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経理
2023/12/05 更新

経理の将来性を探る|必須スキルやその理由を解説

AIの進化により仕事が失われるという議論が広まり、それから約10年が経過しました。このため、経理職を目指す人々の中には、「将来的に経理は存在しなくなるのでは?」という疑問を抱く方も決して少なくありません。

本記事では、経理の将来性が果たしてないのかに対する疑問に答えるとともに、今後の経理職において求められるスキルについても詳しく解説します。その結果、経理職の未来に関する不安を和らげるようになるでしょう。

経理の将来性、あるのか?

経理の業務がなくなる可能性は低いです。

確かに、AIやRPA(Robotics Processing Automation=定型的な作業を自動化するツール)、BA(Business Automation=ビジネスタスクを自動化するツール)などの導入により、経理業務の多くが自動化され、人の手が不要な部分があります。

しかし、経理の業務は金銭の管理だけに留まりません。AIが基本的な作業を引き受けることで、経理担当者は領収書管理や簿記などの日々の業務から解放され、経営判断をサポートする業務や部署間の調整業務に注力することになります。

将来の経理職では高度な業務内容や専門知識が求められますが、経理の仕事が完全になくなることはないでしょう。

経理業務の99.8%が自動化される?

2015年の野村総研とオックスフォード大学の共同研究によれば、2025年からの10年間で日本の労働人口の約49%(※1)がコンピューターに置き換えられる可能性があります。その中で「経理事務員」の自動化可能性は99.8%で、最も高い確率とされました。

自動化が可能な職業の上位に経理事務員が位置していることから、将来性がないように思えますが、経理は単に自動化される業務だけで構成されているわけではありません。今後も経理は必要とされ、人間にしかできない業務が多く残されています。

職業

自動化が可能になる確率

電車運転士

99.8%

経理事務員

99.8%

検針員

99.7%

一般事務員

99.7%

包装作業員

99.7%

路線バス運転者

99.7%

積卸作業員

99.7%

こん包工

99.7%

レジ係

99.7%

製本作業員

99.7%

この結果をみる限り、経理の仕事に将来性はないように見えます。しかし、経理は、自動化される業務だけで成り立っているわけではありません。経理には、今後も必要とされ、人間にしかできない業務が多く残っているのです。

(※1)参考:野村総合研究所「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」

将来も必要な経理業務とは?

経理の業務の中で、今後も継続して必要とされる要素は何でしょうか。これは基本的なデータ入力や計算に関する作業だけでなく、組織全体を俯瞰し、高度な職務を評価できることが挙げられます。

非定型化業務への対応

今後も経理職には非定型的な状況への対応が求められます。経理業務は主に定型的な作業で構成されていますが、人間の判断が必要な非定型的な業務も多く存在します。

①毎月や毎年の業務

通常とは異なる条件や項目が毎月や毎年の決算時に必ず必要です。例えば、会計基準の変更や、海外の取引先からの確認が必要な場合があります。これらの事案については、各部門の担当者と協力して確認し、調整が必要でしょう。通常とは異なる事態が発生した場合、誰に何を確認し、どのように調整すべきかを判断するのは人間にしかできません。

②月次や年次の業務

月次や年次の決算時にも例外的な状況や項目が発生します。たとえば、会計基準の変更や海外の取引先からの確認が必要な場合があります。これらの課題についても、各部門の担当者と協議しながら検証し、調整が必要です。特異な状況が生じたときに、どのステークホルダーにどの情報を確認し、どう調整するべきかを判断するのは人間にしかできない仕事でしょう。

専門知識を必要とする業務

経理は特定の分野であり、会計や経理データ分析の専門的な知識や経験を活かした業務は、将来も不可欠です。

AIが単純な作業を引き受けることで、経理は真の役割である経営管理に焦点を当てることができます。すなわち、帳簿や仕訳帳をチェックし、そこから見つかった問題や課題を経営陣や各部署に伝え、調整する役割です。

ビジネスは人間が運営するものが一般的でしょう。経理は企業内の様々な関係者と対話し、情報を収集し、経費や仕入れに関する調整を行います。経理データを解釈し、その基礎となる現状を説明するためには、経理や会計の知識が不可欠です。

したがって、専門的なコミュニケーションが必要とされる業務は、経理の主要な業務として継続しています。

分析の業務

経理は経理データの分析と業績予測を行い、会社の経営状況を理解し、経営者に報告し、改善策を提案する役割も担っています。

業績予測と実績の違いを分析する際、その原因を特定する必要がありますが、それは単純な計算では解明できません。各部署の担当者からコストや仕入れの状況を聞くことも重要です。多くの場合、例外的な事象が起こっているため、経理の専門家による判断は欠かせません。

