情シスと聞いてもどんな業務をしている部署なのかピンと来ない方も多いでしょう。情シスとは、企業内でITに関する業務を一手に引き受けている部署です。情シスの具体的な業務内容や必要なスキルを理解することで、情シスがどのような仕事をしているかが明確になり、転職を考えるきっかけの一つになります。
この記事では情シスの主な仕事や必要とされるスキルについて解説していきます。
情シスは「情報システム」の略称で、企業内の問題点をITにより解決し、市場による競争力を高めていく部門です。業務が滞っている部分のIT化や、システム導入にあたる環境整備を行い、経営がスムーズにいくことを目指します。
また、企業の情報資産を守るために、セキュリティ対策を行うのも情シスの仕事です。ウイルス対策やアクセス制限に加え、社員教育の実施やポリシー策定など総合的な業務を行います。
近頃、IT化やDXの流れが世界的に進んでおり、対応できる専門家の確保が急務となっています。世の中の流れに対応できない企業は、将来的に大きな経済損失を抱えるリスクがあります。
たとえば、企業がIT化を中途半端に進めた場合、セキュリティ対策が不十分であれば情報漏えいやウイルス感染のリスクが高まります。そして情報資産が侵害されると顧客や取引先からの信頼を失ってしまい、最悪の場合、企業が倒産する可能性もあるのです。
情シスには、企業の急速なIT化やDXを支えるプロフェッショナルとしての役割が期待されています。
この項では情シス(情報システム)の仕事内容を、4つに分けて解説していきます。
IT戦略とは、企業がビジネス目標を達成するために、ITの観点から考える戦略のことです。自社の目標を達成するために、どのITシステムを導入するか、どのようにセキュリティ対策を行うかなどを検討します。
また、IT戦略を策定したうえで、それを実現するための計画の立案も必要です。予算も時間も限られていますので、優先順位をつけて段階的に実行し、運用と維持を図ります。
社内システムの設計から維持に至るまでの業務も、情シスの仕事です。たとえば、クラウドサービスを導入する場合、セットアップから更新、ユーザーの管理まで、あらゆる責任を負います。また、システムが毎日安定して稼働するよう、社内で使うシステムの管理を行います。
さらに、システムの障害を防ぐための維持や保守も行い、企業を情報漏えいやサイバー犯罪から守ることも情シスの仕事です。
社員がITツールやシステムを問題なく利用できるよう、サポートデスクとして対応にあたるのも情シスの仕事です。システム操作に関する問い合わせへの対応だけでなく、マニュアルの作成や研修の実施なども行います。また、システム障害が発生した際には、速やかに原因を探り、復旧作業にあたらねばなりません。障害が発生した後は再発防止策を検討し、同じようなトラブルが起こらないように努めます。
社内のセキュリティ対策を推進するのも、情シスの重要な役割です。社内情報を正しく管理し、漏えいや紛失を防ぐことは企業の社会的責任ともいえます。
ファイアウォールの導入やマルウェア対策、データの暗号化など情報資産を守るためにさまざまな対策を講じます。また、セキュリティツールを継続的に監視し、脆弱性への対処を行うのも情シスの仕事です。
情シスの体制は、企業の規模やIT化の進み具合によってさまざまです。情シスへの転職を検討する場合、部門の構成人数や仕事の範囲などを事前によくチェックしておきましょう。
「ひとり情シス」とは、情シス部門を一人だけで切り盛りする体制のことで、中小企業に多く見られます。情シス部門の役割を一人で一手に担うため業務範囲は幅広く、高度な専門知識やさまざまなスキルが求められる体制です。
業務が一人に集中するため、時間外労働やストレス過多などのトラブルは少なくありません。一人で安定したシステム運用を行うために、優先順位付けや外部リソースの活用などの工夫が必要となります。
「兼任情シス」とは、ほかの部門と兼任して情シスを担当する体制のことです。予算の関係上、専任の情シス担当者を置くことが難しいベンチャー会社や、創業期の企業に多く見られます。
専任の情シス担当者を新規に雇う必要がないため、会社側にとっては人件費を抑えられるメリットがあります。しかしその一方で、専門知識不足や作業効率の低下により、セキュリティリスクが高まるという懸念があります。
「複数情シス」とは、情シスに複数のメンバーを配置する体制のことで、大企業に多く見られます。情シスを部門として独立させるため、役割分担により効率的に業務を遂行できる点がメリットです。
作業量が分散されるため、一人情シスや兼任情シスに比べて個人あたりの負荷はそこまで大きくありません。ただし、メンバーが多い分、コミュニケーション不足による食い違いが起こりがちです。定期的な会議の開催や進捗の適切な管理など、プロセス面での工夫が重要となります。
また、情シス部門だけを独立させ、子会社化する体制もあります。子会社化する理由としては、以下のようなコストダウンのメリットがあります。
しかし、子会社化にはデメリットもあります。親会社との関係性が薄れることで、経営課題や戦略を反映したIT戦略を立案する能力が弱くなります。また、別会社であるため「待ち」の姿勢になり、積極的な提案が減少する可能性もあります。
では次に、情報シスで働くにあたって持っておきたいスキルを解説します。
情シスには、ハードウェアからソフトウェア、ネットワークやサーバーなどの広範なIT知識が求められます。情シスは社員のITサポートやシステム障害など、企業のIT対応を一手に引き受ける部門だからです。
なお、IT分野のトレンドは急速に変化するため、基本的な知識だけでなく、最新情報を常に取り入れることも必須です。
