企業の情報システム(以下、情シス)部門では、技術の急速な進化やIT人材不足といった課題に直面しています。そこで、プロジェクトベースで外部の専門人材を活用する派遣が注目されています。派遣にはコスト面や人材確保の柔軟性などのメリットがある一方、社内文化の共有や長期的な人材育成がデメリットとして挙げられます。また、派遣と社員の直接雇用では、コスト構造や会社へのエンゲージメントなどに違いがあります。
この記事では、情シスにおける派遣のメリット・デメリットと、雇用との違いについて説明します。
IT技術の進化が加速する中で、企業の情シス部門は柔軟な人材確保が欠かせなくなっています。そのため、プロジェクトベースで専門人材を外部から調達する派遣ニーズが高まっている状況です。
まずは、情シスの派遣が求められている背景について詳しく解説します。
近年では、クラウドサービス・AIシステム・モバイルアプリなど、情シス分野で活用される新しい技術が次々と登場しています。
企業はそれらの技術トレンドに合わせて情シスを刷新していく必要に迫られており、その過程で高度なスキルを持つ人材を機動的に投入することが求められます。
一方で、社内の人材育成だけでは新技術への対応が遅れがちになるという課題があります。そのため、新技術の最新動向に精通した専門人材を外部から確保する必要に迫られており、派遣活用のニーズが高まっているのです。社内人材の教育研修を進めつつも、スピーディな対応が可能な派遣人材の投入が不可欠とされています。
特に、先端技術分野では知識の陳腐化が早く、常に最新の専門知識を取り入れる必要があり、派遣人材の活用が欠かせません。
技術の変化サイクルが年々加速する中で、プロジェクトベースで柔軟に人材を投入できる派遣が重宝されているのが実情です。
企業を取り巻く経営環境が一層厳しさを増す中で、情シスにも大幅なコスト削減と業務の効率化が求められるようになりました。
そのため、人件費を固定費ではなく変動費で賄える派遣人材を活用することで、予算の柔軟な運用を可能にしようという狙いがあります。また、長期にわたるプロジェクトだけでなく、短期のスポット的な人材需要にも機動的に対応できるメリットもあります。情シスの人件費を可能な限り変動費化することで、必要な時だけ必要な人材を投入し、無駄なコストを削減することができます。経営環境の変化に応じて適宜リソース配分を見直すことも容易になるでしょう。
限られた予算で最大限の効果を上げるには、プロジェクトの規模や段階に合わせて機動的に人員を投入できる体制が不可欠です。派遣であれば、一時的なスポットニーズにも素早く対応が可能です。開発プロジェクトの立ち上げ時や保守運用フェーズなど、作業量の多い局面だけリソースを投入できるメリットが大きいのです。
IT人材が全体として不足している状況が長年の課題となっており、AIやIoTなどの先端分野では特に人材の確保が難しくなっています。
企業がこうした新領域の技術を取り入れようとすれば、社内の限られた人材だけでは対応が困難になることが予想されます。外部から即戦力となる優秀な人材を派遣で確保することで、この人材不足の課題を解消しようという動きが出てきました。優秀な人材を長期的に抱え込むのは費用面でも難しいため、プロジェクトベースで必要な時期に限って派遣人材を活用する方が現実的です。
特に小規模企業では自前の情シス部門を持つのが難しいケースも多く、そうした企業では外部リソースの活用に頼らざるを得ません。
情シス部門で派遣社員を活用することには、以下の3つの主なメリットがあります。
このように、機動的な人員投入や高度専門人材の確保など、派遣ならではの強みがあります。プロジェクトの目的や状況に合わせてメリットを最大限活かすことができます。
情シスの現場では、高度な専門スキルを持った人材が常に求められています。しかし、そうした希少な人材を社内で確保し続けるのは容易ではありません。
一方、派遣会社であれば、AI開発やクラウドマイグレーションなど、特定の専門分野に長けた優秀な人材を抱えており、プロジェクトベースで素早く投入できるのが強みです。スキルが高く経験も豊富な派遣エンジニアを、すぐに活用できるのは大きなメリットです。
新規システムの構築や切り替えの際などに、短期間で大量の専門人材を投入する必要が出てきますが、派遣を利用すれば機動的な対応が可能になります。
情シスプロジェクトには一時的な人材需要のピークが発生することがよくあります。そうした需要変動に対して、社員採用ではタイムリーな対応が難しい面があります。
