法改正により、従業員が適切に休暇を取得できる環境づくりは、今や企業の重要な責務となっています。
この記事では、有給休暇に関する基礎知識から法改正の詳細、そして管理職としての具体的な対応策まで、分かりやすく解説します。効率的な有給休暇管理で、働きやすい職場環境を作りましょう。
まずは、有給休暇について見ていきましょう。
有給休暇とは、労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活を送れるよう、法律で定められた権利のこと。従業員は一定期間勤務を続けることで、有給の休暇を取得できるようになります。
休暇期間中も給与の支払いがあり、欠勤扱いにはなりません。休暇の時期は、労働者自身が決定できる「時季指定権」が認められています。有給、年休、年次有給休暇などと呼ばれますが、同じ制度を指しています。
有給休暇の根拠となるのは、労働基準法第39条です。
この法律により、継続して6ヶ月以上勤務し、その期間の出勤率が8割を超える場合、年次10労働日の有給休暇が付与されることが義務付けられています。その後の勤続年数に応じて、付与日数が年々増えていく仕組みになっています。
有給休暇は一般職員だけでなく、管理職にも適用される制度。なお、有給休暇の請求権の時効は2年と定められています。
有給休暇の日数は、勤続年数によって異なります。
以下は、勤続期間別の有給休暇の付与日数です。
連続勤務年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
表でも分かる通り、継続勤務年数に応じて、有給休暇の付与日数が増えていきます。勤続年数が1年以下の場合は10日、2年以下は11日、3年以下は12日、4年以下は14日、5年以下は16日、6年6ヶ月以下は18日、それ以降は年々2日ずつ増え、最大20日取得可能です。
この付与日数は、各事業年度ごとにリセットされるため、前年度から繰り越された残日数と合わせた総付与日数から請求することになります。新たに付与される日数は、前年度から繰り越した残日数を差し引いた日数となり、上限は労基法で定められた年次付与日数です。
有給休暇の計算期間は、毎年同じ日から始まる1年間ですが、事業の種類により計算期間の起算日は異なるので注意しましょう。
有給休暇は原則として1日単位で取得しますが、企業によっては半日単位や時間単位での取得も認められています。これにより、労働者は仕事の状況に合わせて柔軟に休暇を取得することが可能。
例えば、病院の通院や子どもの学校行事など、数時間だけの休みが必要な場合にも対応できるようになります。このような制度を導入することで、企業は従業員の多様なニーズに応え、働きやすい環境を提供することができます。
2018年の通常国会で労働基準法改正案が提出されました。この改正案には「労働者に対し、一定の年次有給休暇日数を確実に取得させる」という内容が含まれていました。つまり、従業員が毎年一定日数の有給休暇を取得することを義務付ける制度が盛り込まれたのです。
ここでは、法改正の背景と対象となる企業・従業員について解説していきます。
有給休暇の取得が低迷している現状を改善するため、法改正が行われました。
この背景には、労働者の心身の健康維持やワークライフバランスの重要性が増していることがあります。特に日本では、有給休暇の取得率が低く、労働者の疲労やストレスが社会問題の一つ。法改正の目的は、働き方改革の一環として、労働者が適切に休暇を取得し、健全な働き方を実現することにあります。
改正労働基準法により、企業には有給休暇の確実な取得が義務付けられました。具体的には、年間10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、最低5日の有給休暇取得を確保しなければならないというものです。
企業がこの義務を怠った場合、大きなリスクが伴います。
最も直接的なリスクは、労働基準法違反により30万円以下の罰金を科される可能性があること。労働基準法第120条により、有給休暇取得の確保に違反した場合、罰金刑が定められているのです。
さらに、従業員から労働基準監督署や弁護士などの外部機関に相談されるリスクもあります。企業の対応が不適切と受け止められれば、外部機関に問題提起される恐れがあるでしょう。
そうなれば、マスコミ報道やSNS等で企業の名前が取り上げられ、社会的な信頼を大きく失うおそれがあります。有給休暇の権利を無視する企業として、ネガティブなイメージが広まってしまうのです。
有給休暇の取得義務は、すべての企業と、その企業に所属するすべての労働者に適用されるのがポイント。正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトの従業員も含まれます。
特に、年間10日以上の有給休暇が付与される従業員が対象。企業は、全従業員の休暇取得状況を把握し、適切な対応を行うことが求められます。また、従業員に対しても、自らの権利として有給休暇を積極的に取得するよう促すことが重要です。
企業は、有給休暇の取得状況を管理し、法定の休暇が確実に取得されるよう配慮する責務があります。具体的には、従業員の休暇申請を適切に受け入れ、業務の調整を行うことが求められます。また、有給休暇の取得状況を記録し、適宜報告することも必要です。これにより、企業は法令遵守を徹底し、従業員の健康維持と働きやすい環境の整備を実現します。
次に、以下の2点をベースに、管理職の役割と有給休暇管理についてご紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
管理職は、部下の有給休暇取得状況を把握し、必要に応じて取得を促す責任があります。
これにより、従業員が適切に休暇を取得できるようサポートし、職場全体の健康維持と生産性向上を図ります。また、休暇取得を促すだけでなく、休暇中の業務のフォローアップや代替業務の手配も管理職の重要な役割。このような責任を果たすことで、管理職は職場の円滑な運営に貢献します。
部下の休暇取得状況を把握するため、定期的に休暇の申請状況や取得状況をチェックし、適切なサポートを行いましょう。
