「情報セキュリティとサイバーセキュリティって、何が違うの?」と疑問に感じる方もいるでしょう。とくに、セキュリティ分野でのキャリアアップや転職を検討している方にとっては、この違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。
この記事ではそれぞれの定義や具体的な対策、そしてキャリア面での活かし方を丁寧に解説します。基礎からしっかり押さえたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
情報セキュリティとサイバーセキュリティは、どちらも「情報を守る」ための重要な考え方ですが、その対象や手段には明確な違いがあります。まずは、それぞれの定義や役割について確認していきましょう。
情報セキュリティは「すべての情報資産を守るための取り組み」です。
その対象は、デジタルデータだけでなく、紙の書類、ホワイトボードに書かれた内容、会議で交わされた口頭のやり取りなど、あらゆる形態の情報が含まれます。
情報セキュリティの基本的な考え方は、「機密性」「完全性」「可用性」の3要素を維持することです。これは、
を指します。
たとえば、社員名簿の紙資料を鍵付きキャビネットに保管する、出社時に口頭で取り扱う顧客情報を最小限にする、といった対策がこれに該当します。
つまり、情報セキュリティは技術的な対策だけでなく、人や仕組みによる管理まで含めた、包括的な情報保護の考え方なのです。
サイバーセキュリティとは、インターネットやITシステムを介して発生するリスクからデジタル情報を守るための専門的な取り組みのことです。
対象となるのは、ネットワークやITシステムを通じてやり取りされるデータや、PC・サーバ・スマホなどのデバイス、クラウド環境などのデジタル資産です。
サイバー攻撃は、メール添付ファイルによるウイルス感染、不正アクセスによる情報漏えい、IoT機器の乗っ取りなど、巧妙かつ高度化しています。こうした外部からの脅威に備えるため、ファイアウォールの設置、ウイルス対策ソフトの導入、多要素認証(MFA)などの技術的対策が求められます。
一方で、ユーザーがフィッシング詐欺メールを開かないよう教育するなど、人を守る対策も欠かせません。情報社会が進化するほど、その重要性も高まっている分野だといえるでしょう。
一見似ているように思える情報セキュリティとサイバーセキュリティですが、その守備範囲や対処すべきリスクには明確な違いがあります。おもな違いは以下のとおりです。
情報セキュリティ | サイバーセキュリティ | |
---|---|---|
対象範囲 | 全ての情報資産(紙・口頭・デジタル) | デジタル資産のみ |
脅威の種類 | ヒューマンエラー(人的ミス)・紛失や盗難 | サイバー攻撃(マルウェア、不正アクセス) |
主な目的 | 情報の安全管理全般 | サイバー攻撃の防御と検知 |
保護手段 | 技術・人的・物理的対策 | おもにIT技術による対策 |
以下で、両者の違いをわかりやすく比較して解説します。
情報セキュリティは「すべての情報資産」を、サイバーセキュリティは「ITやネットワークに関する情報資産」に限定して保護します。
情報セキュリティはアナログ・デジタルを問わず、企業が保有するすべての情報が対象です。そのため、紙の契約書やUSBメモリに保存されたデータなども含まれます。
一方でサイバーセキュリティは、サーバ・クラウド・ネットワークを通じて流れる電子的な情報が主な守備範囲です。情報セキュリティのほうが対象範囲が広く、サイバーセキュリティはその中でもとくにIT領域に特化したものと理解するとよいでしょう。
情報セキュリティでは「偶発的な事故」も含めた幅広いリスクに対応し、サイバーセキュリティでは「外部からの悪意ある攻撃」が主な脅威となります。
たとえば、印刷した資料の置き忘れや、社外での会話からの情報漏洩などは、情報セキュリティで取り扱うリスクです。一方、ウイルス感染やランサムウェア攻撃、フィッシング詐欺といったものは、サイバーセキュリティの守備範囲となります。
情報セキュリティとサイバーセキュリティは、それぞれ異なる対象やリスクに応じた対策が求められます。ここでは、代表的な施策を例に、違いや共通点を理解しやすくまとめました。
情報セキュリティでは「技術・人・環境」の3側面からの対策が欠かせません。
まず技術的な対策としては、パスワードによるアクセス制限やデータの暗号化があります。加えて、人的対策として従業員へのセキュリティ教育、組織的な情報管理ルールの整備も重要です。さらに物理的対策として、サーバールームの施錠や監視カメラの設置など、情報のある場所そのものを守ることも求められます。
代表的な対策を以下にまとめます。
このように、情報セキュリティの対策は、システムに限らず人の行動や環境の整備も含めた幅広い視点が必要になります。
一方で、サイバーセキュリティでは、主にIT技術を活用した防御策が中心となります。結論から言うと「外部からの攻撃を防ぎ、侵入された場合にも被害を最小限に抑える仕組み」が重要です。
具体的には、ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入、システムの脆弱性を定期的に診断・修正するパッチ運用などが挙げられます。また、近年では多要素認証やEDR(エンドポイント検知と対応)などの高度な防御策も広がっているようです。
代表的な対策は以下のとおりです。
サイバーセキュリティは一度破られると深刻な被害につながるため、先回りした「予防」だけでなく、「早期発見・迅速な対応」の仕組みが重要です。
情報セキュリティとサイバーセキュリティは、互いに独立したものではなく、実は密接に関係し合いながら現代社会を支える重要な役割を担っています。ここでは、両者の関係性と、デジタル化が進む中で高まる重要性、さらにはキャリア形成への影響についてみていきましょう。
両者は「カバー領域が異なるために、それぞれの欠点を補い合える」関係にあります。
たとえば、システムが最新のファイアウォールで守られていても、社員がうっかり機密文書を机に置きっぱなしにしていたら、そこから情報漏えいが起きるかもしれません。逆に、紙の資料管理が徹底していても、サーバがサイバー攻撃を受ければ意味がありません。
このように、両者をセットで運用することで、技術面・人間面の双方に対策が行き届き、より堅牢なセキュリティ体制が構築できるのです。
私たちが日常的に使っているあらゆるシステムやサービスが、セキュリティリスクにさらされています。クラウド化、IoT(モノのインターネット)、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、企業や組織は利便性と引き換えに、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクと常に隣り合わせの状態です。
なかでも、サイバー攻撃は年々巧妙化・高度化しており、ランサムウェア被害やサプライチェーン攻撃のように、企業の信頼を一瞬で失わせるような脅威も増えています。同時に、情報セキュリティの側面でも、社内での人的ミスや、セキュリティ教育不足による情報漏えいが問題視されており、技術だけでは守りきれない現実があります。
だからこそ、今後は「組織全体でセキュリティを考える力」が問われる時代になっていくでしょう。
セキュリティの知識は「今後のキャリア形成において、非常に強力な武器」になります。近年、企業のセキュリティ投資は拡大しており、それに伴ってセキュリティ人材の需要も増加中です。IT業界や情報システム部門だけでなく、総務、人事、法務など他部署でもセキュリティの基本的な知識を持つ人材が求められるようになっています。
以下のような資格を取得することで、自分のスキルを見える化し、転職や昇進のチャンスを広げることが可能です。
IT未経験からでも挑戦できる資格も多いため、まずは基礎から体系的に学び始めるのがよいでしょう。セキュリティの知識を持つことで、変化の激しい時代でも「頼られる人材」として自信を持って活躍できるはずです。
情報セキュリティとサイバーセキュリティは、守る対象や対策方法が異なるからこそ、互いに補完し合う存在です。両者の違いを理解し、適切な対策を講じることで、リスクに強い組織運営と将来のキャリア形成につなげることができるでしょう。
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