近年、若年世代の意識の変化や、終身雇用制度の衰退により、転職が当たり前の時代と言われています。転職を検討中の方の中には「人事への転職を成功させるにはどうすれば良いのか」と考える人もいるでしょう。
本記事では、人事経験者、未経験者が転職を成功させるためのコツを解説します。また、持っていると有利な資格なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
人事経験者が転職をしようと考える場合、どのような理由があるのでしょうか。どの職種においても仕事をするうえで大変なことはありますが、人事ならではの大変さが、転職を考える理由になることもあります。ここからは、人事経験者が転職を考える理由について解説します。
人事は多くの機密情報を扱うため、細心の注意を払う必要があります。万が一、機密情報の漏えいがあった場合には、企業の評判が損なわれたり、社員間の信頼関係が崩れてしまいます。法的な制約のある機密情報に関しては、厳しい規制があり、これに違反すると、企業は法的な罰則を受ける可能性もあるのです。
人事部門が扱う主な機密事項として以下が挙げられます。
たとえば、人事異動が正式に発表される前に漏れてしまうと、社内での混乱を引き起こし、社員のモチベーションに悪影響を与えることがあります。
バックオフィスと言われる人事の業務は、企業の売上や収益に直接的に結びつかないため、目標が数値化されにくい職種です。一方、フロントオフィスと言われる営業やマーケティング、製造部門などは、企業の売上に直接関わるため、成果が見えやすい職種と言えます。
人事の目標は、従業員の満足度向上や組織文化の向上など、数値で表現することが難しく、主観的な評価に頼ることが多いです。また、採用や研修、評価や労務管理など多岐に渡る業務を担当するため、統一した数値目標を設定するのが難しい職種でもあります。
人事は、異動勧告や勤怠の注意喚起、さらには経営判断によるリストラの通達などにより、憎まれ役になりやすいポジションです。時には、経営陣の方針や決められたルールに則り、企業の利益を優先した決定を下さなければいけない場面あり、従業員からは「どちらの味方なのか?」と責められることもあります。
また、従業員の評価や異動の決定権をもっているため、昇進や昇給が期待通りにいかない場合、不満が人事部門に向けられることが多いです。
人事は企業の持続的な成長と競争力を維持するために、時代の変化に対応していく必要があります。労働市場は常に変動しています。たとえば、企業がデジタル技術を活用し、業務・組織・プロセスを変革するデジタルトランスフォーメーションや、リモートワークの普及により、従来の働き方やスキルセットは変化しているのです。
また、時代とともに変わる労働法や個人情報保護法などの法規制を把握し、適切な対応を行うことが求められます。人事が法規制の変化に対応しないと、企業は法的なリスクを抱えることになります。
人事の転職を考えるうえで、転職市場を知ることは重要です。人事の転職市場は、求人倍率が1倍を超える「売り手市場」となっており、IT系の専門性や柔軟性を兼ね備えた人材が高く評価されています。ここからは、人事の転職市場について解説します。
近年、人事への転職において、未経験からの採用を積極的に取り組む企業が増えています。これまで人事への転職は、即戦力として活躍を見込める経験者の採用がメインでした。また、新卒から自社で育成して、会社の内情に詳しい人が人事に選任されることも多くありました。
未経験からの採用は、成長企業を中心に積極的です。なかでも人材が不足しているIT業界では、採用担当力や人材育成力を高めるために、人事部門の増員に前向きです。人事の未経験者でも素養や意欲のある人であれば採用するなど、未経験者が人事に転職するハードルは下がっている傾向にあると言えます。
人事への転職をするには、7〜9月が狙い目です。4〜6月の春先は、新入社員が入社し、入社式・新入社員教育・配属に関する業務があり、人事部は繁忙期です。 同時に、異動・昇進など、辞令の発行が必要になる業務も並行して行う時期でもあります。一方、冬になると、年末調整や人事評価・人事異動の決定が行われるため、人事部門は再び忙しい時期となるのです。