一方、派遣であれば予算の執行を柔軟に調整できるため、必要な時期に必要な人員を確保しやすくなります。人件費を変動費として運用できるメリットは大きく、派遣によりコストをコントロールしやすくなります。
また、期間や頭数の調整も機動的に行えるため、無駄が少なく合理的な予算執行が実現できます。さらに、短期的な臨時ニーズにも機動的に対応が可能です。システムのメンテナンス期間や障害対応時などに、一時的に増員が必要になった場合でも、即座に派遣で人材を手配できるため、業務に支障をきたすことなく対処できます。
情シスの人件費を極力変動費化することで、プロジェクトの段階や作業量の変動に合わせた機動的な人員配置と予算執行が可能になるのです。
技術の進歩に伴い、システム開発やインフラ運用の領域が細分化されてきました。
AWSやGCPといったクラウドサービスの知見、Dockerなどのコンテナ技術の活用、機械学習によるAI開発など、特定の領域に特化したスキルが不可欠になってきています。企業内で全ての専門人材を抱えるのは現実的ではなく、そうした分野の第一人者を派遣で確保することが有効な手段となります。プロジェクトの目的に合わせて、その領域のスペシャリストを最適な人員で手配できるのが、派遣の大きな強みなのです。
また、一つのプロジェクトでも、システム設計やアプリ開発・インフラ構築・データ分析など、様々な段階や工程があります。派遣を活用すれば、それぞれの工程に合わせて得意分野の人材を投入できます。個別の技術領域に長けた人材を、柔軟に組み合わせて最適なチームを編成することが可能になります。
固定的な社内体制に捉われずに、プロジェクトごとに理想の専門家集団を形成できるメリットは大きいと言えるでしょう。
情シス部門で派遣社員を活用する際には、いくつかのデメリットも存在します。主なデメリットは以下の3つが挙げられます。
こうした懸念点を認識した上で、デメリットを最小限に抑える対策を検討する必要があります。
派遣社員は、外部から臨時的に入ってくる人材です。そのため、企業独自の業務プロセスや社内コミュニケーションの仕方、企業文化などを短期間で理解し体得することは難しい面があります。特に大手企業では社内の暗黙の了解事項なども多く、社員と同等の対応を求めるのは現実的ではありません。派遣社員が社内の人間関係に巻き込まれすぎて、業務に支障が出る懸念もあります。社内の人材との切り離しが重要になりますが、一定の距離感を保つことで、かえって企業の機密情報の漏洩リスクにもつながりかねません。さらに、派遣社員が入れ替わることで業務の引き継ぎに手間がかかり、生産性が落ちる恐れもあります。
派遣社員は、プロジェクト完了とともに次のプロジェクトに移動していきます。そのため、長期にわたる人材育成は基本的に期待できません。技術の継承や知識の蓄積といった観点からは、社員と比べてデメリットが大きくなります。特に最先端領域の技術を扱う場合、常に最新の知見を習得し続ける必要があり、それを派遣社員に求めるのは難しいでしょう。短期的な役割発揮は可能でも、中長期的な視点での人材育成は社員に委ねざるを得ません。結果として、企業独自の技術ノウハウを蓄積しづらく、技術力の永続的な向上が難しくなる可能性があります。
外部の人材を常に入れ替える分、都度コミュニケーションのコストが発生します。新しい人材を受け入れる度に、ルール説明やスキルの確認が必要になり、それがコストアップにつながります。また、プロジェクトの進捗に合わせた密な意思疎通が欠かせませんが、社員以上に情報の共有が難しい面があります。社内の状況を把握しづらいため、制約や前提条件の変更などの対応が後手に回りがちです。このようにスムーズなコミュニケーション体制の構築が難しいことが、派遣のデメリットと言えるでしょう。さらに、言語の違いなども障壁となり、コミュニケーションギャップが生じるリスクもあります。
情シス分野で派遣を効果的に活用するためのポイントは、以下の2点が重要になります。
派遣の成否を分けるのが、実際に投入する人材の適正さです。プロジェクトで必要となるスキルと経験を的確に特定し、それに合致する適切な人材を選定することが肝心です。単に技術キーワードが一致しているだけでは不十分で、プロジェクトの目的や工程、求められるアウトプットなどの具体的な要件を踏まえた上で、最適な人材を見極める必要があります。要員手配時のヒアリングが重要なポイントとなり、発注側と受注側で入念な擦り合わせが欠かせません。スキルがマッチングしていても、人間性や習熟度が合わずにミスマッチが生じては本末転倒です。適切な人材を見極められるかどうかが、派遣のパフォーマンスを大きく左右するのです。
