事務の中にはさまざまな職種が存在し、その違いに戸惑う方も多いでしょう。企業でよく見られる事務には、総務・人事・労務・経理というそれぞれ異なる領域があります。これら4つの代表的な事務職種を理解することで、企業でどのような役割を果たしているのかが明確になるでしょう。
この記事では、総務・人事・労務・経理の業務内容や適切な資格について紹介します。
総務・人事・労務・経理の仕事内容は、それぞれが担当する分野が明確に違いがあります。
総務は会社全体の事務に関わり、人事は従業員に焦点を当て、労務は労働環境に関与し、経理は会社の収益や資産を管理します。これら4つの職種は、商品開発部や営業部とは異なり、直接的に売り上げに影響を与えるわけではありません。しかし、企業が効率的に利益を上げるためには、日々さまざま事務処理を適切に行う必要があります。こうした職種は、それぞれの分野から企業を支える役割を果たしており、企業の中核として重要な存在と言えるでしょう。
次のセクションでは、これら4つの職種の具体的な仕事内容について詳しく解説します。
総務は、従業員の業務パフォーマンス向上のサポートです。主に以下の庶務を担当しています。
これらの管理業務により、従業員は自身の仕事に集中できる環境が整います。電話や来客時の対応、場合によっては要件の確認を行い、円滑なコミュニケーションを確保することも重要な仕事です。また、企業経営に不可欠な動産や不動産管理、株主総会業務なども総務の責任範囲に含まれます。
人事は、会社で働く人材に関する仕事を担当します。
会社の目的に合った人材に入社してもらうには、企業のアピールや適切な選考の実施が必要です。また、入社後は人材教育を行うことで、従業員のスキルアップや会社の成長に貢献しています。上記3つの仕事内容について、次節から詳しく解説するので参考にしてください。
人材採用とは会社の目的に合った人物を募集し、選考後に入社してもらう一連の流れをいいます。担当者は新卒だけでなく中途採用にも対応するため、1年を通して不定期に活動を行います。入社してほしい人物像の掘り下げや、応募者の資質を十分に把握するための選考方法について検討が必要です。人材採用は企業の発展に欠かせない業務であり、人事が作成する計画次第で組織の成功に大きな影響を与えます。
人材教育では、従業員が働く上で必要な知識やスキルを身につけるための研修を計画します。目的に合った人材教育を行うことで、従業員が働きやすくなり会社の業績アップにも繋がるため適切な実施が必要です。人事は教育内容の計画から運営までを担当し、実際の研修は外部委託するケースが多いでしょう。人材教育の例としては、新入社員向けのビジネスマナー講座や既存社員へのリーダーシップ研修などが挙げられます。
従業員の働きぶりを報酬や昇進に反映するために必要な評価制度の作成を行います。上司によって部下の働きぶりへの判断基準が異なっては、公平な判断ができているとは言えません。人事は従業員のスキルや成果を正しく評価するための基準を作成し、適切に運用する一連の流れを担当します。公平で適切なルールを設けることで従業員は目標に向かって努力しやすくなり、モチベーションアップにも繋がるでしょう。
労務は、従業員に関する事務手続きを主に担当します。
従業員が安心して働ける環境を作り出すためには、会社の規則を適切に管理し、時代の変化に柔軟に対応する必要があります。労務の役割には法的知識や社会の動向を把握し、それを会社の運営に適用する能力が求められるのです。労務の業務内容について、次のセクションで詳しく解説します。
給料管理は、従業員が報酬を正確に受け取れるよう、給与計算を行います。労務部は主に給与計算を担当し、従業員の労働時間や手当、税金などの正確な情報が求められます。次のセクションで述べる勤怠管理や社会保険手続きも給与計算に関連していますので、月末から月初にかけて労務部は多忙です。また、報酬には業績や評価制度が影響するため、人事部との連携も必要となることがあります。
勤怠管理とは、従業員の働いた時間をタイムカードやICカードで記録することを指します。労働時間や休日を正確に集計し、報告書類に記載して報酬と連動させます。法律では従業員の労働時間に制限がありますので、残業が多い場合は規制される可能性があります。労働時間を遵守し、企業の健全な経営のために労務による勤怠管理が重要です。
就業規則管理は、従業員が守るべきルールを定めた就業規則の作成や変更を行います。これは、企業と従業員との間の契約書のようなもので、双方が内容に同意した上で業務に従事します。就業規則には労働時間や休暇、福利厚生など従業員の働き方に関する重要な事項が含まれており、トラブルを未然に防ぐためにも、従業員と企業がルールを遵守し合う環境が必要です。
企業に入社する従業員一人ひとりに対して、以下のような社会保険手続きを行います。
労務が社会保険手続きを正しく行うことで、従業員は安心して企業で働けます。社会保険によって加入要件や提出先が異なる上、従業員に用意してもらう書類が多いです。期限内に必要な書類を提出できるよう、あらかじめ制度への理解が求められます。
経理は、主に会社の資金管理や財務状況の記録です。