比較的、7〜9月の夏場はそれほど忙しい時期ではないため、採用する側・採用される側どちらにとっても、時間が取りやすい時期であると言えます。特に未経験での転職であれば、採用側が教育に時間をかけられる7〜9月が狙い目です。
人事経験者が転職を考える際「どのような仕事に転職できるのか?」と考える人もいるでしょう。人事で培った経験を活かせば、人事以外のキャリアに挑戦することも可能です。
ここからは人事経験者の最適な転職先について解説します。
人事の仕事内容は、企業により多少の違いはあるものの、似ている点も多いため、今までの経験を活かせるメリットがあります。同じ人事の仕事でも、今より昇給や昇進の可能性があれば、転職をすることでモチベーションのアップにもつながります。一方で、会社ごとの体制の違いに慣れるまでは、戸惑う機会もあることを、あらかじめ理解しておくことが必要です。
ただし、現会社において業務自体にストレスを感じている場合には、他社での人事の業務にもストレスを感じる可能性があります。その場合、人事以外の職種への転職を検討するほうが望ましいです。
企業にアドバイスを提供する「コンサルタント」に転職するのも選択肢の一つです。コンサルタントの仕事は、相談を受けたクライアントの課題を見つけ、その解決方法を提案して、プロジェクトが円滑に進むようにすることです。人事で労務管理や制度管理に携わった経験は、理想的な組織構築の基礎知識を持っていると、評価されることもあります。
コンサルタントは、転職希望の人事経験者に人気があり、競争率が高いです。競争率が高いということは、これまでの経験やスキルが評価対象となる可能性があります。現職でのスキルアップと、コンサルティング業界についての知識を養っておくことも必要です。
人事経験者は他業種への転職も可能です。人事で培ったコミュニケーション能力や、問題解決能力、組織運営の知識などのスキルは、汎用性の高いものが多いため、他業種でも活かせます。人事はオールラウンダーとして異業種でも遜色なく働けるチャンスがあるのです。
一方、他の職種を目指す場合、人事で人材採用経験のある人は、他の職種への理解が深いことから、転職で優位に働くことがあります。人事と同じバックオフィスの仕事である経理や総務でも、その分野ならではの業務もあるため、仕事に慣れるためには一定の努力やスキルの習得が求められます。
人事の仕事に必須の資格はありませんが、転職をする際に持っていると有利になる資格はあります。また、資格を取得するために得た知識は、人事の仕事をするにあたって、業務をスムーズに進めるために役立ちます。ここでは、人事の転職に有利なおすすめの資格を5つ紹介します。
社会保険労務士(社労士)は、労働・社会保険に関する専門家で、企業や個人に対して労務管理や社会保険の手続き、年金相談などを行う国家資格者です。
社労士は、企業の成長や労働者の福祉向上に寄与することを目的とし、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施をサポートします。また、企業の採用から退職までの労務管理や年金相談など、幅広い業務を担当します。難易度の高い試験としても知られており、取得すれば人事や労務管理などの専門家として、キャリアアップも期待できる資格の一つです。
参考:社会保険労務士試験
キャリアコンサルタント試験は、職業能力開発促進法に基づき、厚生労働大臣の登録を受けて、キャリアコンサルティング協議会が実施する国家資格試験です。キャリアコンサルタントは、労働者の職業選択や、職業生活設計に関する相談に応じて助言や指導を行う専門家です。
試験は学科試験と実技(論述および面接)試験で行われ、合格することで「キャリアコンサルタント」として名乗ることができます。
メンタルヘルスマネジメント検定は、個人や組織がメンタルヘルスの促進と管理に関する知識とスキルを習得するための資格試験です。大阪商工会議所と施行商工会議所が主催しています。
近年、メンタルヘルスマネジメントの重要性が高まり、注目度が高い試験です。メンタルヘルスに関連する問題に取り組むさまざまな専門家やプロフェッショナル、企業の人事担当者などが受験しています。受験資格は不問で誰でも受験することができます。
