管理職として優れたマネジメント力を発揮するためには、さまざまなスキルが求められます。本記事では、「管理職に必要とされるスキルと役割」「陥りがちな課題と解決策」について解説します。部下の育成から組織の効率化まで、管理職として必須になるマネジメントスキルについて解説します。
管理職には、「部下の業務管理や育成」「組織の効率化」など、様々な役割が求められています。ここでは、管理職に求められる基本的な役割と、チームや組織に対する役割について解説します。
管理職とは、組織の中で一定の権限を持ち、部下の指揮監督や業務運営を行う立場の人のことを指します。大きな役割としては次の3つが挙げられます。
【管理職の基本的な役割】
まず「部下の育成」は、管理職の重要な責務の一つです。新入社員に対しては、業務のノウハウや知識から、マナーやコミュニケーション能力に至るまで、ゼロから教育していく必要があります。また、ベテラン社員に対しても、スキルアップの機会を設けたり、適切な業務ローテーションを行うなどして、継続的な成長をサポートしなければなりません。部下一人ひとりの長所と課題を把握し、きめ細かなフォローを行うことが欠かせません。
次に、「業務の遂行と進捗管理」です。管理職は部下に業務を適切に割り振り、進捗状況を常に把握しておく必要があります。遅れがある場合は原因を分析し、対策を講じなければなりません。例えば、重要プロジェクトでは毎週ミーティングを開き、課題の共有と解決策の検討を行うことが効果的でしょう。
最後に「組織の目標達成」という大きな責任があります。会社や部門の経営目標を部下に浸透させ、目標達成に向けて統率する力が問われます。プロジェクト遂行時には目標を明確化し、進捗を管理しながらメンバーを方向付けます。組織の生産性や業務効率化にも努めなければなりません。
このように、管理職には多岐にわたる役割が課されています。部下育成、業務管理、目標達成と、それぞれの役割を着実にこなすことが求められるのです。
管理職は、所属するチームや組織全体に対しても、重要な役割を担っています。
まずチームに対する役割としては、メンバー間の調整役を務めることが求められます。異なる職種や部署の社員が同じプロジェクトに参加する場合では、お互いの役割分担を明確にし、ゴールを共有する必要があります。
例えば、新製品開発プロジェクトでは、「マーケティング部門」「開発部門」「製造部門」が関わります。管理職は各部門の調整に入り、スムーズに連携できるよう仲介役を担います。
また、組織全体に対する役割として、経営層の方針や戦略を部下に浸透させることも重要です。組織の大きな目標を共有し、具体的にどのように部門や個人の業務に繋げるかをメンバーに伝えます。
さらに、組織の生産性や業務の効率化を図ることも、管理職の大きな役割です。現場の声に耳を傾け、無駄な業務プロセスがないか常に検証します。例えば、ある営業部門では「顧客対応の手順が非効率的だったため、管理職が業務フローの見直しを提案し、改善を実現した」と言ったエピソードがあります。必要に応じて、経営層へ改善案を提案し指示を仰ぎながら対応することも必要になるでしょう。
このように、管理職は自部門だけでなく、チームや組織全体の最適化をリードする役割を担っています。メンバーをまとめ、経営層の意向も踏まえながら、組織を機能的に運営していくことが求められるのです。
管理職として部下や組織をマネジメントする上で、以下の5つのスキルが特に重要となります。これらのスキルを身に付けることが、管理職の成功の鍵となります。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
リーダーシップとは、部下をまとめて目標達成に向けて導く力のことです。具体的にはビジョンを示し、部下に対して実現に向けた行動を促すことが求められます。
例えば、新規事業の立ち上げに際して、管理職がビジョンを明確に示し、部下一人ひとりの役割と目標を設定することで、チーム全体が同じ方向を向いて取り組めるようになるでしょう。
また、トラブルが生じた際にも的確な指示を出しながら、部下のモチベーションを維持することが重要です。
コミュニケーションスキルとは、部下や上司・他部門との円滑なコミュニケーションを図る力のことです。「自分の考えを分かりやすく伝える力」「相手の意見を丁寧に聞く力」「建設的な議論ができる力」、などが求められます。
例えば、会議の場では自分の意見を論理的に説明し、他者の意見も丁寧に聞くことで、生産的な議論ができます。また、部下とのコミュニケーションでは、適切な指示や助言・フィードバックを行うことが大切です。
管理職になると、外部の業者や他部署の方とのやり取りが出て来ます。外部の方とも円滑に話を進めるためにも、コミュニケーション能力は必須と言えるでしょう。外部とやり取りした内容は、必要に応じて部下にも共有が必要です。そのため、内容を分かりやすく明確に伝えるスキルも要求されます。普段から、相手に合ったコミュニケーションが取れるよう、意識しておきましょう。
問題解決スキルとは、業務上の課題を発見し、適切な解決策を見つける力のことです。具体的には、「課題の本質を見抜く力」「複数の解決策を検討する力」「最適な解決策を選択する力」などが挙げられます。
