企業の情報システム部門(以下、情シス)は、ITインフラの運用や保守・セキュリティ対策など、さまざまな業務を担う部署です。しかし、その業務範囲の広さから「コスト面」で問題視される傾向にあります。
今回は、情シス運用コストの構成要素と増大する要因を解説し、コスト削減に向けた具体的な取り組みについてご紹介します。さらに、コスト削減を進める上での注意点・長期的な戦略についても考察しました。情シスのコストを最適化するために、ぜひ参考にしてください。
情シスにかかるコストの大部分は、企業のIT関連の支出です。どのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。
情シス運用コストの主な構成要素として挙げられるのは、以下の通りです。
いずれも、企業の運用を円滑に進めるために必要な要素です。1つでも欠けてしまうと、途端に企業運営に支障が出てしまいます。
コストが発生する主な業務エリアは、以下の通りです。
【コストが発生する主な業務エリア】
企業によって発生する業務の違いはありますが、いずれも直接売り上げに繋がるものではありません。しかし、他部署の業務を円滑に進めるために、無くてはならないものばかりです。
結果的に企業の売上や実績に繋がるため、コストの削減を検討するには慎重に判断する必要が出てきます。
先の章では、情シスにかかるコスト要因が複数あることが分かりました。ここではさらに、情シスのコストが増大する要因について3つ取り上げます。
企業が長年利用しているレガシーなシステムがある場合、コストの増大に繋がります。
旧式のシステムでは、カスタマイズ・改修・更新などを何度も繰り返していて内部構造が複雑化しています。また、「セキュリティ上の脆弱性」「サポート期間の終了」などの問題もあり、対応が複雑になりがちです。結果、維持費が必要以上にかかってしまいます。
情報管理は顧客の信頼にも関わるため、セキュリティ対策は万全に整えることが必須です。そのため、セキュリティ対策とデータの保護には莫大なコストがかかります。
近年では、「サイバー攻撃の高度化」「データ保護の重要性が高まっている傾向」があり、トラブルが発生する前に、都度対応が必要になります。それには、専門知識を持った人材の確保や、最新のセキュリティソリューションの導入は必要不可欠です。
こういった事情から、コストが増大する要因となっています。
外部リソースへの依存は、コストの増大に繋がります。
外部リソースを使用する場合、利用料が必要です。料金が値上がりや、システム利用量に合わせて追加料金が発生するケースも考えられます。また、外部リソースなので、通信料が発生することもあるでしょう。外部へ情報を送信するのであれば、それに対するセキュリティ対策も必要です。
自社内で完結しないシステムを取り入れ、円滑に業務が進むメリットもありますが、外部リソースに依存しすぎれば、その分コストもかかります。
情シスのコストを適正化するための削減ポイントについてご紹介します。削減のポイントを抑え、自社にとってプラスとなるコスト削減方法を見つけましょう。
クラウドサービスを利用すれば、自社でサーバーを含む設備を準備・管理する必要がなくなります。そのため、導入のために必要な初期費用や管理コストが不要になります。自社ですべてを揃える必要がなくなるため、大幅なコスト削減に繋がるでしょう。
ベンダーとの契約内容を定期的に見直すことで、不要なコストを削減することに繋がります。
例えば、実際の利用状況よりもライセンス本数が過剰であれば、適正化することでライセンス料の削減ができます。
ベンダーは、現在の運用に合わせて必要なものを契約するのがポイント。今はもう不要なものや、必要以上に付いているオプションなどは整理してしまいましょう。
作業プロセスを自動化することで、人的コストが削減できます。例えば、データ入力作業をRPA(Robotic Process Automation)ツールで自動化すれば、人件費の削減が可能です。
臨機応変な対応が必要な業務は人にしかできませんが、規則的なルールに基づくような業務であれば、機械の方が効率的かつ正確に対応してくれます。
今ある業務の中で、自動化できるプロセスを洗い出してみましょう。
インシデント管理を徹底することで、不要なコストを削減する事に繋がります。
インシデントをしっかり管理しておけば、システムの不具合やトラブルによる損失を最小限に抑え、コストがかかる場合も必要最小限で抑えることが可能です。
インシデント管理には、標準化やモニタリングツールの導入も検討してみましょう。標準化することで、業務の手順や目標が明確になり、ミスの予防に繋がります。また、モニタリングツールを活用すれば、取り返しがつかない事態に陥る前に被害を最小限に留めることができますよ。インシデントは未然の防止策や、早期解決を図ることが重要です。