人事総務検定は、人事総務部の知識と実務能力を測る検定です。一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が主催し、LECが指定講習実施団体として実施しています。人事総務の基礎となる法律知識を体系的かつ実践的に習得することができ、3級:担当者レベル、
2級:主任レベル、1級:課長レベルがあります。人事総務検定の取得により、専門性や自己啓発の意欲を示し、人事総務の業務に対する知識と理解を有していることをアピールできるのです。
また、社会保険労務士試験の出題範囲と重複する分野が多くあり、社会保険労務士試験対策として役立つ知識の習得にもつながります。
参考:人事総務検定
ビジネスキャリア検定は、職務遂行に必要な実務能力を評価する公的資格の試験です。人事や経理、営業、生産管理といった職種の試験が中心で、企業の実務に即した専門知識や能力を体系的に身につけることができます。
8つの分野と44の試験区分から選択でき、自分の職種に合った受験が可能です。また、年2回、全国47都道府県で実施されているため、比較的受験しやすい検定と言えます。新人研修として導入している企業が多いのも特徴です。
参考:ビジネス・キャリア検定
▼人事におすすめの資格について詳しく知りたい方はこちら
人事への転職を考えている人の中には「自分には人事の仕事が向いているのか?」と考える人もいるでしょう。人事は、会社の経営資源である 「ヒト」と密接に関わる仕事です。ここでは人事の転職に向いている人の特徴について解説します。
人事の仕事では、社員のプライバシーや会社の機密情報を知ることがあります。業務上で知り得た情報を、秘密事項として誰にも話さない人が人事に向いています。給与に関する情報は、社員のプライバシーを守るためにも秘密にすべきです。給与明細や昇給の詳細などは、社外に漏れることで社内の不和や信頼問題を引き起こす可能性があります。
また、人事異動情報も重要な機密情報であり、取り扱いには十分な注意が必要です。たとえば、正式な辞令の前に内示情報が漏洩してしまうと、思わぬトラブルや混乱を招き、社内外に悪影響を与える可能性があります。
人事にはコミュニケーション能力が不可欠です。相手を理解し適切に伝えられる人が、人事に向いています。人事担当者は学生や転職希望者とのコミュニケーションが多いため、明るく感じの良い対応が求められます。会社の顔として接する立場であり、企業イメージにも影響するため、適切なコミュニケーションスキルが重要です。
また、業務を通して社員や外部の専門家などさまざまな立場の人と接する機会があります。さらに、人事制度などについて経営陣と意見を交わすこともあり、円滑なコミュニケーションが取れることで、人事業務を効果的に遂行できるのです。
人事の仕事には、厳しい判断力も求められます。企業経営の中では、会社を守るために、人員削減を実行するなどの厳しい判断が下されることがあります。たとえば、正社員を解雇したり、契約社員や派遣社員の契約を打ち切らないといけない場面があるのです。
社員から冷徹と思われたとしても、会社の存続のためには、冷静に判断を下せる判断力が人事には求められます。もしも、会社が倒産してしまっては、それ以上のダメージとなるからです。時には厳しい態度を辞さない、厳しい判断力を持てる人が人事に向いています。
▼人事に向いている人の特徴について詳しく知りたい方はこちら
経験者が人事への転職を考える際、他の応募者よりも優位となる条件を提示することが重要です。経験者が転職に向けてどのような準備をすればいいのでしょうか。ここから、人事への転職を成功させる5つのステップを解説します。
人事に転職したい理由は人それぞれですが、なぜ今の職場を離れ、新たな職場で人事の仕事に就きたいと考えたのかを、転職先に明確に伝えることが大切です。人事部門は企業の中で、重要な役割を果たすため、あいまいな理由では、採用担当者の目に留まりません。
たとえば、人と関わる仕事が好き、人材育成に興味がある、組織の成長に興味があるなど、人事で求められるスキルにつながる理由を考えるようにします。自身の中にある理由を言語化して、きちんと伝えられるようにすることが重要です。