具体的には、月次や四半期ごとに休暇取得の進捗を確認し、未取得の日数が多い場合は取得を促すなどの対応が求められます。
また、部下が休暇を取得しやすい環境を作るために、日常的にコミュニケーションを図り、休暇取得の重要性を共有することも大切です。
有給休暇を計画的に付与することで、業務のスムーズな進行と労働者のリフレッシュを両立させることができます。
例えば、年間の業務計画に基づき、各従業員の休暇予定をあらかじめ調整し、業務のピーク時を避けて休暇を取得できるようにします。これにより、業務の効率を維持しながら、従業員が計画的に休暇を取得できるようになります。
また、休暇取得計画を共有することで、チーム全体での協力体制を構築することも可能です。
管理職には、部下の有給休暇取得を促進し、健全な労務管理を実現することが求められています。有給休暇は従業員がリフレッシュする大切な機会であり、メンタルヘルスの維持や生産性の向上にもつながります。
しかし、日本では長時間労働が常態化しており、有給休暇の取得率が他国に比べて低い状況が続いています。こうした課題を解決するには、管理職自ら有給取得の重要性を認識し、部下に対して計画的な取得を働きかける必要があります。
具体的には、年間の業務計画の中に休暇取得予定を組み込んだり、定期的に取得状況を確認し促すなどの対応が考えられます。さらに、業務のスムーズな引き継ぎや代替要員の手配など、環境整備にも注力しましょう。
有給休暇の取得促進は、単に従業員の健康確保にとどまらず、企業の生産性向上や優秀な人材の定着化にもつながります。管理職は、このような視点から有給取得を自らの重要な役割と位置付け、働き方改革の一環として取り組む必要があります。
有給休暇の取得義務化は、多忙な管理職にとってネックとなるかもしれません。とはいえ一旦これまでの働き方を見直し、緩急をつけて部署の生産性を向上させる良い機会です。ここでは、有給休暇の取得を阻む要因を検証し、解決策を提案します。
人手不足や業務の偏りが有給休暇取得の妨げとなることがあります。
これを解決するためには、業務の見直しや効率化、適切な人員配置が必要。例えば、業務の分担を見直し、均等に負荷を分けることで、特定の従業員に業務が集中することを防ぎます。また、アウトソーシングや一時的な派遣社員の活用なども効果的な対策となります。
有給休暇を取りにくい雰囲気を改善するためには、上司が率先して休暇を取得するなど、ポジティブなメッセージを発信することが効果的。また、休暇取得を奨励する社内キャンペーンを実施することも有効です。例えば、年間で最も多く休暇を取得したチームを表彰するなど、休暇取得が評価される文化を育てることで、従業員は安心して休暇を取得できるようになります。
さらに、従業員が休暇を取得する際に、業務の引継ぎや代行体制が整っていることを確認することも重要。これにより、休暇中も業務が滞ることなく、従業員がストレスなくリフレッシュできる環境が整います。
管理職自身が休暇を取得することに抵抗を感じる場合があります。しかし、休暇を取得することでリフレッシュし、業務効率を向上させることができます。管理職が率先して休暇を取得することで、部下に対しても休暇取得の重要性を示すことができます。また、管理職が休暇を取ることで、部下が業務を代替する機会を得るため、スキルの向上にもつながるでしょう。
業務効率化とタスク管理を徹底することで、休暇取得がしやすい環境を整えましょう。具体的には、業務プロセスの見直しやツールの活用によって効率化を図ります。
また、タスクの優先順位を明確にし、重要度の高い業務から順に処理することで、余裕を持って休暇を取得できるようにしましょう。このような取り組みは、従業員の働きやすさを向上させるだけでなく、組織全体の生産性向上にも寄与します。
休暇取得に対する意識を改革し、労働者が積極的に休暇を取れる環境を作り出すことが重要。企業全体で休暇の重要性を認識し、推奨する風土を育てましょう。具体的には、休暇取得のメリットを社内で共有し、定期的に休暇取得状況を報告するなどの取り組みが有効です。また、上司や同僚が率先して休暇を取得することで、休暇取得が当たり前の文化を醸成することができます。
最後に、管理職自身が有給を取得する際の行動についてまとめました。
管理職自身が積極的に有給休暇を取得し、部下に対してロールモデルとなることで、組織全体の休暇取得率を向上させることができます。例えば、計画的に休暇を取得し、その過程や効果を部下に共有することで、休暇取得の重要性を伝えます。これにより、部下も安心して休暇を取得できるようになるでしょう。また、管理職が休暇を取得することで、業務の引き継ぎやフォロー体制が強化される効果もあります。
有給休暇を取得する際には、円滑な業務引継ぎを行うことが重要。事前に業務内容や進行状況を共有し、チーム内での協力体制を整えましょう。具体的には、業務マニュアルの作成や、定期的なミーティングを通じて情報共有を行います。また、引継ぎをスムーズに進めるためのチェックリストを作成し、漏れのない引継ぎを行うことも大切。このような取り組みをすれば、休暇中も業務が滞ることなく進行します。
有給休暇を活用して転職活動を進めることも一つの方法です。休暇中に自己分析や市場調査を行い、次のキャリアステップに備えることができます。
特に、管理職としてのキャリアをさらに発展させるためには、現在の市場動向を把握し、自分に適したポジションを見極めることが重要。休暇を利用してセミナーやキャリアカウンセリングを受けるなど、転職活動に向けた準備を進めることが効果的です。
管理職が有給休暇を活用することで、組織全体の休暇取得率が向上し、結果として働きやすい職場環境が実現します。これにより、従業員のモチベーションと生産性にも繋がるでしょう。また、適切な休暇取得が行われることで、従業員の健康維持にも寄与し、長期的な離職防止にも効果が期待できます。
このように、休暇取得は組織全体に多くの好影響をもたらすため、積極的に推進することが求められています。
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