ITアセットの最適化は、ランニングコストの削減に繋がります。不要な機器や、重複したソフトウェアがあるかどうかチェックしてみましょう。
また、クラウド化により物理的なサーバーを減らせば、運用管理コストを抑えることができますよ。今あるITアセットの現状を正確に把握して、整理することがポイントです。
メンバーのスキルアップは、一つひとつの作業効率が上がるため、人的コストを抑えることに繋がります。
各メンバーのITスキルが高ければ、システム開発の自動化や最新技術を活用して、作業工数を短縮することが可能に。また、自社で能力が高いメンバーを揃えることができれば、外部リソースへの依存も減らすことができます。
研修やOJTの機会を設けて、メンバースキルUPを図りましょう。
情シスのコストを削減する際の注意点について解説します。企業にとって不要なコスト削減は必要不可欠ですが、不用意に対策を講じれば運営に支障が出る可能性がありますよ。次の点に注意しながら、検討しましょう。
コスト削減を進めるには、ITサービスの品質が低下しないよう注意が必要です。
また、コスト削減による業務効率の低下についても考慮しましょう。
業務効率が極端に低下してしまうと、顧客に提供するサービスや品質が落ちる原因に繋がります。こちらも顧客が離れてしまう原因です。
コスト管理は大切ですが、企業のサービス低下に繋がらないよう十分に注意しましょう。
情シスのコストを削減する場合は、長期的な影響と持続可能な取り組みになるよう配慮が必要です。
例えば、サーバー台数を減らしすぎると、システムが重くなり日々の業務に支障が出る可能性があります。また、バックアップの頻度やデータ量を削減すると、データが失われた場合に、復旧作業に膨大なコストがかかるでしょう。
短期的なコストカットの一つに、ITエンジニアの人件費を大幅に削減する選択肢もありますが長期的な目線で考えるとおすすめしません。専門的な知識を持つ人材が減ると、「システム障害時の対応」や「最新システムの導入」に遅れが生じ、将来的な生産性低下に繋がります。
情シスのコスト削減は、短期的なコストカットだけでなく、業務の効率性や未来への影響を踏まえて検討しましょう。
コスト削減を検討する場合、セキュリティレベルは必ず維持しましょう。セキュリティ対策が不十分であれば、情報の漏洩などに繋がります。結果的に、顧客からの信用を一気に失うことになりかねません。
セキュリティにかかる不要なコストの見直しは必要ですが、現状よりもセキュリティレベルが落ちないよう注意が必要です。
情シスのコスト効率を最大化するには、次の2点が重要な戦略となります。
情シスへ割くコストは、直接的な売り上げアップが目的ではなく、企業の運営を円滑にするための「投資」と言えます。そのため、新しいシステムやソフトウェアなどを導入する際は、その費用対効果を綿密に分析する必要があります。
例えば、現在の運用から新システムを取り入れた場合、「どれだけ効率が上がるのか?」、をシミュレーションします。新システムによる生産性の向上や、売上増加を金額に換算することで、投資額を上回るかどうかを判断することが可能です。
投資対効果をしっかりと分析することで、無駄な投資を避けられます。
情シスのコスト効率を最大化するには、メンバーのスキルアップも重要です。ITは日々進化しています。そのため、従業員の継続的なスキルアップを図ることで、常に最新の技術を取り入れることが可能になります。
また、1人ひとりの能力が高まれば、対応できる業務が増えたり処理スピードも上がるため、企業の全体の運営もスムーズになるでしょう。
さらに、情シス以外の部署も対象とした「ITリテラシー研修」を行うことで、ソフトウェアの活用力が高まり、業務効率が向上します。情シスのコスト効率を最大化するためには、システムだけでなく、自社で働くメンバーに対する継続的なスキルアップと教育も検討しましょう。
情シスのコスト削減には、高い専門性を持った人材の確保が効果的です。優秀な人材を確保することで、コストがかかる要因となる「外部リソースへの依存」の解決や、コストパフォーマンスを上げた業務の効率化が図れます。
WARCエージェントでは、情シスの優秀な人材を多数紹介できます。また、コスト削減に向けた適切な施策の提案から実施のための人材を、スピーディーに紹介することも可能です。
情シスのコスト効率化を検討されている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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