情報システム(以下、情シス)は、企業の根幹を支える重要な存在です。しかし、長らく情シスエンジニアは社内にこもりがちで、孤独に陥りやすい環境にありました。近年、そうした状況を打開すべく、情シスエンジニア同士のコミュニティが次々と立ち上がっています。
この記事では、情報エンジニア向けコミュニティの種類や参加方法・メリット・注意点について説明します。
企業の基幹システムを支える情シス分野では、長年、エンジニア同士の横の繋がりが希薄でした。しかし近年、IT化の進展に伴い、情シス部門の重要性が高まっています。そうした中で、情シスエンジニア同士が知識やノウハウを共有し、課題を解決するためのコミュニティが生まれてきたのです。オンライン上のコミュニティだけでなく、リアルな交流会など、さまざまな形態のコミュニティが存在しています。
情シス部門は、基幹システムの運用を担う重要な役割がありながらも、長年さまざまな課題に直面してきました。
主な課題として、以下の3点が考えられます。
このように情シスエンジニアを取り巻く環境は、決して恵まれたものではありませんでした。
しかし近年、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の必要性が高まり、情シス部門の重要性が見直されつつあります。ITシステムの刷新に向けた投資が増え、人材の確保や育成への気運が高まっています。こうした変化を受けて、情シスエンジニア同士が横のつながりを持ち、課題解決に取り組むコミュニティが次々と生まれてきたのです。
それでは、情シスコミュニティについてみていきましょう。
情シスコミュニティは、主に以下の2つがあります。
以下でそれぞれのサービスの特徴・参加方法をご紹介します。
「情シスSlack」とは、全国の情シスエンジニアが参加する大規模なSlackコミュニティです。ITベンチャー企業の社員が立ち上げた民間主導のコミュニティで、登録者数は1万人を超えています。(2024年2月時点)チャンネルが多数用意されており、言語やミドルウェア・クラウドなど、幅広いテーマについて議論できるのが特徴です。
また、民間主導ならではの自由な雰囲気が魅力で、質問や相談をしやすい環境が整っています。企業の枠を超えた横のつながりが生まれ、新しい発見や刺激を得られるかもしれません。また、有力企業のエンジニアらが参加しているため、リクルーティングの場としても機能しています。
こんな人におすすめ!
情シスSlackに参加する方法は下記の通りです。
このような手順で、情シスSlackに参加しましょう。
実際に情シスSlackに参加したことがある、もしくは参加しているメンバーの方は、どのように感じているのでしょうか?利用者の声をいくつかご紹介します。
あんばたー on X: "ある程度知識を習得して成長曲線が緩やかになってモチベが湧かない現象に悩む今(分からないことも十分多いけど)。業務もコンフォートゾーン。やる気がない中でXや情シスSlackを見て勉強させてもらえるのはほんとにありがたい。このモヤモヤから抜け出したら恩返しで情報発信したいなー🏃" / X (twitter.com)
出典:X
ガシ (っ'-') on X: "5億年ぶりに情シスSlackを覗いてみた。相変わらず本当に貴重な知見がやり取りされていて、眺めているだけでスキルが上がったような気になる。 私も何か貢献できるようなネタがあればいいのだけどな。相変わらずROM専ですが今後はもっと頻度を上げてROMしようと思います" / X (twitter.com)
出典:X
口コミを見ると「自分自身のモチベーションアップにつながる」、という声が多数見受けられました。
情シスSlackでは、グループに参加しているからといって、必ず発言をしなければならない訳ではないので、参加者として気軽にコミュニティに参加できるのが特徴です。
そのため、見るだけでもトラブルの対処やアイデアの着想を得るためのヒントを得られたり、情報をリサーチしたりなどの使い方をする方も多いようです。
「うちの情シス」は、株式会社マネーフォワードが運営する情報システム部門向けのコミュニティです。IT業界で蓄積された実践的な知見が詰まっており、情シスエンジニアのスキルアップを支援しています。
コミュニティへの参加は無料で、マネーフォワードAdminaのユーザーの有無を問わず、誰でも参加可能です。主な活動内容は、専門家によるブログ記事の公開や、オンラインとオフラインでの勉強会の開催となっています。また、最新の技術動向やノウハウ・先進事例などが学べます。さらに、年次カンファレンスも開催しており、有識者の講演を拝聴できるほか、参加者同士の交流の場にもなっています。
こんな人におすすめ!
