:大学・ 短期大学卒業、専門学校卒業、厚生労働大臣が認めた学校の卒業など
  • 実務経験による受験資格:国股は地方公共団体の公務員等、労働組合の専従役員、会社その他の法人の労務担当役員 など
  • 試験合格による受験資格:社労士以外の国家試験合格、司法試験予備試験等の合格、行政書士試験の合格

社労士試験の受験資格はたくさんあります。詳細はオフィシャルサイトで確認してください。

参照:『受験資格について』(社会保険労務士試験オフィシャルサイト)

社労士(社会保険労務士)の試験内容について

社労士の試験内容は、「労働基準法及び労働安全衛生法」、「労働者災害補償保険法」など、8つの科目について選択式で各1問、7つの科目については択一式で各1問が出題されます。選択式の8問は各5点(合計40点)、択一式の7問は各10点(合計70点)の配点です。

すべてがマークシート方式となっているため、答えやすいと感じる人も多いでしょう。ただし合格基準点については合格八用の際に公表されるため、どれだけ得点すれば合格するという保証はありません。

社労士試験の出題範囲は非常に広範囲です。労働基準法、労働安全衛生法、労働災害補償保険法、雇用保険法など、各種の法律が出題範囲となります。

難易度について

社労士試験は、難易度が高く、合格率はわずか6%(※2)です。

この低い合格率は、試験の難易度や資格取得の厳格な条件が関係しています。社労士になるためには、広範な法律知識と実務経験が求められ、試験は複数の科目に対する対策が必須です。「労働基準法」や「労働安全衛生法」など多岐にわたる法令に精通し、マークシート方式の試験で高得点を目指さなくてはいけません。そのため合格者は限られ、その中でも優秀な人材が企業や組織において重要な役割を果足せるようになります。

社労士試験は熱心な学習と準備が必要であり、合格に向けた真剣な取り組みが重要でしょう。

(※2)参考:スタディング

勉強方法について

社労士に合格するために必要とされる勉強時間は1,000時間といわれています。例えば、1日4時間勉強をするとして250日、つまり8ヵ月半ほどの時間がかかります。

資格の専門学校に通って勉強をする方法もあり、この場合は専門学校のカリキュラムによっても必要な時間が変わるでしょう。あるいは自分でコツコツと勉強をこなし、独学で試験に合格する人もいます。

社労士の勉強方法は、参考書と問題集をフル活用するのが一般的です。参考書を熟読し、問題集を解いて、それを何度も繰り返します。勉強方法としては普通ですが、内容は難易度が高く量も多いため、当たり前のことを根気よくこなせるかどうかが鍵となります。

社労士(社会保険労務士)が向いている人の特徴

社労士に向いている人は、以下のようなタイプです。

社労士に向いている人

  • 細かい計算が苦にならない人
  • 労働問題や雇用問題への意識が高い人
  • 全体を見渡せる人

社労士は年金や給与の計算を行う必要があるため、細かい計算とは切り離せない仕事です。また社労士のやりがいは、労働問題、雇用問題を解決していけるところに根幹があるため、労働や雇用といった分野に高い問題意識を持ち、解決に能力を注げる人物であることが望ましいでしょう。

労働者と雇用者は、社労士にとっていずれも大切な存在です。双方が満足のできる労働環境のため、どちらか片方の味方をするのではなく、最も良い解決ができるよう全体を見渡すことも必要です。

社労士(社会保険労務士)の求人探しは転職エージェントを

社労士への就職・転職を目指すのであれば、転職エージェントでの求人探しがおすすめです。転職エージェントには多くの専門的な求人が多く、自分にあった会社の求人をピックアップしてくれるため、転職後のミスマッチを起こす可能性も少なく便利です。

社労士(社会保険労務士)にチャレンジを

社労士は年金や雇用問題を扱う唯一の国家資格です。合格率は6%前後と狭き門ですが、資格取得によって労使間の問題や年金関連の相談を受けられるようになり、仕事の幅が広がる、転職に有利になる等のメリットが得られます。

社労士になるには多くの勉強時間も必要ですが、たくさん感謝される、人の役に立つといったやりがいも大きな仕事です。ぜひチャレンジしてみましょう。

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WARCエージェントマガジン編集部

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