情シスは他部署スタッフとのやりとりが多いため、高いコミュニケーション能力が必要になってきます。情シスは、スタッフが日常的に感じる困りごとに対し、IT技術を用いて解決していくサポート役です。何に困っていてどのように対処するかを探るには、日頃からコミュニケーションをとることが大切になります。
また、ツールを使用するスタッフは、必ずしもITに精通しているとは限りません。専門用語に頼らず、誰にでもわかりやすい言葉で表現する能力も必要です。
情シスには、課題をスムーズに解決するためのプロジェクト遂行能力も必須です。企業では、ITシステムの導入や改善などのプロジェクトが頻繁に発生します。しかし、予算や時間は限られていますので、いかに効率的に目標達成に導くかが重要課題です。
限られたリソースの中でプロジェクトを効率的に達成するために、スケジュールやコストをきちんと管理しながら進めていくスキルが求められます。
情シスで働くにあたって資格は必須ではありませんが、資格を持っていると仕事を行ううえで役に立つことも多いです。とくに、IT分野の職種が未経験の人にとっては転職する際にも役立つと考えられるため、情シスに関連する資格を紹介します。
情報システムの世界に足を踏み入れるための基礎となるのが、ITパスポートです。情報処理推進機構(IPA)が認定する「情報処理の促進に関する法律」に基づく国家資格で、ITの基本的な知識を持っていることを証明できます。
基本情報技術者は、ITの基本から実践的な内容までを幅広くカバーする資格です。情報システムのキャリアでさらに専門的な道を目指す場合、転職活動において非常に役立つと考えられます。
応用情報技術者は、より高度なITの知識と技術の証明に役立つ資格です。ITの深い領域だけでなく、戦略立案やシステム設計までの幅広い知識が問われます。
基本情報技術者のワンランク上の試験になります。
情シスは企業内で非常に重要な役割を果たす部門ではありますが、抱えている課題も少なくありません。ここでは情シスが抱える課題と改善策について説明していきます。
経済産業省の調査によると、IT人材は近年、退職者が増加する傾向が続いており、今後深刻な人材不足が生じる懸念があるといわれています。
さらに情シスの業務は最先端ITやインフラ・ネットワークなど多岐にわたり、それぞれ専門的な知識が必要であるため、そもそも簡単に人材を確保できないのが現状です。
人材確保のために、採用条件の緩和、あるいは即戦力でなくても育成を視野に入れた人材を採用するなど、人材が集まるような採用方法の検討が必要になってきます。
ひとり情シスも大きな課題のひとつです。小規模な会社、あるいはITリテラシーに理解のない企業に多く見られます。
ひとり情シスの致命的な課題は、担当が休んだ時にトラブルに対応できる人がいなくなってしまうことです。また、ひとり情シスが退社することになると、弊害はより大きくなります。
IT人材不足やコストのため、増員するのは難しい部分もありますが、普段から経営陣に人材不足を訴えておく、またアウトソーシングできる部分は外部企業に頼るなど、リスクを分散しておくとよいでしょう。
情シスの業務は他部署に理解されにくいこともあり、他部署との連携不足によって問題が発生することも少なくありません。
たとえば、セキュリティ上問題が発生する可能性があるアプリを、売上を稼ぐ営業部が使っていたとします。その際、情シスがセキュリティリスクを説明しても、「コスト部門にとやかく言われたくない」「今のツールが使いにくいからだ」などといざこざが起こることもあります。
情シスにかかわらず、営業とマーケティングなど対立する部署というのはあるものですが、対立は基本的には部署間での理解不足、コミュニケーション不足から発生することが多いです。
日頃から他部署の業務内容や活動を理解し、常時コミュニケーションをとっておくことで深刻な対立は回避できるでしょう。
情シスはITのプロと言える存在ですが、「何でも屋さん」扱いされて、立場を軽んじられることもあります。収益を生み出す部門ではないこともその理由の一つです。経営層の年齢が高かったり、ITに疎かったりするとその傾向がより顕著になります。
「パソコンが起動しない」「メールが送れない」など、情シスはヘルプデスクとしても機能しますが、業務の基幹システムを運営、管理することがより重要な仕事です。
普段から情シスの業務の重要性、トラブルが起こった時のリスクを説明し、立場と仕事内容を理解してもらうように努めることも大切です。
所属する企業や担当分野によって情シスに求められるスキルや知識は違ってきます。大企業で情シスの人数が多ければ専門性が求められますし、人数が少なければ汎用的な知識とスキルが必要になります。
基本的なキャリアパスとしては「一般職員」「リーダー」「マネージャー」「CTO(Chief Technology Officer/最高技術責任者)/CIO (Chief Information Officer/最高情報責任者)」という流れになります。
日本ではCTOやCIOなどの役職はあまり聞きませんが、いずれにしても上級職になればなるほど、知識やITスキルだけでなく、幅広い対応力やマネージメントスキルが要求されます。
また、より高度な専門技術者としてキャリアを積んでいく方向もあります。
ひとつの会社で情シスとしてのキャリアを積んでいくのももちろん良い方向ではありますが、今の会社に満足していない、あるいはよりよい環境で働きたいと考えている場合は、転職も視野にいれてみてはいかがでしょうか。
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