人事の業務内容の中でも、汎用性の高い業務スキルを磨くことが転職のコツです。勤怠管理や福利厚生の手続き、給与計算や社会保険に関する業務は、どの会社でも必要なスキルです。幅広い経験を積んでおくことで、どの職場でも活躍できる可能性が高まります。
たとえば、特定の業務だけに特化してしまうと、活躍できる職場が限られることもあるのです。なるべく多くの経験を積んで、どの職場でも活躍できるよう、汎用性の高いスキルの向上に努めましょう。
人事は会社と従業員との調整役であり、交渉スキルが求められます。人事が調整や交渉を必要とする内容として、以下が挙げられます。
時には人間関係のトラブルを解決することも求められます。たとえば、ハラスメント問題などが発生した際には、トラブル解決のために、コミュニケーション能力や調整力を活かし、円滑に交渉をしないといけない場面もあるのです。調整・交渉のスキルを身につけておくことで、転職先でのスムーズな業務遂行を可能にできます。
転職先の業界や職種のニーズを把握しておくことも大切です。転職を希望する企業や業界で求められるスキル・人材像を知るために、転職サイトなどの求人情報を積極的に調査します。求人情報は就活準備に役立つ情報が記載されており、日々更新されています。
定期的なチェックを行い、求人市場の動向や人事職の需要など市場ニーズを調査しておくことが、転職の成功につながるのです。
人事や管理職に特化した転職エージェントやサイトを利用するのもおすすめです。中には、人事や管理職を専門とするサービスもあります。また、一般公開されていない求人や、人事経験者に特化した求人情報を提供してもらえる場合もあるため、より選択の幅が広がります。管理職専門のおすすめ転職エージェントとして以下を参考にしてください。
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人事未経験からの転職をする場合、どのような準備をすればいいのでしょうか。人事の仕事への理解や、自らのスキルや経験などと関連させて、採用担当者にアピールできるようにすることが重要です。ここからは人事への転職を成功させる3つのステップを解説します。
未経験者が人事部への転職を希望する場合、採用担当枠への応募がおすすめです。採用担当枠とは、企業内で採用業務を専門に担当するポジションです。採用担当の主な業務として以下が挙げられます。
人事には、人事制度の設計や労務など、専門性の高い知識が求められるため、経験者が優遇されることが多いのです。人材紹介や求人広告を扱う企業での勤務経験や、人とのコミュニケーション力を高めている営業経験などがあれば、比較的親和性が高いと言えます。
採用担当で経験を積んだのち、徐々に業務範囲を拡張して、人事の仕事に就くキャリアパスも検討してみましょう。
人事は人気の職種で、企業の経営資源の一つである「ヒト」に関する業務をするため、企業によっては出世コースであることも多いポジションです。多くの応募者の中から成功を掴むには、志望動機を明確にすることが重要です。
なぜその企業の人事部で働きたいのか、企業の特徴や文化、人事部の取り組みなどを調査して、志望動機を明確にしましょう。また、前職で培ったスキルや経験を挙げて、人事職でどのように活かせるかを具体的に示します。
さらに、入社後の目標やキャリアプランを示し、採用担当者に自身の成長意欲を伝えると、より転職成功へとつながります。
未経験者が人事への転職を成功させるには、資格を取得することで、信頼性を高め、人事の業務への意欲や理解を示せます。人事の仕事は専門的な分野も多く、多岐にわたります。資格を取得することで、法令や労働法、採用プロセス、評価制度などの人事に関する専門知識を深めることができます。
また、資格は自身のスキルや知識を証明するものです。人事の仕事において、資格を持っていることは信頼性を高め、他の人々から信用を得られるメリットもあります。この記事内で紹介した資格の取得を目指して、人事への転職に役立ててください。
人事への転職には、これまで培った経験やスキルに加え、転職市場を知り資格の取得をするなど、成功するためのプロセスが重要です。また、専門家のアドバイスを受けることで、よりスムーズに進められるでしょう。
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