公認会計士を辞めたい理由とその後｜続ける・異動・転職のベストな選び方

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「この働き方を、この先も続けていけるのだろうか」と悩む公認会計士の方も少なくありません。実際に監査法人では離職が珍しくなく、転職はごく一般的な選択肢になっています。

この記事では、現職に踏みとどまる場合と監査法人内での異動、転職という三つの選択肢を冷静に比較し、後悔しないキャリアの決め方を解説します。読み終える頃には、自分にとってのベストな方向が見えてくるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

会計士を辞めたい人が増えている背景

公認会計士試験を勝ち抜き、監査法人でキャリアを始めても、「この働き方を続けられるだろうか」と不安を抱く人が少なくありません。忙しさや責任の重さなど会計士という職業ならではの前提が積み重なり、離職を考える人が増えています。

公認会計士の主な仕事内容と働き方の特徴

公認会計士は、会社のあらゆる会計・財務情報にまつわる専門家であり、その役割の重さが働き方の負荷に直結しています。会計士試験にようやく合格して監査法人でキャリアを始めても、最初の数年間は仕事を覚えることで精いっぱいなことも。監査はチームで進めるため、上司のレビュー待ちやクライアント対応が続き、スケジュールを自分で調整しにくいのが実情です。

繁忙期は、複数の企業の決算対応が一気に押し寄せ、連日の深夜残業や休日稼働になることも珍しくありません。さらに、不正を見落とせば訴訟リスクまで発生するため、常に緊張を強いられます。こうした「専門性の高さ」「責任の重さ」「忙しさの波」が重なることで、心身に負荷が積み重なりやすいのです。

監査法人・事業会社など勤務先別の“しんどさ”の違い​

「会計士として大変」と感じるポイントは、働く環境によって大きく変わるでしょう。

監査法人は、決算期のハードワークが最大の課題です。クライアントの数が多いほどスケジュール管理が難しく、レビュー対応や資料収集が一度に重なり、時間的な余裕が奪われます。昇進競争も激しく、修了考査（資格の最終試験）や主査としての責任が加わると精神的負荷も高まるでしょう。

一方、事業会社の経理・財務では、自社の業績づくりを支える役割へ転換することで、やりがいを感じる人もいます。その反面、少人数の体制で幅広い業務を任され、ミスが会社全体に直結するプレッシャーが増すことも。どちらも負荷の性質が異なるため、「自分はどちらのストレスに耐えやすいか」を軸にキャリアを考えることが大切です。

会計士を辞めたいと感じる主な理由

監査法人の働き方は専門性が高い反面、忙しさや競争が強く、「このまま続けるべきだろうか」と悩む人が後を絶ちません。将来への見通しが持てないことが、離職を考える大きなきっかけとなっています。

長時間労働・繁忙期の激務とワークライフバランス

公認会計士を辞めたいと感じる理由として、時間の余裕がなさすぎることがあげられるでしょう。繁忙期は、監査法人ならではの決算の波が一気に押し寄せ、複数のクライアント対応が積み重なります。レビュー待ち、資料回収、急なスケジュール変更が続き、自分のペースで仕事を進めることはほぼ不可能です。さらに若手ほど、深夜残業や休日業務が常態化しやすく、体力だけでなく生活習慣まで乱れます。

修了考査やUSCPAなど資格勉強を両立している時期は、仕事が終わった後も机に向かわなければならず、休まる瞬間がありません。「また次の繁忙期が来る」と考えただけで、心が萎えてしまうのです。

責任の重さとプレッシャー

公認会計士は、判断ミスがそのまま社会的損失につながる可能性があります。不正を見逃せば、監査法人だけでなく、個人としても責任が問われることがあり、訴訟リスクが頭をよぎることもあるでしょう。

主査になると、チーム全体の品質を担保する立場になり、若手の育成やクライアントとの交渉まで任されるため、精神的な負荷が一段と上昇します。毎日「これで本当に大丈夫か」と自問し続ける環境は、緊張が途切れる時間がほとんどありません。

