管理職は業務量が多く、普段から休憩なしで働いたり長時間残業をする方が多いです。休日出勤する機会もよくあります。しかし、休まずに働き続けると仕事の能率が下がるうえ健康面に悪影響が出る可能性があるので、振替休日や代休を取得できるなら積極的に取得しましょう。
この記事では、管理職の方が振替休日・代休を取得する方法を解説します。管理職が代替休暇や代休を取得する場合の注意点・取りづらい場合の解決法についても紹介するので、参考にしてください。
管理職の方で労働基準法で定められている休日・振替休日・代休などの適用を受けられないのは、管理職でも「管理監督者」の立場にある場合です。この項では法律や法令による管理職・管理監督者の定義から、一般社員との違いまで解説します。
管理職の定義を定める法律はなく、どこからを管理職と呼ぶかは企業によって異なります。多くの企業で管理職と呼ばれるのは、本部長・部長・次長・課長・係長等の肩書を持つ方です。一方、管理監督者に該当する方は、厚生労働省が定める以下の条件をそろえている方とされています。
「管理監督者」は管理職の方全員が該当するのではありません。管理職に就いて自分が管理監督者に該当するか否か分からない場合は、上司等に尋ねましょう。
管理監督者の定義を定める法律は、労働基準法です。労働基準法は労働条件に関する最低限のルールを定めた法律で、昭和22年に制定されました。労働基準法に関係する政令には、内閣府の「時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」・厚生労働省の「労働基準法施行規則」があります。
「時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」は残業や休日出勤をさせた際の賃金増額率を定めたもので、平成6年に公布されました。「労働基準法施行規則」は厚生労働大臣が労働基準法を運用するうえで必要な事項を定めたもので、休暇に関する事項もあります。
管理監督者に適用されないのは、この項で解説した法律・政令の一部分です。管理監督者であっても、有給休暇の付与・休職・介護休暇などの取得・健康を守るための措置・深夜労働に対する賃金割増に対する措置等は一般社員と同じように受けられます。
一般社員との違い
一般社員・管理職・管理監督者は企業内の立場だけでなく、法律の上でも異なります。法律の上で最も異なるのは、労働基準法の適用範囲です。一般社員と一般の管理職は労働基準法の適用をすべて受けられますが、管理監督者は一部適用を除外されます。
また、管理監督者は労働基準法36条1項により労働者の代表になれない、労働組合法2条2号により、労働組合への加入ができない立場であると規定されているのも覚えておきおきましょう。
管理職の方も振替休日・代休を取得できます。労働基本法適用外の管理監督者であっても、企業によっては取得を認めている場合があるので、取得不可能とは言い切れません。この項では、管理監督者が振替休日・代休を取得できるケースと、休日出勤に対する手当について解説します。
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管理監督者が振替休日・代休を取得するのは難しいのが事実です。取得が困難な理由は、管理監督者に労働基準法にある休日の規定が適用されないだけでなく、振替休日・代休は休日があるからこそ成り立つものである点も挙げられます。
しかし、労働基準法の適用外になる管理監督者であっても、所定休日の取得は可能です。所定休日とは1週間に1日、労働基準法に従って与えられる法定休日以外の休日を意味する言葉で、企業によっては法定外休日・特別休日と表現されるケースもあります。
また、管理職・管理監督者に限らず、日本には企業が従業員に代休を取らせる義務があると定めている法律はありません。しかし、振替休日については、法定休日でも所定休日でも取らせる義務があると労働基準法で定められています。
管理監督者には、残業手当や休日出勤手当が支給されません。管理監督者は定められた勤務時間以外に出勤する必要があるため、労働基準法の休日に関する規定を適用しなくてよいとされているからです。
また、厚生労働省も平成20年9月に「管理監督者はほかの労働者より優遇するように」と通達を出しています。管理監督者は賃金が高く設定されていたり、高額の役職手当が支払われてたりするので、休日出勤や残業に関する手当が付かなくても経済的に困らないのが事実です。
