経理への転職を考えるにあたり、普段どのような仕事をしているのか知っておきたいところです。どの企業でも求められる「経理処理」について押さえておくと、職種のイメージがしやすくなります。
この記事では、経理処理の基本について述べたうえで、具体的な処理方法について解説します。
経理への転職を考えるにあたり、まずは経理処理の意義について理解しておく必要があります。経理処理の内容や、企業で重要視される理由について理解を深めましょう。
経理処理とは、企業のお金の出入りを管理する業務のことです。具体的には、以下の業務を指します。
上記の業務でお金の動きを把握していれば、企業の経営判断を正確かつスムーズに行うことが可能です。
また、経理処理でまとめたデータは、税務申告書類を作成する際のベースにもなります。経理は国への提出書類で用いる数字も扱うため、ルール通りかつ正確な運用が求められる職種です。
「経理処理」と「会計処理」の違いが分からず、混乱する人も少なくありません。経理処理はお金の出入りを管理する業務全般を指すのに対し、会計処理は経理処理の一部を表します。
項目 | 経理処理 | 会計処理 |
---|---|---|
業務 | 記録、管理、支払い業務全般。 | お金や品物の出入り、流れについて記録する。 |
役割 | 会計処理に加え、取引の仕訳、帳簿への記帳、請求書や領収書の管理、給与計算などを行う。 | 会社の入出金や品物の流れを帳簿に記録する。 |
会計処理は経理処理の一部であり、お金の出入りについての記録作業に特化した業務です。一方で経理処理は、記録を含めたより広範な業務のことを指します。
経理処理は、企業の財務健全性と経営の透明性を確保するうえで重要な業務です。以下に、経理処理が重要とされる5つの理由についてまとめました。
1. 財務状況の把握 | 財務状況を正確に把握し、経営判断を支える。 |
---|---|
2. 法令遵守 | 会社法に基づいた運用を行う。 |
3. 経営効率アップ | 無駄な支出を防ぎ、経営効率アップを図る。 |
4. 投資家や取引先との関係構築 | 正確な財務情報で信頼関係を築く。 |
5. 不正防止と内部統制 | 不正を防止し内部統制を強化する。 |
中でも「2. 法令遵守」と「5. 不正防止と内部統制」は、会社が法律を守りながら健全な経営を続けるために重要な要素です。
経理処理は、企業がこれからも利益を生み出し続け、社会的責任を果たすための基盤となります。
経理処理には、月ごとに行う「月次業務」と、年度ごとに行う「年次業務」の2つがあります。それぞれの処理の内容や、行われるサイクルについて理解を深めましょう。
月次業務は、企業のお金の出入りを月単位で管理する経理処理です。以下に、月次業務の主な内容についてまとめました。
業務名 | 説明 |
---|---|
仕訳と帳簿記入 | 取引を記録し帳簿に反映。 |
売上・仕入れ管理 | 売上と仕入れの詳細を管理。 |
経費精算 | 企業活動に使用したお金を集計し精算。 |
給与計算 | 従業員の給与を計算し支払う。 |
試算表作成 | 月末に試算表を作成。 |
月次業務は法律で定められている処理ではないものの、毎月行う企業が大半です。取引の記憶が新しいうちにデータの不備や誤りを修正できるため、定期的にやっておくことで年次処理の負担が軽くなります。
年次業務は、企業のお金の出入りを年度単位で管理する経理処理です。以下に、年次業務の主な内容についてまとめました。
業務名 | 説明 |
---|---|
決算処理 | 1年間のお金の出入りをまとめる。 |
財務諸表の作成 | 企業の儲かり具合を把握するために作成。 |
税務申告 | 税務署に税金を申告。 |
決算処理は、どのような会社であっても事業年度ごとに行うルールになっています。また、税金額は決算書の数字から求められるので、3月に決算、4月から税務の準備という一連の流れが一般的です。
月次業務と年次業務を年間で見ると、以下のようなサイクルになります。
月 | 業務内容 |
---|---|
4月 | 決算整理、財務諸表作成 |
5月 | 確定申告・納税 |
6〜11月 | 月次業務が中心 |
12月 | 年末調整 |
1月 | 月次業務が中心 |
2〜3月 | 決算処理 |
上記のほかにもさまざまな業務がありますが、基本的には3月の決算本番に向けて各経理処理を進めていくサイクルが一般的です。なお、企業によっては、9〜10月あたりに中期決算を行い経営方針の見直しに役立てるケースも少なくありません。
月次処理を行いながらシーズンごとのイベントに対応するため、経理には業務のスケジューリング力が求められます。
経理処理の中でも、会計処理はすべての基本となる重要度の高い業務です。ここでは、会計処理の基本的な考え方や税務の意義について解説します。
会計処理には、すべての企業が守るべき7つのルールがあります。以下に会計処理の7つの基本原則についてまとめました。
①真実性の原則 | 財務諸表は真実かつ公正に作成されるべき。 |
---|---|
②正規の簿記の原則 | 正規の簿記方法に従い記録されるべき。 |
③資本取引・損益取引区分の原則 | 資本取引と損益取引を区別して記録する。 |
④明瞭性の原則 | 財務諸表は明瞭で分かりやすく作成されるべき。 |
⑤継続性の原則 | 会計処理の方法は継続して適用する。 |
⑥保守主義の原則 | 将来の不確実性に備え、慎重に見積もる。 |
⑦単一性の原則 | 会計基準や方法を一貫して適用する。 |
データの一貫性と信頼性を保つために、上記7つのルールに則って処理を行います。
財務諸表とは、企業のお金の状況を体系的に表す表のことです。以下に、代表的な3つの財務諸表である「財務三表」と、その役割をまとめました。
財務諸表の種類 | 説明 |
---|---|
貸借対照表 | 企業の資産、負債、純資産の状況を示す。 会社の支払い能力や資金繰り状況が分かる。 |
損益計算書 | 企業の収益と費用、当期純利益の実績を示す。 費用の使い道や、儲かり具合が分かる。 |
キャッシュフロー計算書 (上場企業のみ作成義務あり) | 企業の現金の流れ(営業活動、投資活動、財務活動)を示す。 一定期間における現金の流れが分かる。 |
経理はそれぞれの表を作成し、会社の経営判断や投資家への情報提供資料として役立てます。
経理は企業の財務活動に関する法的義務を果たすために、税務管理や申告処理も行います。以下は、会社が申告すべき税金の種類です。
税金の種類 | 説明 |
---|---|
法人税 | 会社の所得に応じて課せられる税金。 |
消費税 | 会社で発生する取引に対して課せられる税金。 |
法人事業税 | 事業に対して課せられる税金。 |
法人住民税 | 会社が所在する地域に対して支払う税金。 |
場合によっては、経理が税務計算を行った担当者として、税務当局とのやりとりを担う場合があります。正確な税務処理により、企業を健全な経営に導くことも経理の仕事の一つです。
本記事では、経理処理はお金の出入りを管理する業務全般を指すのに対し、会計処理は経理処理の一部であると解説しました。経理処理の全体像や、会計処理の重要性について理解すると、転職活動のスタートをスムーズに切ることが可能です。経理処理と会計処理について理解し、企業の成長を支える人材を目指しましょう。
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