デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の浸透に伴い、情報システム(情シス)担当者に求められる役割は大きく変わってきました。デジタル技術の活用を通じた業務効率化や企業変革の実現のみならず、経営層との連携によるデジタル戦略の立案なども重要な責務となっています。
この記事では、DX時代において情シスが担うべき役割と、必要となるスキル、DXとの関係性について解説します。
DXとは、デジタル技術を武器に企業が抜本的な変革に取り組むことを指します。従来の業務プロセスや商品・サービスを見直し、データとデジタル技術を活用して競争力を高めていく重要な概念です。
まずは、DXの概要や企業における重要性について詳しく解説します。
DXは単なるデジタル化やIT化ではありません。デジタル技術の活用を通じて、顧客体験の向上・新たな収益源の創出・業務効率の飛躍的な改善などを実現することが目的です。
単に既存のやり方にデジタルツールを取り入れるのではなく、根本から製品やサービス・ビジネスモデル・組織文化までもが一新されるのがDXの本質です。
つまり、企業の競争力そのものを革新し、今までにない新しい価値を創造することがDXの目指すところなのです。デジタル技術は単なる手段に過ぎず、本当に重要なのは、それらを活用して既存の発想から脱却し、ビジネスの在り方自体を抜本的に変革していくという点にあります。
DXはIT技術の進化に合わせて、企業経営に欠かせない重要な概念となっています。
昨今の顧客ニーズの多様化や市場環境の目まぐるしい変化に対応していくには、従来の延長線上ではなく、抜本的な変革が必要不可欠です。企業がスピーディーな意思決定を行い、機動的にビジネスモデルを変革していくためにも、デジタル化の推進が不可欠といえるでしょう。
時代に後れを取れば、企業は淘汰されかねません。 AI・IoT・ビッグデータ・クラウドなどの新たなデジタル技術を武器に「製品やサービスの高付加価値化」「業務プロセスの効率化」「新規事業の創出」など、あらゆる側面で変革を遂げることが求められています。
企業におけるDXの重要性を解説しましたが、なぜ社内でDXが進まないのでしょうか。考えられる理由は、以下の3点です。それぞれの項目について解説します。
DXを推進する上で大きな障害となるのが、企業の組織文化とデジタル技術への知識不足が挙げられます。長年築いてきた従来の業務スタイルや考え方にこだわり、新しい取り組みを拒む風土が根強く残っている企業が多いのが実情です。
特に経営層やベテラン社員の中には、デジタル化の必要性を十分に理解していない人が少なくありません。ITリテラシーの低さから、最新のデジタルツールの導入や運用に対して難色を示したり、抵抗感を持ったりする傾向にあります。そのため、新旧の業務プロセスが混在し、現場が混乱するケースも起きがちです。
こうした状況では、DXを本格的に推進することは極めて難しくなります。デジタル化への理解を深め、組織全体でITリテラシーを底上げすることが不可欠。経営層を含めた社員一人ひとりがDXの重要性を認識し、前向きな姿勢を持つことが何より重要なのです。
DXを実現するためには、高度なデジタル人材の確保が欠かせません。しかし、そうした優秀な人材が不足しているのが現状です。
DXを推進できる人材とは、デジタル技術に精通しているだけでなく、ビジネスの本質を捉えて新しい価値創造につなげられる力が求められます。単にIT知識があるだけでは不十分で、経営視点から事業戦略を立案し、既存のビジネスモデルを根本から変革できる発想力と実行力が必要不可欠です。
そうした総合的な力を備えた人材は、市場でも引く手あまただけに、企業間での獲得競争が熾烈を極めています。優秀な人材を抑えられずにDX推進が滞る企業も多く、このような人材不足が大きな障壁となっているのが実情です。
DXを本格的に推進するには、新しいシステムやデジタルツールの導入・社内インフラの整備・人材育成など、多方面で莫大なコストがかかります。しかし、予算の確保が難しい企業も少なくありません。特に中小企業では、限られた経営資源の中で、費用対効果が不透明なDXへの大規模投資は容易でないでしょう。
