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2023/12/04 更新

管理部門の平均年収と年収アップの方法を解説

自分のキャリアを考える際、管理部門への転職を検討する方は多いでしょう。一方で、多くの人が年収が気になっているのではないでしょうか。

一般的に、管理部門は営業などの事業部門よりも年収が低いと言われています。さらに、個人のスキルや貢献度に基づいて評価されにくいため、年収向上の方法も不透明です。

この記事では、管理部門の年収に焦点を当て、その実態と年収アップのアプローチについて説明します。

管理部門について

管理部門は、他の部署の運営をサポートし、会社全体の管理を担当する部門です。この部門は、生産、開発、営業、販売などの直接的な利益を生み出す部門とは異なり、会社の経営、資金管理、従業員の管理などを手がけ、一般的には「バックオフィス」と呼ばれています

管理部門には、人事・労務、経理、総務などの代表的な職種があります。また、経営に密接に関わる財務・会計、経営企画、法務、広報・IR、情報システムなどの職種も、一般的には管理部門に含まれます。

管理部門の平均年収は高いのか

管理部門の平均年収は、職種によって異なります。全体としては、平均年収はやや低い傾向がありますが、経営企画や財務・会計の分野では比較的高い傾向があります。経験やポジションによっては、高い年収を得ることも可能です。

民間企業の平均年収について

民間企業の従業員の平均年収は、2021年の国税庁の実績によれば、443万円(※1)です。男女別では、男性の平均年収は545万円、女性の平均年収は302万円と報告されています。

(※1)参考:国税庁「民間給実態統計調査 令和4年9月」

管理部門の平均年収について

管理部門の平均年収は、各部署ごとに異なります。この差は、ルーチンな業務を行う単純労働者が多い部署と、専門的なスキルを必要とする部署がるからです。専門職が多いため、経験が豊富で幅広い業務をこなすことができると、給与が上昇する傾向ケースがほとんどでしょう。

管理部門の各部署の平均年収について

管理部門の平均年収について、人事院の2022年度調査によると、事務職の平均給与は次のとおりです。

  • 係員:年収33万7376円(※2)
  • 主任:年収40万5703円
  • 係長:年収48万1262円
  • 課長:年収60万0209円

(※2)参考:人事院「民間給与の実態(令和4年職種別民間給与実態調査の結果)」

経理の平均年収について

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、経理に相当する「会計事務従事者」の給与は以下のとおりです。

  • 月給:30万3200円(※3)
  • 賞与その他特別給与:86万1700円
  • 年収(単純換算):450万100円

経理の業務は、日常のデータ入力から企業の経営判断に影響を与える管理会計データの分析や作成まで多岐にわたり、ポジションや業務の難易度に応じて収入が変動します。また、公認会計士や税理士の資格を持つことで特別な業務に従事でき、価値が高るでしょう。

(※3)参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

人事の平均年収について

人事の平均年収は、データをもとに見ると以下のとおりです。

  • 月給:32万200円 (※4)
  • 賞与その他特別給与:106万4600円
  • 年収(単純換算):490万7000円

経理と比べるとわずかに高めです。人事の仕事は、採用や労務のサポートから戦略的な人事管理に至るまで多岐にわたり、そのため年収の幅も広い傾向があります。また、労務分野の専門家として社会保険労務士の資格を持っていると、社会保険手続き、各種制度設計、労使関係のトラブル解決など多岐にわたる業務を担当できるため、年収アップの機会が増えます。

参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

経営企画の平均年収について

経営企画の平均年収については、同じ統計情報である「企画事務員」としてのデータから見てみると以下のとおりです。

  • 月給:37万4200円(※5)
  • 賞与その他特別給与:137万7100円
  • 年収(単純換算):586万7500円

経営企画は、財務情報や市場分析に基づいて企業の経営戦略を策定し、M&Aや事業買収などの重要な意思決定を行う部門です。経営陣や取締役会に直接報告し、会社の成長に寄与する役割を果たすため、年収も比較的高めに設定されています。

(※5)参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

総務の平均年収について

総務の平均年収は、「総合事務員」としてのデータから見てみると以下のとおりです。

  • 月給:32万5000円(※6)
  • 賞与その他特別給与:99万9500円
  • 年収(単純換算):489万9500円

総務の職務は、企業の備品や設備の管理から、各種催しやイベントの運営まで多岐にわたります。大企業では株主総会の運営や役員や社員の社葬の準備も担当するケースも多いです。企業の円滑な運営を支える重要な仕事であり、多くの場合、総務から取締役に昇進可能性もあるでしょう。