経理データの分析では、コスト分析だけでなく業務効率の分析も行います。各部署の業務効率の分析は、経営者が資金の観点から意思決定を行う上で重要なものです。これらの管理会計に関する業務は、今後も人間が担当することが予想されます。

監査法人と対話業務

年次決算における監査員との対応は、AIでは実現不可能なタスクです。外部監査において監査法人とのコミュニケーションでは、財務諸表や帳簿についての合理的な説明が要求されます。さらに、追加の資料やデータの提出も度々求められるでしょう。

AIやRPAが財務諸表の作成を可能にするかもしれませんが、その中に存在する疑問点や不一致に対する質問に回答するのは、組織全体の財務フローを理解し、経営陣の意向や各部門の状況を把握している経理担当者でなければ難しいです。

決算業務においては、監査法人との対話だけでなく、株主総会への対応も重要な役割があります。株主が疑問に思う可能性のある点を予測し、適切な回答を準備することはAIにはできないので、これらは引き続き経理担当者の重要な職務となります。

経営判断と意思決定の寄与

経理は経営の監督と管理を含む役割を果たします。これは、企業の資金の動きを管理・理解し、データに基づいて経営状況を分析するという、その本質的な任務を反映しています。

経理の職務には、経理データの分析を通じて利益を最大化するための最善策を提案し、経営者の意思決定をサポートすることが含まれます。これは、各部門のパフォーマンスとコスト分析に基づいて、事業の推進に関する提言を行うことを含みます。

また、税務リスクや海外支社の会計基準に対する最善策を提案するために、経理の専門知識を活用することが求められます。キャッシュフローの状況を判断し、安全性の観点から経営に提言するためにも、経理担当者の専門的な知識と経験がこれらの業務は、特定の状況や環境要因に影響を受けるため、AIでは判断できないものです。

経理の役割として、経営の意思決定を支援する業務は今後も必要とされ続けるでしょう。

今後経理に求められるスキルとは?

AIやRPAが経理のルーチンワークを担当する時代が到来する一方で、経理として優れた成果を上げるためには、従来以上に高度なスキルが求められることでしょう。以下で、将来の経理が持つべき能力について解説します。

監査支援業務

決算時には会計監査が必須です。監査には内部監査と外部監査の二種類が存在し、内部監査は経理部門や専任の監査部門が行い、外部監査は独立した監査法人が実施します。

会計ソフトウェアによる財務諸表の自動生成が可能となり、経理による手作業は減少しました。しかしながら、監査対応は、豊富な知識と経験を備えた経理の主要な職務として依然として存在します。

年次決算において、経理担当者は「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算表」「注記表」の4つを会計ソフトウェア等で作成後、監査人による監査を受ける前に、詳細なチェックを行い、その一貫性を確認しなければなりません。また、監査人からの質問や書類の提出要求に対応する業務も重要です。

これらの業務に対応するためには、会計に関する深い知識と経験を持つ経理担当者が求められるでしょう。

ITスキル・ソフトウェアスキル

未来の経理人材には、ソフトウェアに対する高度な知識が必要不可欠となります。

基本的なビジネスソフトウェア(Excel、Word、PowerPoint、Accessなど)における数字の入力や文書作成などのタスクは、自動化が進んでいます。従って、それ以上の高度なスキルが求められます。例えば、ExcelではVLOOKUP関数やCOUNTIF関数、またはピポットテーブルを用いたデータ分析など、経理に関連する重要なスキルを習得することが期待されるでしょう。

また、会計ソフトウェアでは、ソフトウェアの全機能を最大限に活用し、管理会計や財務分析に必要なデータを適切に生成するスキルが求められます。クラウドベースの会計システムが主流になる中、インターネット接続のトラブルシューティングやセキュリティに関する知識も不可欠です。

将来的には、AIを適切に活用するためのスキルも必要になることも予測できます。データの抽出を指示するプロンプト(命令文)の作成や、公開されたAIのAPIを組み込むプログラムの作成などの技術が求められるのです。これらの専門的なスキルを身につけることで、AIやRPAを効果的に使用し、より高品質な成果を得ることが可能になるでしょう。

経理に有益な資格

AIやRPAにより、単純な業務が自動化されても、経理の専門的な知識を持っていれば引き続き価値を提供することができます。経理に必要な資格を見ていくことで、それらの専門知識を習得する道筋が見えてくるでしょう。