キャリアの頭打ち感・昇進競争への不安

監査法人には明確な昇進ステップがありますが、上へ行くほど競争のハードルが高くなりやすいでしょう。年次が上がれば、主査経験や専門領域が必須となり、将来的にパートナーを目指すには営業力やリレーション構築力も要求されます。「監査の仕事は好きでも、営業は得意じゃない」という人にとっては、キャリアが途中で行き止まりに感じやすいのが現実です。

さらに、修了考査の合格が昇進に直結することも多く、試験に合格しなければ給与や職位が上がりにくいというプレッシャーがあります。「努力し続けないと現状維持さえ難しい」構造が、不安を強めてしまうのです。

監査業務のルーティン化・やりがいの低下

同じ業界の企業を長く担当していると、監査手続きがパターン化し、「毎年同じことの繰り返し」と感じることがあります。チェックが中心となるため、「企業を良くしている手触りが薄い」と感じる人も少なくありません。

周りの同期がFASや事業会社に転職して活躍している話を耳にすると、専門性をもっと広げたいという思いが強まり、「このまま監査だけを続けていいのか」と迷いが生まれます。とくに、昇進競争に疲れたタイミングと重なると、外の世界が一気に魅力的に見えることがあるでしょう。

人間関係・職場カルチャー

監査法人のカルチャーは、チームによって雰囲気が大きく異なります。教育的な指導が、繁忙期には「丸投げ」に変わり、ハラスメントに近い状況になる例も耳にします。

また、クライアント企業とは「指摘する側」と「される側」という立場になりやすく、感謝されづらい仕事です。説明や調整に神経を使う場面が多いほど、精神的な摩耗が進むでしょう。人間関係は個人で変えることが難しいため、「環境そのものを変えたい」という気持ちにつながりやすい要因です。

会計士に向いていないかもしれない人の特徴

公認会計士の仕事は専門性が高いため、向き不向きが分かれる職業です。仕事内容や環境との相性によっては、無理を続けるほど苦しくなる場合があります。会計士に向いていないかもしれない人の特徴を以下にまとめてみました。

長時間労働・繁忙期のストレスに弱いタイプ

時間的な制約が厳しい職場が苦手な人は、会計士の働き方と相性が良くありません。監査法人では、決算期に長時間労働が集中し、突発的な対応が続きます。「先の予定が立たない」「体力が削られ続ける」状況が、何年も続く可能性があるでしょう。

本来、休日にしっかり休むことで回復できる人でも、繁忙期は睡眠も私生活も圧迫され、ストレス解消が追いつかなくなる場合も。家族との時間や、自分の趣味や学びを大切にしたい人ほど、ギャップが大きく感じられがちです。悪いわけではなく、「働き方に優先順位を置く人」ほど、別のキャリアを選んだ方が幸せになれることがあります。

細かいチェックやドキュメント作成が極端に苦手なタイプ

会計士の仕事は、ほぼすべてが「数字と証拠をそろえる」作業です。数字が1円でもズレたら確認し直し、クライアントへの質問も文書に残し、レビューにも耐えられる形に整理します。そのため、細かい作業が苦手な場合、毎日がストレスの連続になってしまうでしょう。

「大枠で合っていれば良い」という判断ができる仕事とは違い、根拠のない推測は許されません。また、ドキュメント作成は監査業務の土台であり、避けて通れないタスクです。細かなチェック作業に強みを持つ人にとっては活躍しやすい環境ですが、そうでない場合は、キャリアの方向転換も選択肢に入れてよいでしょう。

間接貢献より事業への“直接貢献”を強く求めるタイプ​

監査は、「企業が正しい情報で世の中とつながれるように支える仕事」です。社会的には重要ですが、企業の業績を直接伸ばす仕事ではありません。数字をチェックし、問題があれば指摘する立場なので、「会社を良くしたい」という思いが強いほど、物足りなさを感じることがあります。

たとえば、事業会社の経営企画や財務に興味がある人は、「自分の提案や意思決定が成果に直結する」環境を求める傾向があります。「より良くする側で働きたい」というマインドを持っているなら、それは会計士に不向きというより、次のステップに進む準備が整ってきたサインともいえるでしょう。