さらに、デジタル人材の育成や外部からの優秀な人材確保も予算面での制約があり、簡単ではありません。
このように予算とリソースの問題は、DXを阻害する大きな要因となっています。一企業の力だけでは解決が難しく、政府の支援策やDXの重要性に対する社会全体の理解促進など、さまざまな施策が求められる状況にあります。
DXを確実に進めていくためには、企業として幾つかの準備が不可欠です。ITリテラシーの向上や部門間の連携体制の構築・業務プロセスの見直しなど、着実に環境を整備していく必要があります。それぞれ見ていきましょう。
DXを推し進めるには、社員一人ひとりのITリテラシー向上が不可欠です。デジタルネイティブの若手でさえ、業務にITを活用できるレベルには至っていません。中堅・ベテラン社員ではITへの理解が乏しく、新しいデジタルツールの導入に抵抗を示すケースも多くあります。こうした意識の壁を乗り越えるには、ITリテラシー教育が欠かせません。
企業は世代を問わず全社員を対象に、基礎からデータ分析、セキュリティ対策に至るまで、幅広いITリテラシー研修を実施する必要があります。座学だけでなく、実践を通じて習熟度を高めていくことが重要です。ITリテラシーが向上すれば、デジタル機器・ツールを自在に扱え、業務の更なる効率化や高度化が図れます。経営陣自らが先頭に立ち、ITに慣れ親しむ組織づくりに取り組むべきでしょう。
DXを成功に導くためには、社内の縦割り組織を打破し、社内全社での横断的な連携体制を構築することが極めて重要です。特定の部門だけでDXを進めても限界があり、本当の意味での変革は望めません。
IT部門が主導して最新のデジタル技術を導入しても、他部門の協力が得られなければ、活用が進まずに形骸化してしまいます。営業部門・製造部門・経理部門など、全ての部門が一丸となってDXに取り組む必要があるのです。
そのためには、DXの重要性や必要性を社内で共有し、部門間での緊密な情報共有と意思疎通を図ることが不可欠です。ITとビジネスの両面から、DXに対する深い理解を促す機会を設けることも大切でしょう。
さらに、経営層がリーダーシップを発揮し、社内にDXを推進する強いメッセージを発信することで、全社的な機運を高めていくことができます。部門を越えた全社横断的なプロジェクトチームを編成し、一体となってDXに取り組む体制を整えることが求められます。
DXを推進する上で重要なことは、既存の業務プロセスを徹底的に見直し、最適化を図ることも大切です。これまでのやり方を前提にデジタル技術を導入しても、本来の力を発揮できない可能性が高いのです。
まずは業務の棚卸しを行い、プロセス全体を可視化することから始めます。そして、無駄な工程や手順・重複作業の有無を確認し、徹底した改善を行う必要があります。
その上で、AIやRPAなどの最新デジタル技術の導入を検討します。これらの技術によって、自動化できる業務は積極的に置き換えていきます。また、デジタルワークフローの構築や、クラウドツールの活用なども有効な手段です。
業務の最適化とデジタル技術の活用を組み合わせることで、これまでにない劇的な効率化と高度化を実現できるでしょう。
DX時代に求められる情シスの役割と関係性は、以下のようになります。
【情シスの主な役割】
【情シスとDXとの関係性】
情シスの位置付け | 内容 |
---|---|
DX実現の中核 | デジタル変革を技術面で主導 |
専門家としての役割 | デジタル技術に対する高い理解が不可欠 |
経営戦略への関与 | 経営層と連携しデジタル戦略を企画 |
DX推進の鍵 | 柔軟な姿勢と深い理解がカギ |
情シス担当者は、デジタル技術の専門家として企業のDXを実現する中核的存在です。
技術的な側面での貢献はもちろん、経営層と緊密に連携しながらデジタル戦略の立案にも深く関与することが期待されています。
DXの成功には、情シスの柔軟な姿勢とデジタル技術への深い理解が不可欠な鍵となるのです。
情シスがDXを推進するためには、様々な先端のデジタルツールやテクノロジーを活用することが不可欠です。