1.日本商工会議所簿記検定

日本商工会議所簿記検定は、日本商工会議所が主催する試験で、簿記と会計の知識と実践的なスキルを評価します。試験には3級、2級、1級の3つのレベルがあり、初歩的な簿記や原価計算に焦点を当てた簿記初級や原価計算初級も含まれます。この資格は、経理や会計の専門職だけでなく、利益率やコスト管理に興味を持つ経営者、営業担当者、管理職にも有益です。

詳細については以下の通りです。

簿記1級: 会計学、工業簿記、原価計算を対象とします。会計基準、会計法、財務諸表の規範、企業会計に関わる法規の理解が必要です。経営管理と経営分析ができるレベルであり、合格者には税理士試験の受験資格が与えられます。

簿記2級: 経理業務に対応可能なレベルで、商業簿記の高度な知識と、工業簿記(原価計算を含む)の理解が求められます。管理会計に必要な各種分析や適切な処理が行えるレベルです。

簿記3級: 商業簿記の基本的な知識を身につけます。小規模事業者の会計業務を考慮に入れ、適切な経理文書の処理が行えるレベルです。

2級以上の資格を持つ者は、企業の経営決定に必要な管理会計や経営分析ができ、経理としてより専門的な業務に従事することが可能です。

2.ファイナンシャル・プランニング技能士

ファイナンシャル・プランニング技能士は、日本FP協会が主催する国家資格試験で、1級、2級、3級の3つのレベルが存在します。ファイナンシャルプランナーは「家計のスペシャリスト」とも呼ばれ、ライフプランに基づく資金計画を、投資、貯蓄、支出の観点から分析し、計画を策定し助言する専門家です。

初めて見たときは、企業の経理とは縁遠い領域に思えるかもしれませんが、収支、負債、資産などの財務データを分析して資金計画を策定する手法は、家計管理と企業の経理で共通する要素があります。さらに、広範な知識を得ることができるため、経理業務にも応用できるようになります。

アドバイザーとしての実践的なスキルは、組織内でのコミュニケーションにも役立つものです。2級を取得することで、AFPやCFPなどの上級資格に挑戦することも可能であり、これは金融の専門家としての第一歩と言えます。

また、ファイナンシャル・プランニング技能士の資格は、お金に関する知識を深めることができるため、経理業務以外の職種に従事するビジネスマンや自営業者にも有益です。同時に、個人向けのファイナンシャルプランナーとして独立する機会も多いでしょう。

3.米国公認会計士(USCPA)

米国公認会計士(USCPA)は、米国各州で認可される公認会計士の資格であり、米国と他国では異なる会計基準が存在します。このため、日本の公認会計士資格だけではグローバルなビジネスに対応することが難しいです。

USCPAの取得により、海外子会社の会計監査や連結決算などの業務が可能となり、貴重な経理人材となります。米国会計基準(GAAP)や国際会計基準(IFRS)の高い理解と実務スキルを身につけ、グローバル企業の財務分析、報告書作成、監査などにも対応できます。

さらに、USCPAの資格を取得することで、経理業務だけでなく、財務、経営企画、コンサルタントなどの分野においてもキャリアチェンジが可能になります。これにより、より広範な職種での活躍の機会が広がるでしょう。

経理職に適した人物特性

将来的に経理は、単純な作業から管理会計や経理データの分析を通じて、ビジネスや経営を支える仕事へと変わっていきます。では、そのような経理業務に適しているのは、どのような特性を持つ人なのでしょうか。

数値に対する強み

経理に適しているのは、数字を扱うことが好きで、計算や表の解釈に長けている人です。

経理の仕事には、企業の財務フローを管理し、財務報告書を作成する、管理会計を行うなど、数値の処理が不可欠でしょう。入力や財務報告書の作成が自動化されていても、それらを確認し修正するためには、数値に対する理解が必要となります。

数字の誤りや分析プロセスのミスは、結果を全く異なるものにしてしまう可能性があり、これは決算時に大きな問題を引き起こすこともあります。また、会計データの分析など、経営に直接影響を及ぼす作業でも、数値の扱いは重要です。

精密な作業が得意な人

経理に適しているのは、精密な作業が得意で、集中力と注意力が高い人です。

経理の業務では、毎日のように、伝票の管理や帳簿データ入力といった精密かつ多くのタスクが求められます。AIやRPAによる自動化があるとはいえ、その確認や修正、非標準的な状況への対応は、経理担当者の役割です。企業の資金を管理し把握する作業なので、ミスがないように集中力を保つことが重要でしょう。