会計士を辞めたいと思ったときにまずやるべきこと

「辞めたい」という気持ちは、キャリアを見つめ直す大切なサインです。感情のまま動く前に、原因を整理し、改善できる余地がないか確かめることが未来の選択を後悔しないポイントになります。

辞めたい理由の棚卸し

「何が苦しいのか」を言語化することが最初の一歩です。仕事そのものが合わないのか、今の職場環境がつらいのかで、取るべき行動は大きく変わります。

「監査業務が単調でやりがいを感じない」のであれば、業務領域を広げることで解決できる可能性があります。一方で、「上司との関係やチーム文化が合わない」という悩みなら、部署変更で改善する余地があるでしょう。

理由を細かく書き出し、「改善できる要因」と「改善が難しい要因」に分けることで、転職ありきではない冷静な判断につながります。感情と事実を切り離し、まずは整理することが重要です。

現職での改善余地を探る

環境が原因の場合、転職せずとも改善できるケースは少なくありません。監査法人では、チーム変更や担当企業の入れ替えは珍しくなく、マネージャーに相談することで、負荷が少ない現場に移る可能性もあります。

また、リモートワークや時短勤務、フレックス制度など、働き方の調整を受け入れる法人も増えています。「辞めたい＝すぐ転職」ではなく、まず職場内でできる調整を試すことが、キャリアを守るためにも有効です。現職で改善できる部分があるなら、活用しない手はありません。環境さえ変われば、仕事の楽しさが戻る人もいます。

スキル・経験を広げて“やりがい”が戻るか試す

「監査がつらい＝会計士が向いていない」とは限りません。仕事に刺激が足りないと感じているだけなら、業務範囲を広げることでモチベーションが戻ることがあります。

IPO支援や内部統制、アドバイザリー案件に参加すると、企業の成長に直接貢献する実感が得られるでしょう。USCPAや税務知識を身につければ、将来的に選べるキャリアも広がります。キャリアの幅が広がるほど、「辞める」以外の選択肢が見えてくるはずです。まずは小さなチャレンジを積み重ね、「自分が本当にやりたいことは何か」を探ることが、後悔のない判断につながります。

それでも会計士を辞めたい時に考えるべきこと

改善を試みても苦しさが変わらない場合、「環境を変える」選択肢が現実味を帯びてきます。転職や異動を検討する前に、選択肢とリスクを整理し、冷静に判断することが大切です。

辞める前に整理したい3つの選択肢

「辞めたい」と思ったときにいきなり退職するのはリスクが大きいです。会計士には、現職のまま改善を試みる道、監査法人の中で働き方を変える道、そして転職する道の3つがあります。

それぞれの選択肢にメリットとデメリットがあるため、「自分が何を変えたいのか」に合わせて検討する必要があります。

転職・異動を選ぶべきサイン

判断すべきタイミングには明確なサインがあります。たとえば、心身の不調が続き、生活に支障が出ている場合は、迷わず環境を変えるべきです。上司によるハラスメントや、改善要求がまったく受け入れられない職場も、我慢するほどリスクが高まります。努力しても役割が変わらず、将来像が描けない場合も同様です。

「辞めたい」は逃げではなく、現状とのミスマッチを示すシグナル。限界を超える前に動くことが、自分のキャリアを守る最善策になります。

辞めるメリット・デメリット

「辞めること」そのものは悪いことではありません。ただし、メリットやデメリットを把握して選ぶことが重要です。

監査法人を出ると、短期的には年収や肩書が下がることがありますが、長期的には役割や裁量が増えやりがいや成長につながる人も多いです。大切なのは、「何を手放し、何を得たいのか」を明確にしたうえで決断することです。

会計士資格・経験を活かせる主な転職先とキャリアパス

会計士は「外へ出ても強い資格」です。監査法人での経験は、多様なキャリアに転換しやすく、選択肢の幅が狭まることはありません。以下で、会計士資格や経験を活かせる転職先を紹介します。