金銭の流れを整理し、規定された形式で数字をまとめます。この記録は、無駄な支出の把握や新たな事業を検討する際に極めて重要です。詳細については、次のセクションで説明します。
振込や入金の残高管理は、会社が所有する資金を把握し、報告することを指します。経理が日々行う主な業務のひとつは、従業員が出張先で費やした金額を立替えです。出張中の経費を報告してもらい、それに対応して金額を振り込むのが一般的でしょう。経理は日々、立替などの資金の出し入れを管理しており、口座残高の定期的な確認が必要です。
損益計算書は企業の収入と費用を集計し、その差額である利益を示す書類です。利益を生み出すためには、収入を増やすだけでなく費用も把握が求められます。経理は月ごとに企業の財務を集計し、損益計算書を作成を担うのです。この書類を通じて企業の経営状況が把握でき、経営判断や利害関係者への情報提供に活用されます。
決算書類とは、企業の財務状況を示すもので、損益計算書を含む5つの表から構成されます。企業の資産や資金の流れなど、財務に関する詳細な情報が記載されています。決算書類が正確であることは、経営分析や企業の将来に関わる意思決定に影響を与えるものです。これらの書類は年に一度の株主総会や確定申告などで使用され、そのため正確性や簿記の知識が求められます。
総務・人事・労務・経理の4つは、中小企業では今後され、業務の違いが曖昧な部署として見られることがあります。しかし、大企業ではそれぞれの部署が独立しており、業務の区別が明確なケースが多いです。企業規模による違いを理解することで、前の会社との違いに戸惑うことも少なくなるでしょう。
実際に事務として働くと、「この業務は誰が担当しているのか」と疑問に感じることがあります。最初は会社の文化を把握することを重視し、仕事をしながら部署の違いを学んでいくと良いでしょう。
総務・人事・労務・経理の職種では、資格がなくても就業できます。しかし、以下の資格を取得することで業務の質が向上し、キャリアアップの機会が広がる可能性があります。
これらの部署に関連するオススメ資格について、次の節で詳しく説明します。
総務にオススメの3つの資格は、以下の3つです。
ビジネス・キャリア検定では、総務職に必要な総合的な知識を学べます。特に、「企業法務・総務」の取得は、総務業務において会社の運営方法や紛争解決に関する知識を身につけられるので、オススメです。
マイナンバー実務検定は、カードに関連する制度や法律を理解し、適切に取り扱う能力を証明するのに役立ちます。税金や保険、年金などに関連するため、総務職で接する機会が多い資格です。
衛生管理者は労働者が50人以上いる企業に必須であり、働く人の健康や安全を守るための内容を学べます。企業内では総務が取得している場合が多く、転職時に資格を証明できるとアピールポイントとなるでしょう。
人事にオススメの資格は、以下の3つです。
キャリアコンサルタントは、労働者の職業選択や今後の働き方のアドバイスについて学べます。人事がキャリアコンサルタントを取得すると、従業員との面接で役立ちそうです。
産業カウンセラーを取得すると、働く上で悩みを抱える人に対してアドバイスできるようになります。社会人生活にストレスを抱える人が多い中、人事が取得すると社内で重宝される可能性があるでしょう。
コーチング検定とは、相手の話に耳を傾けることで内面にある答えを引き出す技術を証明する検定のことです。資格取得のための民間講座が開催されているので、金額や通いやすさから選ぶと良いでしょう。
労務にオススメの資格は、以下の3つです。
社会保険労務士とは、社会保険や労働にまつわる法律知識を持つ国家資格です。取得すると専門的な書類作成や提出代行ができ、労務以外の社会保険に関係する転職にも有利に働きます。
MOSとは「マイクロオフィススペシャリスト」のことで、パソコンソフトの活用を証明する資格です。エクセルやワードの基本操作だけでなく、効率の良い使い方を学べます。
外国人雇用管理主任者とは、海外から日本へ働きにやって来る人たちの雇用に関する知識を身につけられる資格です。外国人労働者の雇用を検討している企業では、受け入れ方法やサポートについて知っている必要があります。
経理にオススメの3つの資格は、以下の3つです。
日商簿記検定とは経理や会計についての知識を問う試験のことで、5段階のレベルに分かれています。特に2級以上は転職市場での需要が高いため、取得すると周りの応募者と差をつけられるでしょう。
ビジネス会計検定とは、財務諸表の知識や分析について一定のレベルを証明する資格です。財務諸表の作成について問われる簿記検定とセットで持っておくと、経理の仕事の大枠を理解できます。
公認会計士試験は、企業の監査業務を行えるようになる資格試験です。経理が取得すると監査の目線が養われ、正しい財務諸表の作成に役立てられます。
総務・人事・労務・経理の違いを把握し、自分に合う次の転職先を見つましょう。
それぞれの役割を理解することで、事務部門が企業内でどのような機能を果たしているのかが明確になります。自分の興味を持った職種を見つけ、働きがいのある転職先を見つけるための第一歩として挑戦してみてください。
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