参考:厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
企業によっては、就業規則で管理監督者に振替休日や代休を与えると定めているところもあります。就業規則は職場内の労働条件や職場内の規律を規定し、文書にしたものです。就業規則の作成は、従業員が10人以上いる企業に義務付けられています。
管理監督者になったら一度、就業規則に目を通して、振替休日や代休に関する規定について確認するのがオススメです。
管理職の方で振替休日・代休を取るのをためらう方は多いです。管理監督者となると、就業規則で振替休日・代休の取得が認められていても実際には取得しない方が多いです。よく挙げられる理由を3点取り上げて解説します。
管理職・管理監督者が振替休日・代休を取りづらい理由には、業務が多忙である点が挙げられます。自分がこなす業務に加え、職場のトラブル解決・部下のフォロー・従業員を管理する役目も担うので、「いくら時間があっても足りない」と感じる方が多いのが事実です。
管理監督者となると、業務内容が経営者と同じぐらい重要なうえ、システムトラブルのような緊急事態の対応を任される場合もあります。しかし、管理監督者も普段から業務量が多いので、休日に緊急事態で出勤しても代休を取得するのは事実上不可能なケースがほとんどです。
管理職は企業の業務・組織の責任を背負う立場です。管理監督者ともなると、経営者レベルの重要な業務を担うので、一般の管理職以上に責任が重くなります。
また、管理職や管理監督者の人数は一般社員のように多くありません。平日に振替休日や代休を取ってしまうと責任者不在で業務が回ってしまうので、職場の一体感が失われる・業務効率や生産性が低下する等の問題が発生しがちです。
管理職の中には、会社やほかの管理職等に気兼ねして振替休日や代休を取らない方もいます。管理職の人数は少ないので、1日でも休めば他の管理職に負担のしわ寄せが行くかもしれません。また、現場に1日でも責任者不在になると従業員がまとまらなくなって生産性が下がり、企業全体に迷惑をかけるのではないかと考える方もいるでしょう。
また、日本人の管理職・管理監督者の場合は、真面目で責任感が強い性格の持ち主が多いのも、休みを取らない方が多い理由の1つです。
日頃から忙しい管理職こそ、振替休日・代休を積極的に取るようにしましょう。誰でも休みなく働くと誰でも仕事の能率が落ち、最悪の場合は健康を害して働けなくなる可能性もあります。管理職の方が振替休日・代休を取る大きなメリットは、以下に解説する3点です。
休日を取って得られる最大のメリットは、仕事で疲れた心身をリフレッシュできる点です。振替休日・代休の日は、しっかり睡眠を取る・ストレッチのような軽い運動をする・趣味の活動に取り組む等をして過ごすことがおすすめです。
休みの日には、持ち帰り仕事をしたり仕事について考えたりしないようにしてください。仕事に関するメールのチェックもやめましょう。休日に資格試験の勉強をしている場合は、普段時間を割けない分を取り戻そうとして長時間取り組まないようにするのがオススメです。
適切な休日の取得は、仕事の生産性とモチベーションの維持に欠かせません。心身を休めると頭がよく回るようになり、仕事の能率が上がったり失敗が少なくなったりします。
モチベーションを維持するには、趣味など仕事と関係のない活動をして休日を過ごしましょう。仕事以外にやりたい活動があると、生活にメリハリがつきます。また、休日は何もしないでゆっくりするのもオススメです。何も考えずにゆっくり過ごすと脳が休まって、仕事のアイデアをひらめきやすい状態になります。
管理職は従業員の見本となる存在です。管理職の方が積極的に振替休日や代休を取っていると、一般社員も振替休日や代休を取りやすくなります。また、一般社員が「休みを取りやすい職場」「仕事とプライベートを料理しやすい職場」と認識するようになると、企業全体の生産性が上がるだけでなく、職場の雰囲気を明るくするのにもつながります。
管理職が休みを取りやすくするには、管理職不在の日でも仕事が回る環境作りが不可欠です。可能であれば、実務は一般社員が自分の判断や責任でこなすようにし、管理職は意思決定など重要な部分だけ担う体制にしてみてください。管理職が休みやすくなるだけでなく、一般社員の成長にもつながります。
管理職や管理責任者が振替休日・代休を取得する場合はさまざまな点に注意を払う必要があります。特に、管理責任者の場合は企業の規則違反になっていないか気を付けましょう。以下で具体的な注意点を解説します。