RPAやAI・チャットボット・クラウドなどの技術を適切に取り入れることで、業務効率の向上や働き方改革・コスト削減など、多面的な効果が期待できます。以下で、詳しく解説します。
RPAやAIなどのデジタル技術を業務に活用すれば、定型的な作業工程を自動化し、業務効率を飛躍的に向上させることができます。
AIによる高度な判断や処理が可能になれば、人的ミスの削減や作業時間の大幅な短縮が期待できます。人間にしかできない創造的な業務に注力できるよう、徹底した自動化を推し進めることが重要です。
チャットボットはAIが人間とリアルタイムでやり取りしながら、問い合わせに対応するシステムです。
これを顧客対応や社内業務に導入すれば、迅速で的確な対応が可能になり、生産性が大きく向上します。
24時間365日の無人運用も可能なため、働き方改革の観点からも優れたツールと言えます。自然会話処理技術の進化に伴い、より高度な対応力を備えたチャットボットの活用が期待されています。
DXを推進する上で重要なのが、オンプレミスのシステムからクラウドツールへの移行です。
クラウド化によって、これまで自社で賄っていたシステムの保守運用業務がなくなり、大幅なコスト削減が見込めます。また、クラウドベンダーに一元的にセキュリティ対策を委ねられるため、高いセキュリティ水準を確保できます。
システムの柔軟な拡張性や可用性の向上も大きなメリットです。
DXを着実に推進していくためには、情シス担当者が直面する様々な課題を乗り越える必要があります。技術リテラシーの壁・セキュリティ対策の強化・長期的な視点に立った施策展開など、複合的な対応が求められます。
企業内にはデジタル技術に不慣れな社員が多数います。そうした人々とのコミュニケーションギャップを解消し、理解を深めてもらうことが情シス担当者の重要な役割です。
分かりやすい研修の実施や、現場に入って寄り添う支援を行うことで、デジタルリテラシーの向上を図る必要があります。理解の壁を取り除かない限り、DXの本格的な推進は難しくなります。
DXの過程でシステムを統合・連携させていくと、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが高まります。そのため、情シスには最新のセキュリティ対策と厳格なガバナンス体制の構築が欠かせません。
企業のセキュリティとプライバシー保護には、人材の確保や高度な認証システムの導入・モニタリング態勢の強化などに取り組む必要があります。企業の事業継続とプライバシー保護の観点から、確実なセキュリティ施策は不可欠と言えるでしょう。
DXは一過性の取り組みであってはなりません。持続可能な形で計画的に推進していかないと、いずれ行き詰まり、企業の運営に支障をきたしかねません。短期的な効果や成果しか意識していると、先が見えなくなり、DXそのものが形骸化してしまう恐れがあります。
そうならないためには、情シスは常に長期的な視野に立つ必要があります。5年先、10年先を見据えたDXロードマップを描き、段階を経て着実にシステムの刷新を図ることが重要です。技術の進化に機敏に対応しながら、柔軟な運用体制を整備していかなければなりません。
一時的な効率化にとらわれるのではなく、持続的な競争力の確保を企図した堅実なDX化を推進することが何より大切なのです。
DXの着実な推進は容易なことではありません。情シス担当者には、デジタル技術の専門家として、さまざまな課題に対処していく力が求められます。デジタルリテラシーの向上支援、セキュリティ対策の強化、長期的な視野に立ったDXロードマップの策定など、多岐にわたる役割を担う必要があります。
しかし、こうした課題を乗り越えられれば、企業のDXは確実に前進します。DXを成功に導くためのカギを情シス担当者が握っているのです。DXに熱心な企業に転職し、専門性を発揮できる環境を得ることも一つの選択肢でしょう。WARCエージェントなら、DX推進を重視する優良企業の求人を効率的に探すことができます。経験豊富なキャリアアドバイザーのサポートを受けながら、DXに高い志を持つ情シス人材として前進していきましょう。
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