事業会社の経理・財務／経営企画・CFO候補

「事業を動かす側で働きたい人」にもっとも人気の高い転職先です。

経理では決算・税務・管理会計など企業の数字づくりに直接かかわり、財務では資金調達や資金管理を担当します。さらに経営企画では、事業戦略の立案やM&A（企業買収）など経営判断に踏み込むことも。監査で培った会計知識や財務分析力がそのまま活き、IPO準備企業では会計士経験者が重宝されます。将来的にはCFO（最高財務責任者）候補としてキャリアアップできる可能性もあり、「数字で経営をリードする」手応えを求める方に向いているでしょう。

FAS・コンサル・投資銀行などプロフェッショナルファーム

会計士のスキルをダイレクトに活かせるのが、FAS（財務アドバイザリー）、コンサルティング会社、投資銀行といったプロフェッショナルファームです。企業価値評価（バリュエーション）、M&A支援（買収デューデリジェンス）、事業再生など、高度な専門性が求められる領域で活躍できます。

監査で企業の仕組みを理解してきた経験が強力な武器になります。成果がはっきり評価されやすい反面、スピード感と成果プレッシャーは大きいため、「より高い専門性を磨きたい」という成長意欲がある方向きです。

税理士法人・会計事務所・独立開業

会計士資格を最大限活かせる選択肢のひとつが、税務の世界です。税理士法人では、法人税申告、事業承継支援、国際税務など、企業の経営に密着した支援ができます。顧問先との長期的な関わりが生まれやすく、「お客様と伴走する」スタイルが好きな方に向いているでしょう。

また、経験を積めば独立開業という道もあり、働き方を自分で設計できるのが最大の魅力です。短期的な収入変動や営業活動の負荷はありますが、「自分の看板で勝負する」キャリアを望む人には大きなチャンスが広がっています。

会計士を辞めたい人向けQ&A

ここからは、公認会計士を辞めたい人によくある質問に回答します。最後までチェックして、自分の方向性を決める参考にしてみてください。

辞めるタイミングはいつがベスト？

監査法人で2〜3年ほど経験を積んだ段階が、ひとつの良いタイミングです。一般的に2〜3年の監査経験があると、事業会社やFASなどへの転職で評価されやすくなります。また、修了考査に合格し、公認会計士登録をすませてから転職したほうが、職種の幅も年収交渉力も高まりやすいです。

逆に、心身に不調が出ている場合は、時期を待つよりも環境を変えることを優先すべきです。実務経験や試験状況に加え、「今の職場でこれ以上成長が見込めるか」を基準に、タイミングを見極めることが大切でしょう。

年収は下がる？上げるにはどんなキャリアが必要？

短期的には下がるケースが多いです。監査法人は給与水準が高いため、事業会社へ転職すると初年度は年収が下がる可能性があります。ただし、管理職や専門職としてのキャリアを積むことで、数年後には監査法人時代を超える年収になる例も少なくありません。

FASや投資銀行などプロフェッショナルファームへの転職であれば、実力次第で大幅アップも狙えます。大切なのは、「何を伸ばしたいのか」を明確にし、それに合った環境を選ぶこと。会計士資格の強みを活かせる領域に進むほど、年収アップの可能性は高まります。

会計士を辞めたら資格・経験は無駄になる？​

無駄にはなりません。会計士資格は「企業を支える数字のプロ」である証明であり、経営に関わるさまざまな職種で評価されます。監査法人で培った財務分析力やリスク管理の視点は、事業会社の経理・財務、経営企画、CFO候補、さらにはスタートアップ支援などで強力な武器になるでしょう。むしろ監査を出たあとで専門性の幅が広がる人も多いです。資格は「守りのキャリア」だけでなく、「攻めのキャリア」を切り拓ける資産です。

一人で抱え込まずキャリアのプロに相談しよう

「辞めたい」という気持ちは、決して弱さではなく、自分の未来を真剣に考えている証拠です。ただ、情報が多すぎるなかで一人で判断し続けると、不安がさらに膨らんでしまいます。会計・財務領域に詳しいキャリアアドバイザーへ相談すれば、自分の強みを客観的に整理でき、現職に残るべきか、異動か、転職かという選択も冷静に見極められるでしょう。WARC AGENTは管理部門に特化した転職エージェントで、会計領域にも強みがあります。後悔しない一歩を踏み出すため、ぜひお気軽にご相談ください。

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