決算書類の作成などで金額の誤りがある場合、ミスがどこにあるのかを探す作業が必要になります。帳簿、伝票、入出金記録などのドキュメントを慎重に確認し、詳細な金額を参照も必要です。このような細かな作業に耐えうる性格であり、それを継続できる人が、優れた経理職員になるケースが多いでしょう。

データ分析に優れ、興味を持っている

経理には、経営の意思決定のために経理データを分析し情報を提供することが求められます。経理のデータ分析により、経営側は、よりスピーディな判断ができるようになるからです。

具体的な業務には、原価・経費の分析、会計管理、決算時の財務諸表作成などが含まれます。各部署の収益状態を分析し、業務効率や生産性を把握することも経理の重要な業務です。これにより、経営がどの分野に注力し投資を強化するかの目安になります。

AIやBIの活用により、基本的なデータ抽出、加工、報告書に必要な表やグラフの作成まで自動化できますので、経理が行うのは、分析におけるプロセスの設計・管理と、結果の考察です。

AIの活用でも、指標を出して何を知りたいかなどの要件をまとめるのは人間の仕事ですので、経理担当者にはデータ分析の知識とノウハウが必要になります。情報処理に興味関心が高く、分析結果から課題や今後の方針に役立つポイントを発見することが得意な人は、今後の経理に必要になるでしょう。

グローバルな視野に基づく知識習得ができる

ビジネスのグローバル化が、大企業に限らず中小企業でも進んでいます。スタートアップの中には最初から国内の市場を対象にせず、海外クライアントだけを対象にした会社もあります。

海外の会社との取引や、海外支社の会計監査と連結決算などの経験と知識がある人材は、今もニーズが高いです。海外支社の会計では、国によって会計基準や税制が変化するため、それらの知識や経験は歓迎されます。さらに、英語やその国の言語でのビジネスレベルでのやりとりが必要になりますので、語学力も必須です。

今後、経理として希少性の高い人材を目指すならば、グローバル展開する企業での国際的な会計業務の実務経験を積むことも有効でしょう。

強い責任感がある

経理は、企業の財務を取り扱う重要な役割を果たすポジションであり、経営に影響を及ぼす情報を提供する重大な任務も担っています。そのため、自身の役割に対する強い責任感を持つことが求められます。業務を真剣に、誠実に遂行し、経理の役割を理解していること、そして、自分の見解や必要な対応を冷静かつ正確に伝えることができる人が注目されます。

今後の経理業務は、財務状況やビジネスパフォーマンスの分析、改善策の提案などが主な仕事となるでしょう。このような状況では、許容されるミスの余地はありません。不明な点がある場合は、それが解消されるまで徹底的に調査し、あいまいな状況を許さないことが重要です。強い責任感を持ち、任務遂行のために全力を尽くす人が求められるでしょう。

協調性がしっかりある

経理の職務内容は、単純な数値入力と管理から、企業全体の利益増加のために他部門と協力する役割に変わっています。そのため、他者と協力する能力は経理にとって重要な資質の一つとなります。経理は、企業内外の多様な部門や役職の人々と交流する機会が多い職種です。自分と異なる視点や意見を持つ人々とのやり取りが頻繁にあります。営業部門では強引な人もいるでしょうし、経営陣は現場の事情にかかわらず効率化を追求することも多いです。

経理の業務においては、他者を尊重しつつも、理にかなった意見を通す能力が必要とされます。そのため、協調性のある人が適しています。また、経理部門内での良好な職場環境を維持するためにも、協調性は欠かせません。協調性は、他人を理解し、人の利益のために行動することから生まれます。他人との深い理解と接触を持つこと、自発的に他人の役に立つことなどを心掛けることで、協調性は養われます。周囲との調和を重視し、他部署との協力を通じて企業全体の利益を追求することが、経理の役割となるでしょう。

経理としてのスキルを磨こう

経理の職務は、確かに今後も必要とされる存在ですが、単調な業務は減少し、より専門的な知識や技術が求められるようになります。

まず、AIやRPA、BIを正確に操作するための知識が求めらるようになるでしょう。そしてソフトウェアの設定、プロンプトの入力、結果データの検証などを理解し、適応することが必要です。さらに、社内外との調整や経営陣への助言などが経理の主要な業務となりますので、会計データの解析、文書作成、コミュニケーション能力、そして協調性など、さまざまな要因が重要になります。

これからも経理として活躍するためには、能力や知識、そして資格を積極的に身につけていくことを心がけましょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。