参考:https://admina.moneyforward.com/jp/community
うちの情シスに参加する方法は下記の通りです。
このような手順で、うちの情シスに参加しましょう。
続いて、実際にうちの情シスに参加したことがある、もしくは参加しているメンバーの方は、どのように感じているのでしょうか?利用者の声をいくつかご紹介します。
だい@中小企業のIT促進を手伝います on X: "マネーフォワードAdminaのコミュニティ「うちの情シス」で、SaaSセキュリティに関するデータベースが無料公開されてた。ISMSやSOCなど、取得している認証資格がまとまってて、情シスとしては助かるわ。
出典:X
うちの情シスでは、業務に役立つコンテンツを閲覧できるのが特徴。SaaSセキュリティに関するDBを無料で見られたり、「ISMS」「SOC」などの規約のURLがまとめて閲覧できたりするので、「業務の効率化ができる」、との口コミが多いようです。
オンラインコミュニティに加えて、リアルな交流の場にも参加することをおすすめします。地方で開催される勉強会やセミナー・カンファレンスなどに足を運べば、生の声に触れられるでしょう。
交流会への参加は、オンラインでは得られない生の声に触れられるメリットがあります。懇親会での雑談からヒントを得たり、学生時代の先輩に出会えたりするチャンスもあるかもしれません。コミュニティ活動を補完する手段として、リアルな交流の機会を積極的に活用しましょう。
情シスのコミュニティに参加することで、以下のようなメリットが期待できます。
同じ立場の情シスエンジニアが集うコミュニティでは、実務で役立つ知識やノウハウを共有できます。現場で直面する様々な課題についても、経験者からアドバイスを求めることができるでしょう。一人で抱え込まずに、仲間と協力して問題解決へのヒントを得られます。
オンラインやオフラインのコミュニティを通じて、価値観を共有できる情シス仲間ができます。これまで孤独に陥りがちだった情シスエンジニアにとって、横のつながりを持てることは大きな喜びとなります。仲間との絆を強めていくことで、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
最新の技術動向や開発手法を学べるだけでなく、他のエンジニアからの刺激を受けることでスキルアップできます。また、キャリアビジョンを語り合ったり、ロールモデルを見つけたりと、自己成長の良い機会となります。情シスのスペシャリストを目指す上で、コミュニティ活動は大きな役割を果たします。
情シスのコミュニティに参加する際は、メリットだけでなく、いくつかの注意点も意識する必要があります。安全で建設的な活動を行えるよう、次の点に気をつけましょう。
情シスのコミュニティでは、企業の機密情報や個人情報が出る可能性があります。
例えば、システム構成や障害対応の詳細・顧客データなどが該当します。これらの重要な情報が外部に漏れると、企業に多大な損害が及ぶ恐れがあります。そのため、コミュニティ活動においては、プライバシーとセキュリティの確保に細心の注意を払わなければなりません。投稿する内容は慎重に吟味し、不用意な情報漏洩がないよう厳重に管理する必要があります。
コミュニティには、それぞれ独自の文化やルールが存在します。
例えば、Slackコミュニティでは効率的なコミュニケーションのため、投稿内容に一定のルールが設けられていたりします。また、オフラインのコミュニティではリアルな人間関係が生まれるため、相手への敬意を払う態度が求められます。参加する前に、そうした文化やルールを理解し、マナーを守ることが大切です。ルールを無視すれば、他のメンバーから非難を受ける可能性もあります。
情シスのコミュニティでは、一過性のやり取りに終始するのではなく、長期的な関係構築を目指すことが重要です。継続的にコミュニティに参加し、メンバーとの信頼関係を深めていくことで、より有意義な交流や協力が生まれます。一方的な発言ばかりでなく、他者の意見にも耳を傾け、お互いを尊重する姿勢を持つことが求められます。こうした長期的な視点を持って活動することで、コミュニティからより大きな価値を得られるはずです。
情シスの現場では、さまざまな課題に直面するものです。一人で抱え込まず、コミュニティに参加して、仲間と知恵を出し合うことが問題解決への近道になるかもしれません。コミュニティを最大限活用し、共に成長していきましょう。
情シスの職員は日頃の業務や問い合わせで忙殺されています。しかし、情シスの抱える悩みはこの記事で紹介したような方法で解消できるので、コストなどと見合わせて、企業ごとに合った方法で対応を図りましょう。
情シスの職員は他部署の職員から、IT関連なら何でも知っていると思われがちです。私用のスマートフォンや家電の相談まで受けさせられている職員もたくさんいます。情シスの悩みを軽減するには、情シスの担当範囲を明確にする・企業全体のITスキルやリテラシーを向上させて自力解決の力を養うなどの対策も重要です。