「情報セキュリティって、結局なにを守ることなの?3要素と7要素の違いは?」とお悩みの方もいるでしょう。情報セキュリティはIT業界に限らず、あらゆる業種で欠かせない知識となっています。ところが、その内容は抽象的で、何から学べばいいのか戸惑う人も多いはずです。
この記事では、情報セキュリティの基本的な定義や3要素(CIA)と4つの追加要素の意味、具体例をやさしく解説します。実務や試験に直結する形で整理していますので、これから情報セキュリティを学ぶ方はぜひ参考にしてみてください。
情報セキュリティとは、企業や個人が持つ「情報資産」を守るための一連の考え方と実践です。IT技術の進展とともに、情報漏洩やサイバー攻撃などのリスクが高まっており、社会全体での意識向上が求められています。まずは情報セキュリティの基本からみていきましょう。
情報セキュリティとは「情報資産の機密性・完全性・可用性を維持し、外部や内部の脅威から守ること」です。
ここでいう「情報資産」とは、紙やデータで保存されている文書や情報だけでなく、それを扱うシステムや設備も含まれます。
たとえば、企業であれば顧客情報・売上データ・契約書・社員名簿・自社システムに関する情報・サーバーなどが該当します。
インターネットが普及する前は、情報は紙で管理され、物理的に盗まれるリスクしかありませんでした。しかし現在では、デジタル情報がネットワークを通じてやり取りされ、世界中のどこからでもアクセスできる環境にあります。その分、サイバー攻撃や内部不正、システム障害といった新たなリスクも生まれました。
とくに以下のような背景から、情報セキュリティの重要性は年々高まっています。
こうしたリスクに備えるため、企業も個人も情報セキュリティを「特別なもの」ではなく、「日常的に守るべきもの」として捉える必要があるのです。情報セキュリティの基本を正しく理解することは、これからの時代を安心して生き抜くための大前提といえるでしょう。
情報セキュリティでは、基本の3要素(CIA)に加え、現代のリスク環境に対応するためにさらに4つの要素が加わりました。これらを合わせた「7要素」は、企業や個人が安全に情報を取り扱うための指針となります。
資格試験や社内研修などでも頻出の内容なので、ぜひこの機会に整理しておきましょう。
CIAは「情報セキュリティの土台」となる考え方です。CIAは次の3つの英単語の頭文字から構成されています。
情報が許可された人だけに見られる状態を保つこと。パスワードで保護されたファイルや、暗号化された通信など。
情報が正しく維持され、改ざんや破損がないこと。不正アクセスによるデータ改ざんを防ぐ仕組みなど。
必要なときに、情報やシステムが正常に使える状態であること。サーバーダウンを防ぐバックアップ対策など。
この3つのバランスを保つことが、情報を安全に管理・利用するうえで最も基本的かつ重要なポイントです。
▼情報セキュリティの3要素について詳しくはこちら
情報セキュリティの3要素(CIA)とは?機密性・完全性・可用性の意味と具体例まとめ
近年、情報を取り巻く環境が複雑化するなかで、CIAだけではリスク対策として不十分とされるようになりました。そこで注目されるのが、次の4つの要素です。
これらの要素は、クラウド環境やリモートワークの普及、多様な情報共有の在り方に対応するために重要視されています。
現代のセキュリティ対策は「7要素の総合バランス」が求められます。従来のCIAだけでは、攻撃者の手口が巧妙化した現在のリスクに十分対応できないこともあるでしょう。たとえば、内部犯行やなりすまし、取引の否認といった新しい問題には、真正性や否認防止の観点が不可欠です。
7要素を意識することで、より堅牢なセキュリティ体制を構築できます。具体的には以下のような活用例が考えられるでしょう。
企業でも資格試験でも、この7要素を整理して理解することが重要です。情報セキュリティ対策を立てる際には、部分的な対処だけでなく、7つの視点から全体を見直すことが効果的でしょう。
情報セキュリティが重要視される背景には、技術の進化とともに高まるリスクがあります。以下では、情報セキュリティが必要とされる理由についてみていきましょう。
サイバー攻撃の手口は年々進化しており、標的型攻撃(特定の組織を狙うサイバー攻撃)やランサムウェア(データを暗号化して復元と引き換えに金銭を要求する)などが深刻な脅威となっています。
なかでも中小企業は「対策が不十分で狙われやすい」とされ、実際に多くの被害事例が報告されています。