もう一つのポイントが、契約内容と期待値の綿密な調整です。契約期間・作業内容・成果物の範囲・単価設定など、取り決め事項を明確に定め、発注側と受注側で共有しておく必要があります。特に作業工程や役割分担をはっきりさせ、責任範囲を明確化しておくことが大切です。作業工程や役割分担などにブレがあると、お互いの期待値にズレが生じてしまいます。そうしたズレが大きくなれば、作業の遅延やトラブルにつながる恐れがあります。事前の調整を綿密に行い、相互の期待値をすり合わせておくことで、スムーズな業務遂行が可能になるでしょう。
情シスリソースの確保方法として、派遣と社員の直接雇用には以下のような違いがあります。
項目 | 派遣 | 直接雇用 |
---|---|---|
社内カルチャーへの適合 | 低い。短期間での適合は難しい | 高い。長期的な関わりで自然と適合 |
コスト構造と金銭的負担 | 変動費。必要な期間だけコストをかけられる | 固定費。採用から退職までの長期的な負担 |
社内ノウハウの蓄積 | 低い。短期の関与のため知識継承が難しい | 高い。長期雇用で技術ノウハウを蓄積できる |
長期的な関わり | 低い。プロジェクト完了で入れ替わり | 高い。雇用契約に基づく長期的関係 |
それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。
社員の方が、企業の文化や業務プロセス・コミュニケーションルールなどに適合しやすい側面があります。入社時からその環境に慣れ、組織の一員として長期的に関わることで、自然と社内の作法を体得できます。
一方の派遣社員は、外部から臨時的に入ってくる関係上、短期間での馴染みは難しく、社内と一定の距離を保つ必要があります。
特に大手企業では社内サブカルチャーも強く、そうした企業文化の理解には時間を要するでしょう。適合性の違いにより、業務の効率や品質に差が出る可能性があります。
社員の方が円滑なコミュニケーションを取りやすく、無理のない業務遂行が期待できます。一方、派遣社員は文化の壁にぶつかり、生産性が落ちるリスクが高まります。
社員は固定費の人件費となるのに対し、派遣は変動費で賄えるというコスト構造の違いがあります。
社員採用には募集・研修・福利厚生などに多額のコストがかかり、長期的な負担が大きくなります。
一方の派遣は、必要な時期だけ最小限の人件費で済むため、短期的なコストは抑えられます。しかし、長期にわたると派遣の方が高くつく可能性もあり、状況に応じてコストメリットを検討する必要があります。
派遣は柔軟な予算執行が可能な半面、長期化するとコスト高になり、ある程度の期間を過ぎると社員採用の方が合理的になります。
プロジェクトの長期化リスクを勘案し、中長期的な人件費の見通しを立てる必要があるでしょう。
社員の方が長期的に会社に残り続けられるため、技術ノウハウやプロジェクト知見を蓄積しやすい環境にあります。
一方の派遣社員は短期の関与に留まることが多いため、そうした知的資産を社内に残しにくい面があります。技術の継承や人材育成の観点から見れば、社員の方が有利と言えるでしょう。
ただし、短期的な高度人材の投入が必要な場合は、派遣の活用が合理的な選択になります。長期的な技術力の向上を企業の強みにしたい場合は、社員の育成と知識の蓄積が不可欠です。
一方で、プロジェクト遂行には臨機応変な対応が求められ、その都度最新の専門スキルを持つ派遣社員に依存するケースも増えています。
社員は会社と雇用契約を結ぶため、長期的な関係を構築できます。
一方の派遣は、あくまでプロジェクトベースでの関与に留まり、入れ替わりが起きます。長期的な視点に立てば社員の方が望ましいですが、個別のプロジェクトに合わせて機動的に人材を入れ替えたい場合は、派遣の制度を活用するメリットがあります。
プロジェクトの規模と状況に合わせて、社員と派遣の最適なバランスを検討する必要があるでしょう。長期にわたる基幹システムの運用や将来の技術の継承など、中長期的な人的資源が求められる場合は、社員の確保が不可欠です。
一方で新規システムの構築など、短期集中で専門人材を要するケースでは、派遣活用が有効な選択肢となります。
情シス部門において、社員と派遣のメリット・デメリットを理解した上で、プロジェクトの規模や目的に合わせて最適な手段を選ぶことが重要です。状況に応じて両者を柔軟に組み合わせることで、効果的な人員計画と運営が実現できるでしょう。
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