(※6)参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

法務の平均年収について

法務の平均年収については、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」には直接のデータがありません。一方、大手転職サイト「転職会議」のデータによれば、全世代平均で年収581万(※7)、また、転職サイト「doda」の「平均年収ランキング(職種別)2022年12月」によれば、年収は634万円(※8)です。

法務の仕事は、管理部門の中で法律に関連した業務を担当し、法令への理解や契約書の管理、紛争解決など、法律家に近い役割を果たすことがあり、そのため平均年収が比較的高くなっています。

(※7)参考:転職会議「法務の年収まとめ (給料/平均年収/企業名などを集計)」
(※8)参考:doda「年収の高い職業は?平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】」

管理部門の年収向上のためにすべきアプローチ

管理部門で高い年収を実現するために、どのような方法があるでしょうか。一つの方法は、所属する管理部門内でのキャリアアップです。また、専門知識を生かせる別の業界や職種への転職も考えられます。どちらの場合でも、企業の管理部門で通用するために、高度なスキル、知識、そして実績が不可欠です。

資格を取得

管理部門は高度な専門性が求められるため、資格を取得することでスキルと知識を向上させ、自身の価値を高めることができます。

以下は各職種と必要な資格の例です。

  • 経理:日商簿記2級以上、公認会計士、税理士
  • 人事:社会保険労務士、キャリアコンサルタント
  • 総務:中小企業診断士
  • 法務:司法書士、行政書士
  • 経営企画:中小企業診断士、経営学修士(MBA)

一部の資格や学位は取得が難しいこともありますが、学習を通じて法令や判例に精通し、業務の幅を広げることができ、実績を積むことで重要なポジションや昇進の機会を得ることが可能です。

インセンティブを獲得

企業が提供するインセンティブ制度を活用し、収入を増やす方法も考えられます。

企業はモチベーション向上や優秀な人材の獲得・定着のために、基本給以外の報酬としてインセンティブ制度を運用することがあります。管理部門は利益を直接生み出す部門ではないため、目標達成や業績の評価は他の要素に基づくことが多いです。

人事部門では、採用数の達成、経理部門では業務の効率化、総務部門では大規模なイベントの予算削減など、具体的な成果が評価の要点となるでしょう。

各企業のインセンティブ制度は異なりますので、詳細を確認し、獲得を目指すことが重要です。

転職

管理部門が年収を大幅に向上させたいと考える際、効果的な方法の一つは転職です。同じ職種であっても、大企業に転職することで年収や将来の収入が増加する可能性があります。また、ベンチャー企業やスタートアップでは、経験と専門知識を生かして、CXO(最高責任者)やCXO候補の地位に就くことで、年収の向上が期待できます。

さらに、各職種の経験と専門性を活かして、専門のサービスプロバイダーに転職したり、自分で事業を起こしたりする道も考えられるのではないでしょうか。管理部門はアウトソーシングされることもあるため、スペシャリストを集めたサービスプロバイダーも多く存在します。高い実績、知識、スキルを持っている場合、そのような企業で実力を発揮し、高い年収も実現可能です。

管理職への昇進

管理部門が年収を増やす方法として、部課長クラスの管理職を目指すことも一つの選択です。スタッフレベルでは平均年収に満たない場合も、課長や部長に昇進すると給与が大幅に増加します。たとえば、人事院の「民間給与の実態(令和4年職種別民間給与実態調査の結果)」(※9)によれば、事務職全般の平均給与は以下の通りです。

役職

月給

係員

33万7,376円

主任

40万5,763円

係長

48万1,891円

課長

60万209円

部長

71万1,958円

賞与を2.5ヶ月分と仮定すると、課長で年収が約870万円、部長では1,032万円を超えます。

また、管理職には管理職手当が支給されることが多く、これだけでも月々数万円増加します。実績を積み重ねながら管理職を目指し続けることで、年収を大幅に向上させられるでしょう。