例えば、売上が伸び悩んでいる場合、その原因を分析して対策を立てることが求められます。また、新規事業の立ち上げ時には、予想されるリスクや課題を事前に洗い出し、対策を検討しておくことが重要です。
そのため、「論理的な思考力」と「創造力」も必要不可欠となるでしょう。感情的にならず、状況を冷静に見極めて対策を立てることが重要です。
意思決定スキルとは、与えられた情報から最適な選択肢を判断する力のことです。管理職には、さまざまな選択肢の中から最善の決断を下すことが求められます。必要な情報を収集し、メリット・デメリットを検討した上で、迅速かつ的確に意思決定を行う必要があります。優先順位をつけて対応する際には、その優先順位付けの理由を説明できることも要求されるでしょう。
例えば、新製品の開発の場合だと、コストと品質のバランスを考慮し適切な仕様を決定することが求められます。他にも、事業の方向性を決める際には、リスクと機会を勘案し決断をくだす必要が出ています。
指示に従って動くだけで良い一般の社員とは異なり、管理職には意思決定スキルが必須と言えるでしょう。
リスク管理とは、事業活動におけるさまざまなリスクを予測し、対策を立てる力のことです。リスクヘッジをすることで、企業への被害を最小限に留めることが可能になります。現場を預かる管理職に求められるスキルの一つと言えるでしょう。
業務を具体的に提示すると、「リスクを特定し、その影響度と発生確率を評価した上で優先順位をつけて対策を講じる」というものです。
例えば、新規事業を立ち上げる際には、「市場リスク」「技術リスク」「法的リスク」などを洗い出し、それぞれに対する対策を検討しておくことが重要になります。
また、緊急事態・予測できない自然災害の発生・重大な不祥事が起きた場合についてもリスクを予測し、対策を講じておく必要が出てきます。想定できる限りのケースについて対策を講じることで、被害を最小限に食い止めることができるでしょう。
管理職としての役割を全うするためには、業務をリードしながら部下の育成にも注力しなければならず、組織全体の効率化も図らなくてはなりません。このように管理職には多くの責任が伴うため、対処が難しい課題に遭遇するケースもあるでしょう。ここでは、管理職が陥りがちな4つの代表的なマネジメント課題と、その要因について解説します。
自身の業務遂行はできても、部下の育成という点で課題を抱える管理職は少なくありません。部下一人ひとりの能力や個性・キャリアプランを正しく理解し、適切なフォローを行わなければ部下の育成は上手くいきません。
例えば、ある社員の作業効率が悪い場合、その理由を探り、作業手順の改善点を一緒に検討するなどのフォローが有効でしょう。日頃から部下とのコミュニケーションが不足していたり、フィードバックの機会が少なかったりすると、部下のモチベーション低下にもつながります。
日頃からコミュニケーションを心掛けたり、定期的に面談する機会を設けることで、部下の本音を引き出しやすくなるでしょう。また、部下の長所を活かしつつ、弱点をフォローアップすることでモチベーションが下がらないよう支えることもできます。自身が同じくらいの職歴の時、どのようなことで悩んでいたかを振り返ってみるのもおすすめです。
管理職には、組織や企業で抱える課題の設定や解決する能力が要求されます。しかし、周囲の状況を正しく捉え、組織や部下が抱える課題を適切に設定したり、課題に対して的確な解決策を立案したりすることに悩む場合も多いと思います。
課題に対して悩んだ場合は、一つの案に固執せず、関係者と議論を重ねながら最善策を検討すると良いでしょう。
課題の設定や課題の解決に対応するためには、現場の生の声に耳を傾け、データを分析する力が欠かせません。また、組織の中には潜在的な課題が必ずあるため、些細な兆候にも気づける感受性も求められるでしょう。課題の本質を見抜けず、対症療法的な対応に終始してしまうと、根本的な解決につながりません。
客観的な視点を取り入れることで、今まで見えていなかったものが見えることにも繋がります。難しく感じた場合は、既存のデータや関連部署への相談を視野に入れ、取り組みましょう。
部門間の連携が不足していたり、重複業務が多かったりすると、組織全体の業務効率が悪くなります。管理職には、組織の無駄を見つけ、効率化を図ることが求められています。
例えば、部下の業務分担が適切でない場合、生産性が低下する可能性が生じるでしょう。業務の効率を最大化できるよう、人員配置や業務分担を検討するのも管理職に求められるマネジメントの一部です。
他にも、自部門の業務は円滑に進められても、他部門との連携が上手くいかず、組織全体の効率が落ちてしまうケースもあります。このとき、管理職としての部門間の調整力が試されます。例えば、システム開発プロジェクトにおいて、設計部門と製造部門の間で要件の食い違いがあると、手戻りが発生し無駄な工数がかかってしまいます。関係部署間での定期的な会議を開催し、進捗状況の共有や課題の洗い出しを行うなどの対策が有効です。