こうした被害は、金銭的損失だけでなく、取引先・顧客からの信用を大きく失う原因にもなります。情報漏洩が一度起これば、その後の営業活動や企業イメージに長期間にわたる影響を及ぼすため、事前のセキュリティ対策はもはや必須なのです。
日本では、個人情報保護法やマイナンバー法、不正アクセス禁止法など、情報の取り扱いに関する法律が整備されています。これらの法律に違反した場合、企業は行政指導・罰金・損害賠償などの法的責任を問われるだけでなく、社会的信頼を失うことにつながるでしょう。
結果として、情報セキュリティは企業の「リスクマネジメント」であると同時に、「信頼維持」の要でもあります。法令遵守と社会的責任を果たす姿勢こそが、持続可能な企業経営に欠かせない視点といえるでしょう。
セキュリティ対策の重要性を実感するには、実際に起きたリスク事例を知ることが最も効果的です。ここでは、情報漏洩やデータ改ざん・システム障害といった現場のリアルなケースを紹介し、何が問題でどのような影響が出たのかを具体的に解説します。
情報漏洩は「一度のミス」で信頼と利益を一気に失う重大インシデントです。たとえば、ある大手通信会社では、外部からの不正アクセスにより数百万人分の顧客データが漏洩。氏名や住所、電話番号といった個人情報が流出したことで、企業は謝罪会見・補償対応・再発防止策に追われ、数十億円規模の損失を被りました。
情報漏洩に対しては、日頃からの意識と管理体制の見直しが不可欠です。
情報漏洩だけでなく「情報の破損や不正な書き換え」も深刻なリスクです。たとえば製造業の現場では、設計データが何者かによって書き換えられた結果、本来の仕様と異なる部品が大量生産されてしまい、多額の製品回収コストと納期遅延に見舞われました。このように、完全性(Integrity) が損なわれると、企業の信用や製品の安全性まで脅かされます。
また、病院の電子カルテがシステム障害で長時間ダウンし、診療が停止した事例もありました。これは可用性(Availability) が確保されなかった典型的な例であり、患者の命にも関わる事態に発展する恐れがあります。
このような事態を防ぐには、技術的な対策だけでなく、バックアップ体制や権限管理、ログ監視などの仕組みが求められます。
どれだけリスクを理解しても、実際に「どう守るか」がわからなければ意味がありません。情報セキュリティ対策は、大きく分けて「技術的対策」と「人的・物理的対策」の2つに分類できます。ここからは、実践的な対策例をみていきましょう。
技術的対策とは「機械やシステムの力で情報を守ること」です。
現代の情報システムは複雑化しており、人の目や記憶だけに頼ることはできません。自動的にセキュリティを強化する技術を導入することで、ヒューマンエラーや外部攻撃のリスクを大幅に減らすことができます。
代表的な技術的対策には、以下のようなものがあります。
マルウェアを検出・除去し、感染の拡大を防止
外部からの不正アクセスを遮断し、内部ネットワークを保護
通信内容やファイルの中身を第三者が読み取れないように変換(例:SSL/TLS)
必要な人だけに情報を開示する仕組み(例:ID・パスワード認証、二段階認証)
万一の障害時に備えてデータを別の場所に保存しておく
これらの対策は企業規模に関係なく導入すべき基本といえるでしょう。
セキュリティ事故の多くは「人」によって引き起こされています。システムを強化しても、パスワードを付箋に書いてモニターに貼ったり、不審なメールにうっかり添付ファイルを開いたりすれば、一瞬で突破されてしまうでしょう。人的・物理的な対策としては、次のような取り組みが有効です。
セキュリティ意識を高めるための定期的な研修や訓練
複雑なパスワードの設定、定期的な変更、多要素認証の導入
サーバールームなど重要エリアへのアクセス制限
物理的な不正侵入を防止
不要な印刷を防ぎ、情報の持ち出しリスクを最小限にする
また、職場での情報の取り扱いルール(情報セキュリティポリシー)を明文化し、誰でも理解・遵守できるように整備しておくことも不可欠です。
情報セキュリティは一部の専門家だけが考えるものではなく、すべての人が関わるべきテーマです。だからこそ、セキュリティ対策においては基本の理解が重要といえるでしょう。
情報セキュリティは一朝一夕で完成するものではありませんが、正しい知識と習慣が積み重なれば、確実に安全な環境が作られます。まずは一歩、自分の手元からセキュリティ意識を高めていきましょう。
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