管理職の方は、振替休日・代休を計画的に取得することがおすすめです。計画的に休むようにすると、疲れがたまる前にリフレッシュできるので、常によいコンディションで働けるようになります。
振替休日と代休は定義が異なり、取得のタイミングも異なる点には注意が必要です。振替休日は、事前に休日と勤務日の入れ替えを労使間の協議で決めます。対して、代休は休日に出勤した後日に休日を付与すると定義されているものです。
振替休日は休日勤務をする前に休日にする日を決める必要がありますが、代休は休日勤務をした後、都合のよい日を休日にできます。
管理職の方が振替休日・代休を取得するときは、業務に支障が出ないよう部下などに十分な配慮が必要です。必要な配慮は、以下に挙げるようなものです。
管理職であっても、振替休日・代休から仕事に復帰したら、周囲の社員にお礼とお詫びの気持ちを言葉で伝えるようにしてください。
管理職も管理責任者が振替休日・代休を取る場合は、企業の就業規則やルールに従って取りましょう。特に、管理責任者の場合は就業規定に振替休日・代休を取れる旨の記載がない場合は取得できません。必ず事前に確認するようにしてください。
また、会社側が就業規則や企業内ルールで振替休日・代休に関する規定を設けたり変更したりした際は、全従業員に周知しましょう。
参考:厚生労働省「代休?振替休日?」
管理職や管理監督者が振替休日・代休を取得しづらい原因は、会社組織の問題によるところが大きいです。振替休日・代休を取りやすくするには、就業規定・業務マニュアル・管理職不在時の対策等を見直しましょう。以下、具体的な方法を解説します。
管理職・管理監督者が振替休日や代休を取りやすくするには、就業規則の見直しが必要です。管理職・管理監督者も従業員なので、企業には安全配慮義務が課されています。労働基準法の適用外であっても、安全で健康的に働ける環境を用意するのは、非常に大切です。
管理職や管理監督者も振替休日・代休を取れるようにするには、就業規則の改正を求めましょう。
振替休日は就業規則に記載があれば取れますが、代休は36協定を締結していないと取れません。しかし、企業によっては管理監督者はもちろん、一般の管理職であっても36協定の対象外とみなしている場合があります。
管理職の方が振替休日・代休を取りやすくするには、あらかじめ業務マニュアルや業務手順を作成しておくのもよい方法です。マニュアルや手順書があると、管理職が不在でも一般職員が業務を代行できます。管理職の方が不在時のマニュアルや手順書を作成する際は、この下に挙げるポイントに気を付けましょう。
管理職の業務をマニュアル化しておくと、部下に仕事を任せても管理職と変わらないクオリティで業務を遂行できます。管理職が休む日に任せたい業務を伝えるのに要する時間を短縮できるのもメリットです。
管理職の方が休みやすいようにするには、管理職の代理を務める方を決めておくのもオススメです。多くの企業では課長代理・次長等、役職として管理職の代理を務める方を決めています。
特に、課長代理・部長代理の方が担う業務や権限は、本来の課長や部長等と同じです。もし、管理職が不在でも代わりに決裁ができるので、仕事が停滞せずに済みます。
代理とよく似た役職名には補佐がありますが、補佐は代理と異なり、決裁権がほとんど与えられていないのが特徴です。
企業に働きかけたり、業務効率化を測ったりしても管理職が振替休日・代休を取りづらい場合は、転職も視野に入れることがおすすめです。管理職でも休みを取りやすい企業はあります。また、転職すると年収アップ・キャリアアップの可能性も高くなるかもしれません。
管理職の転職は、求人数が少ない・スキルや経験を能力として評価されにくい・求められるレベルが企業によって異なる等の理由で困難を極めます。管理職の方が転職する場合は、転職エージェントの利用がオススメです。転職エージェントを利用すると、企業と年収や休暇等の交渉をエージェントのスタッフに仲介してもらえる・自分に合う求人をスタッフが探してくれる・非公開求人の紹介が受けられる等、さまざまなサービスを受けられます。
今の企業で管理職や管理責任者をしていて、振替休日や代休を取りにくい・取れない場合は、転職するのもオススメです。転職を決心したらWARCエージェントに登録しましょう。WARCエージェントには、管理職クラスの求人も全国から多数集まっています。
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