自身のタスク管理やスケジュール管理が不十分だと、部下の手本にならず、マネジメントにも支障をきたします。そのため、管理職にとってセルフマネジメント力は欠かせません。
例えば、会議や打ち合わせの予定管理が杜撰だと、遅刻をしてしまったり、段取りの悪さが露見した非効率な話し合いとなり、部下からの信頼を失いかねません。ToDo リストやカレンダーなどのツールを上手く活用し、自身の業務進捗を踏まえてスケジュールを管理する力が求められます。
また、ストレス管理が不十分だと、冷静さを欠き感情的になってしまい、判断を誤る可能性もあります。自分自身の行動を常に見つめ直し、必要に応じて改善するセルフマネジメント力を身につけましょう。
管理職に求められるスキルは多岐にわたります。部下のマネジメントはもちろん、課題解決力や意思決定力、コミュニケーション能力など、マネジメント力の根幹を成す能力を身に付ける必要があります。これらのスキルは実務を通じて磨かれますが、積極的な取り組みによってさらに効果的に習得することができるでしょう。ここでは、管理職としてのマネジメント力を高めるための具体的な方法を5つご紹介します。
傾聴する習慣を身につけることで、コミュニケーション力が格段に高まります。単に言葉を聞くだけでなく、相手の立場に立って発言の背景にある思いを汲み取る力が重要です。部下の発言をしっかりと聞き入れ、理解する姿勢が何より大切になるでしょう。例えば、定期的な面談を設けて部下の本音を引き出し、その発言から課題を見つけ出すといった具体的な取り組みが効果的です。一方通行のコミュニケーションではなく、対話を通じてお互いを理解し合う関係を築くことが大切と言えるでしょう。
課題解決や意思決定の際に、論理的に物事を考え、判断する力が求められます。そのために、ロジカルシンキングの手法を学ぶことをおすすめします。
具体的には、問題の本質を捉え、根本原因を特定する構造化の思考プロセスや、複数の選択肢を検討し最適解を導き出すフレームワークなどがあげられます。
この考え方を実務で活用することで、課題への対処力が身につき、合理的な意思決定ができるようになるでしょう。
管理職に求められる職務とスキルを明確にしておくことで、それに向けて計画的に学んでいくことが可能になります。また、管理職としての目標設定も有効な方法です。
例えば、自社の管理職に期待される役割を文書化し、不足しているスキルを洗い出します。そして優先順位をつけ、計画的に研修や実務を通じてスキルアップに取り組みます。自己分析を行うことで、取り入れるべきスキルが見えてきます。積極的に学ぶことができるため、成長も早くなるでしょう。
スキルアップの計画を立てる際は、具体的な行動に落とし込むと効率的です。
例えば、「今期は部下育成に重点を置き、次期はプロジェクトマネジメントに注力する」のような目標を立てて置くと、着実に実行できるでしょう。効率的かつ着実にスキルを身に着けることに繋がります。
自社で管理職向けの研修を実施したり、外部の研修に参加したりすることで、スキルアップが図れます。研修を活用することで、自社だけでなく他社の事例なども知ることができ、今後の業務の参考にもなるでしょう。
また、研修では講義形式だけでなく、「グループディスカッション」「ロールプレイング」など、体験を通じて学ぶ機会を設けることがおすすめです。例えば、架空の事例を使った問題解決演習を行うことで、実践的なスキルが身につきます。また、他社の管理職と交流することで視野が広がり、新たな気づきも得られるでしょう。
時間や場所を選ばずに学習できるeラーニングを活用することで、効率的にスキルアップが可能です。eラーニングには、マネジメントスキルに関するさまざまなコンテンツが用意されており、管理職一人ひとりのペースに合わせて学習できるメリットがあります。また、アニメーションや動画を活用したわかりやすい解説や、クイズ形式の確認テストなども用意されているため、効果的な学習が可能です。
好きなタイミングで学習ができるeラーニングなら、移動時間や空き時間を有効活用できます。自身の理解が浅い部分に関しては、繰り返し学習もできるでしょう。さらに、学習履歴の管理や、達成度の把握も可視化でき、計画的なスキルの習得が可能になります。
管理職に求められるマネジメントスキルは多岐に渡ります。「リーダーシップ」「コミュニケーション力」「問題解決力」「意思決定力」「リスク管理力」など、さまざまです。
一方で、「部下の育成」「課題設定と解決」「組織の効率化」「自身のセルフマネジメント」など、管理職が直面する課題も多くあります。課題をクリアするためには、業務以外での自己学習も効果的です。傾聴力やロジカルシンキングを身につけるため、研修やeラーニングの取り入れなどもおすすめです。
優れたマネジメント力は一朝一夕には身につきませんが、日々の業務を通じて着実に習得していくことができます。管理職に求められるスキルを意識し、課題に対する解決策を見つけながら実践を重ねていきましょう。本記事を参考に、さまざまな機会を捉えてスキルアップに取り組んでみましょう。
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