(※9)参考:人事院「民間給与の実態(令和4年職種別民間給与実態調査の結果) 表7 職種別、年齢階層別」

必要な管理部門のスキル

管理部門は、企業内で重要な役割を果たす専門職であり、会社全体の運営を支える役割があります。このバックオフィスとしての役割から、直接的な利益を生む部門ではないものの、従業員の労働環境や資金・資産の管理、経営を支える役割を果たしており、多岐にわたる業務を担当しています。業務の計画、進行、タスクの管理などのスキルのほか、マネジメント力やコミュニケーション能力も必要です。

管理部門では、営業職や企画職と同等以上のスキルが求められることは言うまでもありません。

PCスキル

管理部門では、一定のコンピュータースキルが必須です。経理や人事では、資金管理や人材管理の分野でデータ入力、分析、文書作成が必要とされます。総務では、企業全体への情報提供や備品の管理などの業務があります。

経営企画や財務では、財務諸表をもとにデータを分析し、戦略策定に携わる機会が多いです。文書作成やデータ分析が日常業務の一部であるため、Excelをはじめとするデータ処理や関数のスキル、WordやPowerPointで提案書や契約書をスムーズに作成できるスキルが必要でしょう。

コミュニケーション能力

管理部門では、高度なコミュニケーションスキルが不可欠です。管理部門の各部署は、社員、経営者、役員、投資家、株主、金融機関などと頻繁にコミュニケーションをとる機会があります。これらのコミュニケーションは、通常のビジネスで求められるプレゼンテーションスキルやヒアリングスキルとは異なり、相手の要望や意見を注意深く聴き取り、交渉や調整を成功に導くためのコミュニケーションスキルが必要です。

人事、経理、総務は、従業員と経営陣の利害対立が生じる場面もあります。一方、経営企画、法務、財務は会議を主導し、交渉を有利に進める必要もあるでしょう。

日常的に書籍を学習したり、経験豊富な同僚の交渉術を学んだりすることで、高度なコミュニケーション能力の向上を目指してください。

タスク管理の能力

管理部門では、しばしば複数のプロジェクトや業務が同時に進行する状況があります。このような状況で業務を円滑に進めるためには、優れたタスク管理能力が必要です。

タスク管理は、業務を適切に整理し、タスクを細かく分解して、ガントチャートを作成することが理想的です。業務やプロジェクトの全体像を把握し、それを細かなタスクに分割するスキルも需要でしょう。

業務をタスクに細分化することで、複数の業務を効率的に進行できるようになります。また、このスキルを活用することで、プロジェクトのリーダーとしての役割も果たすことができます。

マネジメントの能力

管理部門は、リーダーシップとマネジメント能力が求められる部門です。多くの管理部門の業務はチームで協力して行われ、アシスタントなどのメンバーが関与します。

業務の段階に応じて、入力やデータ整理からデータ分析と課題の特定、解決策の実行など、さまざまな作業が関連するでしょう。これらの作業を遅延せずに進め、チームの効率を向上させるアイデアを提供し、チームメンバーの業務を管理するためのスキルが、マネージャーには必要です。

管理部門は予算を管理し、利益を生む部署ではなく、予算を使う部署であり、予算管理も大切な役割の一つになります。

リスク管理のスキル

管理部門は経営に密接に関わるため、経営リスクに対処する必要があります。これは、例えば、新卒採用面接での不適切な質問や態度、税務処理の誤解などの問題を含みます。さまざまなリスクに対処し、防止するためのリスク管理が管理部門に求められるでしょう。

また、財務状況や事業の予算管理、TOB(株式の公開買い付け)の対応など、経営の安定性に影響を及ぼすリスクを回避し、解決する必要があります。

潜在的なリスクを想定し、それを回避するためのルール設計、問題が発生した際に損失を最小限に抑える問題解決力が、管理部門には必要です。

管理部門の職務を理解し、キャリアを構築するために転職を

管理部門は、個人の成績が明確に評価される営業のような部署とは異なります。しかし、会社の円滑な運営に不可欠な役割を果たしています。各職種には専門性が求められ、必要なスキルや知識が必要です。そのため、未経験から管理部門に転職する場合は、詳細な職種特性を理解し、適切な準備を行うことが大切でしょう。

管理部門への転職を検討している方には、管理部門に特化した転職サービスが役立ちます。転職サービスは経験者から未経験者まで幅広い求人情報を提供し、ベンチャーから上場企業まで多彩な選択肢があります。

管理部門について学び、準備を整えて、成功の転職を実現しましょう。

著者画像

株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。

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